【VW アルテオン 試乗】費用対効果は高いが、あえてVWを選ぶことができるか…中村孝仁
サイドビューの写真を撮っている時に気が付いた。「んっ?こいつ、妙に長いな。」それもBピラーから後ろが…。
家に帰って諸元を調べてみると、『パサート』よりもホイールベースが45mmも長いではないか。それに低いし、幅も広いし…。というわけで、パサートに対する『アルテオン』の位置づけが何となくわかるというものである。
このクルマは従来『CC』と呼ばれていたモデルの後継車である。クーペ風でルーフがなだらかに下ってスタイリッシュなセダン…しかし、CCと決定的に違うのは、アルテオンがドイツ語で言うところのコンビリムジンというジャンルのモデルだということ。そもそもコンビリムジンを英語にすると、極めて単純にハッチバック。つまり、テールゲートを備えたセダンということになる。
実際テールゲートを開いてみると、本当に巨大な開口部と共に563(最大1557リットル)リットルという、これまた巨大なラゲッジスペースが姿を見せる。それにリアシートの広さといったら…チビの僕だと楽々足を組めるスペース。それにルーフがなだらかに落ちているといっても、ヘッドクリアランスも十分に確保されていて、このあたりがやはり質実剛健なVWらしく、「スタイル重視しても機能性はゼッタイに手を抜かないぞ!」的な設計思想が見事なほど反映されている。
一方で昔からそうだが、ちょっとだけセクシーな外観とは裏腹に、インテリアのデザインは正直そっけない。見た目、パサートと完全に一致。スイッチ類などもゴルフあたりまで共通。まあ、そうしてコストダウンを図っているのだから仕方ないと言えばそれまで。今やどこのメーカーでもそれをやっているのだが、どうも見方が公平でなくなるのはまずい習性だ。
そのサイズと言い、価格帯と言い、間違いなくDセグメントのモデルである。今回試乗したのは「Rライン4モーション・アドバンス」という、2種のグレードのうちの高い方。因みにどちらもエンジンを含むドライブトレーンは共通である。
直噴ガソリンユニットのTSIは、基本『パサートRライン』や『ゴルフGTI』のそれと共通だが、パワーはアルテオンが抜きんでて高く280ps。それに7速のDSGを装備する点も、他のモデルとは異なっている。例によってアウトプットシャフトが2本あることから、1、4、5速及びリバースと、2、3、6、7速はファイナルギア比が異なる。そしてパサートと比べても、1速のギア比が妙にローギアである。こいつが日本で走るには少々悪さをしている印象が強い。
というのも、渋滞などで低速ギアを多用することが多い都市内での走りでは、半クラッチの頻度がとても高く、また停車発進を繰り返すことも多い。その際、ついうっかりアクセルを不用意に開けると、かなり明確なショックを伴って発進するケースが多かった。普通に走っている限り、DSGはとてもスムーズで快適な走りを提供してくれるし何の不満もないのだが、こと発進はだいぶ苦手。しかもローギアだからいきなりドカッとトルクが出る印象で、かなり気を使わないとスムーズな発進が出来なかった。すぐ後にアウディ『A4』を借りたのだが、同じDCTでもこちらはSトロニックと呼ばれるもので、チューンの違いなのか、こちらの発進はスムーズなのである。
アルテオンの走りは正直言ってかなり2面性を持っていると感じた。それはゆったり、スムーズに走る時と、いざ気合を入れて走る時だ。前者の場合、アクセルペダルをどう踏んでも1/3くらいに留めてスイスイと走る時。静粛性も高く、DCCをコンフォートにセットしておけば実に快適に走る。
一方で、ちょっと飛ばしてハンドリングを愉しんでみたい時などは、DCCスポーツもしくはカスタムにして、自分好みのセッティングに変え、スムーズに走るというよりもだいぶ強くアクセルを踏み込むと、この巨大なセダンがまるでスポーツカーのように変身する。正直少しボディが大き過ぎてワインディングなどでは手に余るが、運動性能も申し分ない。それに4モーション、即ち4WDである。まあドライ路面でその性能を知るには、一般道のスピードレベルでは無理だから、その良さは味わえなかった。
問題は費用対効果である。パサートTSI Rラインも車両価格は500万円を超えているから、アルテオンの価格設定はVWにしてみれば正常進化。しかし、ユーザーサイドに立って、ライバルメーカーと比較した時、確かに4WDだし可変ダンパーも入っているなど装備を考えれば文句なくそのお値段に見合っているのだが、ではあなたはライバルのBMWやメルセデス、それにアウディも含めて比べた時に、果たしてVWを選ぶのだろうか?という素朴な疑問が浮かんでしまう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
家に帰って諸元を調べてみると、『パサート』よりもホイールベースが45mmも長いではないか。それに低いし、幅も広いし…。というわけで、パサートに対する『アルテオン』の位置づけが何となくわかるというものである。
このクルマは従来『CC』と呼ばれていたモデルの後継車である。クーペ風でルーフがなだらかに下ってスタイリッシュなセダン…しかし、CCと決定的に違うのは、アルテオンがドイツ語で言うところのコンビリムジンというジャンルのモデルだということ。そもそもコンビリムジンを英語にすると、極めて単純にハッチバック。つまり、テールゲートを備えたセダンということになる。
実際テールゲートを開いてみると、本当に巨大な開口部と共に563(最大1557リットル)リットルという、これまた巨大なラゲッジスペースが姿を見せる。それにリアシートの広さといったら…チビの僕だと楽々足を組めるスペース。それにルーフがなだらかに落ちているといっても、ヘッドクリアランスも十分に確保されていて、このあたりがやはり質実剛健なVWらしく、「スタイル重視しても機能性はゼッタイに手を抜かないぞ!」的な設計思想が見事なほど反映されている。
一方で昔からそうだが、ちょっとだけセクシーな外観とは裏腹に、インテリアのデザインは正直そっけない。見た目、パサートと完全に一致。スイッチ類などもゴルフあたりまで共通。まあ、そうしてコストダウンを図っているのだから仕方ないと言えばそれまで。今やどこのメーカーでもそれをやっているのだが、どうも見方が公平でなくなるのはまずい習性だ。
そのサイズと言い、価格帯と言い、間違いなくDセグメントのモデルである。今回試乗したのは「Rライン4モーション・アドバンス」という、2種のグレードのうちの高い方。因みにどちらもエンジンを含むドライブトレーンは共通である。
直噴ガソリンユニットのTSIは、基本『パサートRライン』や『ゴルフGTI』のそれと共通だが、パワーはアルテオンが抜きんでて高く280ps。それに7速のDSGを装備する点も、他のモデルとは異なっている。例によってアウトプットシャフトが2本あることから、1、4、5速及びリバースと、2、3、6、7速はファイナルギア比が異なる。そしてパサートと比べても、1速のギア比が妙にローギアである。こいつが日本で走るには少々悪さをしている印象が強い。
というのも、渋滞などで低速ギアを多用することが多い都市内での走りでは、半クラッチの頻度がとても高く、また停車発進を繰り返すことも多い。その際、ついうっかりアクセルを不用意に開けると、かなり明確なショックを伴って発進するケースが多かった。普通に走っている限り、DSGはとてもスムーズで快適な走りを提供してくれるし何の不満もないのだが、こと発進はだいぶ苦手。しかもローギアだからいきなりドカッとトルクが出る印象で、かなり気を使わないとスムーズな発進が出来なかった。すぐ後にアウディ『A4』を借りたのだが、同じDCTでもこちらはSトロニックと呼ばれるもので、チューンの違いなのか、こちらの発進はスムーズなのである。
アルテオンの走りは正直言ってかなり2面性を持っていると感じた。それはゆったり、スムーズに走る時と、いざ気合を入れて走る時だ。前者の場合、アクセルペダルをどう踏んでも1/3くらいに留めてスイスイと走る時。静粛性も高く、DCCをコンフォートにセットしておけば実に快適に走る。
一方で、ちょっと飛ばしてハンドリングを愉しんでみたい時などは、DCCスポーツもしくはカスタムにして、自分好みのセッティングに変え、スムーズに走るというよりもだいぶ強くアクセルを踏み込むと、この巨大なセダンがまるでスポーツカーのように変身する。正直少しボディが大き過ぎてワインディングなどでは手に余るが、運動性能も申し分ない。それに4モーション、即ち4WDである。まあドライ路面でその性能を知るには、一般道のスピードレベルでは無理だから、その良さは味わえなかった。
問題は費用対効果である。パサートTSI Rラインも車両価格は500万円を超えているから、アルテオンの価格設定はVWにしてみれば正常進化。しかし、ユーザーサイドに立って、ライバルメーカーと比較した時、確かに4WDだし可変ダンパーも入っているなど装備を考えれば文句なくそのお値段に見合っているのだが、ではあなたはライバルのBMWやメルセデス、それにアウディも含めて比べた時に、果たしてVWを選ぶのだろうか?という素朴な疑問が浮かんでしまう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
最新ニュース
-
-
フォード、専用マシンと「ドリームチーム」でダカールラリー2025優勝ねらう
2024.12.25
-
-
-
ジープ初のグローバルEV『ワゴニアS』、2025年1月米国発売へ
2024.12.25
-
-
-
Z顔のステージアに「ケンメリ」の再来、日産学園の学生が驚きのカスタム披露…東京オートサロン2025
2024.12.25
-
-
-
日産『アリア』米2025年型にワイヤレス充電を標準装備! テスラ「スーパーチャージャー」も利用可能に
2024.12.25
-
-
-
マルチスズキ、初のEV『eビターラ』をインド発売へ…2025年1月17日デビュー
2024.12.24
-
-
-
スバル『ソルテラ』が6500ドル値下げ、新グレード「ツーリングオニキス」も追加
2024.12.24
-
-
-
エンジンオーバーホールの全貌! 性能復活のメカニズムを徹底解説~カスタムHOW TO~
2024.12.24
-
最新ニュース
-
-
フォード、専用マシンと「ドリームチーム」でダカールラリー2025優勝ねらう
2024.12.25
-
-
-
ジープ初のグローバルEV『ワゴニアS』、2025年1月米国発売へ
2024.12.25
-
-
-
Z顔のステージアに「ケンメリ」の再来、日産学園の学生が驚きのカスタム披露…東京オートサロン2025
2024.12.25
-
-
-
日産『アリア』米2025年型にワイヤレス充電を標準装備! テスラ「スーパーチャージャー」も利用可能に
2024.12.25
-
-
-
マルチスズキ、初のEV『eビターラ』をインド発売へ…2025年1月17日デビュー
2024.12.24
-
-
-
スバル『ソルテラ』が6500ドル値下げ、新グレード「ツーリングオニキス」も追加
2024.12.24
-
MORIZO on the Road