【MINI ジョンクーパーワークス 新型試乗】やっぱりこれ、最もミニを感じるクルマでした…中村孝仁
コードネームF56を名乗る『MINI』は、今から3年前に登場した。当時も『JCW(ジョンクーパーワークス)』に試乗して、最良のミニだと評したことを覚えているが、今回もまた、改めて最もミニらしいミニだと思った。
そもそもミニらしいミニとは、旧世代のミニを知るものとしては、その俊敏さと、そのサイズ感からしてあり得ないような豪快な走りを披露してくれるところにあった。かつてその旧型ミニ、即ちローバー時代のミニでレースをしていた身としては、筑波サーキットにおいて、当時の最強スポーツ、ホンダ『NSX』をも蹴散らすほどのラップタイムを見て、改めてその奥深さを感じさせてもらったものだ。当時Aタイプと呼ばれたOHVのエンジンが、チューニングしているとはいえ、レブリミット9000rpmで回転していたことも、やはり信じ難いものだった。
そんなミニの奥深さを今のミニで体感できるのは、やはりJCWを置いて他にはない。ダッシュセンターに付く赤いスターター・トグルスイッチを下に押し下げると、JCWのパワーユニットは瞬時に目覚める。「ヴァォ~」という何とも野太いサウンドは、他のミニとは様相を異にし、かつてのチューンドミニのサウンドに近い。
3年が経過したF56JCWは、そのエンジンや基本スペックには手を付けていないようだが、トランスミッションは新しくなった。従来の6速ATに代えて、新たに8速ATを手に入れた。3ドアモデルで8速ATが採用されるのはJCWだけで、他はMTもしくはDCTとされているから、ボディは車幅が狭いが、内容的には「クラブマン」などと同じになっている。
前回のデビュー時から変わっているのは、モード切り替えスイッチの位置。これもスタータースイッチの横、トグルスイッチ群の右端に付くようになり、ここでスポーツもしくはグリーンの切り替えが行われる。
今回はかなりの距離を走った。おおよそ500km。高速主体の長距離から、近所の町内回りまで、ほぼあらゆるシチュエーションで試してみたが、前回の試乗で感じた、町内回りでのサスペンションの突き上げ感はほぼ消えている。これならば完全にファーストカーとして使えるな…という印象である。高速直進安定性は路面がフラットな限り抜群だ。
ただ、アンジュレーションには弱みを見せて、常に前を見てステアリングをしっかりと保持していないと、突然クルマはあらぬ方向に向きを変えるから、高速走行時はステアリング操作に集中する必要があって、これは少々疲れる。JCWにズボラ運転は禁物ということだ。8速となった効果は、当然ながら巡行時のエンジン回転引き下げと、それに伴い燃費向上が挙げられるが、同時に静粛性向上を得たことも大きなメリットだと感じた。
このクルマにとって最高のステージは、やはりワインディング。普段単調な高速走行では滅多に使うことの無いパドルシフトに自然と手が伸びて、用もないのについつい必要以上の加速と減速を繰り返してしまう。そのメリハリの効いた走りの感覚は、このクルマならでは、である。
他のモデルのATがDCTに移行し、それに伴ってシフトレバーのデザインが変更されているが、8速AT化したJCWも例外ではない。従来のPRNDと縦に並んだシフトポジションからPが押し出されて、レバー上に付くプッシュボタンでPがセレクトされるようになった。この結果、シフトレバーは上にワンプッシュでRに。下にワンプッシュでDに動くようになっている。
やはり価格を考えても少し特殊なミニであることに変わりはないと思うが、伝統的にミニのフィーリングと言えば、やはりこれ。かつてのミニを知らないユーザーには素晴らしいスポーツ性を感じさせ、過去を知るユーザーには最もミニらしさを感じさせる1台ではないだろうか。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
そもそもミニらしいミニとは、旧世代のミニを知るものとしては、その俊敏さと、そのサイズ感からしてあり得ないような豪快な走りを披露してくれるところにあった。かつてその旧型ミニ、即ちローバー時代のミニでレースをしていた身としては、筑波サーキットにおいて、当時の最強スポーツ、ホンダ『NSX』をも蹴散らすほどのラップタイムを見て、改めてその奥深さを感じさせてもらったものだ。当時Aタイプと呼ばれたOHVのエンジンが、チューニングしているとはいえ、レブリミット9000rpmで回転していたことも、やはり信じ難いものだった。
そんなミニの奥深さを今のミニで体感できるのは、やはりJCWを置いて他にはない。ダッシュセンターに付く赤いスターター・トグルスイッチを下に押し下げると、JCWのパワーユニットは瞬時に目覚める。「ヴァォ~」という何とも野太いサウンドは、他のミニとは様相を異にし、かつてのチューンドミニのサウンドに近い。
3年が経過したF56JCWは、そのエンジンや基本スペックには手を付けていないようだが、トランスミッションは新しくなった。従来の6速ATに代えて、新たに8速ATを手に入れた。3ドアモデルで8速ATが採用されるのはJCWだけで、他はMTもしくはDCTとされているから、ボディは車幅が狭いが、内容的には「クラブマン」などと同じになっている。
前回のデビュー時から変わっているのは、モード切り替えスイッチの位置。これもスタータースイッチの横、トグルスイッチ群の右端に付くようになり、ここでスポーツもしくはグリーンの切り替えが行われる。
今回はかなりの距離を走った。おおよそ500km。高速主体の長距離から、近所の町内回りまで、ほぼあらゆるシチュエーションで試してみたが、前回の試乗で感じた、町内回りでのサスペンションの突き上げ感はほぼ消えている。これならば完全にファーストカーとして使えるな…という印象である。高速直進安定性は路面がフラットな限り抜群だ。
ただ、アンジュレーションには弱みを見せて、常に前を見てステアリングをしっかりと保持していないと、突然クルマはあらぬ方向に向きを変えるから、高速走行時はステアリング操作に集中する必要があって、これは少々疲れる。JCWにズボラ運転は禁物ということだ。8速となった効果は、当然ながら巡行時のエンジン回転引き下げと、それに伴い燃費向上が挙げられるが、同時に静粛性向上を得たことも大きなメリットだと感じた。
このクルマにとって最高のステージは、やはりワインディング。普段単調な高速走行では滅多に使うことの無いパドルシフトに自然と手が伸びて、用もないのについつい必要以上の加速と減速を繰り返してしまう。そのメリハリの効いた走りの感覚は、このクルマならでは、である。
他のモデルのATがDCTに移行し、それに伴ってシフトレバーのデザインが変更されているが、8速AT化したJCWも例外ではない。従来のPRNDと縦に並んだシフトポジションからPが押し出されて、レバー上に付くプッシュボタンでPがセレクトされるようになった。この結果、シフトレバーは上にワンプッシュでRに。下にワンプッシュでDに動くようになっている。
やはり価格を考えても少し特殊なミニであることに変わりはないと思うが、伝統的にミニのフィーリングと言えば、やはりこれ。かつてのミニを知らないユーザーには素晴らしいスポーツ性を感じさせ、過去を知るユーザーには最もミニらしさを感じさせる1台ではないだろうか。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
最新ニュース
-
-
気付いた時にはパンクする!? 知らないと損するラジエーター選びの新常識と失敗しないポイント~カスタムHOW TO~
2024.11.30
-
-
-
スバル『WRX』の高性能モデル「tS」、2025年初頭より米国で発売へ
2024.11.30
-
-
-
マツダ『CX-5』など人気の4モデルに新機種、ブラックやレザー仕様など…12月25日発売へ
2024.11.30
-
-
-
2倍の速さで自動駐車! メルセデスベンツのパーキングアシストが性能向上
2024.11.29
-
-
-
「超イケてる!」ホンダの本格SUV『パスポート』発表に日本導入を期待する声
2024.11.29
-
-
-
BMW『X3』新型はマイルドHV、Mパフォーマンスも…価格は798万~998万円
2024.11.29
-
-
-
レクサス、日本の伝統工芸に現代技術を融合…アート作品展開催中
2024.11.29
-
最新ニュース
-
-
気付いた時にはパンクする!? 知らないと損するラジエーター選びの新常識と失敗しないポイント~カスタムHOW TO~
2024.11.30
-
-
-
スバル『WRX』の高性能モデル「tS」、2025年初頭より米国で発売へ
2024.11.30
-
-
-
マツダ『CX-5』など人気の4モデルに新機種、ブラックやレザー仕様など…12月25日発売へ
2024.11.30
-
-
-
2倍の速さで自動駐車! メルセデスベンツのパーキングアシストが性能向上
2024.11.29
-
-
-
「超イケてる!」ホンダの本格SUV『パスポート』発表に日本導入を期待する声
2024.11.29
-
-
-
BMW『X3』新型はマイルドHV、Mパフォーマンスも…価格は798万~998万円
2024.11.29
-
MORIZO on the Road