【ジープ ラングラー 新型試乗】「良いクルマって、一体何?」と考えさせられる…中村孝仁
◆ラングラーの平均購買年齢は38歳
ジープの試乗会に来て驚いたことが2つあった。ひとつは、ジープを買う購買層の年齢が非常に若いこと。そしてもう一つは、ジープは今年、年間1万2000台ほどを販売し、その40%に当たるモデルが今回の試乗車、『ラングラー』であることだった。
今年に入って、トヨタ『カローラ』の平均購買年齢が70歳台であるということにも驚いたのだが、ジープの平均購買年齢は40歳台だという。その中でもラングラーは最も若く、38歳なのだそうだ。簡単に言えばリピーターを獲得するにも、購買年齢が若いということは、次が期待できるということ。
そもそも、無骨で、決して使いやすくなく、さほど快適でもない(失礼!)はずのラングラーに何故、これほどまでに人気が集まるのか不思議に思った。そこで、FCAのマーケティング部、プロダクトマネージャーである渡邊由紀さんに直接聞いてみた。答えは、「SUV人気」「販売網の拡充」「価格引き下げ効果」だそうである。
しかしもっと大きな理由は、これは想像に過ぎないが、そのデザインにある気がする。つまり輸入車にとって大きな要素となるのは、「他に存在しない」、つまり、しっかりと差別化出来ること。アイコニックであること、である。同時に最近流行りの「インスタ映え」することで、そうした点でラングラーは文句なくツボにはまる。
◆2リットルエンジンに8速AT
12年ぶりのフルチェンジとなった今回のモデル。外観はほぼ従来のJKが踏襲されて、大きなというか、ドラスティックな変化はない。一方でメカニズムは、3.6リットルのV6エンジンこそ先代からの踏襲だが、2リットル直4ターボユニットは、FCAとしてのブランニューエンジンであり、直噴化された最新鋭のもの。
そしてこの2つのエンジンと組み合わされるトランスミッションは、従来の5速から8速へと大躍進。それに4WDの駆動システムも、従来のコマンドトラックに加え、セレクトラックのフルタイム4WDが選べるようになったというから、駆動系のすべてが一新されたというわけでる。
もう一つ大きな変化は、先代のJK時代にデビューした4ドアの「アンリミテッド」が、あれよあれよという間にジープの主力車種となり、今や2ドアの販売は全体の10%程度に過ぎず、新しいJLからは2ドア車販売は受注ベースのみとなり、基本アンリミテッドのみの設定となったことである。まあ、時代の流れである。
◆V6以上のパフォーマンス
さて、今回試乗したのはJLの中で最もベーシックなグレードとなる「スポーツ」。車両本体価格は494万円(税込)となる。何となく昔のジープから比べると随分高くなった印象を受けるが、それでも同セグメントのライバル(何と、メルセデス『GLC』やBMW『X3』なのだそうである)と比べたらだいぶお安い。上級モデルとなる「サハラ」と比較して、一番困るのはナビゲーションの設定がないことかもしれないが、最近はApple CarPlayやAndroid Autoを使えばナビ機能はいらないから、この代替案でOKならスポーツは好ましいチョイスとなるわけだ。
アンリミテッドのスポーツには、新しい2リットル直4ターボが搭載される。因みに2ドアは3.6リットルだ。このエンジン、そのパフォーマンスに不安を抱くユーザーがいるかもしれないが、結論から行くと、もしかしたらV6エンジン以上のパフォーマンスを発揮していると言っても過言でないほど、パワフルに走ってくれた。
机上の性能でも最高出力はともかく、最大トルクではV6を上回る。特にターボの威力でパーシャルからの加速は明らかにV6より速い。そうなると、低速トルクを使いたいオフロードでは走りにくいのでは?という思いも頭を持ち上げるが、少なくともオフロードを試乗する限り、乗りにくさは全く感じないし、極低速の走りも、敢えて4Lをセレクトしなくても4Hオートでかなりのセクションをこなすことが可能だった。
◆良いクルマの定義って、一体何?
大きく変わったのは2点。ひとつは乗り心地が従来型よりもかなり良くなって、静粛性も向上していること。もうひとつはペダルレイアウトが大幅に改良されて、従来アクセルとブレーキのペダルの高さに大きな段差があって、ペダルの踏みかえが困難だったのだが、それが完全に解消されていることである。
ただし、そうは言っても、ライバルとして想定されているメルセデスGLCやBMW X4などから比べたら、明らかに乗り心地だって、静粛性だって良くないし、ハンドリングも改善されたとはいえ、ラングラーらしいオフロードを想定した設定になっているから、シャープなハンドリングは期待できない。それでもこのセグメントではそのX3と激しく2位の座を争うほどに売れているというのだから、良いクルマの定義って、一体何?と思う。
ものの見方を変えると、ラングラーは非常に良いクルマだということなのだろう。少なくともオフロードのヘビーユーザーなら、間違いなくそう感じるはずだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
ジープの試乗会に来て驚いたことが2つあった。ひとつは、ジープを買う購買層の年齢が非常に若いこと。そしてもう一つは、ジープは今年、年間1万2000台ほどを販売し、その40%に当たるモデルが今回の試乗車、『ラングラー』であることだった。
今年に入って、トヨタ『カローラ』の平均購買年齢が70歳台であるということにも驚いたのだが、ジープの平均購買年齢は40歳台だという。その中でもラングラーは最も若く、38歳なのだそうだ。簡単に言えばリピーターを獲得するにも、購買年齢が若いということは、次が期待できるということ。
そもそも、無骨で、決して使いやすくなく、さほど快適でもない(失礼!)はずのラングラーに何故、これほどまでに人気が集まるのか不思議に思った。そこで、FCAのマーケティング部、プロダクトマネージャーである渡邊由紀さんに直接聞いてみた。答えは、「SUV人気」「販売網の拡充」「価格引き下げ効果」だそうである。
しかしもっと大きな理由は、これは想像に過ぎないが、そのデザインにある気がする。つまり輸入車にとって大きな要素となるのは、「他に存在しない」、つまり、しっかりと差別化出来ること。アイコニックであること、である。同時に最近流行りの「インスタ映え」することで、そうした点でラングラーは文句なくツボにはまる。
◆2リットルエンジンに8速AT
12年ぶりのフルチェンジとなった今回のモデル。外観はほぼ従来のJKが踏襲されて、大きなというか、ドラスティックな変化はない。一方でメカニズムは、3.6リットルのV6エンジンこそ先代からの踏襲だが、2リットル直4ターボユニットは、FCAとしてのブランニューエンジンであり、直噴化された最新鋭のもの。
そしてこの2つのエンジンと組み合わされるトランスミッションは、従来の5速から8速へと大躍進。それに4WDの駆動システムも、従来のコマンドトラックに加え、セレクトラックのフルタイム4WDが選べるようになったというから、駆動系のすべてが一新されたというわけでる。
もう一つ大きな変化は、先代のJK時代にデビューした4ドアの「アンリミテッド」が、あれよあれよという間にジープの主力車種となり、今や2ドアの販売は全体の10%程度に過ぎず、新しいJLからは2ドア車販売は受注ベースのみとなり、基本アンリミテッドのみの設定となったことである。まあ、時代の流れである。
◆V6以上のパフォーマンス
さて、今回試乗したのはJLの中で最もベーシックなグレードとなる「スポーツ」。車両本体価格は494万円(税込)となる。何となく昔のジープから比べると随分高くなった印象を受けるが、それでも同セグメントのライバル(何と、メルセデス『GLC』やBMW『X3』なのだそうである)と比べたらだいぶお安い。上級モデルとなる「サハラ」と比較して、一番困るのはナビゲーションの設定がないことかもしれないが、最近はApple CarPlayやAndroid Autoを使えばナビ機能はいらないから、この代替案でOKならスポーツは好ましいチョイスとなるわけだ。
アンリミテッドのスポーツには、新しい2リットル直4ターボが搭載される。因みに2ドアは3.6リットルだ。このエンジン、そのパフォーマンスに不安を抱くユーザーがいるかもしれないが、結論から行くと、もしかしたらV6エンジン以上のパフォーマンスを発揮していると言っても過言でないほど、パワフルに走ってくれた。
机上の性能でも最高出力はともかく、最大トルクではV6を上回る。特にターボの威力でパーシャルからの加速は明らかにV6より速い。そうなると、低速トルクを使いたいオフロードでは走りにくいのでは?という思いも頭を持ち上げるが、少なくともオフロードを試乗する限り、乗りにくさは全く感じないし、極低速の走りも、敢えて4Lをセレクトしなくても4Hオートでかなりのセクションをこなすことが可能だった。
◆良いクルマの定義って、一体何?
大きく変わったのは2点。ひとつは乗り心地が従来型よりもかなり良くなって、静粛性も向上していること。もうひとつはペダルレイアウトが大幅に改良されて、従来アクセルとブレーキのペダルの高さに大きな段差があって、ペダルの踏みかえが困難だったのだが、それが完全に解消されていることである。
ただし、そうは言っても、ライバルとして想定されているメルセデスGLCやBMW X4などから比べたら、明らかに乗り心地だって、静粛性だって良くないし、ハンドリングも改善されたとはいえ、ラングラーらしいオフロードを想定した設定になっているから、シャープなハンドリングは期待できない。それでもこのセグメントではそのX3と激しく2位の座を争うほどに売れているというのだから、良いクルマの定義って、一体何?と思う。
ものの見方を変えると、ラングラーは非常に良いクルマだということなのだろう。少なくともオフロードのヘビーユーザーなら、間違いなくそう感じるはずだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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