【スズキ スペーシア 試乗】自分では絶対に買わない!と思っていた軽だけど…中村孝仁
軽自動車、以前は自分では絶対に買うことの無いクルマ、と思っていた。しかし、子育て真っ最中の娘は軽自動車ユーザー。グッと身近になって、よく観察してみると最近の軽自動車、まぁよくできている。本当にあれやこれや感心することだらけだ。
何故、自分では絶対に買うことの無いクルマだと思っていたかというと、一つは安全が担保できないと思っていたから。ところが最近はNASVAのテストでもなかなか高得点を出したり、とりわけ予防安全に関しては、ライバルのホンダ『N-BOX』が最高評価を獲得したりしているから、あながち安全が担保できないなんて言えない。
あとは、気に入ったデザインのクルマがないからで、これは今もって眼鏡に適うクルマはいない。ただ、実用的であるという点においては、明らかにコンパクトカーを凌駕する。特に室内の広さ。これはもう感動もの。娘にうちのコンパクトカーをやるから乗ってろ、と言ったら、室内が狭くてベビーカーやチャイルドシートを付けると乗れなくなるからヤダと言われた。確かにあれやこれや積んでもスペースはたっぷりある。どうもこの原稿には「あれやこれや」が多いが、まさにそれが今のハイト系軽自動車の真骨頂なのかもしれない。
それに装備も凄い。うちのコンパクトカーはヘッドアップディスプレイが付いているが、それは少し古いのでダッシュボード上面に投影するスクリーンが立って、そこに投影するもの。勿論モノクロ。ところが『スペーシア』に付いた軽初のヘッドアップディスプレイは、フロントウィンドウへの直接投影型。しかもカラーである。参った!
他にも軽初の技術は後退時ブレーキサポートや、モニターカメラに3Dビューが搭載されたことなど、まあ随分と贅沢な装備が満載されたものだ。有難そうだったのは、室内の天井に付けられたスリムサーキュレーター。サーキュレーターの名の通り、空気を循環させる仕組みだがこいつをコンパクトに天井に装備している。冷房時、暖房時共に使える。ファンが付いているからそれなりに音が出るが、走っていればそれほど気になるものではないと思う。
最近ようやく日本車でも普通車に装備が多くなったハイビームアシストだって付いている。単純に上下を切り替えるだけだが、付いてること自体が凄い。アナログな機能ながら良いと思ったのは、リアウィンドー上に付いた後方視界支援ミラーの存在。車両後方直近がこれで見える。ウィンドー下で子供が遊んでいても確実に発見できる。
デザインに関してはハイト系だと変えようもなく、さらにライバルとの差別化も難しいから、どれを見ても似たようなもの…となってしまい、興味がわかない。そんな中、スズキがスペーシアでトライしたのがスーツケースデザイン。それが内外装にモチーフとしてちりばめられている。外観はボディサイドのリブだけだからそれほど目立つ存在ではないが、インテリアでは、ダッシュアッパーボックスに、あっ、リモワね…と思わせるスーツケースデザインが発見できる。
この小さい体で今回もホイールベースを35mmも拡大させた。そしてヒップポイントを30mm高め、視認性の良さを向上させた。全長に縛りがあるから、実質的な室内の有効体積は多分変わらないし、ホイールベースが長くなったところで、レッグスペースが拡大したりはしていない。ただ、全高も50mm高くなったから上方向には伸びていて、フロントウィンドーの傾斜角もだいぶ起きたので、ウエストラインから上の体積は大きくなっている。
とまあ、最近の軽自動車はどれだけ室内で快適に過ごせるかに主眼が置かれていて、走ることはそれなりに…といった印象が強く、ユーザーも尖った走りなどこれっぽっちも求めていないから、フツーに走ればそれでいい。ターボエンジンのカスタム同様、スペーシアも直進性は素晴らしい。ただ、マイルドハイブリッドの助けを借りても、パワーモードが付いても、加速感は物足らない。でも、ISGの存在は発進と停止が非常に滑らかで、以前気になった停車直前にエンジンがかかってしまう傾向も今回は皆無だったから、改良されているのではないかと思う。
ではこれで購入候補になったかというと…少なくとも娘には薦めるかもしれない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
何故、自分では絶対に買うことの無いクルマだと思っていたかというと、一つは安全が担保できないと思っていたから。ところが最近はNASVAのテストでもなかなか高得点を出したり、とりわけ予防安全に関しては、ライバルのホンダ『N-BOX』が最高評価を獲得したりしているから、あながち安全が担保できないなんて言えない。
あとは、気に入ったデザインのクルマがないからで、これは今もって眼鏡に適うクルマはいない。ただ、実用的であるという点においては、明らかにコンパクトカーを凌駕する。特に室内の広さ。これはもう感動もの。娘にうちのコンパクトカーをやるから乗ってろ、と言ったら、室内が狭くてベビーカーやチャイルドシートを付けると乗れなくなるからヤダと言われた。確かにあれやこれや積んでもスペースはたっぷりある。どうもこの原稿には「あれやこれや」が多いが、まさにそれが今のハイト系軽自動車の真骨頂なのかもしれない。
それに装備も凄い。うちのコンパクトカーはヘッドアップディスプレイが付いているが、それは少し古いのでダッシュボード上面に投影するスクリーンが立って、そこに投影するもの。勿論モノクロ。ところが『スペーシア』に付いた軽初のヘッドアップディスプレイは、フロントウィンドウへの直接投影型。しかもカラーである。参った!
他にも軽初の技術は後退時ブレーキサポートや、モニターカメラに3Dビューが搭載されたことなど、まあ随分と贅沢な装備が満載されたものだ。有難そうだったのは、室内の天井に付けられたスリムサーキュレーター。サーキュレーターの名の通り、空気を循環させる仕組みだがこいつをコンパクトに天井に装備している。冷房時、暖房時共に使える。ファンが付いているからそれなりに音が出るが、走っていればそれほど気になるものではないと思う。
最近ようやく日本車でも普通車に装備が多くなったハイビームアシストだって付いている。単純に上下を切り替えるだけだが、付いてること自体が凄い。アナログな機能ながら良いと思ったのは、リアウィンドー上に付いた後方視界支援ミラーの存在。車両後方直近がこれで見える。ウィンドー下で子供が遊んでいても確実に発見できる。
デザインに関してはハイト系だと変えようもなく、さらにライバルとの差別化も難しいから、どれを見ても似たようなもの…となってしまい、興味がわかない。そんな中、スズキがスペーシアでトライしたのがスーツケースデザイン。それが内外装にモチーフとしてちりばめられている。外観はボディサイドのリブだけだからそれほど目立つ存在ではないが、インテリアでは、ダッシュアッパーボックスに、あっ、リモワね…と思わせるスーツケースデザインが発見できる。
この小さい体で今回もホイールベースを35mmも拡大させた。そしてヒップポイントを30mm高め、視認性の良さを向上させた。全長に縛りがあるから、実質的な室内の有効体積は多分変わらないし、ホイールベースが長くなったところで、レッグスペースが拡大したりはしていない。ただ、全高も50mm高くなったから上方向には伸びていて、フロントウィンドーの傾斜角もだいぶ起きたので、ウエストラインから上の体積は大きくなっている。
とまあ、最近の軽自動車はどれだけ室内で快適に過ごせるかに主眼が置かれていて、走ることはそれなりに…といった印象が強く、ユーザーも尖った走りなどこれっぽっちも求めていないから、フツーに走ればそれでいい。ターボエンジンのカスタム同様、スペーシアも直進性は素晴らしい。ただ、マイルドハイブリッドの助けを借りても、パワーモードが付いても、加速感は物足らない。でも、ISGの存在は発進と停止が非常に滑らかで、以前気になった停車直前にエンジンがかかってしまう傾向も今回は皆無だったから、改良されているのではないかと思う。
ではこれで購入候補になったかというと…少なくとも娘には薦めるかもしれない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
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