【トヨタ ハリアーターボ 試乗】「将来が楽しみなクルマ」である理由…中村孝仁

トヨタ ハリアーターボ
今年で誕生20年の節目を迎えたトヨタ『ハリアー』。現行モデルが登場したのは2013年で、この世代からそれまでの『カムリ』ベースではなくて『RAV4』ベースに変わった。

タイトルに何故将来が楽しみなクルマと書いたかであるが、このプラットフォーム変更にも関わらず、ハリアーは高い質感や乗り心地、それに静粛性を担保していて、レクサスから分離されたとは言え、依然として高感度クロスオーバーとしてのポテンシャルを持っていたこと、そしてこの潜在的ポテンシャルが、次をさらなる高みに確実に持っていける確かな理由があるからだ。

今回は、新たな2リットルターボエンジンが搭載されたことで、パフォーマンスという武器も手に入れた。カムリとの合同試乗会という形をとったので、カムリからの乗り換えで、このハリアーのステアリングを握った。しかしのっけからその静粛性には舌を巻かされた。とにかく快適、そして静かである。この点は従来と全く変わっていない。従来の2リットルモデルはCVTとの組み合わせだったが、今回の2リットルターボは6ATが組み合わされる。ここでも、きっちりと従来型より進化した印象を受けるのだ。

読者の中には何故CVTがステップATに対して劣るかについて疑問を抱く方もいるだろう。というのもCVTはスムーズで燃費が良いからいいじゃないかと…。確かにJC08モードでの測定はそうだ。それに変速はしないのだから、加速がスムーズであるのも間違いない。しかし、アクセルを目いっぱい踏みつけて(そんなことは滅多にしないかもしれないが)加速した際には、エンジン回転の上昇と加速感が乖離して、違和感を覚える。そして正直な話JC08モード燃費はCVTに有利なような設定になっているから、表示できる燃費が良くなる。多くのメーカーがCVTを採用するのはその点にもあって、いざ実際に乗ってみると、JC08モード燃費からは3割は割り引かないと、実用燃費は出てこない。そしてもう一つ、ステップATがこのところものすごい進化を遂げていて、積極的にチョイスすべき理由も出てきたことが、6AT vs CVTでは、6ATに軍配が上がる理由なのである。

しばらく交通量が非常に少ない一般道を走行。まあ、快適である。多くのユーザーがハリアーをチョイスしたくなるものもっともだと思わせる。それに楽ちん。運転に何の苦痛も感じない。恐らく長時間乗ると、その恩恵は顕著になると感じられた。ただ、問題がないわけではない。ステアリングから路面情報を伝達してもらいたいわけだが、反力というものが全くと言ってよいほどないから、どんな路面を走っているか非常に掴みづらい。まあ、基本的に多くのユーザーは多少のうねりとか小さな凹凸を気にするわけではないので、この程度の反力の無さは気にしないのだろうが、より運転を楽しみたいユーザーにとっては、少々問題が残る。

肝心のパフォーマンスに関してだが、この2リットルターボは既に『クラウン』をはじめハリアーとほぼ同じ車重、サイズを持つ『レクサスRX』にも採用されている。はっきり言って、NAの2リットルと比べたら格段の差だ。ただしお値段の方もそれなりで、オプションを含む試乗車の価格は453万8700円。車両本体価格も438万0480円と、決して安くはない。

もう一つは乗り心地。のんびりとしたスピードで一般道を流すようなケースでは本当に快適で楽ちんなのだが、大きな路面の凹みに嵌ったり、あるいは少し荒れた路面からのサスペンションに対する大入力に対しては、要改良の印象が残った。このあたりが恐らくはRAV4ベースのプラットフォームを使う限界なのかなと感じるところ。

そこで将来が楽しみというタイトルに繋がるわけだが、次期ハリアーがいつ投入されるかは不明だが、その際は間違いなく新型カムリが使うのと同じTNGAという名のプラットフォームが使われるはず。そしてこのTNGA、現行『プリウス』から使用開始されたものだが、恐ろしく良くできている。そしてカムリでも感動的なほどの良さを我々に伝えてくれた。すでに2005年から使われていて、基本的には大きな変化のないMCと呼ばれるプラットフォームを使う現行ハリアーにこのTNGAが採用されれば、今ですら快適、楽ちん、それに十分に高い静粛性が、さらにブラッシュアップされ、元々十分に上質なこのクルマがどのように仕上がるか、本当に楽しみになるという寸法なのである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

(レスポンス 中村 孝仁)

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