【メルセデスベンツ C180クーペ 新型試乗】こんなクルマを「素のモデル」と呼んでいいのか…中村孝仁
◆Cクラスの「素のモデル」に試乗
メルセデスの『Cクラス』が大改良を受けた。エンジン、インテリア、足回り等々。車種にもよるのだろうが、コンポーネンツの変更は実に6500点にも及び、全部品の半数近くに達するというから確かに大改良だ。
そうしたうえで、外観はいじらないのがメルセデス流…というか、ドイツ風。新旧と言われても、並んだってわからない。試乗中に一度だけ同じクルマに遭遇したものの、果たして相手が新しかったのか、それとも改良前だったのかは全くわからなかった。
今回試乗したのはクーペである。エンジンはCクラスの中では素のモデルともいえる、1.6リットルの4気筒ターボユニット。実はこれがCクラスのベースモデル。そして唯一エンジンに変更が加えられなかったものだ。
◆限りなくNAエンジンに近い1.6ターボのフィール
最近のターボユニットは、このターボエンジンが登場し始めた今から30年ほど前とは大違い。当時はターボがその効果を発揮するまでの間にかなりの時間的溝があって、それをターボラグと呼んだ。一方でターボが効き始めると、当時はそれをスポーツ性に振っていた関係からも、突如としてパワーが盛り上がり、とてつもない加速を始めるものだから、その性格から「どっかんターボ」などと呼んだりした。
しかし今は極低回転からターボが効き始めるから、ターボラグを感じることはまずないし、スポーツ性に振った味付けのモデルも少なくなってきているので、その乗り味は限りなくNAエンジンに近い。それでいながら、トルクだけは極低速から極めて太く扱いやすいエンジンとなっているので、今では排気量を小さくして、その分失ったパワーをターボで補う、いわゆるダウンサイジングターボが主流。この「C180」もその例に盛れず、僅か1.6リットルながら、そのトルクは2.5リットルNA並の250Nmを誇る。ただしパワーの方は156psである。
実は、改良前のCクラスクーペには乗っていない。セダンだけだった。そんなわけで改良前後での直接比較はできないのだが、試乗車にはオプション装備となるエアボディコントロールのサスペンションが付いていた。これ、従来は『Sクラス』だけの装備と思っていたら、ついにCクラスにまで波及した。
コンフォート、スポーツ、スポーツ+。それにエコとインディビデュアルのモードが選べるが、足の硬さに関しては、先に述べた3種にしか変わらない。一番硬いスポーツ+も試してみたが、なかなか手ごわい存在かと思いきや、街乗りでも十分快適さを担保できるレベルだった。むしろコンフォートの揺り返しが気になるくらいで、個人的にはスポーツがベストのように感じられた。
◆ハイエンドのクルマ作りとはこういうものだ
今回の変更では、特にコネクティビティーや安全快適ドライブの役立つ機能が盛り込まれ、メルセデスmeコネクトが装備され、一部のサービスは10年間無償だそうである。安全快適ドライブという部分では、ACCがさらに進化して、Sクラスや『Eクラス』同様、ACC走行時にウィンカーを出せば、自動的にハンドル操作をしてくれる アクティブレーンチェンジングアシストが装備された。高速の退屈な移動で最近はほぼ常にACCを使ってしまうようになったが、疲労度の軽減は著しい。
インテリアは最初どこが変わったのかわからなかったが、よくよく見ればドライバー前のメータークラスターはディスプレイに変わっているし、ダッシュ中央のナビ用ディスプレイも大型化しているのに後から気が付いた。メーターディスプレイの方は、その表示がスポーティー、クラシック、プログレッシブという3つのパターンから選べる。
僅か1.6リットルながら、高速から街中常用スピードまで、パフォーマンスに不満は全くない。それに4気筒のサウンドは後から乗った新しい1.5リットルの革新エンジンよりも好ましいサウンドを残してくれる。9速ATとのマッチングも個人的には、こちらの方がスムーズで快適なドライブが楽しめた。果たしてここまで完成度の高いクルマを素のモデルと呼んでよいやら…。まあハイエンドのクルマ作りとはこういうものだということである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
メルセデスの『Cクラス』が大改良を受けた。エンジン、インテリア、足回り等々。車種にもよるのだろうが、コンポーネンツの変更は実に6500点にも及び、全部品の半数近くに達するというから確かに大改良だ。
そうしたうえで、外観はいじらないのがメルセデス流…というか、ドイツ風。新旧と言われても、並んだってわからない。試乗中に一度だけ同じクルマに遭遇したものの、果たして相手が新しかったのか、それとも改良前だったのかは全くわからなかった。
今回試乗したのはクーペである。エンジンはCクラスの中では素のモデルともいえる、1.6リットルの4気筒ターボユニット。実はこれがCクラスのベースモデル。そして唯一エンジンに変更が加えられなかったものだ。
◆限りなくNAエンジンに近い1.6ターボのフィール
最近のターボユニットは、このターボエンジンが登場し始めた今から30年ほど前とは大違い。当時はターボがその効果を発揮するまでの間にかなりの時間的溝があって、それをターボラグと呼んだ。一方でターボが効き始めると、当時はそれをスポーツ性に振っていた関係からも、突如としてパワーが盛り上がり、とてつもない加速を始めるものだから、その性格から「どっかんターボ」などと呼んだりした。
しかし今は極低回転からターボが効き始めるから、ターボラグを感じることはまずないし、スポーツ性に振った味付けのモデルも少なくなってきているので、その乗り味は限りなくNAエンジンに近い。それでいながら、トルクだけは極低速から極めて太く扱いやすいエンジンとなっているので、今では排気量を小さくして、その分失ったパワーをターボで補う、いわゆるダウンサイジングターボが主流。この「C180」もその例に盛れず、僅か1.6リットルながら、そのトルクは2.5リットルNA並の250Nmを誇る。ただしパワーの方は156psである。
実は、改良前のCクラスクーペには乗っていない。セダンだけだった。そんなわけで改良前後での直接比較はできないのだが、試乗車にはオプション装備となるエアボディコントロールのサスペンションが付いていた。これ、従来は『Sクラス』だけの装備と思っていたら、ついにCクラスにまで波及した。
コンフォート、スポーツ、スポーツ+。それにエコとインディビデュアルのモードが選べるが、足の硬さに関しては、先に述べた3種にしか変わらない。一番硬いスポーツ+も試してみたが、なかなか手ごわい存在かと思いきや、街乗りでも十分快適さを担保できるレベルだった。むしろコンフォートの揺り返しが気になるくらいで、個人的にはスポーツがベストのように感じられた。
◆ハイエンドのクルマ作りとはこういうものだ
今回の変更では、特にコネクティビティーや安全快適ドライブの役立つ機能が盛り込まれ、メルセデスmeコネクトが装備され、一部のサービスは10年間無償だそうである。安全快適ドライブという部分では、ACCがさらに進化して、Sクラスや『Eクラス』同様、ACC走行時にウィンカーを出せば、自動的にハンドル操作をしてくれる アクティブレーンチェンジングアシストが装備された。高速の退屈な移動で最近はほぼ常にACCを使ってしまうようになったが、疲労度の軽減は著しい。
インテリアは最初どこが変わったのかわからなかったが、よくよく見ればドライバー前のメータークラスターはディスプレイに変わっているし、ダッシュ中央のナビ用ディスプレイも大型化しているのに後から気が付いた。メーターディスプレイの方は、その表示がスポーティー、クラシック、プログレッシブという3つのパターンから選べる。
僅か1.6リットルながら、高速から街中常用スピードまで、パフォーマンスに不満は全くない。それに4気筒のサウンドは後から乗った新しい1.5リットルの革新エンジンよりも好ましいサウンドを残してくれる。9速ATとのマッチングも個人的には、こちらの方がスムーズで快適なドライブが楽しめた。果たしてここまで完成度の高いクルマを素のモデルと呼んでよいやら…。まあハイエンドのクルマ作りとはこういうものだということである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
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