【個性派ミニバン比較 第4回】選び甲斐があるのは、趣味性とは一見無縁のミニバンだって同じ…岡本幸一郎
これまで3回にわたって300万円台~で買える輸入車ミニバン3台と、国産ミニバンの代表として大人気モデルの日産『セレナ』を持ち込み、パッケージングや走りの魅力について比較してきた。ここではそれぞれの特徴と魅力をおさらい。モータージャーナリストの岡本幸一郎がレポートする。
日本で正規販売されているインポートブランドの3列シートミニバンは、そう多くはない。ミニバンに限らず、とりわけ近年の欧州のメーカーは自社のブランドのカラーをより強調するようになった。今回の欧州勢の3モデルは、まさしくそうで、内外装デザインはもちろん、走りのキャラクターにもそれが表れていて、ミニバンにもそれぞれのメーカーならではの個性が反映されていることをあらためて感じた。
◆シトロエンでなければ生まれてこなかった…シトロエン グランドC4ピカソ
個性的な内外装デザインはもちろん、パノラミックで視認性にも優れるガラスウインドウや、運転席まわりの機能的なつくりなど、およそシトロエンでなければ思いつかなかったであろうユニークさが光る。
その独特のセンスをミニバンに採り入れると、このように独創性あふれるクルマになった。乗り味だって独特。それがグランドC4ピカソだ。ミニバンに求められる要素を満たしつつも、とにかくあらゆるところがいちいちユニークで興味深い。そんな独創的なミニバンを300万円台で手に入れられるというコスパの高さも魅力的であることに違いない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
◆そつのないオールラウンドさが光る…VW ゴルフトゥーラン
控えめなルックスにカッチリとしたインテリア。安心感のある走り。先進装備もぬかりなく備える。そんなすべてにおいてそつなくオールラウンドにまとまっているところが魅力のモデル。
トゥーランの場合は、むしろそれこそが個性といえる。箱型ミニバンほどの広さはいらないが、たまに3列目を使う機会があり、走りにもこだわりたい。あるいは、ダウンサイジングガソリン直噴ターボエンジンにDCTと、新しいものにも興味がある。そんな人にとってトゥーランはもってこい。あらゆる要素をまんべんなく身に着けた、極めて堅実な選択肢である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
◆BMWの一員としての期待に応えたBMW初の挑戦…BMW 2シリーズ グランツアラー
事情によりミニバンを購入しなければならないが、実はあまり気乗りしないという人にとっても、BMWのこういうクルマとなれば、また話は違ってくるのではないだろうか。
かつてはFR(後輪駆動)しかつくらないと公言していたBMWがFF(前輪駆動)を手がけ、しかもこうした3列シートの多目的車に初めてチャレンジしたわけだが、BMWがこれまで築いてきたブランドイメージへの期待には十分に応える仕上がりを見せる。BMWらしい上質感とBMWの一員としてのアイキャッチや、BMWが身上とする「駆けぬける歓び」は、巧みに表現されていた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
◆便利に使えて先進的 日本で受ける要素が満載…日産 セレナ
欧州では商用車しかない箱型スライドドアが日本では主流となっているが、日本で使うにはこれが便利。限られたスペースをいかに有効に使うかに長けていて、アレンジの自由度の高い室内空間には、いたるところに収納スペースが配され、髄所に利便性を高める機能がくまなく詰め込まれている。
国産ミニバン代表として持ち込んだセレナは、見た目や走りに欧州勢のような個性はないが、使い勝手は抜群に高い。加えてSハイブリッドやプロパイロットのように先進技術を積極的に採用した点も特筆できる。日本市場で受けている理由がうかがいしれる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
◆まとめ
シトロエンの『グランドC4ピカソ』は2代目となるが、こうして他の車種と比べれば比べるほどユニークさが際立つ。そして、車内のつくりや開放的な視界など、そのユニークに感じる部分の大半がミニバンとして歓迎すべきものであるところがよい。同乗者にとっても喜ばれるものであることはいうまでもない。
VW『ゴルフトゥーラン』は、欧州メーカーではこのクラスにおける3列シート車の先駆者であるが、持ち前の万能性をそのまま2代目となる現行型にも受け継がせつつ、あらゆる部分を大きく進化させた。これは、共通性の高いゴルフが、「Cセグメントの世界標準」と呼ばれるのにも通じる。
BMWにとって初めての試みとなる『2シリーズ グランツアラー』は、内容的にはいたってオーソドックスながら、せっかくBMWのミニバンを選んだ人にとっての期待に十分に応える仕上がりを見せる。
一方で、本稿執筆時点において日本でもっとも売れている同等クラスのミニバンとして持ち込んだセレナは、当然とはいえ欧州勢とは方向性の異なる日本独自の進化をしている面が多々あることを、あらためて痛感した。パッケージやドアなど基本的なことはいうまでもないが、ここまでやるかと思わずにいられないほどの利便性の作り込みには恐れ入る思い。
それは日本のユーザーが求めるものを盛り込んだ結果にほかならない。そんなセレナに象徴される細やかな配慮もまた国産ミニバンの個性であり、欧州勢にはない部分でもある。いろいろ違うからこそ面白く、選び甲斐があるのは、趣味性とは一見無縁のミニバンだって同じだ。
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
(レスポンス 岡本幸一郎)
日本で正規販売されているインポートブランドの3列シートミニバンは、そう多くはない。ミニバンに限らず、とりわけ近年の欧州のメーカーは自社のブランドのカラーをより強調するようになった。今回の欧州勢の3モデルは、まさしくそうで、内外装デザインはもちろん、走りのキャラクターにもそれが表れていて、ミニバンにもそれぞれのメーカーならではの個性が反映されていることをあらためて感じた。
◆シトロエンでなければ生まれてこなかった…シトロエン グランドC4ピカソ
個性的な内外装デザインはもちろん、パノラミックで視認性にも優れるガラスウインドウや、運転席まわりの機能的なつくりなど、およそシトロエンでなければ思いつかなかったであろうユニークさが光る。
その独特のセンスをミニバンに採り入れると、このように独創性あふれるクルマになった。乗り味だって独特。それがグランドC4ピカソだ。ミニバンに求められる要素を満たしつつも、とにかくあらゆるところがいちいちユニークで興味深い。そんな独創的なミニバンを300万円台で手に入れられるというコスパの高さも魅力的であることに違いない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
◆そつのないオールラウンドさが光る…VW ゴルフトゥーラン
控えめなルックスにカッチリとしたインテリア。安心感のある走り。先進装備もぬかりなく備える。そんなすべてにおいてそつなくオールラウンドにまとまっているところが魅力のモデル。
トゥーランの場合は、むしろそれこそが個性といえる。箱型ミニバンほどの広さはいらないが、たまに3列目を使う機会があり、走りにもこだわりたい。あるいは、ダウンサイジングガソリン直噴ターボエンジンにDCTと、新しいものにも興味がある。そんな人にとってトゥーランはもってこい。あらゆる要素をまんべんなく身に着けた、極めて堅実な選択肢である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
◆BMWの一員としての期待に応えたBMW初の挑戦…BMW 2シリーズ グランツアラー
事情によりミニバンを購入しなければならないが、実はあまり気乗りしないという人にとっても、BMWのこういうクルマとなれば、また話は違ってくるのではないだろうか。
かつてはFR(後輪駆動)しかつくらないと公言していたBMWがFF(前輪駆動)を手がけ、しかもこうした3列シートの多目的車に初めてチャレンジしたわけだが、BMWがこれまで築いてきたブランドイメージへの期待には十分に応える仕上がりを見せる。BMWらしい上質感とBMWの一員としてのアイキャッチや、BMWが身上とする「駆けぬける歓び」は、巧みに表現されていた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
◆便利に使えて先進的 日本で受ける要素が満載…日産 セレナ
欧州では商用車しかない箱型スライドドアが日本では主流となっているが、日本で使うにはこれが便利。限られたスペースをいかに有効に使うかに長けていて、アレンジの自由度の高い室内空間には、いたるところに収納スペースが配され、髄所に利便性を高める機能がくまなく詰め込まれている。
国産ミニバン代表として持ち込んだセレナは、見た目や走りに欧州勢のような個性はないが、使い勝手は抜群に高い。加えてSハイブリッドやプロパイロットのように先進技術を積極的に採用した点も特筆できる。日本市場で受けている理由がうかがいしれる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
◆まとめ
シトロエンの『グランドC4ピカソ』は2代目となるが、こうして他の車種と比べれば比べるほどユニークさが際立つ。そして、車内のつくりや開放的な視界など、そのユニークに感じる部分の大半がミニバンとして歓迎すべきものであるところがよい。同乗者にとっても喜ばれるものであることはいうまでもない。
VW『ゴルフトゥーラン』は、欧州メーカーではこのクラスにおける3列シート車の先駆者であるが、持ち前の万能性をそのまま2代目となる現行型にも受け継がせつつ、あらゆる部分を大きく進化させた。これは、共通性の高いゴルフが、「Cセグメントの世界標準」と呼ばれるのにも通じる。
BMWにとって初めての試みとなる『2シリーズ グランツアラー』は、内容的にはいたってオーソドックスながら、せっかくBMWのミニバンを選んだ人にとっての期待に十分に応える仕上がりを見せる。
一方で、本稿執筆時点において日本でもっとも売れている同等クラスのミニバンとして持ち込んだセレナは、当然とはいえ欧州勢とは方向性の異なる日本独自の進化をしている面が多々あることを、あらためて痛感した。パッケージやドアなど基本的なことはいうまでもないが、ここまでやるかと思わずにいられないほどの利便性の作り込みには恐れ入る思い。
それは日本のユーザーが求めるものを盛り込んだ結果にほかならない。そんなセレナに象徴される細やかな配慮もまた国産ミニバンの個性であり、欧州勢にはない部分でもある。いろいろ違うからこそ面白く、選び甲斐があるのは、趣味性とは一見無縁のミニバンだって同じだ。
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
(レスポンス 岡本幸一郎)
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