【スズキ ジムニー 試乗】今まで以上にリスペクトします!…中村孝仁
これまでも、それなりにこのクルマはリスペクトしてきた。先代はとにかく20年も作り続け、ライバルが木の葉が落ちるように、1台また1台と市場から去っていく中、しっかりとした固定層を作り、市場を守り抜いてきた。その名は、スズキ『ジムニー』である。
専門の雑誌が刊行されてしまうくらいだから、その人気度もわかるし、昔からこのクルマでないと行けない地域が存在し、プロフェッショナルからも絶大な支持を得てきたクルマだから、存在感の大きさはライバルを蹴散らすに十分なインパクトだったのだと思う。
そういえば550cc時代の2サイクルエンジンを積んだジムニーが、我が家にも1台転がっていたことがある。その走破力もさることながら、やはり狭いところをどこでも行けるという機動力が人気だったのだろう。そんなジムニーが、20年の時を経てフルチェンジされたのだから、待ち焦がれていた人だけでなく、そのシンプルでパーパスビルドの作りに引き込まれた人など、多くのユーザーから注目を浴びるクルマになったようで、発売開始から人気がうなぎ上り。いま注文しても、納期は最短でも半年先ぐらいが当たり前の状況のようだ。
そんなジムニーに試乗してみた。オンロードとオフロード共にである。そもそも、軽自動車としては随分と立派ななりをしている。勿論軽自動車枠に収まっているのだから、サイズ的にはみ出しているわけではないのだが、とにかく立派に見える。ただ、中に入るとやっぱりさすがは軽自動車。ゆとりを感じることはない。でも、インテリアのデザインは定番と言えば定番だが、全体的にシンプルに作リあげられていて、如何にも使い易そうである。
トランスファーの操作が、先代末期のボタン式から再びレバー式に戻された。何でも一つには、ユーザー側からレバー式の要望が多かったことと、ボタン式だとちゃんとセレクトされているのかが不明瞭だから…とか、操作している感がレバー式の方が強いからとかの意見があって、戻されてしまったようだ。まあそれも良しだろう。外観はコンパクトなメルセデス『Gクラス』と言われたり、あるいはランドローバー『ディフェンダー』に似ている…という意見があるようだが、僕が持った印象は、フォード『ブロンコ・コンセプト』という、2004年に発表されたコンセプトカーだった。まさにキューブデザインで、シンプルな線で構成されたスタイルは、本当に普遍的で機能的だ。それはジムニーにも当てはまる。
オフロードの走りから話をしよう。今回は林間コース、モーグルコース、キャンバー、それにタフなタイヤを埋め込んだ路面の踏破等々、言わばアトラクションを通過するように、設定されたコースを走破するもので、ポイント、ポイントには係員がいて、セレクトするギアや走り方を指南してくれる。もっとも、コース自体はジムニーにとってポテンシャルの数%も発揮しないで通過できるもの。僕自身決してオフロードのエキスパートではないが、かつてジープやランドローバーの試乗で鍛えられたこともあって、この程度のアトラクションはお茶の子さいさいのレベルだった。
これらのコースで感じられた良さは、新たに装備されたステアリングダンパーのおかげで、ステアリングに入力されるキックバックがほとんどなくなったこと。モーグルセクションを通過しても、大きなコブに前輪がぶち当たった時のキックバックがほとんどない。正直言って拍子抜けするほど楽に通過出来てしまう。人によってはインフォメーションがなくなって嫌…というかもしれないが、間違いなく安全にこうした路面を通過できると思う。
とりあえず、オフの性能は全く落ちていなさそうだったことに安心し、オンロードに向かう。ここで驚かされたのは、一言で言ってしまうと落ち着いた走りであった。とにかく乗り心地が良い。それに静粛性も向上している。相変わらず中心付近のダルさは変わりないが、これはオフの走行性能を維持しようと思ったら、ある程度は致し方ない。それでも、従来よりは明らかにレスポンスが良くなった印象を受けた。上屋の揺れ感は間違いなくソフトになっていて、従来見られたぴょこぴょこと跳ねる印象は皆無。これなら高速を長距離でも大丈夫そうだ。
今回は5MTでの試乗。5速は直結でODの設定ではないが、ファイナルで高速仕様にされているから、OD的なイメージで乗れるのだが、4速とは少し離れすぎている印象を受けた。これでも少し4速を高速側に振ったのだそうだが、元々中速トルクの薄いエンジンだけに、4速をもう少し高速側に振ったら、オンの走りはもっと快適になるのではないかと思えた。
それにしても、新しいジムニー、魅力的な商品である。改めて今まで以上にリスペクトします。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
専門の雑誌が刊行されてしまうくらいだから、その人気度もわかるし、昔からこのクルマでないと行けない地域が存在し、プロフェッショナルからも絶大な支持を得てきたクルマだから、存在感の大きさはライバルを蹴散らすに十分なインパクトだったのだと思う。
そういえば550cc時代の2サイクルエンジンを積んだジムニーが、我が家にも1台転がっていたことがある。その走破力もさることながら、やはり狭いところをどこでも行けるという機動力が人気だったのだろう。そんなジムニーが、20年の時を経てフルチェンジされたのだから、待ち焦がれていた人だけでなく、そのシンプルでパーパスビルドの作りに引き込まれた人など、多くのユーザーから注目を浴びるクルマになったようで、発売開始から人気がうなぎ上り。いま注文しても、納期は最短でも半年先ぐらいが当たり前の状況のようだ。
そんなジムニーに試乗してみた。オンロードとオフロード共にである。そもそも、軽自動車としては随分と立派ななりをしている。勿論軽自動車枠に収まっているのだから、サイズ的にはみ出しているわけではないのだが、とにかく立派に見える。ただ、中に入るとやっぱりさすがは軽自動車。ゆとりを感じることはない。でも、インテリアのデザインは定番と言えば定番だが、全体的にシンプルに作リあげられていて、如何にも使い易そうである。
トランスファーの操作が、先代末期のボタン式から再びレバー式に戻された。何でも一つには、ユーザー側からレバー式の要望が多かったことと、ボタン式だとちゃんとセレクトされているのかが不明瞭だから…とか、操作している感がレバー式の方が強いからとかの意見があって、戻されてしまったようだ。まあそれも良しだろう。外観はコンパクトなメルセデス『Gクラス』と言われたり、あるいはランドローバー『ディフェンダー』に似ている…という意見があるようだが、僕が持った印象は、フォード『ブロンコ・コンセプト』という、2004年に発表されたコンセプトカーだった。まさにキューブデザインで、シンプルな線で構成されたスタイルは、本当に普遍的で機能的だ。それはジムニーにも当てはまる。
オフロードの走りから話をしよう。今回は林間コース、モーグルコース、キャンバー、それにタフなタイヤを埋め込んだ路面の踏破等々、言わばアトラクションを通過するように、設定されたコースを走破するもので、ポイント、ポイントには係員がいて、セレクトするギアや走り方を指南してくれる。もっとも、コース自体はジムニーにとってポテンシャルの数%も発揮しないで通過できるもの。僕自身決してオフロードのエキスパートではないが、かつてジープやランドローバーの試乗で鍛えられたこともあって、この程度のアトラクションはお茶の子さいさいのレベルだった。
これらのコースで感じられた良さは、新たに装備されたステアリングダンパーのおかげで、ステアリングに入力されるキックバックがほとんどなくなったこと。モーグルセクションを通過しても、大きなコブに前輪がぶち当たった時のキックバックがほとんどない。正直言って拍子抜けするほど楽に通過出来てしまう。人によってはインフォメーションがなくなって嫌…というかもしれないが、間違いなく安全にこうした路面を通過できると思う。
とりあえず、オフの性能は全く落ちていなさそうだったことに安心し、オンロードに向かう。ここで驚かされたのは、一言で言ってしまうと落ち着いた走りであった。とにかく乗り心地が良い。それに静粛性も向上している。相変わらず中心付近のダルさは変わりないが、これはオフの走行性能を維持しようと思ったら、ある程度は致し方ない。それでも、従来よりは明らかにレスポンスが良くなった印象を受けた。上屋の揺れ感は間違いなくソフトになっていて、従来見られたぴょこぴょこと跳ねる印象は皆無。これなら高速を長距離でも大丈夫そうだ。
今回は5MTでの試乗。5速は直結でODの設定ではないが、ファイナルで高速仕様にされているから、OD的なイメージで乗れるのだが、4速とは少し離れすぎている印象を受けた。これでも少し4速を高速側に振ったのだそうだが、元々中速トルクの薄いエンジンだけに、4速をもう少し高速側に振ったら、オンの走りはもっと快適になるのではないかと思えた。
それにしても、新しいジムニー、魅力的な商品である。改めて今まで以上にリスペクトします。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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