【ホンダ フィットハイブリッド 試乗】リーマンショック前のホンダが戻ってきたような気がした…井元康一郎
今年6月末に大規模改良を受けたホンダのBセグメントサブコンパクト『フィット』。修正のポイントは多岐にわたっており、内外装のデザイン変更、ボディ補強とシャシーセッティング変更、ハイブリッド用エンジンの効率向上、ハイブリッド変速機「i-DCT」の仕様変更、静粛性向上等々。
その改良版フィットをテストドライブする機会があった。乗ったのはハイブリッドパワートレインを搭載する「ハイブリッド S」「ハイブリッド L」、そしてガソリン車のスポーティグレード「RS」の3機種。それぞれ1時間ずつのショートドライブだったが、そのファーストインプレッションをお届けする。まずはハイブリッド2車について。
改良版フィットの印象は「最初からこのくらい作りこんで出せばよかったのに」というもの。筆者は昨年5月、マイナーチェンジ前の「ハイブリッド Lパッケージ(改良型のハイブリッド Lに相当)」で東京~鹿児島を3700kmほどツーリングしたことがあるが、基本性能はともかく乗り心地や静粛性、ハンドリングなど、動的質感の仕上げがとにかく雑だったその改良前と本当に同じクルマかと思うくらいの進化ぶりだった。
最も強い印象が残ったのは、操縦性の劇的な改善だった。今回の試乗では加速旋回とレーンチェンジくらいしか試すことができなかったが、首都高速の大黒ふ頭パーキングエリアから本線車道に戻る半径の大きなカーブを加速しながら駆け抜けるときの前後ロールバランスの素晴らしさと動きの質感の高さは特筆モノ。レーンチェンジも四輪がしっかり路面をホールドし、しなやかで素晴らしい動きだった。
この2点だけでも前サスペンションが突っ張ってアンダーステアやふらつきが発生していた改良前とは比べ物にならないレベルにあることはハッキリ体感できる。この動きなら険しい山道でのハンドリングも相当ハイレベルに仕上がっているのではないかという期待を抱かせるに十分なものがあったので、機会があったら試してみたい。
この動きの良さをもっともいい形で味わえるのは、ややスポーティな味付けのダンロップ「SP SPORT2030」を履いたハイブリッド Sだが、省燃費タイヤのブリヂストン「ECOPIA EP150」を履くハイブリッド Lもアンダーステアの度合いが違うだけで、同じ方向性の良さを享受できる。フィット改良の開発チームスタッフに話を聞いたところ、車体の各部に大手術を施しはしたものの、サスペンションチューニングはSとLで変えておらず共通とのこと。通常、こういう良さを出す場合はグレード別にファインチューンを施すケースが多いのだが、それなしでここまで良く出来たのは、シャシー、ボディの補強がよほど的確なものだったのだろう。
操縦性に次いで印象的だったのは、乗り心地の改善だった。サスペンションを柔らかくしたとの説明があったが、単に柔らかくなったというのではなく、サスペンションが上下するストロークになかなか良いねっとり感があって、ブルつきの少ないすっきりとした乗り心地になっていた。
静粛性も大幅に向上した。SとLでは制振・吸音材の使用量やガラスの板厚などに差があり、静かなのはSだと開発陣は主張。実際にドライブしてもその通りの印象で、Sはとても静か。LはSに比べると騒がしいのだが、エンジン音の透過が改善されていたのと、ロードノイズが改良前の「ガーガー」という音から「ゴォー」という角の取れた音になったことで、体感的なノイズレベルは改良前のLパッケージに比べて大幅な進歩。一般的にはこれで不満はないだろう。ただ、新型は空力設計の変更によるものか、80km/hから90km/hの間でドアまわりから小さいながら笛吹き音が発生。Sでは気付かなかったがLではそれが小さい音ながら室内に侵入してきた。これはできれば修正したいところ。
出力22kW(29.5ps)のモーター1個を内装したハイブリッド変速機、i-DCTはミニバン『フリード』に続いてギア比が一新された改良仕様に。改良前は渋滞時の緩い加速や下り勾配のように負荷の軽いシーンで、エンジンがかかる時に頻繁にバックラッシュが発生するのをはじめ、良くない挙動がいくつもみられた。それが頭にあったので、ちょっと意地悪なパターンをいくつか試してみたのだが、少なくとも試乗中は変な動きが顔を出すことは一度もなかった。パワー感も依然として強力だった。ただ、その代償か、改良前モデルがツボにはまったときのキレキレな変速フィールは失われ、スポーティなフィールという点では後退した。
新たに装備された運転支援システム「ホンダセンシング」は今回の試乗では試さなかったが、フリードに装備されているものと基本的に同じシステム。30km/h未満では機能せず、渋滞時の前車追従機能がなかったりと中途半端な部分は多いが、フリードを駆ってのロングドライブでは、郊外路ではまあまあの実用性を示したので、ないよりはずいぶんマシに感じるはずだ。
以上が改良版をドライブして感じた要点。もちろんクルマはいろいろな道をたっぷり走ってみないと素顔を見ることはできないのだが、粗製乱造の混迷を脱して、クルマの味付けについて光るものを見せはじめていたリーマンショック前のホンダがちょっと戻ってきたような気がした。その流れが本物かどうか、今後に期待したい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
(レスポンス 井元康一郎)
その改良版フィットをテストドライブする機会があった。乗ったのはハイブリッドパワートレインを搭載する「ハイブリッド S」「ハイブリッド L」、そしてガソリン車のスポーティグレード「RS」の3機種。それぞれ1時間ずつのショートドライブだったが、そのファーストインプレッションをお届けする。まずはハイブリッド2車について。
改良版フィットの印象は「最初からこのくらい作りこんで出せばよかったのに」というもの。筆者は昨年5月、マイナーチェンジ前の「ハイブリッド Lパッケージ(改良型のハイブリッド Lに相当)」で東京~鹿児島を3700kmほどツーリングしたことがあるが、基本性能はともかく乗り心地や静粛性、ハンドリングなど、動的質感の仕上げがとにかく雑だったその改良前と本当に同じクルマかと思うくらいの進化ぶりだった。
最も強い印象が残ったのは、操縦性の劇的な改善だった。今回の試乗では加速旋回とレーンチェンジくらいしか試すことができなかったが、首都高速の大黒ふ頭パーキングエリアから本線車道に戻る半径の大きなカーブを加速しながら駆け抜けるときの前後ロールバランスの素晴らしさと動きの質感の高さは特筆モノ。レーンチェンジも四輪がしっかり路面をホールドし、しなやかで素晴らしい動きだった。
この2点だけでも前サスペンションが突っ張ってアンダーステアやふらつきが発生していた改良前とは比べ物にならないレベルにあることはハッキリ体感できる。この動きなら険しい山道でのハンドリングも相当ハイレベルに仕上がっているのではないかという期待を抱かせるに十分なものがあったので、機会があったら試してみたい。
この動きの良さをもっともいい形で味わえるのは、ややスポーティな味付けのダンロップ「SP SPORT2030」を履いたハイブリッド Sだが、省燃費タイヤのブリヂストン「ECOPIA EP150」を履くハイブリッド Lもアンダーステアの度合いが違うだけで、同じ方向性の良さを享受できる。フィット改良の開発チームスタッフに話を聞いたところ、車体の各部に大手術を施しはしたものの、サスペンションチューニングはSとLで変えておらず共通とのこと。通常、こういう良さを出す場合はグレード別にファインチューンを施すケースが多いのだが、それなしでここまで良く出来たのは、シャシー、ボディの補強がよほど的確なものだったのだろう。
操縦性に次いで印象的だったのは、乗り心地の改善だった。サスペンションを柔らかくしたとの説明があったが、単に柔らかくなったというのではなく、サスペンションが上下するストロークになかなか良いねっとり感があって、ブルつきの少ないすっきりとした乗り心地になっていた。
静粛性も大幅に向上した。SとLでは制振・吸音材の使用量やガラスの板厚などに差があり、静かなのはSだと開発陣は主張。実際にドライブしてもその通りの印象で、Sはとても静か。LはSに比べると騒がしいのだが、エンジン音の透過が改善されていたのと、ロードノイズが改良前の「ガーガー」という音から「ゴォー」という角の取れた音になったことで、体感的なノイズレベルは改良前のLパッケージに比べて大幅な進歩。一般的にはこれで不満はないだろう。ただ、新型は空力設計の変更によるものか、80km/hから90km/hの間でドアまわりから小さいながら笛吹き音が発生。Sでは気付かなかったがLではそれが小さい音ながら室内に侵入してきた。これはできれば修正したいところ。
出力22kW(29.5ps)のモーター1個を内装したハイブリッド変速機、i-DCTはミニバン『フリード』に続いてギア比が一新された改良仕様に。改良前は渋滞時の緩い加速や下り勾配のように負荷の軽いシーンで、エンジンがかかる時に頻繁にバックラッシュが発生するのをはじめ、良くない挙動がいくつもみられた。それが頭にあったので、ちょっと意地悪なパターンをいくつか試してみたのだが、少なくとも試乗中は変な動きが顔を出すことは一度もなかった。パワー感も依然として強力だった。ただ、その代償か、改良前モデルがツボにはまったときのキレキレな変速フィールは失われ、スポーティなフィールという点では後退した。
新たに装備された運転支援システム「ホンダセンシング」は今回の試乗では試さなかったが、フリードに装備されているものと基本的に同じシステム。30km/h未満では機能せず、渋滞時の前車追従機能がなかったりと中途半端な部分は多いが、フリードを駆ってのロングドライブでは、郊外路ではまあまあの実用性を示したので、ないよりはずいぶんマシに感じるはずだ。
以上が改良版をドライブして感じた要点。もちろんクルマはいろいろな道をたっぷり走ってみないと素顔を見ることはできないのだが、粗製乱造の混迷を脱して、クルマの味付けについて光るものを見せはじめていたリーマンショック前のホンダがちょっと戻ってきたような気がした。その流れが本物かどうか、今後に期待したい。
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