【スズキ ジムニーシエラ 新型試乗】今度のシエラはジムニー以上の存在感を放っている…片岡英明
世界で戦うジムニーシエラ
世界では『ジムニー』より有名で、多くの国に熱狂的なファンを持つクロスカントリー4WDが『ジムニーシエラ』だ。ジムニーは軽自動車だから制約が多い。これに対しジムニーシエラは、制約の少ない小型車だからボディサイズもパワーユニットも余裕がある。
もちろん、ベースとなっているのはジムニーだが、バンパーを大きくし、樹脂製のオーバーフェンダーを被せて全幅を170mm、トレッドも130mm広げた。だから一段とカッコよく見え、遠くからでも目立つ。タイヤサイズもジムニーは175/80 R16だが、シエラは195/80 R15だ。メーターなども専用デザインとした。
キャビンスペースはジムニーと同じだから前席優先の設計である。Aピラーが後退するとともに立ったから視界はいいし、見下ろし感覚だから車両感覚もつかみやすい。頭上は余裕たっぷりで、大柄な人でも最適なポジションで座ることができる。
4速AT車は左側に足を置くスペースがあるが、5速MT車はフットレストがないのが残念。後席はそれなりの広さだが、乗り込んでしまえば窮屈とは感じない。両サイドのボックスがなくなったので横方向も余裕があった。
力強く、静粛性も格段に高いシエラ
ジムニーと大きく違うのはパワーユニットだ。先代は1.3リットルのM13A型を積んでいたが、新型シエラは200cc大きい1.5リットルのK15B型直列4気筒DOHCエンジンを搭載する。ターボではなく自然吸気エンジンだが、動力性能と快適性に不満はなかった。
エンジンは軽快に回り、ロックアップ機構付きの4速ATでも力強い加速を見せつける。3000回転あたりからパワーとトルクが盛り上がり、パーシャル域からの再加速も冴えていた。
静粛性能も大きく向上している。ジムニーも静かになったと感じた。が、遮音材は同じ量でも静粛性は一歩上の印象だ。とくに高速走行では差をつける。振動もうまく抑えていた。アイドリングストップの作動時間は長くはないが、味付けは上手だ。
追従クルーズコントロールがあれば
ジムニーよりトレッドが広く、太くて大径のタイヤを履いている。だからコーナリングはジムニーより安定して、踏ん張りが利く。グラッとくるロールも上手に抑えられていた。
ハンドリングは先代よりはるかに洗練度が高い。パワーステアリングは舵を入れたときの正確性が増し、狙い通りに気持ちよく曲がる。直進安定性もよくなった。ブレーキング時の落ち着きも増し、挙動の乱れは少ない。また、悪路と舗装路での乗り心地も向上している。ジムニーのほうが路面からの当たりは穏やかに感じるが、不快ではない。
新しいジムニーシエラは安全装備も充実させ、魅力を増した。数少ない不満は、追従クルーズコントロールでないことだ。いくつか不満はあるが、今度のジムニーシエラはジムニー以上に強い存在感を放っている。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
(レスポンス 片岡英明)
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