【VW パサート TDI 試乗】「優等生」だが、2年の遅れは大きかった…中村孝仁
VWのディーゼルゲートが発覚したのは、今から2年と少し前。ちょうど前々回の東京モーターショーの時期であった。当時すでにVWでは、『パサート』のディーゼル導入を決めていた。それがこの問題でご破算になった。2年たってようやく、VWディーゼルが日本市場で日の目を見た。
では、当時VWが導入を決めていたモデルと、2年たった今の『パサートTDI』は何か違っているのか?答えは否である。つまり、当時導入を決めていたパサートのディーゼルは、EA288と呼ばれる新世代ターボディーゼルエンジンを搭載したもので、問題を起こしたエンジンとは別物であった。
このEA288エンジンがデビューしたのは2014年。即ち問題が発覚する1年前である。ここで何を言いたいかというと、VWディーゼルゲートで問題になったエンジンと、2年前にVWジャパンが導入を決めていたパサートのエンジンは別物であるということ。そして2年たった今デビューしたパサートのエンジンは、2年前のものと同じだということである。要するに2年遅れでやってきたことになる。
この間に、日本市場のディーゼルに何が起きたか。BMWは全く新しいモジュラー型のディーゼルエンジンを投入してきた。そしてメルセデスは、従来の2.2リットルに代わり、新しい2リットルのディーゼルを導入してきた(まだ『Eクラス』だけの設定だが)。というわけで他メーカーは既に代替わりを果たしている間、VWはそれに手をこまねいて、ただ黙って見ているほかはなかったというわけだ。この事実は決して小さくない。
新しいパサートTDIに試乗して第一に感じたことは、「うん、普通だな」ということだった。プレゼンテーションの大半は如何にこのエンジンがクリーンであるか、という点に費やされていたが、正直それは出来ていて当たり前のこと。だから、いくらその点を丁寧に説明されても、ユーザーはともかく、最先端のディーゼル技術は日ごろ色々な自動車メーカーからレクチャを受ける我々には大きくは響かなかった(と思う)。少なくとも僕には、である。
その上で、「パサートTDIハイライン」に乗った。試乗したのはヴァリアントの方で、テクノロジーパッケージという総額19万4400円のオプションが装着されたものである。オプションの内容は、デジタルメータークラスター、ダイナミックライトアシスト、アラウンドビューカメラ、駐車支援システム、電子制御ディファレンシャルロック。ハイラインにのみ設定されるオプションだ。
エンジンをかけると欧州のディーゼルエンジンに共通の、車外音のうるささが気になる。半面室内は中々静かで、その落差は初期BMWのディーゼルに似ていた。しかし、今のBMWディーゼルは、それがだいぶ縮小されているから、この点ではVWは少々遅れ気味である。
加速のスムーズさやパワーの盛り上がり感はほぼ予想通り。そもそも、机上の性能が190ps、400Nmと、ほぼどの2リットルエンジンも大差ない性能だから、そう感じて当然である。全体的な静粛性という点では現状、僕の印象では、ジャガーのインジニウムユニットが最も静粛性が高いように感じているが、VWの場合はまだそのレベルにはない。もっとも、インシュレーターを奢るなどすれば対応は可能だから、これはすぐに追いつくと思う。
トランスミッションは6速の湿式DSGを搭載。走っていて何の不都合も感じなかったが、ライバルは一様に8速。メルセデスは9速だ。単純に数の問題だけかというと、そうでもなく、案外燃費にも効いて来る。そろそろ新しいトランスミッションの設定も必要ではないかと感じた。
というわけで、新しいパサートTDI。滑らかで、力強い走り、プラス使い勝手の良いボディを持つ優等生であることは確認できた。願わくはこれが2年前に日本市場に登場していたら、最先端のディーゼルでいられたように思う。やはり2年遅れたことが、かなりダメージとしては大きい。因みにディーゼルのお値段、ガソリンのハイラインと単純比較して35万円高である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
では、当時VWが導入を決めていたモデルと、2年たった今の『パサートTDI』は何か違っているのか?答えは否である。つまり、当時導入を決めていたパサートのディーゼルは、EA288と呼ばれる新世代ターボディーゼルエンジンを搭載したもので、問題を起こしたエンジンとは別物であった。
このEA288エンジンがデビューしたのは2014年。即ち問題が発覚する1年前である。ここで何を言いたいかというと、VWディーゼルゲートで問題になったエンジンと、2年前にVWジャパンが導入を決めていたパサートのエンジンは別物であるということ。そして2年たった今デビューしたパサートのエンジンは、2年前のものと同じだということである。要するに2年遅れでやってきたことになる。
この間に、日本市場のディーゼルに何が起きたか。BMWは全く新しいモジュラー型のディーゼルエンジンを投入してきた。そしてメルセデスは、従来の2.2リットルに代わり、新しい2リットルのディーゼルを導入してきた(まだ『Eクラス』だけの設定だが)。というわけで他メーカーは既に代替わりを果たしている間、VWはそれに手をこまねいて、ただ黙って見ているほかはなかったというわけだ。この事実は決して小さくない。
新しいパサートTDIに試乗して第一に感じたことは、「うん、普通だな」ということだった。プレゼンテーションの大半は如何にこのエンジンがクリーンであるか、という点に費やされていたが、正直それは出来ていて当たり前のこと。だから、いくらその点を丁寧に説明されても、ユーザーはともかく、最先端のディーゼル技術は日ごろ色々な自動車メーカーからレクチャを受ける我々には大きくは響かなかった(と思う)。少なくとも僕には、である。
その上で、「パサートTDIハイライン」に乗った。試乗したのはヴァリアントの方で、テクノロジーパッケージという総額19万4400円のオプションが装着されたものである。オプションの内容は、デジタルメータークラスター、ダイナミックライトアシスト、アラウンドビューカメラ、駐車支援システム、電子制御ディファレンシャルロック。ハイラインにのみ設定されるオプションだ。
エンジンをかけると欧州のディーゼルエンジンに共通の、車外音のうるささが気になる。半面室内は中々静かで、その落差は初期BMWのディーゼルに似ていた。しかし、今のBMWディーゼルは、それがだいぶ縮小されているから、この点ではVWは少々遅れ気味である。
加速のスムーズさやパワーの盛り上がり感はほぼ予想通り。そもそも、机上の性能が190ps、400Nmと、ほぼどの2リットルエンジンも大差ない性能だから、そう感じて当然である。全体的な静粛性という点では現状、僕の印象では、ジャガーのインジニウムユニットが最も静粛性が高いように感じているが、VWの場合はまだそのレベルにはない。もっとも、インシュレーターを奢るなどすれば対応は可能だから、これはすぐに追いつくと思う。
トランスミッションは6速の湿式DSGを搭載。走っていて何の不都合も感じなかったが、ライバルは一様に8速。メルセデスは9速だ。単純に数の問題だけかというと、そうでもなく、案外燃費にも効いて来る。そろそろ新しいトランスミッションの設定も必要ではないかと感じた。
というわけで、新しいパサートTDI。滑らかで、力強い走り、プラス使い勝手の良いボディを持つ優等生であることは確認できた。願わくはこれが2年前に日本市場に登場していたら、最先端のディーゼルでいられたように思う。やはり2年遅れたことが、かなりダメージとしては大きい。因みにディーゼルのお値段、ガソリンのハイラインと単純比較して35万円高である。
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(レスポンス 中村 孝仁)
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