【メルセデスベンツ Gクラス 海外試乗】伝統守りつつ中身を一新、舗装路の乗り心地も改善…大谷達也

メルセデスベンツ Gクラス(G500、欧州仕様)
現行型と見紛うばかりのスタイリングに惑わされてはいけない。初代の誕生から39年目に実施された『Gクラス』のフルモデルチェンジは、外観のイメージをできるだけ変えることなく、中身だけを一新するという実に凝った作業が実施されたのである。

スペイン国境に近い南フランスのペルピットインニャン周辺で行なわれた国際試乗会では、その効果をハッキリと確認できた。

まず、舗装路上の乗り心地が驚くほど改善された。路面のデコボコをサスペンションがきれいに吸収してくれるうえに、大きくうねった道でもボディーはフラットな姿勢を崩さない。おまけに、ワインディングロードを結構なペースで飛ばしてもロールがよく抑えられていて不安感が少ない。こうしたオンロード性能は、最新のSUVと同等か、標準的な水準をやや上回るレベルにある。



いっぽうで、悪路走破性はめっぽう優れている。今回の試乗会ではメルセデスがテストに用いることもあるというオフロードコースを走行したが、ゴツゴツとしたガレキが続く滑りやすい急斜面をいともたやすく登り切ってしまうのには驚いた。



その秘密は、エンジンの力を路面に伝える能力、いわゆるトラクション性能が驚くほど高い点にある。通常、自動車の駆動輪には左右もしくは前後の回転差を吸収するためにディファレンシャルギア(デフ)と呼ばれる差動装置がついていて、片輪が滑り始めるとそちらにより多くのトルクを配分する仕組みになっている。

しかし、舗装路では重要な役割を果たすこのデフが、滑りやすい路面では結果的に空転しかかっているタイヤに多くの駆動力を伝えることとなり、スリップがいつまで経っても収まらない状況を招きかねない。

こうした現象を防止するのが差動機能を一時的に停止させて左右輪、もしくは前後車軸に等しいトルクを配分するデフロックと呼ばれる機能だが、Gクラスはリアデフ、センターデフ、フロントデフのすべてにデフロックを装備。どんな状況でも強大なトラクション性能を発揮できるようになっている。ちなみに、メルセデスによれば3つのデフロックを有しているSUVはGクラスだけだそうだ。



試乗会場にはシャシーのカットモデルが展示されていたが、これを見る限り、Gクラスのもうひとつの特徴である頑丈な作りも継承されており、いかにも耐久性は高そう。この点でもGクラスの伝統は守られたといえるだろう。



■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

大谷達也|自動車ライター
元電気系エンジニアという経歴を持つせいか、最近は次世代エコカーとスーパースポーツカーという両極端なクルマを取材す ることが多い。いっぽうで「正確な知識に基づき、難しい話を平易な言葉で説明する」が執筆活動のテーマでもある。以前はCAR GRAPHIC編集部に20年間勤務し、副編集長を務めた。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本モータースポーツ記者会会長。

(レスポンス 大谷達也)

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