【レンジローバー ヴェラール 試乗】今までのランドローバー系と比べるとだいぶ異質…中村孝仁
昨年、日本市場にレンジローバー『ヴェラール』が登場した時、試乗したのは3リットルのV6ガソリンエンジン搭載車。それから少し遅れて昨年末にインジニウムの名を持つ2リットル直4ターボディーゼルを搭載するモデルが、ラインナップに加わった。
ガソリンモデルに試乗した時も、こりゃ全然今までのランドローバー系のモデルとは違う…ということを身をもって体験したが、ほんの1時間か2時間程度の試乗だったので、突っ込んだところまではわからなかった。
今回は丸々1週間借り出して、あれやこれやと触ってみたし、色々なところに出向いてもみたので、印象はだいぶ異なる。ただし、根底にある今までのランドローバー系とは違う…は、より鮮明になった印象である。最も異なるのはドライビングポジションだろう。すでに『イヴォーク』でも、これまで連綿と培われてきたランドローバーの、いわゆるコマンドポジションは捨て去られていたが、ヴェラールの体格になるとそれがより鮮明で、運転感覚が違っていた。
自分で最適と思われるドライビングポジションを取ると、ウェストラインはほぼ肩の位置付近にある。コマンドポジションだとほとんど腰の位置といっても過言ではないほど、サイドウィンドーが大きく感じられ、周囲のクルマを見降ろすという感覚は鮮明であったが、ヴェラールにはそれが全くない。むしろバスタブに深くうずまって、周囲をしっかりと囲まれている感じさえ受ける。また、クラムシェルのボンネットは、その全周をしっかりと見えるようにポジションが取れるのだが、このボンネットが予想外に大きくて、サイドミラーから前の左側(右ハンドル車の場合)の見切りはあまり良くない。このため、車体を縁石に寄せようとするような場合は、前から行くとその感覚を非常に掴みづらかった。
次に変わった点と言えば、やはりインストルメントパネル。モダンですべてをタッチパネルで操作できる新感覚のインパネはとにかく美しいし、斬新でモダンだ。大型の2画面ディスプレイの視認性も抜群。しかし一方で、ステアリングに装備される、メーターパネル内の表示を変えるプッシュスイッチは、なかなか難儀する。とにかく丁寧に、ゆっくりと操作しないとなかなか思うようにいかず、またOKボタンはピンポイントで真ん中を押さないと、その上下に付く▲の上下ボタンと誤操作することしばしば。まだ要改良の部分がある。
インジニウムのディーゼルは既に他のモデルで体験済みで、特別な感傷は持たないが、やはり静かである。それにスムーズでもある。ただ、さすがにガソリン3リットルV6と比較してしまうと、それは俄然ガソリンに分があって、何よりも本来トルクが厚く運転しやすいはずのディーゼルをも凌駕する印象であった。しかし、かといってディーゼルに物足りなさを感じるかと言われれば、それは全くない。スタートダッシュに若干のもたつきを感じる以外、この直4ユニットは素晴らしい。
足回りは通常のコイルサスペンションである。V6ガソリン車の場合は、電子制御エアサスが標準装備だったが、こちらはいわゆる普通の鉄バネ。エアサスはオプションでもチョイスできない。もっとも、エアサス仕様に乗った時に感じた、コンフォートモードとダイナミックモードの差が少なく、どちらかというとマジックカーペットと表現したくなる、正統派レンジローバーが持つ乗り味とはだいぶ異なっていて、印象的にはかなりスポーティーというイメージは、この鉄バネにも継承されている。やはりこれまでのどのランドローバー系モデルと比べても、スポーティーでしっかりとした高い剛性感を感じさせる乗り味だ。そしてコンフォートとダイナミックの差が少ないという点についても、エアサスと共通である。乗り味自体は、これならエアサスペンションじゃ無くても十分、というイメージである。
少しというかかなり不満なのは、確かに今回試乗したHSEという最上級グレードなら、ACCが装備されているが、その下、といってもお値段が872万円もするSEグレードになると、もうACCではなくただのクルーズコントロールになってしまうのは、どうにも納得がいかない。それに山のようにオプション装備が存在していて、読むだけで大変。それを装備していくと、果たして乗り出し価格がいくらになるのか…かなり心配になる。
とは言うものの、そのスタイル、その運動性能、そしてアバンギャルドといっても過言ではないインテリアのデザイン等々、このクルマはこれまでランドローバーが持ち合わせていなかった、新しい魅力を提供してくれるモデルであることは間違いない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
ガソリンモデルに試乗した時も、こりゃ全然今までのランドローバー系のモデルとは違う…ということを身をもって体験したが、ほんの1時間か2時間程度の試乗だったので、突っ込んだところまではわからなかった。
今回は丸々1週間借り出して、あれやこれやと触ってみたし、色々なところに出向いてもみたので、印象はだいぶ異なる。ただし、根底にある今までのランドローバー系とは違う…は、より鮮明になった印象である。最も異なるのはドライビングポジションだろう。すでに『イヴォーク』でも、これまで連綿と培われてきたランドローバーの、いわゆるコマンドポジションは捨て去られていたが、ヴェラールの体格になるとそれがより鮮明で、運転感覚が違っていた。
自分で最適と思われるドライビングポジションを取ると、ウェストラインはほぼ肩の位置付近にある。コマンドポジションだとほとんど腰の位置といっても過言ではないほど、サイドウィンドーが大きく感じられ、周囲のクルマを見降ろすという感覚は鮮明であったが、ヴェラールにはそれが全くない。むしろバスタブに深くうずまって、周囲をしっかりと囲まれている感じさえ受ける。また、クラムシェルのボンネットは、その全周をしっかりと見えるようにポジションが取れるのだが、このボンネットが予想外に大きくて、サイドミラーから前の左側(右ハンドル車の場合)の見切りはあまり良くない。このため、車体を縁石に寄せようとするような場合は、前から行くとその感覚を非常に掴みづらかった。
次に変わった点と言えば、やはりインストルメントパネル。モダンですべてをタッチパネルで操作できる新感覚のインパネはとにかく美しいし、斬新でモダンだ。大型の2画面ディスプレイの視認性も抜群。しかし一方で、ステアリングに装備される、メーターパネル内の表示を変えるプッシュスイッチは、なかなか難儀する。とにかく丁寧に、ゆっくりと操作しないとなかなか思うようにいかず、またOKボタンはピンポイントで真ん中を押さないと、その上下に付く▲の上下ボタンと誤操作することしばしば。まだ要改良の部分がある。
インジニウムのディーゼルは既に他のモデルで体験済みで、特別な感傷は持たないが、やはり静かである。それにスムーズでもある。ただ、さすがにガソリン3リットルV6と比較してしまうと、それは俄然ガソリンに分があって、何よりも本来トルクが厚く運転しやすいはずのディーゼルをも凌駕する印象であった。しかし、かといってディーゼルに物足りなさを感じるかと言われれば、それは全くない。スタートダッシュに若干のもたつきを感じる以外、この直4ユニットは素晴らしい。
足回りは通常のコイルサスペンションである。V6ガソリン車の場合は、電子制御エアサスが標準装備だったが、こちらはいわゆる普通の鉄バネ。エアサスはオプションでもチョイスできない。もっとも、エアサス仕様に乗った時に感じた、コンフォートモードとダイナミックモードの差が少なく、どちらかというとマジックカーペットと表現したくなる、正統派レンジローバーが持つ乗り味とはだいぶ異なっていて、印象的にはかなりスポーティーというイメージは、この鉄バネにも継承されている。やはりこれまでのどのランドローバー系モデルと比べても、スポーティーでしっかりとした高い剛性感を感じさせる乗り味だ。そしてコンフォートとダイナミックの差が少ないという点についても、エアサスと共通である。乗り味自体は、これならエアサスペンションじゃ無くても十分、というイメージである。
少しというかかなり不満なのは、確かに今回試乗したHSEという最上級グレードなら、ACCが装備されているが、その下、といってもお値段が872万円もするSEグレードになると、もうACCではなくただのクルーズコントロールになってしまうのは、どうにも納得がいかない。それに山のようにオプション装備が存在していて、読むだけで大変。それを装備していくと、果たして乗り出し価格がいくらになるのか…かなり心配になる。
とは言うものの、そのスタイル、その運動性能、そしてアバンギャルドといっても過言ではないインテリアのデザイン等々、このクルマはこれまでランドローバーが持ち合わせていなかった、新しい魅力を提供してくれるモデルであることは間違いない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
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中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
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(レスポンス 中村 孝仁)
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