【ジャガー XFスポーツブレイク 試乗】往年の良い味に戻りつつある…中村孝仁
かつてジャガーと言えば、『XJ』と呼ばれたハイエンドのサルーンと、『XK』の名を持ったスポーツカーの2種がラインナップされていただけの時代があった。
やがて、フォード傘下に入ると『Sタイプ』の投入に始まり、『Xタイプ』の導入など、矢継ぎ早にモデルレンジを拡大していった。しかし、その過程で古き良き時代のジャガーらしさが失われ、オールドファッションと断定された、創業者、サー・ウィリアム・ライオンズの息がかかったXJのスタイリングが北米市場で敬遠されると、ジャガーブランドの人気は、世界的に一旦は地に落ちてしまう。大きな理由はフォード車とのメカニカルコンポーネンツ共用であったように思うのだが、フォードの経営方針そのものにも問題があったように感じられた。
2008年にフォードから離れ、インドのタタ傘下に入って以降のジャガー各車は、古い体質をかなぐり捨てて、そのスタイルを一新。当初はなかなか受け入れがたかったものの、10年たった今、ようやくジャガーらしさを少なくとも外見上は取り戻している印象を受ける。
XFはタタ傘下に入った直後に誕生したモデルで、ジャガーのニュースタイリングをまとった最初のモデルでもあった。ブレーク(ステーションワゴン)が追加されたのはXFの初代モデル、X250と呼ばれた時代の2012年。ただし、この時は日本には導入されていない。そして現行X260デビュー(2015年)の2年後となる2017年に、現在のブレークが登場し、『XFスポーツブレイク』として日本にも正式導入がされたというわけである。
その新しいXFスポーツブレイク。最大の注目点は最新鋭の4気筒パワーユニット、インジニウムを搭載していることだ。勿論他にディーゼルモデルも存在するが、今回は新たに登場した最新のガソリン4気筒をチョイスした。この2リットル4気筒、従来のフォード製エコブーストユニットに代わるもので、ジャガーが10億ポンドを投資して開発した渾身の一作。すでにディーゼルのインジニウムは登場していたが、ガソリンのインジニウムは日本市場に関する限り、今年になって、『E-PACE』に搭載されて初登場したものだ。
ジャガーといえばこれまでは少なくとも6気筒以上というイメージが強かったが、今や主流は4気筒に移りつつあり、インジニウムの出来は、ジャガーにとっても大きな関心事であったはずである。そして結果から言うと、このエンジンの出来は、ライバルの4気筒と比較しても全く遜色ない。スポーティな雰囲気は正直BMWの4気筒以上。スムーズネスも最良の部類に入るエンジンと言って差し支えない。インジニウムには数種のチューンが存在するが、XFスポーツブレイクのそれは、250psという中間のパフォーマンスを持つユニット。1810kgという車重はものともしない。ワゴンとしての機能性も十分。ラゲッジスペースは通常565リットル、最大で1700リットルのスペースを持つ。
往年の良い味に戻りつつあると評したのは、その運動性能と乗り心地だ。かつては猫足とも呼ばれ、常にサスペンションが路面を捉えて離さず、快適であると同時に高い動的性能も示した。しかしそれはまさに100マイルまで。つまり160km/hだ。かつてジャガーのデザイナーだったジェフ・ローソン (故人)と話をしたことがある。それ以上の高性能は必要ないのか?と。すると彼は、イギリスのカントリーロードや高速道路は、出せても100マイル。その範囲内で最高の乗り味を提供すれば十分だと語ってくれた。
しかし、ジャガーはアウトバーンを走るライバルに対抗して、足を固め、その猫足の味付けはやがて消えていったのである。ところがそのアウトバーンにもほとんどのところが130km/hの速度制限が設けられた今、不要な高性能に対処する必要がなくなったからか、XFスポーツブレイクに乗っても、かつての猫足が戻りつつあり、その快適さはここ数年、ジャガーでは味わえなかったものである。リバウンド側にゆったりと動くサスペンションの味付けは、まるでフランス車のようでもある。
目線が高いSUVが全盛である今、同じ居住空間でより安心感の高い走りを可能とするワゴンの存在は、もう一度見直されても良いと感じる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
やがて、フォード傘下に入ると『Sタイプ』の投入に始まり、『Xタイプ』の導入など、矢継ぎ早にモデルレンジを拡大していった。しかし、その過程で古き良き時代のジャガーらしさが失われ、オールドファッションと断定された、創業者、サー・ウィリアム・ライオンズの息がかかったXJのスタイリングが北米市場で敬遠されると、ジャガーブランドの人気は、世界的に一旦は地に落ちてしまう。大きな理由はフォード車とのメカニカルコンポーネンツ共用であったように思うのだが、フォードの経営方針そのものにも問題があったように感じられた。
2008年にフォードから離れ、インドのタタ傘下に入って以降のジャガー各車は、古い体質をかなぐり捨てて、そのスタイルを一新。当初はなかなか受け入れがたかったものの、10年たった今、ようやくジャガーらしさを少なくとも外見上は取り戻している印象を受ける。
XFはタタ傘下に入った直後に誕生したモデルで、ジャガーのニュースタイリングをまとった最初のモデルでもあった。ブレーク(ステーションワゴン)が追加されたのはXFの初代モデル、X250と呼ばれた時代の2012年。ただし、この時は日本には導入されていない。そして現行X260デビュー(2015年)の2年後となる2017年に、現在のブレークが登場し、『XFスポーツブレイク』として日本にも正式導入がされたというわけである。
その新しいXFスポーツブレイク。最大の注目点は最新鋭の4気筒パワーユニット、インジニウムを搭載していることだ。勿論他にディーゼルモデルも存在するが、今回は新たに登場した最新のガソリン4気筒をチョイスした。この2リットル4気筒、従来のフォード製エコブーストユニットに代わるもので、ジャガーが10億ポンドを投資して開発した渾身の一作。すでにディーゼルのインジニウムは登場していたが、ガソリンのインジニウムは日本市場に関する限り、今年になって、『E-PACE』に搭載されて初登場したものだ。
ジャガーといえばこれまでは少なくとも6気筒以上というイメージが強かったが、今や主流は4気筒に移りつつあり、インジニウムの出来は、ジャガーにとっても大きな関心事であったはずである。そして結果から言うと、このエンジンの出来は、ライバルの4気筒と比較しても全く遜色ない。スポーティな雰囲気は正直BMWの4気筒以上。スムーズネスも最良の部類に入るエンジンと言って差し支えない。インジニウムには数種のチューンが存在するが、XFスポーツブレイクのそれは、250psという中間のパフォーマンスを持つユニット。1810kgという車重はものともしない。ワゴンとしての機能性も十分。ラゲッジスペースは通常565リットル、最大で1700リットルのスペースを持つ。
往年の良い味に戻りつつあると評したのは、その運動性能と乗り心地だ。かつては猫足とも呼ばれ、常にサスペンションが路面を捉えて離さず、快適であると同時に高い動的性能も示した。しかしそれはまさに100マイルまで。つまり160km/hだ。かつてジャガーのデザイナーだったジェフ・ローソン (故人)と話をしたことがある。それ以上の高性能は必要ないのか?と。すると彼は、イギリスのカントリーロードや高速道路は、出せても100マイル。その範囲内で最高の乗り味を提供すれば十分だと語ってくれた。
しかし、ジャガーはアウトバーンを走るライバルに対抗して、足を固め、その猫足の味付けはやがて消えていったのである。ところがそのアウトバーンにもほとんどのところが130km/hの速度制限が設けられた今、不要な高性能に対処する必要がなくなったからか、XFスポーツブレイクに乗っても、かつての猫足が戻りつつあり、その快適さはここ数年、ジャガーでは味わえなかったものである。リバウンド側にゆったりと動くサスペンションの味付けは、まるでフランス車のようでもある。
目線が高いSUVが全盛である今、同じ居住空間でより安心感の高い走りを可能とするワゴンの存在は、もう一度見直されても良いと感じる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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