【ボルボ XC60 海外試乗】まさにユーザーが求めるボルボの乗り味になった…桂伸一
見た瞬間、いや、走った瞬間が正しい…物欲モードがONになった!!
ボルボ『XC60』の国際試乗会、スペイン・バルセロナでの話。まずは空港でディーゼル(とガソリンの1モデルづつ)仕様を受け取り、有料道路アウトピスタにのり高速から郊外のカントリーロードでクルマ全体の操縦性、安定性、乗り味、使い勝手を確認。
スタート直後からその乗り味の滑らかさと静粛性の高さに圧倒された。ミドルクラスSUVなので、それなりに高い位置に座り、操作し、挙動変化を感じる。気がつけばセダンやワゴンと同じ評価軸になって、ボイスメモに吹き込んでいる。背が高くてもクルマと一体感が持てると、そうなるようだ。
けして平らではない高速道路は、路面のつなぎ目、補習跡の凹凸を通過する度、ソレが目視できている身体は、衝撃に身構える。しかし呆気なく肩すかし。凹凸を舐めるよう、段差は包み込むようにサスはストロークし、吸収して乗員を過度に揺らす事はない。因みに全試乗車にオプションのエアサスが装備されている。だからか!?…いや違う!!
兄貴分の『XC90』は、エアサス仕様でも比較的硬いスポーティーな乗り味を実践した。それは現在のボルボ流ともいえる、しっかりと確実な高速操縦安定性とハンドリングを両立した特性だ。しかし、ユーザーが求めたのはソコではなかった。大多数はその硬さに飽きているという。「峠だけを走行するならソレでもいいが、街乗りはより快適なほうがいい」と、欧州でもそう考えるらしい。
XC60の乗り味はまさにユーザーの要求に答えるカタチになった。それはやはりショックアブソーバーの特性が強く関係する。「エコ」「コンフォート」「ダイナミック」と走行モードを変えると、アクセルレスポンスやステアリングの操舵力も変化する。ダイナミックのステアリングの重さは丁度いいのだが、アクセルレスポンスは過敏過ぎる。と、話はそれるが、ここも重要。
そこは「インディビジュアル」で個々の設定を変える事が可能。ただしXC60、もっともスポーティーな「ダイナミック」にしても、ピクッとした鋭い反応は控えめ。直進性が強いと言える特性でもある。
逆を言えば、ピクッピクとクイックな操縦性を求めるムキには物足りないかも知れないが、そう言う方にはステア操作を早めに切ればいいし、モデルとしては今後「Rデザインが用意されています」と、操縦性担当のエンジニア氏。
225/45R20のタイヤでこの乗り味と旋回中の安定姿勢である。新世代シャーシに変ってからのボルボのコーナリングフォームは、過去の「ダイヤゴナルロール(前屈みの傾き)」ではなく、前後のサスが同様に縮み傾く、平行ロールを実現。なるほどS字の切り返しやヘアピンコーナーを回り込む時の乗員の姿勢変化も平行ロールのほうが自然である。操作に対していかに忠実に自然にクルマの動きに変えるか。ヒトとクルマの関係を見事に結びつけたと言う事でXC60の完成度の高さが判る。
良いのは乗り味だけじゃない。エンジンは世界一静粛性が高いディーゼルだと思っていたBMW、あるいはプジョーのディーゼルに追いつき追い越した!!
ソレはディーゼル最強の「D5」。アイドリングを外で聞いても従来とは違う。密閉容器にでも入れられたかのように音の元が抑え込まれている。
5000rpmまで回る高回転ディーゼルだ。上限まで引っ張り上げると、ジリジリ~ガサガサというディーゼル特有の燃焼音の類は皆無で、まるでガソリンエンジンのような滑らかな音色を“発声”する。
続いてガソリン仕様の最強版「T6」に乗る。ここでの驚きはディーゼルよりもガソリンの音量が大きい事だ。これはより快活に6500rpmまで使える、「回転域の広いエンジン特性が関係するのだろう」とエンジン担当者。
以前は低回転から“ディーゼル+ターボトルク”でグイグイ加速するディーゼルがスポーティーだと思った。しかし超スムーズなトルコン式8速ATが各ギヤでリミットまで引っ張り加速するガソリン「T6」こそスポーツユニットそのものだと思う。
ちなみに印象と実際もそうで、0-100km/h加速と最高速は「D5」が7.2秒、220km/h。「T6」は5.9秒、230km/hとなる。
ボルボが自動制御ブレーキを日本の御上に最初に認可させ、突破口を開いた事はすでに忘れられたよう。世の中、自動自動と、誤解を生じるコメントや文字が溢れている。が、当のボルボは、あくまでもドライバーがステアリングを操作する状態の「レベル2」のパイロットアシストを今回、車線からはみ出して来た対向車を自動ステアリング操作で回避する機能を搭載。“残念ながら” !? 試す機会はなかったが、前車追従ACCの自動ブレーキやレーンキープのためのステアリング操作の緻密な制御を知ると、試すべきだったと後悔。
新型XC60を前にすると、兄弟関係と思ったXC90との違いが明らかになる。同じハコ型でもXC60は、ボディ面に抑揚があり、角が滑らかで、曲面にキャラクターラインとしてエッジが走るなど、明らかに新しいデザイン手法があり、お洒落度合も高く、ユーザー層が若い事がわかる。
室内は“北欧家具店”に行った印象。ドイツともフランス、イタリア、イギリスとも違うと思う色、カタチ、薫りと、何よりその場にいる事が心地いい。それがスウェーデン、ボルボのセンスと質感と空気感だと思う。前席はドライバーの好みの姿勢が容易に造れ、後席は足元スペースも十分のオトナサイズを確保。
XC60、じつは兄貴分のXC90と基本シャーシとパワートレインを共有する。シャーシはSPA (スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)と呼ぶボルボの新基準。まさにこのXC90とXC60のために専用に開発された物で、中~大型サイズ用に長さや幅を自在に変えられるプラットフォーム構造。すでにSUVのXC90、セダンのS90とワゴンのV90にも展開中で、XC60も今後シリーズ展開する。
エンジンはこれもボルボが提唱する2リットル4気筒以上は造らないコンセプトの「Drive-E」パワートレインが搭載される。ちなみに現在日本仕様として上陸しているXC90に搭載されているエンジンはガソリンがT8(PHEV)、T6、T5。ディーゼルは今後上陸予定だが、すでに他のモデルではD4が上陸済み。XC60のパワーユニットもこれらに準じて搭載予定である。
上陸は秋頃、さあ、どうしよう!!
桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、 読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマー ティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。
(レスポンス 桂伸一)
ボルボ『XC60』の国際試乗会、スペイン・バルセロナでの話。まずは空港でディーゼル(とガソリンの1モデルづつ)仕様を受け取り、有料道路アウトピスタにのり高速から郊外のカントリーロードでクルマ全体の操縦性、安定性、乗り味、使い勝手を確認。
スタート直後からその乗り味の滑らかさと静粛性の高さに圧倒された。ミドルクラスSUVなので、それなりに高い位置に座り、操作し、挙動変化を感じる。気がつけばセダンやワゴンと同じ評価軸になって、ボイスメモに吹き込んでいる。背が高くてもクルマと一体感が持てると、そうなるようだ。
けして平らではない高速道路は、路面のつなぎ目、補習跡の凹凸を通過する度、ソレが目視できている身体は、衝撃に身構える。しかし呆気なく肩すかし。凹凸を舐めるよう、段差は包み込むようにサスはストロークし、吸収して乗員を過度に揺らす事はない。因みに全試乗車にオプションのエアサスが装備されている。だからか!?…いや違う!!
兄貴分の『XC90』は、エアサス仕様でも比較的硬いスポーティーな乗り味を実践した。それは現在のボルボ流ともいえる、しっかりと確実な高速操縦安定性とハンドリングを両立した特性だ。しかし、ユーザーが求めたのはソコではなかった。大多数はその硬さに飽きているという。「峠だけを走行するならソレでもいいが、街乗りはより快適なほうがいい」と、欧州でもそう考えるらしい。
XC60の乗り味はまさにユーザーの要求に答えるカタチになった。それはやはりショックアブソーバーの特性が強く関係する。「エコ」「コンフォート」「ダイナミック」と走行モードを変えると、アクセルレスポンスやステアリングの操舵力も変化する。ダイナミックのステアリングの重さは丁度いいのだが、アクセルレスポンスは過敏過ぎる。と、話はそれるが、ここも重要。
そこは「インディビジュアル」で個々の設定を変える事が可能。ただしXC60、もっともスポーティーな「ダイナミック」にしても、ピクッとした鋭い反応は控えめ。直進性が強いと言える特性でもある。
逆を言えば、ピクッピクとクイックな操縦性を求めるムキには物足りないかも知れないが、そう言う方にはステア操作を早めに切ればいいし、モデルとしては今後「Rデザインが用意されています」と、操縦性担当のエンジニア氏。
225/45R20のタイヤでこの乗り味と旋回中の安定姿勢である。新世代シャーシに変ってからのボルボのコーナリングフォームは、過去の「ダイヤゴナルロール(前屈みの傾き)」ではなく、前後のサスが同様に縮み傾く、平行ロールを実現。なるほどS字の切り返しやヘアピンコーナーを回り込む時の乗員の姿勢変化も平行ロールのほうが自然である。操作に対していかに忠実に自然にクルマの動きに変えるか。ヒトとクルマの関係を見事に結びつけたと言う事でXC60の完成度の高さが判る。
良いのは乗り味だけじゃない。エンジンは世界一静粛性が高いディーゼルだと思っていたBMW、あるいはプジョーのディーゼルに追いつき追い越した!!
ソレはディーゼル最強の「D5」。アイドリングを外で聞いても従来とは違う。密閉容器にでも入れられたかのように音の元が抑え込まれている。
5000rpmまで回る高回転ディーゼルだ。上限まで引っ張り上げると、ジリジリ~ガサガサというディーゼル特有の燃焼音の類は皆無で、まるでガソリンエンジンのような滑らかな音色を“発声”する。
続いてガソリン仕様の最強版「T6」に乗る。ここでの驚きはディーゼルよりもガソリンの音量が大きい事だ。これはより快活に6500rpmまで使える、「回転域の広いエンジン特性が関係するのだろう」とエンジン担当者。
以前は低回転から“ディーゼル+ターボトルク”でグイグイ加速するディーゼルがスポーティーだと思った。しかし超スムーズなトルコン式8速ATが各ギヤでリミットまで引っ張り加速するガソリン「T6」こそスポーツユニットそのものだと思う。
ちなみに印象と実際もそうで、0-100km/h加速と最高速は「D5」が7.2秒、220km/h。「T6」は5.9秒、230km/hとなる。
ボルボが自動制御ブレーキを日本の御上に最初に認可させ、突破口を開いた事はすでに忘れられたよう。世の中、自動自動と、誤解を生じるコメントや文字が溢れている。が、当のボルボは、あくまでもドライバーがステアリングを操作する状態の「レベル2」のパイロットアシストを今回、車線からはみ出して来た対向車を自動ステアリング操作で回避する機能を搭載。“残念ながら” !? 試す機会はなかったが、前車追従ACCの自動ブレーキやレーンキープのためのステアリング操作の緻密な制御を知ると、試すべきだったと後悔。
新型XC60を前にすると、兄弟関係と思ったXC90との違いが明らかになる。同じハコ型でもXC60は、ボディ面に抑揚があり、角が滑らかで、曲面にキャラクターラインとしてエッジが走るなど、明らかに新しいデザイン手法があり、お洒落度合も高く、ユーザー層が若い事がわかる。
室内は“北欧家具店”に行った印象。ドイツともフランス、イタリア、イギリスとも違うと思う色、カタチ、薫りと、何よりその場にいる事が心地いい。それがスウェーデン、ボルボのセンスと質感と空気感だと思う。前席はドライバーの好みの姿勢が容易に造れ、後席は足元スペースも十分のオトナサイズを確保。
XC60、じつは兄貴分のXC90と基本シャーシとパワートレインを共有する。シャーシはSPA (スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)と呼ぶボルボの新基準。まさにこのXC90とXC60のために専用に開発された物で、中~大型サイズ用に長さや幅を自在に変えられるプラットフォーム構造。すでにSUVのXC90、セダンのS90とワゴンのV90にも展開中で、XC60も今後シリーズ展開する。
エンジンはこれもボルボが提唱する2リットル4気筒以上は造らないコンセプトの「Drive-E」パワートレインが搭載される。ちなみに現在日本仕様として上陸しているXC90に搭載されているエンジンはガソリンがT8(PHEV)、T6、T5。ディーゼルは今後上陸予定だが、すでに他のモデルではD4が上陸済み。XC60のパワーユニットもこれらに準じて搭載予定である。
上陸は秋頃、さあ、どうしよう!!
桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、 読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマー ティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。
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