【ルノー メガーヌR.S. 新型試乗】日本で味付けされたハンドリングの真価は?…中村孝仁
日本で走ることも想定して開発された
前後サスペンション、マクファーソン/トーションビーム。字面だけ捉えたら、何だ、大したことないじゃん?ってことになるのだが、この大したことない足を大したことあるものにするのが、ルノースポールのマジックである。
正直言って、骨格は『メガーヌGT』と何ら変わりの無いもの。ボディだけは幅が広がって、かなり厳つい雰囲気を醸し出す。勿論パフォーマンスもGTとは大違いなのだが、驚いたことにこのエンジン、基本的にあのアルピーヌ『A110』と同じものである。つまり日産が基本を作り、ルノーがチューンしたもので、そのパフォーマンスは279ps、390Nmというから、アルピーヌよりもパワフルなのだ。
もっと驚いたことがある、ルノースポールの開発陣は、世界的に見ても販売量の多い、ということは、ルノースポールファンが多い日本という市場を重要視し、そのハンドリングの味付けの舞台として日本も組み入れて、開発過程で何と日本の道路も走らせているというのだ。
特に今回試乗の舞台となった、箱根アネスト岩田ターンパイクも走っているのだそうである。果たしてどの程度のスピードで走らせたのかは言わずもがなだろうが、足の味付けのテイストの中に日本の道路が含まれる高性能ハッチバックなど、海外メーカーではルノーだけだと思うし、そこまでやってくれるルノースポールにはどうしても親近感がわいてしまう。
ラリーから生まれた快適技術
4コントロールなる4輪操舵を持つ足は、前述したマクファーソン/トーションビームに加えられた僅かなフレーバー。そしてダンパー。実はこいつが凝っていて、HCC(ハイドローリック・コンプレッション・コントロール)が内蔵されているというが、何じゃそれ?ということになると思うので簡単に説明すると、ダンパー内(底部)にセカンダリーダンパー(ちっちゃいやつ)を組み込んで、言わばバンプストップラバーの役割を果たすのだという。ラリーで培われた技術だそうだが、これによってタイヤの限界付近のグリップ力を高め、同時に乗り心地も快適にしてくれるという。
ふむふむ、と、わかったようなわからないような気持で試乗をしてみた。足は確かにしっかりと締めあげられているのだが、言われた通り快適。まあレベルの違う快適さで、しっかり締め上げられているのにもかかわらず、突き上げ感は皆無。でも十分に硬さを感じるという類のものである。
1.8リットルの直噴ユニットは全開でシフトアップすると、まるで下品なオナラをしたようにブリッと鳴らして加速していくのだが、こいつは少々下品すぎて好きになれない。中で聞いている以上に外でこのブリッを聞くと、一瞬ギアでも壊れたかと思うほど凄まじい音を立てる。
限界を知りたくばサーキットへ
加速感は確かに凄いけれど、最近はホットハッチと言えば上限は300psを超えているので、まあそこそこというか、感動的というほどではない。むしろ厄介だったのはコーナリング性能だ。
かなり高速でコーナーに進入したつもりでも、タイヤはスキール音一つ上げない。つまりネを上げない。そこにちょっとしたバンプなどがあると、自分の意図とは別にステアリングがぐっと切られるような印象すら伝わってくる。これ、異様に高いグリップが路面をベタに舐めている証左のように思えるが、無知なドライバー(僕)にはステアリングの不安定感にも感じられて、こいつをアンダーステアの領域に持って行くにはどれだけ踏んで行ったらよいか測りかねるほど奥深い挙動を示す。
ドライバーが勝手に怖いと思っているだけで、クルマ自体は全然限界領域まで行っていないということ。こいつの本当の限界を極めるためには間違いなく路面が波打っていない綺麗なサーキットでの試乗しかあるまい。凄いクルマである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
前後サスペンション、マクファーソン/トーションビーム。字面だけ捉えたら、何だ、大したことないじゃん?ってことになるのだが、この大したことない足を大したことあるものにするのが、ルノースポールのマジックである。
正直言って、骨格は『メガーヌGT』と何ら変わりの無いもの。ボディだけは幅が広がって、かなり厳つい雰囲気を醸し出す。勿論パフォーマンスもGTとは大違いなのだが、驚いたことにこのエンジン、基本的にあのアルピーヌ『A110』と同じものである。つまり日産が基本を作り、ルノーがチューンしたもので、そのパフォーマンスは279ps、390Nmというから、アルピーヌよりもパワフルなのだ。
もっと驚いたことがある、ルノースポールの開発陣は、世界的に見ても販売量の多い、ということは、ルノースポールファンが多い日本という市場を重要視し、そのハンドリングの味付けの舞台として日本も組み入れて、開発過程で何と日本の道路も走らせているというのだ。
特に今回試乗の舞台となった、箱根アネスト岩田ターンパイクも走っているのだそうである。果たしてどの程度のスピードで走らせたのかは言わずもがなだろうが、足の味付けのテイストの中に日本の道路が含まれる高性能ハッチバックなど、海外メーカーではルノーだけだと思うし、そこまでやってくれるルノースポールにはどうしても親近感がわいてしまう。
ラリーから生まれた快適技術
4コントロールなる4輪操舵を持つ足は、前述したマクファーソン/トーションビームに加えられた僅かなフレーバー。そしてダンパー。実はこいつが凝っていて、HCC(ハイドローリック・コンプレッション・コントロール)が内蔵されているというが、何じゃそれ?ということになると思うので簡単に説明すると、ダンパー内(底部)にセカンダリーダンパー(ちっちゃいやつ)を組み込んで、言わばバンプストップラバーの役割を果たすのだという。ラリーで培われた技術だそうだが、これによってタイヤの限界付近のグリップ力を高め、同時に乗り心地も快適にしてくれるという。
ふむふむ、と、わかったようなわからないような気持で試乗をしてみた。足は確かにしっかりと締めあげられているのだが、言われた通り快適。まあレベルの違う快適さで、しっかり締め上げられているのにもかかわらず、突き上げ感は皆無。でも十分に硬さを感じるという類のものである。
1.8リットルの直噴ユニットは全開でシフトアップすると、まるで下品なオナラをしたようにブリッと鳴らして加速していくのだが、こいつは少々下品すぎて好きになれない。中で聞いている以上に外でこのブリッを聞くと、一瞬ギアでも壊れたかと思うほど凄まじい音を立てる。
限界を知りたくばサーキットへ
加速感は確かに凄いけれど、最近はホットハッチと言えば上限は300psを超えているので、まあそこそこというか、感動的というほどではない。むしろ厄介だったのはコーナリング性能だ。
かなり高速でコーナーに進入したつもりでも、タイヤはスキール音一つ上げない。つまりネを上げない。そこにちょっとしたバンプなどがあると、自分の意図とは別にステアリングがぐっと切られるような印象すら伝わってくる。これ、異様に高いグリップが路面をベタに舐めている証左のように思えるが、無知なドライバー(僕)にはステアリングの不安定感にも感じられて、こいつをアンダーステアの領域に持って行くにはどれだけ踏んで行ったらよいか測りかねるほど奥深い挙動を示す。
ドライバーが勝手に怖いと思っているだけで、クルマ自体は全然限界領域まで行っていないということ。こいつの本当の限界を極めるためには間違いなく路面が波打っていない綺麗なサーキットでの試乗しかあるまい。凄いクルマである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
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1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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