【マツダ CX-5 2.5Lガソリン 試乗】絶対的な自信のディーゼルを打ち負かす燃費性能…中村孝仁

マツダ CX-5 2.5リットルガソリン
商品改良と称するマツダのマイナーチェンジが年に何度も行われ、正直なところ、ユーザーの視点に立つと、いわゆる「買い時」が全く定まらない。

今回、その商品改良を受けたのは『CX-5』である。そもそも、CX-5が現行型に変わったのがちょうど1年ほど前。ガソリンについては、本格的に試乗したのは昨年10月であるから、まだ半年しかたっていない。そのタイミングでこのガソリン仕様が大きな変更を受けた。

説明が荒いのでちょっと詳しく説明すると、CX-5のガソリン仕様は2リットルと2.5リットルが存在し、昨年も、そして今回も、試乗したのは2.5リットル仕様の方。そしてその2.5リットル仕様のみが大きな変更を受けた。具体的にはまずエンジンが可変気筒式となり、低負荷時は2気筒で走る。それに伴って性能向上を果たし、パワーで6ps、トルクで7Nm(2WDの場合)向上している。

6気筒や8気筒にはこの気筒休止をして燃費を稼ぐエンジンは多く存在するが、4気筒エンジン搭載車で気筒休止をするのは、今のところVWとマツダだけではないだろうか。昔は三菱やホンダが4気筒でこの気筒休止システムを採用していたが、今は4気筒ではやっていない。

マツダは、ミスターエンジンこと人見常務執行役員が、反ダウンサイジングターボ派。持論は「大排気量をゆっくりと回した方が効率が良い」である。そんなわけで税制的には不利な2.5リットル4気筒が、CX-5にラインナップされていて、そいつをより効率的にそして燃費に優しくしてやろうというのが、今回の改良であった。

VWの場合、気筒休止をすると2気筒で走っているというインジケーターが点灯する。しかし、マツダは敢えてそのインジケーターを装備しなかったそうだ。理由は普通に走って、燃料を入れた時に「あれっ?」という実感を持ってほしいから…だそうである。

というわけで、今回は主としてガソリン2.5リットルのエンジンに特化して試乗してみた。勿論新しいディーゼル(CX-8と同じパワーアップされたエンジンが今回CX-5にも搭載されている)も試乗したが、それはあくまでもガソリンとの比較のためである。

マツダが推奨したコースは、起点となるマツダR&Dから、横浜みなとみらいに向かい、首都高速と第3京浜を経由して再びR&Dに戻るおおよそ30kmのコース。スピードは首都高の速度制限上限を少し超えるあたりにACCを設定して走ったが、それでも後ろから煽られてしまうので、これを維持しつつ出来る限り走行車線を走るという走行モードでディーゼルと比較をしてみた。

いつ4気筒から2気筒へ切り替わるか、インジケーターがないのでわからないだろうという配慮から、試乗車には特別にスマホのアプリを使ってそれがわかるような仕組みを搭載しての試乗である。一般的に、4気筒車で半分を気筒休止すれば、当然ながら振動が出るはず。それを消すためにフライホイールを大型化すれば、今度は当然ながらピックアップの鋭さが削がれる。それを嫌ったマツダは、トルクコンバーターに振り子ダンパーを装備して、振り子の力を利用して振動を打ち消すというアイデアを採用している。おかげで、4気筒から2気筒への気筒休止と復活は、例のアプリによる数字の変化でしか感知されない。走りは非常にスムーズだし、ディーゼルのような湧き上がるトルクこそないものの、スムーズさのおかげでシャープな加速感を感じることが出来る。

で、正確には写真にもあるように、31.9km走った総燃費は、14.5km/リットル。一方同じルートを同条件(道の混雑具合で多少は変わるが)で走ったディーゼルはというと、13.5km/リットルであった。驚いたことにガソリン仕様がディーゼルの燃費を上回る結果となった。さすがにこれを聞いたCX-5の商品主査、松岡秀樹氏は、「喜んでよいやら悲しんでよいやら」と笑いながら答えてくれたが、こと燃費に関しては絶対的な優位性を持っていると信じて疑わなかったディーゼルを、ガソリンエンジンで打ち負かす結果となった。

因みにガソリン、ディーゼルともに4WDである。最後に静粛性もさらに高まったことも付け加えておく。このほかの改良点として、360度ビューモニターの装着、車速感応式オートドアロックの装備、4席オートパワーウィンドーの装備などがある。

この調子だと、また来年も商品改良があるかもしれないから、今が買いとは残念ながら言えない。しかし乗るたびにCX-5は良くなっていることを実感させられる。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

(レスポンス 中村 孝仁)

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