【メルセデスベンツ Gクラス 新型試乗】他のメーカーはこれを真似しないように…中村孝仁
今から40年も前の1979年に、メルセデス『Gクラス』は誕生した。当時Gクラスなどという呼び名はなく、日本では「ゲレンデヴァーゲン」と呼ばれることが多かった。
そもそもは、コードネームW460/461と呼ばれたパートタイム式の4輪駆動システムを持つ、純粋無垢のオフロードカーだった。元々4WD技術を持たなかったダイムラー社が、4WDを得意としたオーストリアのシュタイアー・プフと共同で開発したモデルが、このクルマだった。その後、より高級化、快適化を目指し、メルセデスベンツチームが主導的立場に立って開発された新たなGヴァーゲンが、1990年に誕生したコードネームW463の名を持つモデル。これが今、日本で販売されるGクラスの直接の祖先である。
因みにW461とW463最大の違いは、前者がパートタイム4WDを備えているのに対し、後者はフルタイム4WDを持っていること。他には高級な内装を備えたW463に対し、簡素で機能的なインテリアとされるのがW461という違いがある。因みにW461も今でもオーダーできるようだ。
◆見た目はほぼ同じ、中身はフルチェンジ
話は横道にそれてしまったが、1990年に誕生したW463も、満を持して新時代へと移行した。と言ってもコードネームはW463のままで、しかしながら一見同じに見える外観ながら、その中身はほぼフルチェンジに近い激しい変更が施されていた。まずシャシーである。最大厚3.4mmの閉断面鋼板を用いたシャシーは、ホイールベースで40mm延長され、全長で53mm、全幅で64mm拡大した(欧州参考値による比較)。当然トレッドも拡大されているはずなのだが、その記載はカタログにもない。サスペンションは、従来の4輪ソリッドアクスルから、新たにフロントに独立懸架が与えられた。後述するがオンロードの走りが飛躍的に高まった大きな要因がここにある。
ボディの方はフェンダー、ボンネット、ドアなどをアルミとしたほか、高張力鋼板などを多用して、170kgの軽量化に成功している。ボディが大型化してなおだから、その効果は著しい。残念ながら、車両重量に関してもまだ明らかにされていないが、旧型は2560kgであった。インテリアでは12.3インチの巨大なディスプレイが二つ並ぶ、パッセンジャーモデルのメルセデス同様のメータークラスターに変貌を遂げて、非常にモダンになった。
エンジンは新たに4リットルV8直噴ツインターボが採用された。これは基本的にM176のコードネームで呼ばれる、『Sクラス』に採用されているものと同じもの。そして組み合わされるトランスミッションも、ついに9Gの9速ATがGクラスに採用されるようになった。
というわけで、形だけが従前のGクラスにそっくりだというわけで、中身はほぼ完全に一新されている。そうでありながら、W463のコードネームを継承したのは少し不自然なのだが、そこは突っ込まないようにしよう。とにかくクルマが凄まじい進化を遂げているのだから。
◆これ、ホントにラダーフレーム?
今回はオフロードとオンロードの双方を試すことが出来た。元来税込1562万円もする超が付く高級オフローダーを、本気でオフロードに誘い出すユーザーなどまずいないだろうから、このクルマで本格的にオフロードを体験するのは非常に貴重である。で、結論から言って、この巨体を持ちながら、Gクラスはほぼ完ぺきに、かなりのオフロードをこなす。
ガレ場で、フロントを擦りそうな場所でもしっかりとアプローチアングルが確保されているから、まずノーズ先端を打つこともなかった。もう一つ大きく変わったのがこれまでのボールナット式のステアリングから、新たに電動機械式のラック&ピニオンに形式そのものを変えたこと。よりシャープになったステアリング形式で、必ずしもオフロードでは有利に働かないはずのこの形式でも、何ら大きな変化は感じず、易々と各セクションをこなしてしまう。
一方で本当に驚かされるのが、オンロードの走りである。元々4輪固定軸にオフでの走りを考慮したボール&ナットのステアリングだから、オンではある程度中心付近の定まり方が不安定で、路面からの突き上げ感も比較的ダイレクトに入っていた乗り心地だったが、ニューモデルではそんなものは一切なく、これ、ホントにラダーフレーム?と疑いたくなるような乗り味に躾けてきた。
最早ラダーフレームを用いるこの手のモデルは、北米の大型SUVや、我が国のトヨタ『ランドクルーザー』など限定的かもしれないが、この領域にまで乗り心地や安定感、それにステアリングフィールを高めてくるのは並大抵のことではないはず。メルセデスには毎度「参りました」と言わざるを得ないのだが、このクルマではコテンパンにやられた印象である。どうぞ他メーカー様、メルセデスの真似はなさらぬように。ここまでやるには天文学的にお金がかかるかもしれませんぞ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
そもそもは、コードネームW460/461と呼ばれたパートタイム式の4輪駆動システムを持つ、純粋無垢のオフロードカーだった。元々4WD技術を持たなかったダイムラー社が、4WDを得意としたオーストリアのシュタイアー・プフと共同で開発したモデルが、このクルマだった。その後、より高級化、快適化を目指し、メルセデスベンツチームが主導的立場に立って開発された新たなGヴァーゲンが、1990年に誕生したコードネームW463の名を持つモデル。これが今、日本で販売されるGクラスの直接の祖先である。
因みにW461とW463最大の違いは、前者がパートタイム4WDを備えているのに対し、後者はフルタイム4WDを持っていること。他には高級な内装を備えたW463に対し、簡素で機能的なインテリアとされるのがW461という違いがある。因みにW461も今でもオーダーできるようだ。
◆見た目はほぼ同じ、中身はフルチェンジ
話は横道にそれてしまったが、1990年に誕生したW463も、満を持して新時代へと移行した。と言ってもコードネームはW463のままで、しかしながら一見同じに見える外観ながら、その中身はほぼフルチェンジに近い激しい変更が施されていた。まずシャシーである。最大厚3.4mmの閉断面鋼板を用いたシャシーは、ホイールベースで40mm延長され、全長で53mm、全幅で64mm拡大した(欧州参考値による比較)。当然トレッドも拡大されているはずなのだが、その記載はカタログにもない。サスペンションは、従来の4輪ソリッドアクスルから、新たにフロントに独立懸架が与えられた。後述するがオンロードの走りが飛躍的に高まった大きな要因がここにある。
ボディの方はフェンダー、ボンネット、ドアなどをアルミとしたほか、高張力鋼板などを多用して、170kgの軽量化に成功している。ボディが大型化してなおだから、その効果は著しい。残念ながら、車両重量に関してもまだ明らかにされていないが、旧型は2560kgであった。インテリアでは12.3インチの巨大なディスプレイが二つ並ぶ、パッセンジャーモデルのメルセデス同様のメータークラスターに変貌を遂げて、非常にモダンになった。
エンジンは新たに4リットルV8直噴ツインターボが採用された。これは基本的にM176のコードネームで呼ばれる、『Sクラス』に採用されているものと同じもの。そして組み合わされるトランスミッションも、ついに9Gの9速ATがGクラスに採用されるようになった。
というわけで、形だけが従前のGクラスにそっくりだというわけで、中身はほぼ完全に一新されている。そうでありながら、W463のコードネームを継承したのは少し不自然なのだが、そこは突っ込まないようにしよう。とにかくクルマが凄まじい進化を遂げているのだから。
◆これ、ホントにラダーフレーム?
今回はオフロードとオンロードの双方を試すことが出来た。元来税込1562万円もする超が付く高級オフローダーを、本気でオフロードに誘い出すユーザーなどまずいないだろうから、このクルマで本格的にオフロードを体験するのは非常に貴重である。で、結論から言って、この巨体を持ちながら、Gクラスはほぼ完ぺきに、かなりのオフロードをこなす。
ガレ場で、フロントを擦りそうな場所でもしっかりとアプローチアングルが確保されているから、まずノーズ先端を打つこともなかった。もう一つ大きく変わったのがこれまでのボールナット式のステアリングから、新たに電動機械式のラック&ピニオンに形式そのものを変えたこと。よりシャープになったステアリング形式で、必ずしもオフロードでは有利に働かないはずのこの形式でも、何ら大きな変化は感じず、易々と各セクションをこなしてしまう。
一方で本当に驚かされるのが、オンロードの走りである。元々4輪固定軸にオフでの走りを考慮したボール&ナットのステアリングだから、オンではある程度中心付近の定まり方が不安定で、路面からの突き上げ感も比較的ダイレクトに入っていた乗り心地だったが、ニューモデルではそんなものは一切なく、これ、ホントにラダーフレーム?と疑いたくなるような乗り味に躾けてきた。
最早ラダーフレームを用いるこの手のモデルは、北米の大型SUVや、我が国のトヨタ『ランドクルーザー』など限定的かもしれないが、この領域にまで乗り心地や安定感、それにステアリングフィールを高めてくるのは並大抵のことではないはず。メルセデスには毎度「参りました」と言わざるを得ないのだが、このクルマではコテンパンにやられた印象である。どうぞ他メーカー様、メルセデスの真似はなさらぬように。ここまでやるには天文学的にお金がかかるかもしれませんぞ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
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