【ボルボ XC60 試乗】ダイナミックモードで生まれ変わる走り…内田俊一
日本カーオブザイヤーを受賞したボルボ『XC60』を800kmほどテストに連れ出してみた。意外にもダイナミックモードを選択すると、ワインディングをスポーティに走る一面が見えてきた。
テスト車は2リットルガソリンターボエンジンを搭載する「T5」。最高出力は254ps/5500rpm、最大トルクは350Nm/1500~4800rpmを発揮する。トランスミッションは8速ATでAWDである。
◆スカンジナビアンデザインにブラックは似合わない
同じボルボのSUV、『XC90』の伸びやかで美しいデザインとは違い、XC60はとても塊感がありながら、繊細さも感じるきれいなエクステリアだ。インテリアはブラウンをベースにした明るいカラーに包まれている。
現在ボルボ・カー・ジャパンが導入するモデルではR-デザイン以外は基本ブラックのみの内装は導入しない方針で、このXC60も例外ではない。それはとても良い選択で、せっかくのインテリアデザインがブラックではかなりその良さが見えなくなってしまうからだ。
また、ドリフトウッドと呼ばれる流木をイメージしたインパネの両端までつながる長い木目パネルなど、自然をモチーフにしたスカンジナビアンデザインを堪能するのには、やはりブラックは避けたいところだ。
◆4気筒でも軽々と走る
早速走り出してみよう。センターコンソールにあるダイヤル状のスタータースイッチをひねり、エンジンをかける。すると、非常に軽いレスポンスとともに4気筒エンジンが目覚めた。ボルボは4気筒より大きいエンジンは作らないと公言しており、当然このXC60も4気筒である。
本来車格からいえば6気筒であってもおかしくはないのだが、そこは企業として成り立たせるための戦略なのでとやかくはいうまい。実はちょっと軽々しいかなという印象をこのときは持ったのだが、その後時間の経過とともに、これはこれで面白いと思うようになったことを告白しておく。
走り始めての印象もクルマの軽さが感じられる。さらにアクセルペダルが軽いということもあり、簡単に流れに乗って走ることが出来る。ただし、ステアリングは少し軽すぎる印象で、もう少し重い方が安心感を得られるだろう。乗り心地はしなやかで快適だ。良く出来たシートもあり、長時間走らせていても不当に疲れることはなかった。
◆ダイナミックモードで生まれ変わる走り
高速に乗り入れると、このクルマの二面性が現れた。まずは街中と同じコンフォートモードで走らせると、やはりステアリングの軽さによる不安感とともに、少し足回りがしなやかすぎて、段差などの突き上げを感じてしまう。そこで、走行モードをダイナミックに切り替えてみると、驚くことにまるでスポーティカーのごとく軽快でスポーティなクルマに生まれ変わったのだ。
まず、ステアリングの手ごたえが増し、足回りが硬くなる。同時にアクセルレスポンスがシャープになり、シフトポイントも若干上の回転になるのだ。そうするとコンフォートモードとは一変、きびきびとした走りに変貌した。
もし少しでもワインディングロードを走らせる機会があるのなら、間違いなくダイナミックモードを選択することをお勧めする。車高を気にすることなく、つまり、ロールをほとんど感じることなくコーナーをひらひらと舞うことが出来、XC60の面白さを引き立ててくれるだろう。願わくば、ぜひパドルシフトは設定していただきたい。
◆まだまだ熟成に期待の余地がある
かなり好印象のXC60だが、ひとつだけまだ熟成が足りないと思われるものがあった。それはナビ関係の操作だ。センターパネルに9インチのタッチスクリーンを備え、見た目は美しいのだが、実は操作性がいまひとつなのだ。特にブラインドタッチはまず不可能で、本当に目的のものをタッチし、反応したのかがわからない。例えばGM系のように指に振動が伝わるなど、クルマ側からの反応が欲しいところだ。
また、ナビを設定する際に住所などを入力しようと文字を追うときに、タッチする前にボタンが反応してしまいミスタッチが頻発してしまった。この辺りもぜひ改良を望みたい。
タッチスクリーンを採用する理由として、パネル類のスイッチを減らし、かつ、バージョンアップなどで新機能が出た場合、そのままスクリーンに反映出来ることがある。これはユーザーにとって大きなメリットだ。テスターもこれを否定するつもりは全くないが、それと使い勝手とはまた別の次元の話なのである。
最後に燃費をご報告しておくと、800kmほど走って10.3km/リットルであった。高速で12km/リットル程度、一般道でも9km/リットルほどで、燃費を気にするならディーゼルエンジンの「D4」を選択するのが良いであろう。
SUVでありがらも走行モードによっては積極的に走ることが出来るXC60。その一方で、まだ熟成の足りない部分も見られた。つまりクルマそのものの完成度は高いので、今後、装備の煮詰めが期待出来るということだ。
と、ここまで書き上げたところでニュースが飛び込んできた。欧州のカーオブザイヤー2018にボルボ『XC40』が選ばれたのだ。そう遠くない将来、日本にもこのクルマは導入される予定なので、XC60の熟成を含め、当分ボルボから目が離せない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
内田俊一(うちだしゅんいち)|日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラと同じくルノー10。
(レスポンス 内田俊一)
テスト車は2リットルガソリンターボエンジンを搭載する「T5」。最高出力は254ps/5500rpm、最大トルクは350Nm/1500~4800rpmを発揮する。トランスミッションは8速ATでAWDである。
◆スカンジナビアンデザインにブラックは似合わない
同じボルボのSUV、『XC90』の伸びやかで美しいデザインとは違い、XC60はとても塊感がありながら、繊細さも感じるきれいなエクステリアだ。インテリアはブラウンをベースにした明るいカラーに包まれている。
現在ボルボ・カー・ジャパンが導入するモデルではR-デザイン以外は基本ブラックのみの内装は導入しない方針で、このXC60も例外ではない。それはとても良い選択で、せっかくのインテリアデザインがブラックではかなりその良さが見えなくなってしまうからだ。
また、ドリフトウッドと呼ばれる流木をイメージしたインパネの両端までつながる長い木目パネルなど、自然をモチーフにしたスカンジナビアンデザインを堪能するのには、やはりブラックは避けたいところだ。
◆4気筒でも軽々と走る
早速走り出してみよう。センターコンソールにあるダイヤル状のスタータースイッチをひねり、エンジンをかける。すると、非常に軽いレスポンスとともに4気筒エンジンが目覚めた。ボルボは4気筒より大きいエンジンは作らないと公言しており、当然このXC60も4気筒である。
本来車格からいえば6気筒であってもおかしくはないのだが、そこは企業として成り立たせるための戦略なのでとやかくはいうまい。実はちょっと軽々しいかなという印象をこのときは持ったのだが、その後時間の経過とともに、これはこれで面白いと思うようになったことを告白しておく。
走り始めての印象もクルマの軽さが感じられる。さらにアクセルペダルが軽いということもあり、簡単に流れに乗って走ることが出来る。ただし、ステアリングは少し軽すぎる印象で、もう少し重い方が安心感を得られるだろう。乗り心地はしなやかで快適だ。良く出来たシートもあり、長時間走らせていても不当に疲れることはなかった。
◆ダイナミックモードで生まれ変わる走り
高速に乗り入れると、このクルマの二面性が現れた。まずは街中と同じコンフォートモードで走らせると、やはりステアリングの軽さによる不安感とともに、少し足回りがしなやかすぎて、段差などの突き上げを感じてしまう。そこで、走行モードをダイナミックに切り替えてみると、驚くことにまるでスポーティカーのごとく軽快でスポーティなクルマに生まれ変わったのだ。
まず、ステアリングの手ごたえが増し、足回りが硬くなる。同時にアクセルレスポンスがシャープになり、シフトポイントも若干上の回転になるのだ。そうするとコンフォートモードとは一変、きびきびとした走りに変貌した。
もし少しでもワインディングロードを走らせる機会があるのなら、間違いなくダイナミックモードを選択することをお勧めする。車高を気にすることなく、つまり、ロールをほとんど感じることなくコーナーをひらひらと舞うことが出来、XC60の面白さを引き立ててくれるだろう。願わくば、ぜひパドルシフトは設定していただきたい。
◆まだまだ熟成に期待の余地がある
かなり好印象のXC60だが、ひとつだけまだ熟成が足りないと思われるものがあった。それはナビ関係の操作だ。センターパネルに9インチのタッチスクリーンを備え、見た目は美しいのだが、実は操作性がいまひとつなのだ。特にブラインドタッチはまず不可能で、本当に目的のものをタッチし、反応したのかがわからない。例えばGM系のように指に振動が伝わるなど、クルマ側からの反応が欲しいところだ。
また、ナビを設定する際に住所などを入力しようと文字を追うときに、タッチする前にボタンが反応してしまいミスタッチが頻発してしまった。この辺りもぜひ改良を望みたい。
タッチスクリーンを採用する理由として、パネル類のスイッチを減らし、かつ、バージョンアップなどで新機能が出た場合、そのままスクリーンに反映出来ることがある。これはユーザーにとって大きなメリットだ。テスターもこれを否定するつもりは全くないが、それと使い勝手とはまた別の次元の話なのである。
最後に燃費をご報告しておくと、800kmほど走って10.3km/リットルであった。高速で12km/リットル程度、一般道でも9km/リットルほどで、燃費を気にするならディーゼルエンジンの「D4」を選択するのが良いであろう。
SUVでありがらも走行モードによっては積極的に走ることが出来るXC60。その一方で、まだ熟成の足りない部分も見られた。つまりクルマそのものの完成度は高いので、今後、装備の煮詰めが期待出来るということだ。
と、ここまで書き上げたところでニュースが飛び込んできた。欧州のカーオブザイヤー2018にボルボ『XC40』が選ばれたのだ。そう遠くない将来、日本にもこのクルマは導入される予定なので、XC60の熟成を含め、当分ボルボから目が離せない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
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1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラと同じくルノー10。
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