【スズキ ジムニー 新型試乗】20年分の進化は、さすがに大きかった…片岡英明

スズキ ジムニー 新型
『ジムニー』シリーズは間もなく累計生産台数300万台の偉業を達成する。デビューして2018年で48年になるが、その間にモデルチェンジしたのは3度だ。先代は20年も第一線で活躍し続けるなど、驚くほど息の長いクロスカントリー4WDなのである。
新型ジムニーのメカニズム
最新の4代目ジムニーも基本コンセプトは変わらない。扱いやすい軽自動車サイズにこだわりながら伝統のタフな走りに磨きをかけた。

基本的なメカニズムも受け継いだ。骨格は強靭なはしご型のラダーフレームである。だが、クロスメンバーを6本から8本に増やし、中央部にはXメンバーを追加した。ねじり剛性は先代の1.5倍だ。サスペンションも先代と同じ3リンク式のリジッドアクスルだが、きめ細かい改良を施した。また、ボールナット式のステアリングにダンパーを追加し、悪路でのキックバックを抑え込んでいる。
驚きのオフロード性能
オフロードは特設コースでの試乗だった。林道コースのほか、モーグルやすり鉢のような傾斜のバンク、タイヤを重ねた障害物の乗り越えなどのステージが設けられている。だが、ジムニーは実力の半分も使うことなく、鼻歌交じりで走りきれてしまう。

深いわだちが連続するモーグルコースでは左右輪の空転によって駆動力が奪われ、スタックすることが多い。ジムニーは脱出性能を高めるために、電子制御ブレーキLSDトラクションコントロールを初めて採用した。

荒れた路面から蹴り上げられるキックバックは大幅に減り、サスペンションはストロークがたっぷりと取られているから路面からの突き上げも上手に吸収する。連続するギャップや大きなコブを不安感なく乗り越えることができた。ボディとフレームは驚くほど剛性が高く、足の動きもしなやかだ。片輪が浮いてしまう対角線スタックの難コース、これもたやすくクリアできた。また、乗り心地も20年分の進化が感じ取れる。
ジムニービギナーにも優しい装備
急勾配の下り坂では、ブレーキを自動的にかけ、加速するのを上手に抑えてくれるヒルディセントコントロールが、登り坂の再発進ではブレーキペダルから足を離しても2秒間はブレーキを作動させてくれるヒルホールド機能が大いに役立った。アクセル操作とクラッチ操作に専念できるのがいい。また、新設定された横滑り防止装置(ESP)もビギナーには頼りになる装備と言えるだろう。

ご存知のようにジムニーは、2WDと4WDを任意で切り替えるパートタイム4WDだ。最大の特徴は、4L/4H切り替え式の副変速機を搭載していることである。フラットダートや雪道では4Hを、今回のように駆動抵抗が大きい、過酷なステージでは4Lレンジをチョイスすれば安全に、確実に難コースを走りきることが可能だ。副変速機の切り替えは、プッシュ式からレバー式に戻された。ポジションがはっきりと分かり、安心感がある。
扱いやすいパワーユニット
悪路での扱いやすさに貢献していたのが新しいパワーユニットだ。658ccのR06A型直列3気筒DOHC 4バルブターボは、先代のK6A型より低回転のトルクが太く、ターボの過給も速やかだから低速走行のラフロードでも運転しやすかった。

トランスミッションは5速MTと4速ATを設定する。舗装路では5速MTの2速ギアと3速ギアのつながりに不満が出た。だが、低速を強いられる悪路では使い勝手がいい。舗装路での走りの軽快感と快適性も大きく向上している。さすがに20年分の進化は大きく、魅力を増していた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

(レスポンス 片岡英明)

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