【メルセデスベンツ S450 試乗】革新の直6エンジンに、驚きの連続…中村孝仁
メルセデスの内燃機関の今後を左右するかもしれない大事なエンジンが、新しい『S450』に搭載された。
いくつかの注目すべき点は、先ず第一に直列6気筒であること。次に48VのISGを搭載し、さらに電動スーパーチャージャーとターボチャージャーを装備すること。そしてすべてのベルトを取り去ったベルトレスであるという点である。従来ベルト駆動だったエアコンやウォーターポンプなどは、48Vで電動駆動される。カムのタイミングもチェーン駆動で、これにもう一本チェーンを装備して、オイルポンプを駆動する。オイルポンプは同軸上に2つが直列に装備されて、オイルラインをそれぞれ低圧回路と高圧回路に別けている。
直列化の理由の最大のポイントは、排ガス対策だ。最早ディーゼルのみならず、ガソリンもさらなる排気ガス浄化が求められる今、如何に排ガス処理を上手くやるかは、熱いうちに処理するのが最良。V型だとどうしても両側に排気マニフォールドが出るので、その処理が難しいが、直列なら片側が排気、もう片側は吸気となって、処理が一括して行え、同時にターボとの兼ね合いも楽だ。
では何故直列がこれまで敬遠されていたのか。それは排ガス対策よりも安全対策が優先され、全長が長くなる直列は、衝撃吸収ゾーンが小さくなるので、より短いV型が重用されてきたというわけ。ところが、ベルトレスになってさらにボアピッチも小さくした結果、十分な衝撃吸収ゾーンが作れるようになって、直列が復活したというわけだ。それに4本必要な吸排気カムシャフトも2本で済むなど、パーツ点数も減り、軽量化にも役立つ。
実際、エンジンブロックを見てみると、ほとんど4気筒?というほどコンパクトで、フロントエンドにはたっぷり隙間があった。しかもタイミングチェーンをエンジン後方に持って行くレイアウトを採っており、これまでのエンジンと見た目もだいぶ変わっている。
48VのISGはその名の通り、スターターを兼ねたジェネレーター。日本のスズキが用いるISGだと、発進の際にエンジンがすぐにかからず、僅かの距離を電動で走るが、メルセデスは発進から瞬時にエンジンがかかる。何よりアイドリングはたったの520rpm!。ここまでアイドリングを下げれば当然エンジン振動が出ると思われるが、そこをどうやらモーターの助けを借りて振動を減らしているようだ。そして、走行中のエンジン回転もこれまた低い。100km/hのエンジン回転は何とたったの1250rpm。V8を搭載する『S560』ですら、1400rpmだから、如何に低い回転で静々回るかわかるだろう。
モーターのアシストは発進時のみならず、加速の際もアシストし、ブーストモードで16kw、250Nmのパワーでアシストする。
とにかく、スムーズで全域ですこぶる快適に走る。エンジンをかけた状態で停車しても、ほとんどエンジンの存在は気付かないレベル。そして発進はモーターがアシストするから、その加速性能はひと世代前のV8、M278とほぼ同等。V6は相手にしない。では直6らしい官能的な音がするか?コンフォートモードで引っ張ってみた時は、そのエンジンサウンドに大した感銘は受けなかった。あれ、V6と変わらない?そんな印象だったのである。
ところがこれをダイナミックモードにしてみると、アクセルの付きが一段と快活になり、グイグイと引っ張る。音に関しては???だったが、アクセルを離した瞬間、シフトアップせずにギアをホールド、強いエンジンブレーキと共に、直6独特のむせぶようなサウンドが聞こえ、ようやく直6であることを認識した。4気筒並みの低燃費ということだが、燃費に関してはチェックできなかった。車載コンピューターによれば東京六本木から、千葉県木更津市金田までの工程で11.8km/リットルを記録。帰路はV8のS560だったが、こちらは10.6km/リットルだった。もっとも個通状況が異なるので単純な比較はできない。
いずれにしても、今乗れるクルマの中で、最も快適でスムーズ、そして安楽な運転を可能にするクルマの1台がメルセデスSクラスであることは間違いない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
いくつかの注目すべき点は、先ず第一に直列6気筒であること。次に48VのISGを搭載し、さらに電動スーパーチャージャーとターボチャージャーを装備すること。そしてすべてのベルトを取り去ったベルトレスであるという点である。従来ベルト駆動だったエアコンやウォーターポンプなどは、48Vで電動駆動される。カムのタイミングもチェーン駆動で、これにもう一本チェーンを装備して、オイルポンプを駆動する。オイルポンプは同軸上に2つが直列に装備されて、オイルラインをそれぞれ低圧回路と高圧回路に別けている。
直列化の理由の最大のポイントは、排ガス対策だ。最早ディーゼルのみならず、ガソリンもさらなる排気ガス浄化が求められる今、如何に排ガス処理を上手くやるかは、熱いうちに処理するのが最良。V型だとどうしても両側に排気マニフォールドが出るので、その処理が難しいが、直列なら片側が排気、もう片側は吸気となって、処理が一括して行え、同時にターボとの兼ね合いも楽だ。
では何故直列がこれまで敬遠されていたのか。それは排ガス対策よりも安全対策が優先され、全長が長くなる直列は、衝撃吸収ゾーンが小さくなるので、より短いV型が重用されてきたというわけ。ところが、ベルトレスになってさらにボアピッチも小さくした結果、十分な衝撃吸収ゾーンが作れるようになって、直列が復活したというわけだ。それに4本必要な吸排気カムシャフトも2本で済むなど、パーツ点数も減り、軽量化にも役立つ。
実際、エンジンブロックを見てみると、ほとんど4気筒?というほどコンパクトで、フロントエンドにはたっぷり隙間があった。しかもタイミングチェーンをエンジン後方に持って行くレイアウトを採っており、これまでのエンジンと見た目もだいぶ変わっている。
48VのISGはその名の通り、スターターを兼ねたジェネレーター。日本のスズキが用いるISGだと、発進の際にエンジンがすぐにかからず、僅かの距離を電動で走るが、メルセデスは発進から瞬時にエンジンがかかる。何よりアイドリングはたったの520rpm!。ここまでアイドリングを下げれば当然エンジン振動が出ると思われるが、そこをどうやらモーターの助けを借りて振動を減らしているようだ。そして、走行中のエンジン回転もこれまた低い。100km/hのエンジン回転は何とたったの1250rpm。V8を搭載する『S560』ですら、1400rpmだから、如何に低い回転で静々回るかわかるだろう。
モーターのアシストは発進時のみならず、加速の際もアシストし、ブーストモードで16kw、250Nmのパワーでアシストする。
とにかく、スムーズで全域ですこぶる快適に走る。エンジンをかけた状態で停車しても、ほとんどエンジンの存在は気付かないレベル。そして発進はモーターがアシストするから、その加速性能はひと世代前のV8、M278とほぼ同等。V6は相手にしない。では直6らしい官能的な音がするか?コンフォートモードで引っ張ってみた時は、そのエンジンサウンドに大した感銘は受けなかった。あれ、V6と変わらない?そんな印象だったのである。
ところがこれをダイナミックモードにしてみると、アクセルの付きが一段と快活になり、グイグイと引っ張る。音に関しては???だったが、アクセルを離した瞬間、シフトアップせずにギアをホールド、強いエンジンブレーキと共に、直6独特のむせぶようなサウンドが聞こえ、ようやく直6であることを認識した。4気筒並みの低燃費ということだが、燃費に関してはチェックできなかった。車載コンピューターによれば東京六本木から、千葉県木更津市金田までの工程で11.8km/リットルを記録。帰路はV8のS560だったが、こちらは10.6km/リットルだった。もっとも個通状況が異なるので単純な比較はできない。
いずれにしても、今乗れるクルマの中で、最も快適でスムーズ、そして安楽な運転を可能にするクルマの1台がメルセデスSクラスであることは間違いない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
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パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
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中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
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