【マツダ CX-3 ガソリン 試乗】走りは一長一短、スタイルが“決め手”の人に…中村孝仁
マツダ『CX-3』と言えば、ディーゼルエンジンのみで、サイズの割には高価格というニッチ戦略で誕生したBセグメントのSUVである。しかし、そのディーゼル専用として登場したはずのCX-3に、ガソリンモデルが追加された。エンジンは2.0リットル直4のSKYACTIV-Gである。『アテンザ』や『CX-5』に搭載されているものとはチューンが異なり、148ps、192Nmと若干デチューンが施されている。
今回マツダは他メーカーに先駆けて、WLTCモードの燃費をカタログに表記している。2018年からは各社一斉にこの標記に切り替わるが、その第1号となった。余談だがWLTCは従来のJC08と異なり、総平均燃費の他に、市街地、郊外、高速の各モード燃費が表記される。僅かではあるが実燃費に近い表記となる。CX-3の場合、JC08では17.0km/リットルだった燃費は、WLTCでは16.0km/リットルとなり、市街地、郊外、高速の各燃費はそれぞれ12.2km/リットル、16.8km/リットル、18.0km/リットルとなっている。今回は600km以上を走ってその多くが高速であったが、それでも平均燃費は13.7km/リットル。まあ、少し実燃費に近づいたといえよう。
何故今ガソリンモデルを追加したのか。これは偏にCX-3ユーザーの間口を広げることに他ならない。聞くところによるとCX-3ユーザーの多くは、そのスタイルに惚れてクルマを購入しているということで、ディーゼルに対する強い拘りはない。そしてガソリン車を設定した場合、ディーゼルよりもおおよそ30万円ほど安く提供できる。さらにその価格差をランニングコストで吸収しようとした場合、走行距離の少ないユーザーにとってはディーゼルメリットが享受出来ない等の理由もあって、今回の設定になったようだ。
それにしてもマツダのモデルは日々の進化が止まらない。今回乗ったCX-3は、「2.0S プロアクティブ」というグレードのモデルだったが、新たに多くの安全デバイスが標準装備となり、セットオプションのACCも装備されていた。標準装備の中でも最も感心したのはハイビームコントロールシステム(HBC)だ。これはいわゆるオートハイビームであって、あらかじめオートに設定しておけば、通常はロービーム、環境が整えばハイービームに切り替えてくれるシステム。以前からすでにこのメカニズムはマツダ各車に取り入れられていたが、今回のものはLEDのブロックを11分割してきめ細かくコントロールするもの。従来のHBCは4分割だったから大幅に進化した。そして実際に試乗して試してみると、実に街中でもハイビーム状態を維持することもあるほどで、前車がいても見事にそこだけを照らさずにハイビーム状態を保つ。
肝心のガソリンエンジンの走りだが、ディーゼルと乗り比べてみると、やはり明らかにステアリングの応答性が良く、転舵した時の俊敏さが伝わるし、出足のスムーズさもこちらが上だった。車重は同一条件で比較した場合、ガソリン版が40kg軽く、そのほとんどはエンジンによるものだから、やはりノーズが軽い証拠だ。しかし、中速以上の領域で定常運転からアクセルを踏み込んで行った時の気持ちよさは俄然ディーゼルが上。それに登り勾配のきつい高速などではさすがにトルクの細さからエンジンがかなり唸る。一方で、始動時の車外音は圧倒的にガソリンが小さく、回転フィールも当然ながらガソリンが良いと、まさに一長一短がある。
ベースが『デミオ』ということもあり、乗り心地はBセグメントの域を出ない。もっとも重さが幸いして、デミオよりはフラット感が強いが、決して良い乗り心地とは言えない。お値段はかなり安くなって、200万円台前半から手に入る。スタイルが決め手の人にとっては買いやすくなった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
(レスポンス 中村 孝仁)
今回マツダは他メーカーに先駆けて、WLTCモードの燃費をカタログに表記している。2018年からは各社一斉にこの標記に切り替わるが、その第1号となった。余談だがWLTCは従来のJC08と異なり、総平均燃費の他に、市街地、郊外、高速の各モード燃費が表記される。僅かではあるが実燃費に近い表記となる。CX-3の場合、JC08では17.0km/リットルだった燃費は、WLTCでは16.0km/リットルとなり、市街地、郊外、高速の各燃費はそれぞれ12.2km/リットル、16.8km/リットル、18.0km/リットルとなっている。今回は600km以上を走ってその多くが高速であったが、それでも平均燃費は13.7km/リットル。まあ、少し実燃費に近づいたといえよう。
何故今ガソリンモデルを追加したのか。これは偏にCX-3ユーザーの間口を広げることに他ならない。聞くところによるとCX-3ユーザーの多くは、そのスタイルに惚れてクルマを購入しているということで、ディーゼルに対する強い拘りはない。そしてガソリン車を設定した場合、ディーゼルよりもおおよそ30万円ほど安く提供できる。さらにその価格差をランニングコストで吸収しようとした場合、走行距離の少ないユーザーにとってはディーゼルメリットが享受出来ない等の理由もあって、今回の設定になったようだ。
それにしてもマツダのモデルは日々の進化が止まらない。今回乗ったCX-3は、「2.0S プロアクティブ」というグレードのモデルだったが、新たに多くの安全デバイスが標準装備となり、セットオプションのACCも装備されていた。標準装備の中でも最も感心したのはハイビームコントロールシステム(HBC)だ。これはいわゆるオートハイビームであって、あらかじめオートに設定しておけば、通常はロービーム、環境が整えばハイービームに切り替えてくれるシステム。以前からすでにこのメカニズムはマツダ各車に取り入れられていたが、今回のものはLEDのブロックを11分割してきめ細かくコントロールするもの。従来のHBCは4分割だったから大幅に進化した。そして実際に試乗して試してみると、実に街中でもハイビーム状態を維持することもあるほどで、前車がいても見事にそこだけを照らさずにハイビーム状態を保つ。
肝心のガソリンエンジンの走りだが、ディーゼルと乗り比べてみると、やはり明らかにステアリングの応答性が良く、転舵した時の俊敏さが伝わるし、出足のスムーズさもこちらが上だった。車重は同一条件で比較した場合、ガソリン版が40kg軽く、そのほとんどはエンジンによるものだから、やはりノーズが軽い証拠だ。しかし、中速以上の領域で定常運転からアクセルを踏み込んで行った時の気持ちよさは俄然ディーゼルが上。それに登り勾配のきつい高速などではさすがにトルクの細さからエンジンがかなり唸る。一方で、始動時の車外音は圧倒的にガソリンが小さく、回転フィールも当然ながらガソリンが良いと、まさに一長一短がある。
ベースが『デミオ』ということもあり、乗り心地はBセグメントの域を出ない。もっとも重さが幸いして、デミオよりはフラット感が強いが、決して良い乗り心地とは言えない。お値段はかなり安くなって、200万円台前半から手に入る。スタイルが決め手の人にとっては買いやすくなった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
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