【メルセデスベンツ C220dワゴン 新型試乗】電気自動車とは違う安心感、まるで理想郷…中村孝仁
◆リッターあたり15kmを超える燃費
乗り出してすぐに、メーターを見て驚いた。何を?その航続距離の長さである。最近のクルマは、コンピューターで残りの航続距離を計算してくれるのだが、その残存距離、実に1018kmと、4桁に乗せていた。
まあディーゼルの燃費の良さは、読者の皆さんも先刻ご承知かとは思うが、それにしても4桁である。燃料タンクの容量は、従来同様66リットル。それをすべて使うと想定してリッターあたり15kmを超える燃費が約走されたようなもんだ。これが如何に凄いことかは十分に承知して頂けると思うし、だからこそ驚いたわけである。
◆従来より高回転を許容するエンジン
今回Cクラスに搭載された新しいディーゼルは、220という名を持ちながらも排気量は2リットルである。このエンジン、そのコードネームはOM654。すでにEクラスやCLSに搭載されているそれと同じものだ。一般的にディーゼルと言えば、アインドリング時にガラガラとあまり気持ちの良いとは言えない音を立てる。それはほぼどんなディーゼルでも不可避。メルセデスだって例外ではないが、今回のOM654の場合、その音の肌理は、より細かくなった。
ガラガラではなく、まあうまい表現ではないが、ジャラジャラと…。昔なら4000rpmも回れば頭打ちだった最高回転数も、このエンジンではついにレブリミットが5500rpmまで拡大されている。明らかに従来よりは高回転を許容するエンジンになった。ただそれで高回転まで回す必要があるのかというと、そんなことはまるでなく、そもそもDレンジに入れっぱなしだと、あれよあれよという間にシフトアップして行ってしまうから、回転が高まるということもない。
最高出力の194psは3800rpmで出てしまうし、最大トルクだって1600~2800rpmの間で400Nmを出しっぱなし。最近はディーゼルに慣れているユーザーが多くなったから、400Nmと聞いてもあまり驚かないかもしれないが、一昔前だったら、V8エンジンでしか体感できなかった図太いトルクである。だから、いわゆるクリーンディーゼルと呼ばれたコモンレールを使用した新しいディーゼルエンジン群が登場した時、その圧倒的トルクに本当に驚かされたものである。
回転の滑らかさは従来の2.2リットルユニットを確実に凌駕する。前述したジャラジャラは、回転が上がるにつれて連続音となり、途中からはガソリンエンジンと区別できないほど洗練されているといったら大げさかもしれないが、まあそれほどにスムーズなエンジンに仕上がった。
因みにするすると上がっていくトランスミッションは、9速AT。残念ながら日本の道路状況で9速に入ることはまずない。Dレンジのままだと100km/hに到達しても8速である。勿論、マニュアルで無理やりその状況から1速アップしてやると9速には入るものの、しばらく走行するとすぐに8速に戻ってしまう。だから、アウトバーンのようにそれよりも次元の高いスピード域でなら9速が生きるということになるのだが、日常的に街中を走っていても、普段とは全然違うシフトポジションを指して、回転数もぐっと低いから、明らかに燃費には貢献しているのだと思う。
初期のピュアEVに乗った時、満充電からスタートしたにもかかわらず、高速ランプから加速したとたんに航続距離が二桁台に落ちた時は、精神衛生上も電気自動車は僕には無理!って思ったものだが、発進した直後に4ケタ台の航続距離を示してくれるディーゼルは、まあ僕にとっては理想郷のようなものである。それがタイトルに記した電気自動車とは違う安心感なのである。
◆サスペンションの硬さは3通り
試乗車のサスペンションは、オプションのエアボディコントロールである。要するにエアサス。サスペンションの硬さは3通りに変えられて、デフォルトは勿論コンフォート。これはエコモードとコンフォートモードで使える。そしてもちろん個人の好みに設定できるインディビデュアルでも選ぶことはできる。
少し硬くなるのがスポーツモード。そしてさらに硬いのがスポーツ+である。まあ、ディーゼルのステーションワゴンでサーキット走行もないだろうから、スポーツ+が必要なの?とも思ったが走ってみるとこれが結構いける硬さ。コンフォートはソフトなのだが、リバウンドの際の揺り戻しが少し気になって、スパッと一発で揺れを収束させたいならスポーツのチョイスがお勧めである。
因みに試乗車のオプションはレーダーセーフティーパッケージ20万1000円、AMGライン37万円、レザーエクスクルーシブパッケージ55万円、メタリックペイント9万1000円、それにパノラミックスライディングルーフ21万6000円が乗る。それだけで142万8000円と、ほぼ軽自動車1台分だ。この中でACCなどが含まれるレーダーセーフティーパッケージは必須となるものだと思うが、それにしても最近のクルマは高い。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
乗り出してすぐに、メーターを見て驚いた。何を?その航続距離の長さである。最近のクルマは、コンピューターで残りの航続距離を計算してくれるのだが、その残存距離、実に1018kmと、4桁に乗せていた。
まあディーゼルの燃費の良さは、読者の皆さんも先刻ご承知かとは思うが、それにしても4桁である。燃料タンクの容量は、従来同様66リットル。それをすべて使うと想定してリッターあたり15kmを超える燃費が約走されたようなもんだ。これが如何に凄いことかは十分に承知して頂けると思うし、だからこそ驚いたわけである。
◆従来より高回転を許容するエンジン
今回Cクラスに搭載された新しいディーゼルは、220という名を持ちながらも排気量は2リットルである。このエンジン、そのコードネームはOM654。すでにEクラスやCLSに搭載されているそれと同じものだ。一般的にディーゼルと言えば、アインドリング時にガラガラとあまり気持ちの良いとは言えない音を立てる。それはほぼどんなディーゼルでも不可避。メルセデスだって例外ではないが、今回のOM654の場合、その音の肌理は、より細かくなった。
ガラガラではなく、まあうまい表現ではないが、ジャラジャラと…。昔なら4000rpmも回れば頭打ちだった最高回転数も、このエンジンではついにレブリミットが5500rpmまで拡大されている。明らかに従来よりは高回転を許容するエンジンになった。ただそれで高回転まで回す必要があるのかというと、そんなことはまるでなく、そもそもDレンジに入れっぱなしだと、あれよあれよという間にシフトアップして行ってしまうから、回転が高まるということもない。
最高出力の194psは3800rpmで出てしまうし、最大トルクだって1600~2800rpmの間で400Nmを出しっぱなし。最近はディーゼルに慣れているユーザーが多くなったから、400Nmと聞いてもあまり驚かないかもしれないが、一昔前だったら、V8エンジンでしか体感できなかった図太いトルクである。だから、いわゆるクリーンディーゼルと呼ばれたコモンレールを使用した新しいディーゼルエンジン群が登場した時、その圧倒的トルクに本当に驚かされたものである。
回転の滑らかさは従来の2.2リットルユニットを確実に凌駕する。前述したジャラジャラは、回転が上がるにつれて連続音となり、途中からはガソリンエンジンと区別できないほど洗練されているといったら大げさかもしれないが、まあそれほどにスムーズなエンジンに仕上がった。
因みにするすると上がっていくトランスミッションは、9速AT。残念ながら日本の道路状況で9速に入ることはまずない。Dレンジのままだと100km/hに到達しても8速である。勿論、マニュアルで無理やりその状況から1速アップしてやると9速には入るものの、しばらく走行するとすぐに8速に戻ってしまう。だから、アウトバーンのようにそれよりも次元の高いスピード域でなら9速が生きるということになるのだが、日常的に街中を走っていても、普段とは全然違うシフトポジションを指して、回転数もぐっと低いから、明らかに燃費には貢献しているのだと思う。
初期のピュアEVに乗った時、満充電からスタートしたにもかかわらず、高速ランプから加速したとたんに航続距離が二桁台に落ちた時は、精神衛生上も電気自動車は僕には無理!って思ったものだが、発進した直後に4ケタ台の航続距離を示してくれるディーゼルは、まあ僕にとっては理想郷のようなものである。それがタイトルに記した電気自動車とは違う安心感なのである。
◆サスペンションの硬さは3通り
試乗車のサスペンションは、オプションのエアボディコントロールである。要するにエアサス。サスペンションの硬さは3通りに変えられて、デフォルトは勿論コンフォート。これはエコモードとコンフォートモードで使える。そしてもちろん個人の好みに設定できるインディビデュアルでも選ぶことはできる。
少し硬くなるのがスポーツモード。そしてさらに硬いのがスポーツ+である。まあ、ディーゼルのステーションワゴンでサーキット走行もないだろうから、スポーツ+が必要なの?とも思ったが走ってみるとこれが結構いける硬さ。コンフォートはソフトなのだが、リバウンドの際の揺り戻しが少し気になって、スパッと一発で揺れを収束させたいならスポーツのチョイスがお勧めである。
因みに試乗車のオプションはレーダーセーフティーパッケージ20万1000円、AMGライン37万円、レザーエクスクルーシブパッケージ55万円、メタリックペイント9万1000円、それにパノラミックスライディングルーフ21万6000円が乗る。それだけで142万8000円と、ほぼ軽自動車1台分だ。この中でACCなどが含まれるレーダーセーフティーパッケージは必須となるものだと思うが、それにしても最近のクルマは高い。
■5つ星評価
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フットワーク:★★★★
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中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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