【アウディ Q2 1.0TFSIスポーツ 試乗】あっちが立てば、こっちが立たず…中村孝仁
アウディSUV系モデルレンジのボトムエンドに位置する『Q2』。前回1.4リットル版を試乗した時にも話したが、骨格のベースは『A3』である。一方でエンジンベースは『A1』で、今回は前回乗れなかった1.0リットルをお借りして乗ってみた。
1.4リットル版同様、このクルマが優等生であることは、痛感させられる。とにかくそのサイズ感、パフォーマンス、上質感、それに運動性能のどれをとっても、ほぼライバルと思しきクルマと比較して概ね上回っている。これはいわゆる総合評価としてそうなるのであって、部分的には、んっもう…! と嘆くところもあった。
まず、ボディと基本的な装備についてはほぼ1.4リットル版と変わらない。もっとも、試乗車にはおよそ45万円相当のオプションが装備されているので、単純な比較はできない。
恐らく一番気になるであろうところは、性能差だと思う。確かに1リットルターボは、ここ一番という時の頑張り感に欠ける。もっとも、その「ここ一番」というのは、滅多なことでは遭遇しない。まあ、9割はこの性能で十分満足できるのではないかと思う。ただ、試乗車に限ってのことかもしれないが、どうもいくつか不具合では?という部分もあった。
ダメ出しを一気にしてしまうと、先ず乾式クラッチを用いた7速のSトロニックである。VWのDSG同様、どうも乾式は余りよろしくない。どこがどうダメか具体的に話すと、まずは発進。今や当然のごとくアイドリングストップが付いているのだが、ブレーキから足を離して、アクセルに乗せ、アクセルを踏み込んでクルマを発進させる一連の動作の中で、アクセルを踏み込んでから明らかに一拍以上の遅れを持ってエンジンが反応すること。それと極低速で加減速を繰り返す渋滞中の走行でもギクシャク感が拭えない。この二つ、恐らくクラッチの断続をスムーズに行うために、半クラッチ部分を多くしているのではないかと想像するが、俊敏さに欠けて折角のツインクラッチミッションの利点を活かせていないように感じる。
もう一つは恐らく個体差なのだと思うが、このクルマ、アイドリングストップからエンジンが目覚めているにもかかわらず、ステアリングの目覚めがそれより一拍以上遅れ、ステアリングを回そうとすると一瞬完全にスティックする。こいつはいただけなかった。
ボディのサイズ感は現代の交通状況に非常によくマッチしていて扱い易く、同時にそれを活かしてキビキビと走れる。発進だけもたつくが、一旦ギアがエンゲージされてしまえば、後のつながりは非常にスムーズで、さすがにキビキビと走る。全長は4200mmとコンパクトだが、全幅が1795mmもあるのはさすがに現代の小型車。サイズ感が古いクルマと比べて格段に横方向へと広がっているのがわかる。扱い易いといったが、回転半径は5.1m。カタログには抜群の最小回転半径と謳うが、昔のクルマだと例えばボルボ『940』なんか、全長が4870mmもあるボディを持っていても回転半径はこのQ2より小さい5mだから、FWDはやはりステアリングが切れないのと、狭いところで取り回しについては決して良いとは言えないわけである。
このクラスとしては静粛性はすこぶる高いと思う。それに視界も良い。だから、走っている時は乗り易いと感じるのだろう。コンパクトで扱い易可と思えば、狭いところでの出し入れは案外苦労したり、普通に流しているとすこぶるキビキビと走るのに、出足ではもたつくなど、あっちを立てればこっちが立たず、という印象が残った。サイズ的にも、性能的にも競合する輸入車は存在せず、かといって国産同クラスのホンダ『ヴェゼル』やトヨタ『C-HR』とでは価格的に競合せず、何となく日本のマーケットでは孤高の存在のようにも見える。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
(レスポンス 中村 孝仁)
1.4リットル版同様、このクルマが優等生であることは、痛感させられる。とにかくそのサイズ感、パフォーマンス、上質感、それに運動性能のどれをとっても、ほぼライバルと思しきクルマと比較して概ね上回っている。これはいわゆる総合評価としてそうなるのであって、部分的には、んっもう…! と嘆くところもあった。
まず、ボディと基本的な装備についてはほぼ1.4リットル版と変わらない。もっとも、試乗車にはおよそ45万円相当のオプションが装備されているので、単純な比較はできない。
恐らく一番気になるであろうところは、性能差だと思う。確かに1リットルターボは、ここ一番という時の頑張り感に欠ける。もっとも、その「ここ一番」というのは、滅多なことでは遭遇しない。まあ、9割はこの性能で十分満足できるのではないかと思う。ただ、試乗車に限ってのことかもしれないが、どうもいくつか不具合では?という部分もあった。
ダメ出しを一気にしてしまうと、先ず乾式クラッチを用いた7速のSトロニックである。VWのDSG同様、どうも乾式は余りよろしくない。どこがどうダメか具体的に話すと、まずは発進。今や当然のごとくアイドリングストップが付いているのだが、ブレーキから足を離して、アクセルに乗せ、アクセルを踏み込んでクルマを発進させる一連の動作の中で、アクセルを踏み込んでから明らかに一拍以上の遅れを持ってエンジンが反応すること。それと極低速で加減速を繰り返す渋滞中の走行でもギクシャク感が拭えない。この二つ、恐らくクラッチの断続をスムーズに行うために、半クラッチ部分を多くしているのではないかと想像するが、俊敏さに欠けて折角のツインクラッチミッションの利点を活かせていないように感じる。
もう一つは恐らく個体差なのだと思うが、このクルマ、アイドリングストップからエンジンが目覚めているにもかかわらず、ステアリングの目覚めがそれより一拍以上遅れ、ステアリングを回そうとすると一瞬完全にスティックする。こいつはいただけなかった。
ボディのサイズ感は現代の交通状況に非常によくマッチしていて扱い易く、同時にそれを活かしてキビキビと走れる。発進だけもたつくが、一旦ギアがエンゲージされてしまえば、後のつながりは非常にスムーズで、さすがにキビキビと走る。全長は4200mmとコンパクトだが、全幅が1795mmもあるのはさすがに現代の小型車。サイズ感が古いクルマと比べて格段に横方向へと広がっているのがわかる。扱い易いといったが、回転半径は5.1m。カタログには抜群の最小回転半径と謳うが、昔のクルマだと例えばボルボ『940』なんか、全長が4870mmもあるボディを持っていても回転半径はこのQ2より小さい5mだから、FWDはやはりステアリングが切れないのと、狭いところで取り回しについては決して良いとは言えないわけである。
このクラスとしては静粛性はすこぶる高いと思う。それに視界も良い。だから、走っている時は乗り易いと感じるのだろう。コンパクトで扱い易可と思えば、狭いところでの出し入れは案外苦労したり、普通に流しているとすこぶるキビキビと走るのに、出足ではもたつくなど、あっちを立てればこっちが立たず、という印象が残った。サイズ的にも、性能的にも競合する輸入車は存在せず、かといって国産同クラスのホンダ『ヴェゼル』やトヨタ『C-HR』とでは価格的に競合せず、何となく日本のマーケットでは孤高の存在のようにも見える。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
(レスポンス 中村 孝仁)
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