【VW ティグアン 試乗】VWのブランド力でBMWを凌駕できるか…中村孝仁
VW『ティグアン』の試乗会からだいぶ月日がたった。試乗会は東京のど真ん中で開催されたため、正直、試乗としては不満足だったので、改めて借り出して乗ってみた。
試乗会で乗ったのは「ハイライン」という中間グレード。そして今回借りたのは、「Rライン」という名のトップグレードのモデルである。もっとも、いずれのグレードでもエンジン、トランスミッションなどのドライブトレーンは共通だし、タイヤサイズを除けば足回りも同じである。因みにハイラインは235/55R18を装着、そしてRラインは255/45R19を装着する。走った距離が異なることもあって、両車における乗り心地の明確な違いは感じられなかった。ただし、Rラインの乗り心地は突き上げ感などもほとんど感じられず、このサイズのタイヤを装着している割には非常に快適といえるレベルである。
何故、VWは東京のど真ん中で試乗会を行ったのか。そこに込められたのは、最新鋭のインフォテイメントシステムとそのコネクティビティーを堪能して欲しかったからだとか。でも短時間にボイスコマンドを含む比較的複雑な操作性を極めるのは無理で、一部教えてもらった操作のみを体感した程度だったので、今回はナビゲーションのボイスコマンドを試してみた。
というのもVWの新しいインフォテイメント&ナビゲーションシステムは、手動入力よりもボイス入力に強みを発揮すると言われているからである。実は手動入力の場合、正直言ってかなり煩雑である。理由は例えば住所入力の際に県と区、あるいは町名の間にはスペースを打ち込まなければならないという決まりごとがあって、それを理解していないと目的地設定が出来なかったからだ。ボイス入力を試してみると、例えば行先、と告げると県名から行ってくださいというガイドが返ってくるので、それに従って音声入力すれば、簡単に目的地設定が出来る。走行中でもそれなら可能だったから、便利であった。
ドライブトレーンは今更だが、1.4リットルTSIユニットと6速DSGの組み合わせ。エンジンパワーは150psである。最大トルクも250Nmだから、パフォーマンスに関してはまあ普通というべきだろうが、年月をかけて熟成してきたこのエンジン、印象的には今ある4気筒でもっともスムーズな回転フィールを持つエンジンの一つだと思う。だから、一旦回り始めてしまうと本当に軽快でスムーズな走りを堪能できる。これはより高級なドイツ御三家と比較しても優れている。勿論、同族会社は除いて。
ただ、問題がないわけではない。それはアイドリングストップからの再スタートだ。ご存知の通りDSGはいわゆる電子制御マニュアルだから、トルクコンバーター式のオートマチックと違って、クラッチを人間に代わって電子制御して繋ぐ。つまり、アイドリングストップした状態から発進する場合、まずエンジンをかけて、その後にクラッチを繋いで動き出すということになるのだが、要はそれをほぼ同時に行うと、どうしても少なからずクラッチミートの際のショックが伝わってしまう。あらかじめ信号の変わり目を察知して、軽くアクセルに足を載せ、エンジンをかけて、その後により深く踏み込んでクルマをスタートさせれば問題はないが、同時にやろうとすると結構ショックが大きいのである。
これを感じるのはオートホールドという、停車時に自動的にブレーキをかけてくれるモードを作動させている時。つまり、ドライバーは停車中ブレーキペダルから足を離していて、信号が変わると同時にエンジンも止まっている車両を一気に発進させた時にそのショックが発生するというわけである。
だが、300kmほど走って走行面で気になったのはその程度。ハンドリングは十分にシャープで、身のこなしもサイズのわりに軽快である。ボディは旧型と比較して全長で70mm、全幅で30mm、ホイールベースで70mmと大幅に拡大しており、見た目は正直に言うと完全にひとクラス上という印象。試乗中にずいぶん旧型と遭遇したが、そもそも立派さがまるで違う。
それにデザインの落ち着き感と威風堂々とした印象も格段に向上した。もっとも威風堂々とした分、お値段の方もしっかり上がった。そして現状で解せないのは今のところFWDの設定しかないこと。FWDでも従来の2リットル4モーション(4WD)のお値段よりお高くなっているのだから、4モーションが登場すると、500万円越えは必至とみられる。現状のお値段でもBMW『X1』のx-Driveと大差ない。果たしてVWのブランド力を持ってBMWを凌駕できるのか、このあたりがVWの今後の課題のような気がする。
■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
(レスポンス 中村 孝仁)
試乗会で乗ったのは「ハイライン」という中間グレード。そして今回借りたのは、「Rライン」という名のトップグレードのモデルである。もっとも、いずれのグレードでもエンジン、トランスミッションなどのドライブトレーンは共通だし、タイヤサイズを除けば足回りも同じである。因みにハイラインは235/55R18を装着、そしてRラインは255/45R19を装着する。走った距離が異なることもあって、両車における乗り心地の明確な違いは感じられなかった。ただし、Rラインの乗り心地は突き上げ感などもほとんど感じられず、このサイズのタイヤを装着している割には非常に快適といえるレベルである。
何故、VWは東京のど真ん中で試乗会を行ったのか。そこに込められたのは、最新鋭のインフォテイメントシステムとそのコネクティビティーを堪能して欲しかったからだとか。でも短時間にボイスコマンドを含む比較的複雑な操作性を極めるのは無理で、一部教えてもらった操作のみを体感した程度だったので、今回はナビゲーションのボイスコマンドを試してみた。
というのもVWの新しいインフォテイメント&ナビゲーションシステムは、手動入力よりもボイス入力に強みを発揮すると言われているからである。実は手動入力の場合、正直言ってかなり煩雑である。理由は例えば住所入力の際に県と区、あるいは町名の間にはスペースを打ち込まなければならないという決まりごとがあって、それを理解していないと目的地設定が出来なかったからだ。ボイス入力を試してみると、例えば行先、と告げると県名から行ってくださいというガイドが返ってくるので、それに従って音声入力すれば、簡単に目的地設定が出来る。走行中でもそれなら可能だったから、便利であった。
ドライブトレーンは今更だが、1.4リットルTSIユニットと6速DSGの組み合わせ。エンジンパワーは150psである。最大トルクも250Nmだから、パフォーマンスに関してはまあ普通というべきだろうが、年月をかけて熟成してきたこのエンジン、印象的には今ある4気筒でもっともスムーズな回転フィールを持つエンジンの一つだと思う。だから、一旦回り始めてしまうと本当に軽快でスムーズな走りを堪能できる。これはより高級なドイツ御三家と比較しても優れている。勿論、同族会社は除いて。
ただ、問題がないわけではない。それはアイドリングストップからの再スタートだ。ご存知の通りDSGはいわゆる電子制御マニュアルだから、トルクコンバーター式のオートマチックと違って、クラッチを人間に代わって電子制御して繋ぐ。つまり、アイドリングストップした状態から発進する場合、まずエンジンをかけて、その後にクラッチを繋いで動き出すということになるのだが、要はそれをほぼ同時に行うと、どうしても少なからずクラッチミートの際のショックが伝わってしまう。あらかじめ信号の変わり目を察知して、軽くアクセルに足を載せ、エンジンをかけて、その後により深く踏み込んでクルマをスタートさせれば問題はないが、同時にやろうとすると結構ショックが大きいのである。
これを感じるのはオートホールドという、停車時に自動的にブレーキをかけてくれるモードを作動させている時。つまり、ドライバーは停車中ブレーキペダルから足を離していて、信号が変わると同時にエンジンも止まっている車両を一気に発進させた時にそのショックが発生するというわけである。
だが、300kmほど走って走行面で気になったのはその程度。ハンドリングは十分にシャープで、身のこなしもサイズのわりに軽快である。ボディは旧型と比較して全長で70mm、全幅で30mm、ホイールベースで70mmと大幅に拡大しており、見た目は正直に言うと完全にひとクラス上という印象。試乗中にずいぶん旧型と遭遇したが、そもそも立派さがまるで違う。
それにデザインの落ち着き感と威風堂々とした印象も格段に向上した。もっとも威風堂々とした分、お値段の方もしっかり上がった。そして現状で解せないのは今のところFWDの設定しかないこと。FWDでも従来の2リットル4モーション(4WD)のお値段よりお高くなっているのだから、4モーションが登場すると、500万円越えは必至とみられる。現状のお値段でもBMW『X1』のx-Driveと大差ない。果たしてVWのブランド力を持ってBMWを凌駕できるのか、このあたりがVWの今後の課題のような気がする。
■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
(レスポンス 中村 孝仁)
最新ニュース
-
-
日産のフルサイズSUV『アルマーダ』新型、ベース価格は5.6万ドルに据え置き…12月米国発売へ
2024.11.21
-
-
-
軍用ジープが最新モデルで蘇る…ドアなし&オリーブドラブが渋い「ラングラー ウィリス'41」発表
2024.11.21
-
-
-
EV好調のシトロエン『C3』新型、欧州カーオブザイヤー2025最終選考に
2024.11.21
-
-
-
「めっちゃカッコいい」新型レクサス『ES』のデザインにSNSで反響
2024.11.21
-
-
-
光岡、話題の55周年記念車『M55』を市販化、100台限定で808万5000円
2024.11.21
-
-
-
日本発の「ペダル踏み間違い防止装置」、世界標準へ…国連が基準化
2024.11.21
-
-
-
楽しく学べる「防災ファミリーフェス」を茨城県の全トヨタディーラーが運営する「茨城ワクドキクラブ」が開催
2024.11.21
-
最新ニュース
-
-
日産のフルサイズSUV『アルマーダ』新型、ベース価格は5.6万ドルに据え置き…12月米国発売へ
2024.11.21
-
-
-
軍用ジープが最新モデルで蘇る…ドアなし&オリーブドラブが渋い「ラングラー ウィリス'41」発表
2024.11.21
-
-
-
EV好調のシトロエン『C3』新型、欧州カーオブザイヤー2025最終選考に
2024.11.21
-
-
-
「めっちゃカッコいい」新型レクサス『ES』のデザインにSNSで反響
2024.11.21
-
-
-
光岡、話題の55周年記念車『M55』を市販化、100台限定で808万5000円
2024.11.21
-
-
-
日本発の「ペダル踏み間違い防止装置」、世界標準へ…国連が基準化
2024.11.21
-
MORIZO on the Road