【三菱 アウトランダーPHEV プロトタイプ 試乗】4WDのミツビシを標榜するだけのことはある…齋藤聡
今もっともリーズナブルな…つまり、使い勝手のいいEVはプラグインハイブリッドだと思う。EV走行を積極的に選べ、電欠の心配なく、バッテリーが少なくなればエンジン駆動も可能。ある程度大きな駆動用バッテリーを搭載し、エンジンによって充電ができ、必要に応じて家庭用の電源にもなりえたらなおいい。
『アウトランダーPHEV』はそんな性能を備えたプラグインハイブリッドだ。しかもバッテリーを前輪用と後輪用で2つ搭載し、3つの走行モードを使い分けることができる。1つはEVモード。バッテリーを使って前後のモーターを駆動する。2つめのシリーズハイブリッドモードでは、エンジンによる発電を行いながら前後のモーターで駆動。そして3つめのパラレルハイブリッドモードは、エンジンで駆動し、モーターアシストを行う。4WDだが、前輪と後輪の駆動は機械的につながっておらず、それぞれに独立して駆動する。前輪をエンジン駆動、後輪をモーター駆動にした4WDは珍しいものではないが、三菱ではこのプラグインハイブリッド4WDをSUVとして成立させてしまっているところが興味深いところ。つまり、プラグインハイブリッドの様々な機能に加え、荒れた道でも走れてしまうという走破性の高さも備えているわけだ。
そんなアウトランダーPHEVがマイナーチェンジして新たに登場する。今回北海道で行われた雪上試乗会で、一足早く新型アウトランダーPHEVのプロトタイプに試乗することができた。
変更点だが、外観はフロントマスクに手を加えた程度、大きくは変わらない。しかし、走りは納得の進化を遂げていた。興味深いのはPHEVシステムのアップグレード。「PHEVシステム・ジェネレーション2」と名付けられたこのシステムは、エンジンを従来の2.0リットルから2.4リットルのアトキンソンサイクルに変更。エンジンの高効率エリアを低回転域にシフト。静かに効率よく発電できるようになった。
駆動用バッテリーの容量を15%アップ。出力を10%アップしている。バッテリーの性能アップに合わせて駆動用モーターの最大出力を前輪用(呼称:ジェネレーター)10%、リヤモーター10kw高めている。これによってEVドライブ、モータードライブの走行領域を拡大し、EV最高速度も135km/hに引き上げている。またモーター駆動の制御にも変更を加え、特にアクセル開度30~60%領域で、車速に応じたエンジン回転となるよう、モーターの割合を多くし、モータードライブの気持ちよさを高めている。
このほか、ボディ周りにも変更が加えられた。ボディ周りでは構造用接着剤を追加採用することで、ボディ剛性を高めている。また、ストラット&ショックアブドーバーのサイズアップをおこなって、操縦性及び乗り心地を向上。ステアリングギヤ比もクイック化した。
試乗してまず感じたのは乗り心地の良さだ。圧雪の細かな凹凸の多い路面をまるでフラットな路面のように走ってくれるのだ。突き上げのショックもマイルドで、鋭いショックや、半拍遅れて体を押し上げるような動きが上手に抑えられており、フリクションが少なく、かつダンピングの効いた足回りがしムーズに路面の凹凸を受け止めている、そんな印象を受けた。乗り心地のいい足回りは、ヒタッと路面のタイヤを押し付けるようなしなやかさがあって、雪道でのハンドルの効きもいい。つっぱらずしなやかに路面をとらえてくれるようになっている。
また、アクセルを踏み込んだ時の加速感が強くなっている。アクセルを半ばまで踏んだ時の加速感はモーターの駆動トルクの強さを感じるもので、滑らかに力強い加速感がある。アクセルを全開にするとエンジンのパワー感も実感できる。2リットルから2.4リットルになったこともあってか、パワー感が増している印象がある。印象がある…というのは、モーターの駆動トルクも強くなっており、全体に加速感が強くなっているからで、エンジンの出力アップと同じくらいモーターのトルク感も強くなっている。
コーナー立ち上がりでアクセルをそっと踏み込むとモーターの割合が多い(と感じる)トラクション感がある。ASCをオンにしていると、モーターの制御の制御レスポンスの良さがそのまま滑らかな加速感につながっている。モーターの仕事量を増やすことで、圧雪路のような滑りやすい場面では、電子制御のレスポンスがよくなり、より滑らかな走り味が得られるようになっている。もちろん4WD制御には、S-AWCが採用されているので、この制御とモーターとのマッチングの良さというのもあるのだろう。
もうひとつ、PHEVであえて書き加えておきたいのはLOCKモードの制御の巧さ。前後の駆動はギヤなどで機械的につながっているので、LOCKモードは「~のような制御」ということになる。じつはこれがかなり難しい。人間の感覚は不思議なもので、駆動トルクを前後で同調させても、安定感(不安感)とか落ち着き感といったあいまいな感覚で、それとわかってしまう。リヤタイヤをモーターで駆動する多くの4WDが通常の走行では違和感がなくても、限界近くまで追い込んでいくと前後の駆動力バラバラに出て、違和感出まくりになるのはそんな人間の感覚をだませないからなのだ。ところが、アウトランダーPHEVは、そのあたりの制御がとても巧い。このあたりも4WDのミツビシを標榜するだけのことはある。
■5つ星評価
パッケージング★★★★
インテリア/居住性★★★★
パワーソース★★★★
フットワーク★★★★
オススメ度★★★★★
斎藤聡|モータージャーナリスト
特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。
(レスポンス 斎藤聡)
『アウトランダーPHEV』はそんな性能を備えたプラグインハイブリッドだ。しかもバッテリーを前輪用と後輪用で2つ搭載し、3つの走行モードを使い分けることができる。1つはEVモード。バッテリーを使って前後のモーターを駆動する。2つめのシリーズハイブリッドモードでは、エンジンによる発電を行いながら前後のモーターで駆動。そして3つめのパラレルハイブリッドモードは、エンジンで駆動し、モーターアシストを行う。4WDだが、前輪と後輪の駆動は機械的につながっておらず、それぞれに独立して駆動する。前輪をエンジン駆動、後輪をモーター駆動にした4WDは珍しいものではないが、三菱ではこのプラグインハイブリッド4WDをSUVとして成立させてしまっているところが興味深いところ。つまり、プラグインハイブリッドの様々な機能に加え、荒れた道でも走れてしまうという走破性の高さも備えているわけだ。
そんなアウトランダーPHEVがマイナーチェンジして新たに登場する。今回北海道で行われた雪上試乗会で、一足早く新型アウトランダーPHEVのプロトタイプに試乗することができた。
変更点だが、外観はフロントマスクに手を加えた程度、大きくは変わらない。しかし、走りは納得の進化を遂げていた。興味深いのはPHEVシステムのアップグレード。「PHEVシステム・ジェネレーション2」と名付けられたこのシステムは、エンジンを従来の2.0リットルから2.4リットルのアトキンソンサイクルに変更。エンジンの高効率エリアを低回転域にシフト。静かに効率よく発電できるようになった。
駆動用バッテリーの容量を15%アップ。出力を10%アップしている。バッテリーの性能アップに合わせて駆動用モーターの最大出力を前輪用(呼称:ジェネレーター)10%、リヤモーター10kw高めている。これによってEVドライブ、モータードライブの走行領域を拡大し、EV最高速度も135km/hに引き上げている。またモーター駆動の制御にも変更を加え、特にアクセル開度30~60%領域で、車速に応じたエンジン回転となるよう、モーターの割合を多くし、モータードライブの気持ちよさを高めている。
このほか、ボディ周りにも変更が加えられた。ボディ周りでは構造用接着剤を追加採用することで、ボディ剛性を高めている。また、ストラット&ショックアブドーバーのサイズアップをおこなって、操縦性及び乗り心地を向上。ステアリングギヤ比もクイック化した。
試乗してまず感じたのは乗り心地の良さだ。圧雪の細かな凹凸の多い路面をまるでフラットな路面のように走ってくれるのだ。突き上げのショックもマイルドで、鋭いショックや、半拍遅れて体を押し上げるような動きが上手に抑えられており、フリクションが少なく、かつダンピングの効いた足回りがしムーズに路面の凹凸を受け止めている、そんな印象を受けた。乗り心地のいい足回りは、ヒタッと路面のタイヤを押し付けるようなしなやかさがあって、雪道でのハンドルの効きもいい。つっぱらずしなやかに路面をとらえてくれるようになっている。
また、アクセルを踏み込んだ時の加速感が強くなっている。アクセルを半ばまで踏んだ時の加速感はモーターの駆動トルクの強さを感じるもので、滑らかに力強い加速感がある。アクセルを全開にするとエンジンのパワー感も実感できる。2リットルから2.4リットルになったこともあってか、パワー感が増している印象がある。印象がある…というのは、モーターの駆動トルクも強くなっており、全体に加速感が強くなっているからで、エンジンの出力アップと同じくらいモーターのトルク感も強くなっている。
コーナー立ち上がりでアクセルをそっと踏み込むとモーターの割合が多い(と感じる)トラクション感がある。ASCをオンにしていると、モーターの制御の制御レスポンスの良さがそのまま滑らかな加速感につながっている。モーターの仕事量を増やすことで、圧雪路のような滑りやすい場面では、電子制御のレスポンスがよくなり、より滑らかな走り味が得られるようになっている。もちろん4WD制御には、S-AWCが採用されているので、この制御とモーターとのマッチングの良さというのもあるのだろう。
もうひとつ、PHEVであえて書き加えておきたいのはLOCKモードの制御の巧さ。前後の駆動はギヤなどで機械的につながっているので、LOCKモードは「~のような制御」ということになる。じつはこれがかなり難しい。人間の感覚は不思議なもので、駆動トルクを前後で同調させても、安定感(不安感)とか落ち着き感といったあいまいな感覚で、それとわかってしまう。リヤタイヤをモーターで駆動する多くの4WDが通常の走行では違和感がなくても、限界近くまで追い込んでいくと前後の駆動力バラバラに出て、違和感出まくりになるのはそんな人間の感覚をだませないからなのだ。ところが、アウトランダーPHEVは、そのあたりの制御がとても巧い。このあたりも4WDのミツビシを標榜するだけのことはある。
■5つ星評価
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パワーソース★★★★
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斎藤聡|モータージャーナリスト
特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。
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