【スバル フォレスター 新型試乗】e-BOXERより素直なトルク感が好印象な2.5リットル…中村孝仁

スバル フォレスター 新型(プレミアム)
◆2.5リットル4気筒の「プレミアム」を公道試乗

スバル『フォレスター』は、既にすべてのグレードを一度試乗した。ただし、ナンバー取得前だったので、クローズドコース内での話である。改めてオンロードに持ち出して乗ってみると、それぞれのモデルが違う側面を見せてくれた。今回の試乗は、2.5リットルの4気筒ボクサーユニットを搭載する「プレミアム」と呼ばれるグレードだ。

クローズドコースで試乗した時は、e-BOXERというハイブリッドとマイルドハイブリッドの中間的な性格を持つモデルと比較して、こちらの方がはるかに高印象を持ったのだが、現実的にe-BOXERも路上で乗ってみると、どうしてどうして、プレミアムと甲乙付け難いポテンシャルを示したし、一言でマイルドハイブリッドだとは断言できない側面をしっかりと見せてくれた。では、2.5リットルのオンロードでのポテンシャルはどうだったのか。

と、その前に、フォレスターというモデルについて少し話をしよう。まずこのクルマ、グローバルでは年間28万台強を売り上げ、スバルの中ではベストセラーモデルである。それに価格が安い。一番高い「アドバンス」と呼ばれるe-BOXERエンジン搭載車ですら、309万9600円。消費税を抜けば287万円という価格。しかもこれで当然ながら4WDであり、ACCを中心としたツーリングアシスト、それにアイサイトなどが標準装備される。プレミアムはさらにお安く、税込み302万4000円である。ここまでコスパが高ければまあ売れて当然かもしれない。

◆e-BOXERを搭載する「アドバンス」との違い


まずは机上の性能差をe-BOXERのアドバンスと比較してみたい。最高出力と最大トルクは、アドバンスが145ps、188Nm。これに対し184ps、239Nmがプレミアム。ただし、アドバンスの方はこれに加えて13.6ps、65Nmのモーターが加勢する。単純に上乗せすれば、トルクに関してはe-BOXERの方が上になるが、それほど単純ではなくて、やはりモーターは必要に応じて加勢するわけだから、多くの場合やはり2.5の方がパワフルだしトルクフルだ。

しかしながら実際にオンロードを乗り比べてみると、クローズドコースで乗った時のような大きな差となって表れたわけではない。ただ、どちらが素直に走れるかというと、やはりプレミアムの方である。というのも、確かにモーターというのはスタート時から最大トルクを発揮するわけだから、アクセルをガンと踏んだ時は、当然モーターのアシストが加わる。ところがそれをパーシャル領域からやってみると、e-BOXERの場合はかなりの間をおいて加速に移る。

悪さをしているのはどうやらCVTのリニアトロニックだ。CVTの場合、加速する際はプーリーに油圧をかけてやる必要があるのだが、どうもそれがワンテンポ遅くなる原因のように感じられる。勿論状況はプレミアムでも同じなのだが、単純にエンジンだけだとスムーズに感じられる。まあ、あくまでも印象の領域を出ず、実際に中間加速を測ったわけではないから正確ではない。あくまでもフィーリングである。

◆素直なトルク感に好印象


トルク感についてもやはり2.5リットルの方が高印象だ。部分部分でぐっと加速してやると、それなりにスポーティーな印象が付く。まさにe-BOXERはそれを狙ったのだと思う。しかし、トルクの出方のリニアリティという点になると、やはりプレミアムが素直だ。

アドバンスとの価格差で大きいのは、アドバンスにしかつかないドライバーモニタリングシステムがある。これはカメラでドライバーの顔を認識し、認識したドライバーが乗ってくるとその人のシート位置やミラー位置などを記憶して、ピッタリと合わせてくれるというもの。確かに夫婦で共有する場合などは便利かもしれない。しかし、7万円少々の価格差のうちどれだけが、それに充てられているのかは知らないが、実際に使用してみても、それほど有難い装備とは感じなかった。まあ、先進的ではあるが。

というわけで、プレミアムで十分という言い方は失礼だろうが、気に入ったのはプレミアムの方だった。とは言うものの、受注状況を見るとアドバンスが4割以上を占めているから人気という点ではアドバンスに軍配が上がるようである。残念なのは、やはり燃費がいささかよろしくないことと、ここ一番のパンチ力に欠けること。ターボを採用しない理由が何であるか、少々疑問である。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

(レスポンス 中村 孝仁)

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