【ホンダ シビック 試乗】ワンダーシビックの時代を知る大人にも…丸山誠

ホンダ シビック ハッチバック
正直、『シビック』を国内に再投入するのは疑問だった。すでにコンパクトカーは『フィット』が定着して人気を得ているし、国内Cセグメント市場に参入しても支持を得られる可能性は少ないと考えていた。

ところが11月上旬の時点で受注台数が1万2000台と、月販目標の6倍に達しているというから驚いてしまう。受注内訳はハッチバックとセダンが半々、セダンのうち半分を「タイプR」が占めているという。

まだ購買層の詳細な分析は進んでいないというが、意外にも!? シビックを待ち望んでいたユーザー層が多かったようだ。この勢いがいつまで続くかわからないが、もしかするとワンダーシビックを知る世代あたりが、大きく成長したシビックに興味を抱いているのかもしれない。

◆威勢のいい言葉にも納得の走り

そんな意外な情報に触れてから、まずはハッチバックのステアリングを握った。試乗会が開催されたのは東名高速・御殿場ICのすぐそば。もっとも近い、いつもの七尾峠に向かった。この道は幅員が狭く、路面が荒れているため低中速域でのサスペンションの仕上がり具合がよくわかる。

残念ながら試乗車はMTではなく、CVTだったが峠に入るとスイスイとコーナーをこなしていく。全幅が1800mmもある大きなボディになったため、狭い峠で持て余すのではないかと考えていたがまったくそんなことがない。コーナーアウト側のタイヤにしっかり荷重が乗った感じで、安定したままコーナーを駆け抜けることができる。

プレゼンテーションでは「ゼロから見直す」「一切、妥協をしない」など威勢のいい言葉が並び、「操る喜び」の提供を目指して開発したと…。内心、大げさと思っていたが、峠を攻めると、それらを理解することができた。

プラットフォームの出来もいいがサスペンションのセッティングがよく、七尾峠のような荒れた道でも乗り心地がいいのが印象的。突き上げ感がなくタイヤの当たりがソフトな印象だ。それでいてアンジュレーションがきついコーナーでもタイヤが路面をとらえ続け、ボディの動きも安定している。

スポーティモデルでも姿勢を乱すことが多いコーナーをシビックは簡単に駆け抜ける。セダンとハッチバックはサスペンション設定が変えられているが、日本仕様はともにBWI製を採用。BWIはGM系のデルファイのシャシー部門を買収した中国メーカーで、磁性流体を使ったマグネティックダンパーなど最先端の技術を持つ。

シビック用はノーマルダンパーだが、運動性能と乗り心地をうまく両立させている。コーナリングでは回頭性能やライントレース性能を高めるアジャイルコントロールが効いているのだろうが、そうした裏方のブレーキ制御を一切感じさせないスポーティなフィーリングだ。

そのためかステアリングにトルクの反力が伝わることがなく、路面への接地感があまり手に伝わってこない。これでステアリングのダイレクト感が演出できれば、さらにドライブが楽しくなるはずだ。

◆気になるのはロードノイズのみ

セダンには高速道路で試乗したが、こちらも乗り心地がいい。ジョイント部分や補修されたところを通過しても大きな突き上げ感がなく、ソフトな乗り心地を実現している。

ハッチバックとセダンともに走行フィールや乗り心地はいいのだが、共通する弱点はロードノイズの大きさだ。フロアまわりから入ってくるノイズがやや大きく感じされるのが残念な点だ。

この点をエンジニアに聞くと、すでにノイズの原因はわかっているという。筆者はフロアからの透過音と思っていたが、ボディのリヤバンパー内にある車内空気の排出口からのノイズが、車内で反射してロードノイズのように聞こえるらしい。

ロードノイズは気になる点だが、ハッチバックのスポーティな走りはなかなか楽しい。ワンダーシビックのころのような軽快さではないが、その時代を知る大人向けのドライビングを楽しめるモデルとして、シビックはいい選択かもしれない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

丸山 誠|モータージャーナリスト/AJAJ会員
自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。キャンピングカーやキャンピングトレーラーなどにも詳しい。プリウスでキャンピングトレーラーをトーイングしている。

(レスポンス 丸山 誠)

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