【トヨタ カローラスポーツ 試乗】本命はハイブリッド?“普通のカローラ”と比べたら上出来!…中村孝仁

トヨタ カローラスポーツ ハイブリッド
その名を『カローラスポーツ』と呼ぶことになったハッチバックのカローラ。かつてハッチバックとして出されたカローラと名の付くモデルは、『ルミオン』と『ランクス』ぐらいしか思い浮かばないから、ハッチバックは少なくとも日本市場では賭けである。

何故賭けかというと、当然だがこれまで一度も正式に出していなかったジャンルだから。まあ、リフトバックと名付けたモデルは存在して、あれはそれなりの成功を見たように思うが、後発のランクスやルミオンは、今回のスポーツ同様、カローラの若返りを図って誕生したモデルながら、その購買層を掘り起こせずに姿を消したモデルと認識しているからである。

ただ、今回は少なからずこれまでと異なるところがある。それが最新のプラットフォームであるTNGAを採用して、骨格から全く新しいカローラを作り上げたことだ。

現行カローラの既存ユーザーを冒涜する意図はまるでないが、70歳台、60歳台という極めて高齢化した平均年齢のユーザーにとって、従来の骨格からTNGAに変えたことによって、これら年齢層のユーザーが享受できるベネフィットがどの程度あるのか、さらに言えば、コネクテッドカーとして「繋がる」を標榜した新たな機能にどの程度ベネフィットがあるのか。そのあたりを考えると、今度のカローラは明らかに今までより若い層にアピールすることを明確に宣言したクルマのようにも受け取れる。

確かに、しっかりとした骨格は走りの点で安心感が出た。それに「繋がる」は、スマホ利用が多いのだが、万一エアバックが展開するような事故があると自動的にオペレーターに繋がるのは、高齢者のみならず、便利だと思う。でも、3年間は無料のDCMも4年目以降は有料であるから、果たしてどの程度のユーザーが、これを4年目以降も利用するかは未知数だ。

で、今回試乗したカローラスポーツは、1.8リットルエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドである。先にレポートした1.2リットルターボと比較した時に、どちらがスポーツ性が高いかというと、それは文句なく後者だったのだが、グレード違いの成せる業で、試乗車は少なくとも見た目と仕様がはるかにこちらの方がスポーツしていた。その最たるところがシートである。この試乗車に付くシートはスポーツシート。1.2リットルは一段低いグレードのモデルだったことから、スポーティーシートが装着されていた。勿論どちらがスポーティーで、サポート性能が良いかというと、言うまでもなく前者、即ちスポーツシートである。

それにこちらのクルマには、AVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション)が装備されていて、エコ、コンフォート、ノーマル、スポーツS、スポーツS+と5段階の走行モードを選ぶことが出来る。このうち、足のセッティングが変わるのはスポーツS+とコンフォートで、他は標準状態だが、パワートレーン、ステアリング、それにエアコンの状態は、例えばエコではエアコンが燃費優先になったり、スポーツSとスポーツS+では加速が鋭くなるなど、設定が変えられるようになっている。とは言いながら、色々と試してはみたものの、唸るほど劇的には変わらないというのが正直な印象である。

そして、ハイブリッドのパワートレーンはエコ運転には非常に向いている印象を受けるが、ダイナミックに走ろうとした時は、どうしても緩慢な印象は拭えず、スポーツの名に恥じることになる。ただし、運動性能のポテンシャルは相当に高い。むしろエンジンを含むドライブトレーンの方がはるかに遅れている感じで、そうした意味で安全性能は非常に高い。

それに燃費などを勘案すると、その差は歴然(WLTCモード総合でHVが25.6km/リットルに対し、1.2ターボFWDは16.4km/リットル)で、今のユーザーが求めているカローラ像は、やはりハイブリッドなのではないか?と思ってしまうわけである。だから、個人的にスポーツの名はその体をなしていないと感じてしまうのだ。とはいえ、その出来の良さはこれまで普通だったカローラと比較して、「上出来」!と上から目線で言わせていただけるものに仕上がっていると思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

(レスポンス 中村 孝仁)

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