【ボルボ XC40 試乗】おススメできない部分が見当たらない…井元康一郎
ボルボ初のコンパクトSUV
ボルボ『XC40』は全長4.4m強と、SUVとしては比較的コンパクトなサイズのモデル。ボルボがこのクラスのSUVをリリースするのは初めてである。駆動方式はFWD(前輪駆動)とAWDの2種。エンジンは全車2リットル直4ターボだが、グレードによってターボチャージャーなどの補器類が異なり、140kW(190ps)と185kW(252ps)の2種類のチューニングが存在する。
変速機は全グレードともトルクコンバーター式8速AT。
テストドライブしたのは上から2番目の「T5 R-DESIGN」という185kWエンジン+AWDのスポーティグレード。試乗ルートは芦ノ湖スカイラインをはじめとする箱根周辺の峠道が7割で、あとは一般道と自動車専用道路。路面は全線ドライ。1名乗車、エアコンAUTO。
欧州カーオブザイヤーも納得
では本題。XC40 T5 R-DESIGNは先頃、2001年のアルファロメオ『147』以来、17年ぶりにプレミアムブランドとして欧州カーオブザイヤーの大賞を獲得した。2時間程度の短いテストドライブではあるが実物に乗ってみたところ、果たして「こんなSUVならカーオブザイヤーも獲るわ」と腑に落ちるようなモデルであった。
最大の特色はウェルバランスだ。短時間のテストドライブではスペース、乗り心地、騒音・振動、操縦安定性、動力性能、経済性、質感など、ほとんどの評価パラメーターにおいて穴らしい穴が見当たらなかった。
最も驚かされたポイントは、操縦安定性と乗り心地の両立だった。舗装面の荒れがひどく、アンジュレーション(路面のうねり)も結構きつい芦ノ湖スカイラインおよびその周辺の山岳路を走ったが、サスペンションは外径が730mm前後もある245/45R20サイズの重いランフラットタイヤ、ピレリ「P ZERO」を、それとはにわかに信じ難いくらいしなやかに路面に張り付かせた。
そのロードホールディングを生かしたハンドリングチューンは、ステアリングの切り足し、切り戻しの量とロール角の変化がきっちりと合うハイレベルなもの。それでいて乗り心地も優秀で、振動吸収性はアンジュレーション通過のような大きなストローク、壊れたアスファルトのギャップを踏んだときのような小さなストロークとも第一級で、ばたつきやぶるつきはほとんど感じられなった。
操縦性と乗り心地のウェルバランスという点では、やはり世界で高評価を得ているボルボの上位モデル『XC60』に対しても下克上状態にあるようにすら感じられた。
実用性に優れたパッケージング
もう一点、優れていたのはスペースだ。室内は前後席とも非常に良い姿勢で着座でき、スペースも充分に広かった。ノーズの長いプレミアムセグメントでそういうパッケージをすると荷室が犠牲になったりするものだが、その荷室もまた充分な広さ。
容積自体は460リットルと、このクラスとしてはそれほどだだっ広いというわけではないが、その容積はシートバック上端と床面の高低差を大きくして無理やり稼ぎ出したものではなく、いかにも積載性の良さそうなスクエアなスペースデザインを保ってのもので、体感的な広さはその数値を大きく超えるものだった。ラゲッジスペースの床ボードにはちょっとしたカラクリがあり、小さな荷物が横Gで跳ね回らないようにできるなど、実用上の工夫もなされていた。
最高評価をつけないわけにはいかない
252psエンジンの働きは十分に良かった。下の段がクロスレシオとされた8速ATと素早い過給の立ち上がりの合わせ技で、ゼロスタートから中高速域までトルクの凸凹の小さな気持ちよい加速感が得られた。燃費は測っていないが、オンボード燃費計の数値は小さなコーナーが連続し、高低差も結構大きな芦ノ湖スカイラインなどを走ったわりには良く、11km/リットル前後をマークしていた。
以上がファーストドライブの印象。R-DESIGNでない他のグレードがどんな乗り味を持っているかは不明であるし、長距離を乗れば何らかのアラが見えてくる可能性はもちろんあるが、少なくとも今回のテストドライブのインプレッションに限れば最高評価をつけないわけにはいかない。
個人的に残念な点があるとすれば、日本市場にはターボディーゼルの設定がなく、今後の投入予定もないこと。日本の速度域なら最高出力150psのD3というエンジンで充分すぎるくらいなので、D3ディーゼルでも入れてくれれば遠乗り派のユーザーへの訴求力はさらに高まるのにと思われた。
ライバル勢にとっての幸運
ライバルは欧州勢ではアウディ『Q3』、BMW『X3』、メルセデスベンツ『GLC』、日本勢ではレクサス『NX』あたりになるだろうが、どのブランドから見ても、突然思いもよらない難敵が登場したという感じであろう。
ライバルにとって幸運なのは、XC60、XC40と世界市場でヒットが続いたことで注文に生産がまったく追いつかず、ボルボが商機を逸し気味なことだ。日本でも発売直後には今年の日本市場向けの割り当て台数が予約で埋まってしまったという。プレミアムブランドとして生産能力をあまり上げないという方針だったボルボにとって、この状況をどうするかは悩ましいところであろうが、とりあえずフル操業で需要に応える必要はあるだろう。
プレミアムセグメントのコンパクトSUVが欲しいというカスタマーにとっては、迷うことなくバイイングリストに入れていいモデルであるように思う。もちろんボルボというブランドや内外装のデザインに対する好き嫌いはあるだろうが、機能、性能や動的・静的質感の面ではプレミアムセグメントとしてここはおススメできないという部分が今のところ、見当たらないのである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
(レスポンス 井元康一郎)
ボルボ『XC40』は全長4.4m強と、SUVとしては比較的コンパクトなサイズのモデル。ボルボがこのクラスのSUVをリリースするのは初めてである。駆動方式はFWD(前輪駆動)とAWDの2種。エンジンは全車2リットル直4ターボだが、グレードによってターボチャージャーなどの補器類が異なり、140kW(190ps)と185kW(252ps)の2種類のチューニングが存在する。
変速機は全グレードともトルクコンバーター式8速AT。
テストドライブしたのは上から2番目の「T5 R-DESIGN」という185kWエンジン+AWDのスポーティグレード。試乗ルートは芦ノ湖スカイラインをはじめとする箱根周辺の峠道が7割で、あとは一般道と自動車専用道路。路面は全線ドライ。1名乗車、エアコンAUTO。
欧州カーオブザイヤーも納得
では本題。XC40 T5 R-DESIGNは先頃、2001年のアルファロメオ『147』以来、17年ぶりにプレミアムブランドとして欧州カーオブザイヤーの大賞を獲得した。2時間程度の短いテストドライブではあるが実物に乗ってみたところ、果たして「こんなSUVならカーオブザイヤーも獲るわ」と腑に落ちるようなモデルであった。
最大の特色はウェルバランスだ。短時間のテストドライブではスペース、乗り心地、騒音・振動、操縦安定性、動力性能、経済性、質感など、ほとんどの評価パラメーターにおいて穴らしい穴が見当たらなかった。
最も驚かされたポイントは、操縦安定性と乗り心地の両立だった。舗装面の荒れがひどく、アンジュレーション(路面のうねり)も結構きつい芦ノ湖スカイラインおよびその周辺の山岳路を走ったが、サスペンションは外径が730mm前後もある245/45R20サイズの重いランフラットタイヤ、ピレリ「P ZERO」を、それとはにわかに信じ難いくらいしなやかに路面に張り付かせた。
そのロードホールディングを生かしたハンドリングチューンは、ステアリングの切り足し、切り戻しの量とロール角の変化がきっちりと合うハイレベルなもの。それでいて乗り心地も優秀で、振動吸収性はアンジュレーション通過のような大きなストローク、壊れたアスファルトのギャップを踏んだときのような小さなストロークとも第一級で、ばたつきやぶるつきはほとんど感じられなった。
操縦性と乗り心地のウェルバランスという点では、やはり世界で高評価を得ているボルボの上位モデル『XC60』に対しても下克上状態にあるようにすら感じられた。
実用性に優れたパッケージング
もう一点、優れていたのはスペースだ。室内は前後席とも非常に良い姿勢で着座でき、スペースも充分に広かった。ノーズの長いプレミアムセグメントでそういうパッケージをすると荷室が犠牲になったりするものだが、その荷室もまた充分な広さ。
容積自体は460リットルと、このクラスとしてはそれほどだだっ広いというわけではないが、その容積はシートバック上端と床面の高低差を大きくして無理やり稼ぎ出したものではなく、いかにも積載性の良さそうなスクエアなスペースデザインを保ってのもので、体感的な広さはその数値を大きく超えるものだった。ラゲッジスペースの床ボードにはちょっとしたカラクリがあり、小さな荷物が横Gで跳ね回らないようにできるなど、実用上の工夫もなされていた。
最高評価をつけないわけにはいかない
252psエンジンの働きは十分に良かった。下の段がクロスレシオとされた8速ATと素早い過給の立ち上がりの合わせ技で、ゼロスタートから中高速域までトルクの凸凹の小さな気持ちよい加速感が得られた。燃費は測っていないが、オンボード燃費計の数値は小さなコーナーが連続し、高低差も結構大きな芦ノ湖スカイラインなどを走ったわりには良く、11km/リットル前後をマークしていた。
以上がファーストドライブの印象。R-DESIGNでない他のグレードがどんな乗り味を持っているかは不明であるし、長距離を乗れば何らかのアラが見えてくる可能性はもちろんあるが、少なくとも今回のテストドライブのインプレッションに限れば最高評価をつけないわけにはいかない。
個人的に残念な点があるとすれば、日本市場にはターボディーゼルの設定がなく、今後の投入予定もないこと。日本の速度域なら最高出力150psのD3というエンジンで充分すぎるくらいなので、D3ディーゼルでも入れてくれれば遠乗り派のユーザーへの訴求力はさらに高まるのにと思われた。
ライバル勢にとっての幸運
ライバルは欧州勢ではアウディ『Q3』、BMW『X3』、メルセデスベンツ『GLC』、日本勢ではレクサス『NX』あたりになるだろうが、どのブランドから見ても、突然思いもよらない難敵が登場したという感じであろう。
ライバルにとって幸運なのは、XC60、XC40と世界市場でヒットが続いたことで注文に生産がまったく追いつかず、ボルボが商機を逸し気味なことだ。日本でも発売直後には今年の日本市場向けの割り当て台数が予約で埋まってしまったという。プレミアムブランドとして生産能力をあまり上げないという方針だったボルボにとって、この状況をどうするかは悩ましいところであろうが、とりあえずフル操業で需要に応える必要はあるだろう。
プレミアムセグメントのコンパクトSUVが欲しいというカスタマーにとっては、迷うことなくバイイングリストに入れていいモデルであるように思う。もちろんボルボというブランドや内外装のデザインに対する好き嫌いはあるだろうが、機能、性能や動的・静的質感の面ではプレミアムセグメントとしてここはおススメできないという部分が今のところ、見当たらないのである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
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パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
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