【スズキ ジムニー 新型試乗】ひさびさに現れた「乗ってみたくなる日本車」…河村康彦
販売の立ち上がり絶好調! と、そんな景気の良いニュースが届くようになって久しい新型『ジムニー』と新型『ジムニーシエラ』。乗ったのは、ボディサイズとエンジン排気量が軽自動車の規格内に収められた“ドメスティック・バージョン”であるジムニーのMT仕様と、そんなジムニーをベースにオーバーフェンダーや専用バンパーの採用などで、全幅と全長にアドオンが行われたシエラのAT仕様だ。
車両重量は両モデルで40~50kgほどしか異ならないため、相対的に動力性能に優れるのは当然シエラ。いかにターボ付きといえども、1トンを大きく上回る重量に660ccという排気量は苦しい。端的に言って、ジムニーは「不当に小さな排気量で無理矢理走らせている」という感覚が付きまとうし、燃費計の数値を見ていても、むしろ「シエラの方が優れる」というのが両車の関係なのだ。
だから、税金の違いが気にならないならばシエラがオススメ…と言いたいところなのだが、コンパクトさにこそ魅力を感じるという人にとっては、今度は「170mmも大きな全幅」がネックになる可能性も。シエラには、あそこまでフェンダーの張り出しが大きくない仕様もあって良いのではないだろうか?
強化されたとは言ってもラダー式のフレームを採用し、そこにリジッド式サスペンションやボールナット式のステアリングを組み合わせたこともあり、現代の水準からすれば微舵操作に対する応答性や直進性が優れているとは言い難い。こちらも従来型比では大きく向上をしているが、快適性もロードノイズが思いのほか小さく感心する静粛性を除けば、特に褒められたものではないのは事実だ。
加えれば、MTでもATでも「あと1段ずつは欲しい」と思えるトランスミッションの印象なども含め、“アバタ”は数多く存在する2つのモデルだが、試乗後に「とても楽しかった!!」と心底思えたのは、基本的にはどちらも日本の市場を重視して開発されたことを、ひしひしと実感することが出来たためでもありそう。
軽自動車の規格内で作られたジムニーはもとより、「アメリカ以外にグローバル展開される」というシエラでも、その取り回しはカメラなどに頼らずともすこぶる良好。横開き式のテールゲートが左側通行国に適した右ヒンジの設計である点にも、“ジャパン・ファースト”のおもてなし思想を実感出来るのだ。
そして何よりも、かくも存在感が強く、所有欲を満足させてくれる趣味性に溢れたモデルが、「大半のグレードで200万円!」という価格設定こそが見逃せない。
手の届く範囲に現れた、一度は乗ってみたくなる日本車…振り返ってみれば、それは実に久々な存在なのではないだろうか!
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★(ジムニー)/★★★(シエラ)
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
河村康彦|モータージャーナリスト
自動車専門誌編集部員を経て、1985年よりフリーランス活動を開始。現所有車はポルシェ『ケイマンS』、スマート『フォーツー』、そしてVW『ルポGTI』(ただしドイツ置き去り)。
(レスポンス 河村康彦)
車両重量は両モデルで40~50kgほどしか異ならないため、相対的に動力性能に優れるのは当然シエラ。いかにターボ付きといえども、1トンを大きく上回る重量に660ccという排気量は苦しい。端的に言って、ジムニーは「不当に小さな排気量で無理矢理走らせている」という感覚が付きまとうし、燃費計の数値を見ていても、むしろ「シエラの方が優れる」というのが両車の関係なのだ。
だから、税金の違いが気にならないならばシエラがオススメ…と言いたいところなのだが、コンパクトさにこそ魅力を感じるという人にとっては、今度は「170mmも大きな全幅」がネックになる可能性も。シエラには、あそこまでフェンダーの張り出しが大きくない仕様もあって良いのではないだろうか?
強化されたとは言ってもラダー式のフレームを採用し、そこにリジッド式サスペンションやボールナット式のステアリングを組み合わせたこともあり、現代の水準からすれば微舵操作に対する応答性や直進性が優れているとは言い難い。こちらも従来型比では大きく向上をしているが、快適性もロードノイズが思いのほか小さく感心する静粛性を除けば、特に褒められたものではないのは事実だ。
加えれば、MTでもATでも「あと1段ずつは欲しい」と思えるトランスミッションの印象なども含め、“アバタ”は数多く存在する2つのモデルだが、試乗後に「とても楽しかった!!」と心底思えたのは、基本的にはどちらも日本の市場を重視して開発されたことを、ひしひしと実感することが出来たためでもありそう。
軽自動車の規格内で作られたジムニーはもとより、「アメリカ以外にグローバル展開される」というシエラでも、その取り回しはカメラなどに頼らずともすこぶる良好。横開き式のテールゲートが左側通行国に適した右ヒンジの設計である点にも、“ジャパン・ファースト”のおもてなし思想を実感出来るのだ。
そして何よりも、かくも存在感が強く、所有欲を満足させてくれる趣味性に溢れたモデルが、「大半のグレードで200万円!」という価格設定こそが見逃せない。
手の届く範囲に現れた、一度は乗ってみたくなる日本車…振り返ってみれば、それは実に久々な存在なのではないだろうか!
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