【マツダ CX-8 試乗】高速クルージングは得意種目、追い越しも俊敏に…片岡英明
マツダは、世界中で人気の高いクロスオーバーSUVのラインアップを強化している。2016年12月には主力の『CX-5』をモデルチェンジし、商品性を飛躍的に高めた。このCX-5に続くプレミアムSUVが『CX-8』だ。
マツダは海外向けに『CX-9』を用意するが、これは飛び抜けてサイズが大きいため日本市場には適さない。そこで日本のSUVファンのために開発し、送り出したのがCX-8だ。
最大の特徴は、ミニバンのようにサードシートを装備していることである。マツダは設計の古くなった『プレマシー』と『ビアンテ』を廃した。これらのミニバンに代わるサードシート装備車としてCX-8を投入したのだ。エクステリアは、CX-5と似ている。ちょっと見にはCX-5のストレッチ(ロングホイールベース)仕様に見えるだろう。確かにホイールベースを延ばし、キャビンスペースを拡大している。が、CX-8のベースとなっているのは、北米やオーストラリアで販売しているCX-9だ。
どちらもホイールベースは2930mmで、CX-5と比べると230mm長い。全長はCX-5より355mm延びている。だが、全幅はCX-5と同じ1840mmとし、日常の使い勝手に配慮した。全高は40mm高くなっているが、ボディが長いため背が高いとは感じない。CX-5と同じように乗り降りはラクだ。小柄な人でも無理なく乗り降りできる。インテリアはCX-5と似通っているが、センターコンソールの位置が高くなり、包まれ感が増した。また、インテリアの質感も高められ、見栄えがよくなっている。
フロントシートは大ぶりで、ペダル配置も適切だ。ちょっとアップライトな姿勢で座り、見下ろし感覚だから前方の視界もいい。大柄な人でもベストポジションを取れるだろう。セカンドシートは、二人掛けのセパレートタイプ(乗車定員6名)と三人掛けのベンチシート(乗車定員7名)を設定した。セカンドシートは120mmのスライドが可能で、後方にセットすると足元はCX-5より広々として余裕がある。最上級のXD・Lパッケージはアームレスト付きコンソールボックスを装備しているから、VIP気分でドライブを楽しむことが可能だ。
サードシートのアクセスは、思ったほど大変ではなかった。セカンドシートは簡単に前に倒れるし、グリップもあるので乗り降りしやすいのだ。ただし、広さはプレマシーレベルにとどまっている。セカンドシートを後方にセットすると足元と膝元は窮屈だ。セカンドシートを前に出すと足元の空間は増えるが、フロアとシート座面の高さが不足しているので、膝を上げた姿勢で座ることになる。
この手のサードシートとしては、しっかりとした造りだし、足入れ性も悪くない。頭上の空間もそれなりに確保している。だが、フル乗車でのロングドライブは、ミニバンほど快適ではないだろう。ミニバン派をつなぎとめるのは難しいが、たまにはサードシートを、といった使い方の人には悪くない選択だと思う。ラゲッジルームも不満のない容量だ。さすがにサードシートに座ると奥行きはミニマムだが、サブトランクもあるから荷物は積みやすい。
パワーユニットは2.2リットルの直列4気筒DOHC直噴ディーゼルターボだけの設定とした。基本的にはCX-5のものと同じだが、細部に改良を加え、パフォーマンスを高めている。最高出力は15psアップの190ps(140kW)だ。最大トルクも3.1kg-m増強され、45.9kg-m(450Nm)となった。トランスミッションは6速ATを受け継いでいる。ディーゼルターボは応答レスポンスがよくなり、スムースさに磨きがかけられたと感じた。CX-5より車重は200kgほど重くなっている。だが、実用域のトルクが豊かで、パワーの立ち上がりも早いから気持ちよい加速を披露した。追い越しも俊敏にこなす。
6速ATは変速時の滑らかさに磨きがかけられ、ディーゼルターボの実力を無駄なく引き出している。CX-5はモデルチェンジで静粛性を大きく向上させた。遮音材を追加したCX-8は、さらに上をいく静粛性を身につけている。高速クルージングは得意種目だ。アイドリングストップの介入と解除も洗練度を高めた。だが、ブレーキを強く踏まないと止まらない場面もあるから、さらなる頑張りを期待したい。ディーゼル特有の不快な振動は上手に抑えられている。
ハンドリングは、CX-5より大人っぽい雰囲気だ。CX-5はスポーティ感、キビキビ感が際立っている。だが、Gベクタリングコントロールの効果を分からせたいために、ステアリングの切り始めがちょっと過敏すぎると感じることがあった。CX-8は自然な操舵フィールで、気持ちよくクルマが向きを変える。ホイールベースを延ばしたことにより、落ち着きが増した。身体の揺れが少ないスムースなコーナリングを見せ、接地フィールもよくなっている。また、CX-5では硬さを意識させられる場面もあったが、CX-8は乗り心地もさらに上質。荒れた路面でも足の動きはしなやかだ。
価格はCX-5より30万円ほど高い。だが、アウトドア派やロングドライブ派には魅力的なプレミアムSUVと映るはずである。750kg以下のボートなどを牽引できるトレーラーヒッチもオプション設定された。これも高く評価できることだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
(レスポンス 片岡英明)
マツダは海外向けに『CX-9』を用意するが、これは飛び抜けてサイズが大きいため日本市場には適さない。そこで日本のSUVファンのために開発し、送り出したのがCX-8だ。
最大の特徴は、ミニバンのようにサードシートを装備していることである。マツダは設計の古くなった『プレマシー』と『ビアンテ』を廃した。これらのミニバンに代わるサードシート装備車としてCX-8を投入したのだ。エクステリアは、CX-5と似ている。ちょっと見にはCX-5のストレッチ(ロングホイールベース)仕様に見えるだろう。確かにホイールベースを延ばし、キャビンスペースを拡大している。が、CX-8のベースとなっているのは、北米やオーストラリアで販売しているCX-9だ。
どちらもホイールベースは2930mmで、CX-5と比べると230mm長い。全長はCX-5より355mm延びている。だが、全幅はCX-5と同じ1840mmとし、日常の使い勝手に配慮した。全高は40mm高くなっているが、ボディが長いため背が高いとは感じない。CX-5と同じように乗り降りはラクだ。小柄な人でも無理なく乗り降りできる。インテリアはCX-5と似通っているが、センターコンソールの位置が高くなり、包まれ感が増した。また、インテリアの質感も高められ、見栄えがよくなっている。
フロントシートは大ぶりで、ペダル配置も適切だ。ちょっとアップライトな姿勢で座り、見下ろし感覚だから前方の視界もいい。大柄な人でもベストポジションを取れるだろう。セカンドシートは、二人掛けのセパレートタイプ(乗車定員6名)と三人掛けのベンチシート(乗車定員7名)を設定した。セカンドシートは120mmのスライドが可能で、後方にセットすると足元はCX-5より広々として余裕がある。最上級のXD・Lパッケージはアームレスト付きコンソールボックスを装備しているから、VIP気分でドライブを楽しむことが可能だ。
サードシートのアクセスは、思ったほど大変ではなかった。セカンドシートは簡単に前に倒れるし、グリップもあるので乗り降りしやすいのだ。ただし、広さはプレマシーレベルにとどまっている。セカンドシートを後方にセットすると足元と膝元は窮屈だ。セカンドシートを前に出すと足元の空間は増えるが、フロアとシート座面の高さが不足しているので、膝を上げた姿勢で座ることになる。
この手のサードシートとしては、しっかりとした造りだし、足入れ性も悪くない。頭上の空間もそれなりに確保している。だが、フル乗車でのロングドライブは、ミニバンほど快適ではないだろう。ミニバン派をつなぎとめるのは難しいが、たまにはサードシートを、といった使い方の人には悪くない選択だと思う。ラゲッジルームも不満のない容量だ。さすがにサードシートに座ると奥行きはミニマムだが、サブトランクもあるから荷物は積みやすい。
パワーユニットは2.2リットルの直列4気筒DOHC直噴ディーゼルターボだけの設定とした。基本的にはCX-5のものと同じだが、細部に改良を加え、パフォーマンスを高めている。最高出力は15psアップの190ps(140kW)だ。最大トルクも3.1kg-m増強され、45.9kg-m(450Nm)となった。トランスミッションは6速ATを受け継いでいる。ディーゼルターボは応答レスポンスがよくなり、スムースさに磨きがかけられたと感じた。CX-5より車重は200kgほど重くなっている。だが、実用域のトルクが豊かで、パワーの立ち上がりも早いから気持ちよい加速を披露した。追い越しも俊敏にこなす。
6速ATは変速時の滑らかさに磨きがかけられ、ディーゼルターボの実力を無駄なく引き出している。CX-5はモデルチェンジで静粛性を大きく向上させた。遮音材を追加したCX-8は、さらに上をいく静粛性を身につけている。高速クルージングは得意種目だ。アイドリングストップの介入と解除も洗練度を高めた。だが、ブレーキを強く踏まないと止まらない場面もあるから、さらなる頑張りを期待したい。ディーゼル特有の不快な振動は上手に抑えられている。
ハンドリングは、CX-5より大人っぽい雰囲気だ。CX-5はスポーティ感、キビキビ感が際立っている。だが、Gベクタリングコントロールの効果を分からせたいために、ステアリングの切り始めがちょっと過敏すぎると感じることがあった。CX-8は自然な操舵フィールで、気持ちよくクルマが向きを変える。ホイールベースを延ばしたことにより、落ち着きが増した。身体の揺れが少ないスムースなコーナリングを見せ、接地フィールもよくなっている。また、CX-5では硬さを意識させられる場面もあったが、CX-8は乗り心地もさらに上質。荒れた路面でも足の動きはしなやかだ。
価格はCX-5より30万円ほど高い。だが、アウトドア派やロングドライブ派には魅力的なプレミアムSUVと映るはずである。750kg以下のボートなどを牽引できるトレーラーヒッチもオプション設定された。これも高く評価できることだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
片岡英明│モータージャーナリスト
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