【スズキ ジムニー 新型試乗】スタイル、乗り味。売れるのも納得できる…丸山誠

スズキ ジムニー 新型
『ジムニー』の販売が好調だ。8月の国内販売の速報値を見ると届出車の軽自動車は、ジムニーの販売効果で前年同月実績を上まわった。『ジムニーシエラ』も好調で8月は、登録車全体として過去最高となった。

こうした販売実績を見ると、新型は多くのユーザーのハートをガッチリとつかんでいることがわかる。試乗するとあらゆる面で20年分の進化を感じることができるからだ。フルモデルチェンジまでの期間が長かったからそうでなくては困るわけだが、特にボディとフレームがしっかりしている感じがいい。

◆ファンを納得させる新フレーム


ジムニーファンを納得させるのが新開発のラダーフレーム。歴代モデルに採用され、本格クロスカントリーモデルもラダーフレームを使っているが、新型は単純なラダー型ではなく、中央部にX字型のメンバーを入れているのが特徴で剛性感をアップ。また、剛性に大きく関係するフレームの前後にもクロスメンバーを加えたことで、ねじり剛性を約1.5倍に向上。乗ってすぐに感じるのがこうしたしっかり感で、舗装路を少し走っただけでもわかる。購入した多くのユーザーは、きっとディーラーでの試乗で納得し、契約書にサインしたことだろう。

フレーム前後にクロスメンバーが入ったことは、キャンピングトレーラーやカーゴトレーラーなどをトーイング(けんイン)するユーザーにも朗報だ。特にリヤにクロスメンバーが入ったことでヒッチメンバーを装着したとき、リヤの剛性アップが期待できる。車両重量自体が軽いため、重いキャンピングカーなどのトーイングはもちろんおススメできないが、軽量モデルであれば耐久性の問題も心配ないはずだ。ESPも装備しているため安全性も向上している。

◆軽自動車のSUVとは思えない乗り心地


操縦安定性も大幅にアップした。先代は一般路でも常に路面からの影響で直進性が乱され、ステアリングをしっかりと握って修正をしなければならなかった。だが新型は直進安定性が一気に向上し、ステアリングに手を添えるだけで、かなりリラックスして走れるようになった。これはステアリングダンパーを装着した効果でもある。リジッドサスペンションのためよくできた乗用軽モデルほどの直進安定性はないが、許容範囲に収まっている。

乗り心地は軽自動車のSUVとは思えないほどしっかりとしている。これもフレームがしっかりしたことの効果だが、それに加えてボディマウントゴムの変更が効果を発揮。フレーム車はどうしてもマウントによっても乗り心地が左右されてしまう。そのためジムニーは力が掛かる方向によって剛性が変化する設計にした。縦方向の入力のショックをいなして優しい乗り心地を実現。それでいてステアリング操作とボディの動きに大きな時間差がないのがいい。

◆多くの人にオススメできるようになったシエラ


注目したいのがジムニーシエラ。このエクステリアデザインは軽自動車のジムニーとは違った塊感がある。コンパクトSUVとして、とても魅力的なスタイリングに仕上がっている。オーバーフェンダーはもう少し張り出しが少ないほうがピッタリするかもしれないが、トレッドを拡大するとこのサイズが必要だったのだろう。

シエラもコンパクトSUVとして多くの人におススメできるモデルになった。もちろんハイトワゴンのようにソフトな乗り心地というわけにはいかないが、従来のように限られたユーザーだけに向けられたとがった仕様ではない。舗装路ならば街乗りでも納得できる乗り心地だ。

先代と比べると快適性も大きく向上している。ジムニーと同様にシエラも本格クロスカントリーモデルのためパワートレーン系のノイズが少し感じられるが、これは走破性能の代償として割り切ることができるレベル。ただし、ジムニーとシエラで違うのは、トランスファーからのノイズがシエラのほうが大きい。オーディオを消して市街地を走ると、60km/hくらいまでノイズが耳に届く。ボリュームはそれほど大きくはなく、60km/h以上だとロードノイズに紛れてしまう程度だ。

スタイルといい、SUVとしてのしっかりとした乗り味といい、売れていることが納得できる。スズキは安全装備のカーテンエアバッグを付けることが少ないが、ジムニーは全グレードに標準装備したのも評価できる。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

丸山 誠|モータージャーナリスト
自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。キャンピングカーやキャンピングトレーラーなどにも詳しい。プリウスでキャンピングトレーラーをトーイングしている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

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