【スズキ スイフト ハイブリッドRS 500km試乗】速い、安い、美味いの3拍子…井元康一郎
スズキのBセグメントサブコンパクト『スイフト』のスポーティグレード「ハイブリッドRS」を500kmあまり走らせる機会があったので、インプレッションをお伝えする。
今年1月に販売が開始された現行スイフトは、スズキの新しいクルマづくりのカタチが盛り込まれたモデルだ。旧型比で120kgに及ぶという徹底した軽量設計、自然吸気、ターボ、2種類のハイブリッドと多種多様なパワートレイン、多彩な安全装備の搭載等々、競争激化がいちじるしいグローバルのコンパクトカー市場でのプレゼンスを高めようというスズキの意欲が随所にうかがえる。
試乗車のハイブリッドRSは走り重視のセッティングが施されたシャシーと1.2リットルエンジン+マイルドハイブリッドを組み合わせたもの。前車追従クルーズコントロールシステム、アクティブハイビーム、高機能後席シートベルトなどからなる「セーフティパッケージ」、およびカーナビ、フロアマット、ETC、特別塗装色などのオプションを含めた希望小売価格は199万3518円と、お値引きなしでぎりぎり200万円内に収まっていた。
試乗ルートは東京を起点とし、三島から富士山の西側をぐるりと回って富士五湖を眺めながら山梨の甲府盆地へ。帰路は高速道路や国道20号線ではなく、甲府盆地と奥多摩を結ぶ山岳路、国道411号線ルートを取り、出発地に戻るというもの。総走行距離は503.4km。道路種別の内訳は市街地3、郊外路2、高速道路2、山岳路3。路面コンディションはドライ6割、ウェットおよびヘビーウェット4割。1~2名乗車、エアコンAUTO。
◆なかなか楽しく、使いやすい
トータルの印象としては、スイフトハイブリッドRSはベーシックなスポーティハッチバックとして見ると、なかなか楽しく、使いやすいクルマに仕上がっていた。とくにハンドリングはチューニングの難しい軽量ボディでありながら懐の深いもので、ウェット路を含め信頼感は高かった。
走り以外の部分についても美点は多い。全長3840mmというコンパクトボディは取り回しが良く、ドライブ中に「あ、今の景色は綺麗だった」と思ったときなどにUターンが億劫でないなど、軽自動車的な軽快感もある。それでいて車内および荷室は少々のロングドライブでも困らないくらいの容量をしっかり稼いでいた。アクティブハイビームや前車追従クルーズコントロールなどの安全装備の作動精度も悪くなかった。
弱点は乗り心地とパワートレインのパフォーマンス。まず乗り心地は突き上げ、ゴロゴロ感が強いのは明らかな難点で、ソリッド感とフラットライドの両立という点では旧型モデルから少なからず後退した印象。マイルドハイブリッドパワートレインはスロットルの踏み具合とパワーの出方の相関性が悪く、意のままというにはほど遠かった。そのドライバビリティの悪さが影響してか、燃費も実測19.5km/リットルと、予想を下回った。
◆エコタイヤでもコーナリングを楽しめるシャシー
では、要素別に細かく見ていこう。クルマの走りを支えるボディ、シャシーは基本的にはとても良くできていた。スイフトハイブリッドRSは車両重量が910kgと、大きさはBセグメントだが車両重量はAセグメントミニカーと同等というウルトラ軽量級。その恩恵は走っていて如実に体感できるもので、エコタイヤを装着しているにもかかわらずコーナリングスピードはとても速い。
今回のドライブでは箱根峠、富士の裾野から西側をぐるっと回って山梨の勝沼まで、山梨の塩山から柳沢峠経由で青梅までと、山岳ルートを延々走ってみた。その間、ドライ、セミウェットから道路を雨水が流れるヘビーウェットまでさまざまなコンディションに遭遇したが、車重が軽いためか、オンザレールで爽快に走るくらいのペースでは操縦性にほとんど違いが出なかった。普通のクルマだったら不意のアンダーステアを避けるために大きく減速するような本降りのタイトコーナーでも驚くほど軽快にクリッと旋回した。
軽量級ならではの身軽な動きという点は同じスズキの『バレーノ』と共通だが、チューニングの方向性はかなり異なっていた。スイフトRSのほうはサスペンションの突っ張りが弱く、スムーズなロールを許すセッティングで、格段にツーリング向きという感があった。また、ロールしている最中に路面のうねりやギャップを拾ったときの追従性の良さはいかにも欧州市場を意識したモデルという雰囲気で、ドライビングをより楽しいものにした。
これで乗り心地に一定以上の滑らかさがあれば文句なしだったのだが、フラット感はクラス平均をかなり下回っていたのが惜しいところ。とくに低中速側では、舗装面が老朽化したような路線では上下方向の揺すられ感が強めに出るうえ、ひび割れや舗装の盛りなどの不整を拾ったときの当たりもガツッという感触で、質感は高くない。旧型スイフトRSが硬質ながらもそういう入力をグッと受け止める感触だったのに比べ、少なからず後退したように思われた。
ただ、この雑なフィールはクルマの作りが根本的に悪いことによるものではなさそう。老朽化が甚だしい西湘バイパスをクルーズしてみたところ、感触はゴツゴツし、揺すられ感も出るのだが、出来が悪いクルマだとガンガン突き上げを食らうような路面の段差を通過しても動きは結構落ち着いており、サスペンションはある程度ちゃんと仕事をしていることがうかがえた。前述の雑味はあくまで感覚的な領域のものなのだろう。軽量級のクルマは重量級に比べて滑らかなテイストを作るのが難しいことはわかるが、そこを頑張ってもう一歩作り込むと、顧客のクルマへの好感度が飛躍的に上がりそうなので、そうなることを期待したい。
◆マイルドハイブリッドは難しい
パワートレインに話を移す。試乗車のパワーユニットは最高出力67kW(91ps)の1.2リットル直4+CVT。それに最高出力2.3kW(3.1ps)の発電機兼モーターを組み合わせ、ハイブリッド化している。通常、この程度のモーターパワーのシステムはマイクロハイブリッドに分類されるのだが、スズキはこれを駆動アシストを広範囲にわたって行うマイルドハイブリッドと称している。
実際に運転してみると、マイルドハイブリッドというのは単にセールストークとして強弁しているのではなく、ごく小さな能力ながら、モーターをフル活用してアシストを行っているようだった。発進後、スピードがそこそこ乗ってくるとエンジンルームのほうから“キューン”とモーターが停まる音が聞こえてきて、「お、今までモーターが動いていたのか」と気付かされたりする。れっきとしたマイルドハイブリッドなのだ。
マイルドハイブリッドは普通のクルマのCO2排出量を下げるのに有用な技術として今日、世界で注目されている。スズキがその技術を市販車に積極投入し、ノウハウを深めようとしている点は評価できるのだが、エンジンとモーターを協調させて最適なエネルギー利用を行うチューニングができているかというと、まだまだという感があった。
1.2リットル+CVTのパワーユニットは旧型スイフトのモデルライフ途中で出たものだが、本来はとても素直な特性を持つものだ。が、ハイブリッド化されたスイフトハイブリッドRSのそれはスロットルの踏み込みで期待するだけのパワーが出なかったり、そうかと思うと出すぎたりと、意のままの加速を得るのが難しかった。910kgの車重に対して91psというエンジンパワーは本来、サブコンパクトクラスとしては十分すぎるほどなのだが、加速感が一定しないため、ドライバビリティは旧型のアイドリングストップ車に比べて落ちるというのが正直なところだった。
これで燃費が良ければ救われるのだが、冒頭に述べたように実測値は19.5km/リットル。絶対値としてはブーブー文句を言うほどでもないのだが、アイドリングストップ機構つきの旧型スイフトで中部山岳地帯を中心に900kmあまりドライブしたときに実測24.2km/リットルも走ったことを思うと、もう少し伸びてほしい。
モーターをエンジンに直付けするタイプのマイルドハイブリッドはエンジンとモーターの制御がぶつかりやすく、意外に難しい。ホンダが旧式の「IMA」と呼ばれるシステムで散々苦労したことからも難しさはわかるというものだが、絶対的なコストの安さは魅力なので、スイートスポットを見つけてほしいところだ。都市走行の機会が少なく、アイドリングストップはいらないというカスタマーは、このハイブリッドではなく、1リットルターボ+6速ATの「RSt」を選べば、同等の実効燃費ではるかに上の速さと気持ち良さを味わうことができるだろう。
◆実用性の高さは売りになる
次に実用性について。この部分はスイフトRSの大きな魅力になり得ると感じられた。全長3840mmと、ボディサイズはBセグメントとしては下限に近いが、スペース効率は高い。リアシートの空間は旧型よりかなり大きく、大人が座っても膝元、足先の余裕は十分。シートはフロント、リアともに十分な厚みがあり、しっかり作られていた。今回は後席を動的に試していないが、シートバックの形状はある程度ホールド性を考慮したものになっていて、角度的にも寝すぎていない。3人、4人でのミドルレンジドライブでもストレスは少なかろう。改善点を挙げるとすれば、シート表皮の素材が旧型に比べて滑りやすいものになっていて、そのぶん前席の横G耐性が下がったことくらいか。
荷室も奥行きはないが底が深く、またスクエアな空間に作られているのが美点。旅行用大型トランク1個、中型トランクなら2個を積み込み、さらに大き目の手荷物を複数入れることくらいはできそうだった。
さて、新型スイフトのロングドライブでなかなか良かったと感じたのは安全装備。衝突軽減ブレーキはカメラによる前方認識のアルゴリズムが進化しているとみえて、歩行者や自転車もよく検出した。ぶつかるようなきわどい状況ではなかったが、夜間に酔っ払った人の乗る自転車が車道にフラフラと出てきたときも、十分に対処可能な距離で警報が鳴った。結構役立ちそうな気がした次第であった。
運転支援システムもなかなかの出来だった。前車追従クルーズコントロールは思いのほか作動が滑らか。前方の遅いクルマがどいたときに加速に移るタイミングやブレーキをかけるタイミングが適切で、思い通りにならないストレスは非常に小さかった。アクティブハイビームは単純なハイ/ロー切り替えタイプだったが、こちらも判断は良く、切り替えの作動は非常に機敏であったうえ、判断ミスもごく少なかった。
◆まとめ
スイフトハイブリッドRSは、乗り心地に難点はあるものの、軽量車体と足の良さのコンボで運転が楽しめるクルマに仕上がっており、休日に海へ、山へとちょっぴり遠乗りするような機会の多いカスタマーには良い選択になりそうに思えた。
ただし、パワートレインの選択は悩ましいところ。アイドリングストップはなくてもいいという場合、ほとんど同じ値段で1リットルターボのRStが買える。動力性能はそちらのほうがはるかに優れており、また燃費も同エンジンのバレーノをドライブした経験に照らし合わせると、渋滞時以外はほとんど差がないものと考えられるので、ロングツーリング主体であればそれにするのも手だ。
ライバルはBセグメントの走り系モデル全般となろうが、スイフトRSのアドバンテージは何と言ってもコストパフォーマンスの高さだ。ハイブリッドなしのRSの場合、セーフティパッケージをつけても168万5880円。最も高いターボでも同じくセーフティパッケージつきで180万360円。ライバルは数多いが、装備をそろえてみると、スイフトの速い、安い、美味いの3拍子はおそらくクラストップであろう。その点でもスイフトRSは、いかにもスズキらしいモデルだと思った次第だった。
(レスポンス 井元康一郎)
今年1月に販売が開始された現行スイフトは、スズキの新しいクルマづくりのカタチが盛り込まれたモデルだ。旧型比で120kgに及ぶという徹底した軽量設計、自然吸気、ターボ、2種類のハイブリッドと多種多様なパワートレイン、多彩な安全装備の搭載等々、競争激化がいちじるしいグローバルのコンパクトカー市場でのプレゼンスを高めようというスズキの意欲が随所にうかがえる。
試乗車のハイブリッドRSは走り重視のセッティングが施されたシャシーと1.2リットルエンジン+マイルドハイブリッドを組み合わせたもの。前車追従クルーズコントロールシステム、アクティブハイビーム、高機能後席シートベルトなどからなる「セーフティパッケージ」、およびカーナビ、フロアマット、ETC、特別塗装色などのオプションを含めた希望小売価格は199万3518円と、お値引きなしでぎりぎり200万円内に収まっていた。
試乗ルートは東京を起点とし、三島から富士山の西側をぐるりと回って富士五湖を眺めながら山梨の甲府盆地へ。帰路は高速道路や国道20号線ではなく、甲府盆地と奥多摩を結ぶ山岳路、国道411号線ルートを取り、出発地に戻るというもの。総走行距離は503.4km。道路種別の内訳は市街地3、郊外路2、高速道路2、山岳路3。路面コンディションはドライ6割、ウェットおよびヘビーウェット4割。1~2名乗車、エアコンAUTO。
◆なかなか楽しく、使いやすい
トータルの印象としては、スイフトハイブリッドRSはベーシックなスポーティハッチバックとして見ると、なかなか楽しく、使いやすいクルマに仕上がっていた。とくにハンドリングはチューニングの難しい軽量ボディでありながら懐の深いもので、ウェット路を含め信頼感は高かった。
走り以外の部分についても美点は多い。全長3840mmというコンパクトボディは取り回しが良く、ドライブ中に「あ、今の景色は綺麗だった」と思ったときなどにUターンが億劫でないなど、軽自動車的な軽快感もある。それでいて車内および荷室は少々のロングドライブでも困らないくらいの容量をしっかり稼いでいた。アクティブハイビームや前車追従クルーズコントロールなどの安全装備の作動精度も悪くなかった。
弱点は乗り心地とパワートレインのパフォーマンス。まず乗り心地は突き上げ、ゴロゴロ感が強いのは明らかな難点で、ソリッド感とフラットライドの両立という点では旧型モデルから少なからず後退した印象。マイルドハイブリッドパワートレインはスロットルの踏み具合とパワーの出方の相関性が悪く、意のままというにはほど遠かった。そのドライバビリティの悪さが影響してか、燃費も実測19.5km/リットルと、予想を下回った。
◆エコタイヤでもコーナリングを楽しめるシャシー
では、要素別に細かく見ていこう。クルマの走りを支えるボディ、シャシーは基本的にはとても良くできていた。スイフトハイブリッドRSは車両重量が910kgと、大きさはBセグメントだが車両重量はAセグメントミニカーと同等というウルトラ軽量級。その恩恵は走っていて如実に体感できるもので、エコタイヤを装着しているにもかかわらずコーナリングスピードはとても速い。
今回のドライブでは箱根峠、富士の裾野から西側をぐるっと回って山梨の勝沼まで、山梨の塩山から柳沢峠経由で青梅までと、山岳ルートを延々走ってみた。その間、ドライ、セミウェットから道路を雨水が流れるヘビーウェットまでさまざまなコンディションに遭遇したが、車重が軽いためか、オンザレールで爽快に走るくらいのペースでは操縦性にほとんど違いが出なかった。普通のクルマだったら不意のアンダーステアを避けるために大きく減速するような本降りのタイトコーナーでも驚くほど軽快にクリッと旋回した。
軽量級ならではの身軽な動きという点は同じスズキの『バレーノ』と共通だが、チューニングの方向性はかなり異なっていた。スイフトRSのほうはサスペンションの突っ張りが弱く、スムーズなロールを許すセッティングで、格段にツーリング向きという感があった。また、ロールしている最中に路面のうねりやギャップを拾ったときの追従性の良さはいかにも欧州市場を意識したモデルという雰囲気で、ドライビングをより楽しいものにした。
これで乗り心地に一定以上の滑らかさがあれば文句なしだったのだが、フラット感はクラス平均をかなり下回っていたのが惜しいところ。とくに低中速側では、舗装面が老朽化したような路線では上下方向の揺すられ感が強めに出るうえ、ひび割れや舗装の盛りなどの不整を拾ったときの当たりもガツッという感触で、質感は高くない。旧型スイフトRSが硬質ながらもそういう入力をグッと受け止める感触だったのに比べ、少なからず後退したように思われた。
ただ、この雑なフィールはクルマの作りが根本的に悪いことによるものではなさそう。老朽化が甚だしい西湘バイパスをクルーズしてみたところ、感触はゴツゴツし、揺すられ感も出るのだが、出来が悪いクルマだとガンガン突き上げを食らうような路面の段差を通過しても動きは結構落ち着いており、サスペンションはある程度ちゃんと仕事をしていることがうかがえた。前述の雑味はあくまで感覚的な領域のものなのだろう。軽量級のクルマは重量級に比べて滑らかなテイストを作るのが難しいことはわかるが、そこを頑張ってもう一歩作り込むと、顧客のクルマへの好感度が飛躍的に上がりそうなので、そうなることを期待したい。
◆マイルドハイブリッドは難しい
パワートレインに話を移す。試乗車のパワーユニットは最高出力67kW(91ps)の1.2リットル直4+CVT。それに最高出力2.3kW(3.1ps)の発電機兼モーターを組み合わせ、ハイブリッド化している。通常、この程度のモーターパワーのシステムはマイクロハイブリッドに分類されるのだが、スズキはこれを駆動アシストを広範囲にわたって行うマイルドハイブリッドと称している。
実際に運転してみると、マイルドハイブリッドというのは単にセールストークとして強弁しているのではなく、ごく小さな能力ながら、モーターをフル活用してアシストを行っているようだった。発進後、スピードがそこそこ乗ってくるとエンジンルームのほうから“キューン”とモーターが停まる音が聞こえてきて、「お、今までモーターが動いていたのか」と気付かされたりする。れっきとしたマイルドハイブリッドなのだ。
マイルドハイブリッドは普通のクルマのCO2排出量を下げるのに有用な技術として今日、世界で注目されている。スズキがその技術を市販車に積極投入し、ノウハウを深めようとしている点は評価できるのだが、エンジンとモーターを協調させて最適なエネルギー利用を行うチューニングができているかというと、まだまだという感があった。
1.2リットル+CVTのパワーユニットは旧型スイフトのモデルライフ途中で出たものだが、本来はとても素直な特性を持つものだ。が、ハイブリッド化されたスイフトハイブリッドRSのそれはスロットルの踏み込みで期待するだけのパワーが出なかったり、そうかと思うと出すぎたりと、意のままの加速を得るのが難しかった。910kgの車重に対して91psというエンジンパワーは本来、サブコンパクトクラスとしては十分すぎるほどなのだが、加速感が一定しないため、ドライバビリティは旧型のアイドリングストップ車に比べて落ちるというのが正直なところだった。
これで燃費が良ければ救われるのだが、冒頭に述べたように実測値は19.5km/リットル。絶対値としてはブーブー文句を言うほどでもないのだが、アイドリングストップ機構つきの旧型スイフトで中部山岳地帯を中心に900kmあまりドライブしたときに実測24.2km/リットルも走ったことを思うと、もう少し伸びてほしい。
モーターをエンジンに直付けするタイプのマイルドハイブリッドはエンジンとモーターの制御がぶつかりやすく、意外に難しい。ホンダが旧式の「IMA」と呼ばれるシステムで散々苦労したことからも難しさはわかるというものだが、絶対的なコストの安さは魅力なので、スイートスポットを見つけてほしいところだ。都市走行の機会が少なく、アイドリングストップはいらないというカスタマーは、このハイブリッドではなく、1リットルターボ+6速ATの「RSt」を選べば、同等の実効燃費ではるかに上の速さと気持ち良さを味わうことができるだろう。
◆実用性の高さは売りになる
次に実用性について。この部分はスイフトRSの大きな魅力になり得ると感じられた。全長3840mmと、ボディサイズはBセグメントとしては下限に近いが、スペース効率は高い。リアシートの空間は旧型よりかなり大きく、大人が座っても膝元、足先の余裕は十分。シートはフロント、リアともに十分な厚みがあり、しっかり作られていた。今回は後席を動的に試していないが、シートバックの形状はある程度ホールド性を考慮したものになっていて、角度的にも寝すぎていない。3人、4人でのミドルレンジドライブでもストレスは少なかろう。改善点を挙げるとすれば、シート表皮の素材が旧型に比べて滑りやすいものになっていて、そのぶん前席の横G耐性が下がったことくらいか。
荷室も奥行きはないが底が深く、またスクエアな空間に作られているのが美点。旅行用大型トランク1個、中型トランクなら2個を積み込み、さらに大き目の手荷物を複数入れることくらいはできそうだった。
さて、新型スイフトのロングドライブでなかなか良かったと感じたのは安全装備。衝突軽減ブレーキはカメラによる前方認識のアルゴリズムが進化しているとみえて、歩行者や自転車もよく検出した。ぶつかるようなきわどい状況ではなかったが、夜間に酔っ払った人の乗る自転車が車道にフラフラと出てきたときも、十分に対処可能な距離で警報が鳴った。結構役立ちそうな気がした次第であった。
運転支援システムもなかなかの出来だった。前車追従クルーズコントロールは思いのほか作動が滑らか。前方の遅いクルマがどいたときに加速に移るタイミングやブレーキをかけるタイミングが適切で、思い通りにならないストレスは非常に小さかった。アクティブハイビームは単純なハイ/ロー切り替えタイプだったが、こちらも判断は良く、切り替えの作動は非常に機敏であったうえ、判断ミスもごく少なかった。
◆まとめ
スイフトハイブリッドRSは、乗り心地に難点はあるものの、軽量車体と足の良さのコンボで運転が楽しめるクルマに仕上がっており、休日に海へ、山へとちょっぴり遠乗りするような機会の多いカスタマーには良い選択になりそうに思えた。
ただし、パワートレインの選択は悩ましいところ。アイドリングストップはなくてもいいという場合、ほとんど同じ値段で1リットルターボのRStが買える。動力性能はそちらのほうがはるかに優れており、また燃費も同エンジンのバレーノをドライブした経験に照らし合わせると、渋滞時以外はほとんど差がないものと考えられるので、ロングツーリング主体であればそれにするのも手だ。
ライバルはBセグメントの走り系モデル全般となろうが、スイフトRSのアドバンテージは何と言ってもコストパフォーマンスの高さだ。ハイブリッドなしのRSの場合、セーフティパッケージをつけても168万5880円。最も高いターボでも同じくセーフティパッケージつきで180万360円。ライバルは数多いが、装備をそろえてみると、スイフトの速い、安い、美味いの3拍子はおそらくクラストップであろう。その点でもスイフトRSは、いかにもスズキらしいモデルだと思った次第だった。
(レスポンス 井元康一郎)
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