【キャデラック XT5クロスオーバー 試乗】昔ながらのアメ車の「間合い」が今も味わえる…島崎七生人
レポーターが初めて運転したキャデラックは当時、FF方式を初採用したセダンの『フリートウッド・エレガンス』だった。80年代半ばのこと、場所は箱根だったと記憶しているが、FFであっても雲の上を滑るような、ドイツの上級サルーンとも違う乗り味に感銘を覚えたものである。
“アメリカン・ドリーム”の象徴と言われた存在のキャデラックだが、最新モデルに試乗しても、その世界観は今でもまったく変わらないのだなぁ……と思える。
たとえば今回の試乗車、『XT5クロスオーバー』もそうだった。上級モデルに全長5mをゆうに超えるフラッグシップの『エスカレード』があるが、こちらはそれよりもカジュアル色が強く、スタイリングも最新のキャデラックのセダン系と同一の、若々しくシャープなラインでまとめられている。個人的にはフロントの縦のシグネチャーラインに「キャデラックよ、お前もか」の思いがしなくもないが、全体のプレーンで上品なスタイリングは、華美過ぎずスノッブ過ぎず、いい頃合いだ。
他方でドアを開け車内に乗り込めば、たとえSUVであってもキャデラックらしいラグジュアリーなムードに包まれている。“包まれている”と書いたがそれは本当にそうで、たとえばドアアームレストは上面も側面も同じようにソフトな感触のクッションが仕込まれたトリムで出来ている。後席も実際に着座してみると体重をフンワリと受け止めてくれ実に座り心地がいい。
インテリアデザイン自体、気負わずサラッと上質に仕上げられている。要するに豪華である前に“人に優しいクルマとはどうあるべきか”を弁えて作られるアメリカ車ならではのもの。心地いい自宅のリビングで寛いで過ごす感覚が、そのまま車内でも実現されている、といったところだ。
走りも変わらず、なめらか、穏やか。試乗車は“ラグジュアリー”グレードで、18インチタイヤ(プラチナムは20インチ)を装着することもあり、ひたすらしっとりとした乗り味。舗装路でも荒れた舗装の多い北米を走るために作られているだけあり、日本の路面でも、まず心地いい。ステアリングフィールも穏やかなもの。搭載エンジンは3649ccのV6(314ps/37.5kgm)でこれに8速ATの組み合わせだが、常に十分な余力を残しながら、アクセルを踏むとじんわりと加速する様がならではだ。
乗り味、加速感、音や振動など、走行中のすべてのシーンで、人が不快に感じる周波数を排除している感じ。昔ながらのアメリカ車のそんな“間合い”は、このクルマでもタップリと味わえる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
(レスポンス 島崎七生人)
“アメリカン・ドリーム”の象徴と言われた存在のキャデラックだが、最新モデルに試乗しても、その世界観は今でもまったく変わらないのだなぁ……と思える。
たとえば今回の試乗車、『XT5クロスオーバー』もそうだった。上級モデルに全長5mをゆうに超えるフラッグシップの『エスカレード』があるが、こちらはそれよりもカジュアル色が強く、スタイリングも最新のキャデラックのセダン系と同一の、若々しくシャープなラインでまとめられている。個人的にはフロントの縦のシグネチャーラインに「キャデラックよ、お前もか」の思いがしなくもないが、全体のプレーンで上品なスタイリングは、華美過ぎずスノッブ過ぎず、いい頃合いだ。
他方でドアを開け車内に乗り込めば、たとえSUVであってもキャデラックらしいラグジュアリーなムードに包まれている。“包まれている”と書いたがそれは本当にそうで、たとえばドアアームレストは上面も側面も同じようにソフトな感触のクッションが仕込まれたトリムで出来ている。後席も実際に着座してみると体重をフンワリと受け止めてくれ実に座り心地がいい。
インテリアデザイン自体、気負わずサラッと上質に仕上げられている。要するに豪華である前に“人に優しいクルマとはどうあるべきか”を弁えて作られるアメリカ車ならではのもの。心地いい自宅のリビングで寛いで過ごす感覚が、そのまま車内でも実現されている、といったところだ。
走りも変わらず、なめらか、穏やか。試乗車は“ラグジュアリー”グレードで、18インチタイヤ(プラチナムは20インチ)を装着することもあり、ひたすらしっとりとした乗り味。舗装路でも荒れた舗装の多い北米を走るために作られているだけあり、日本の路面でも、まず心地いい。ステアリングフィールも穏やかなもの。搭載エンジンは3649ccのV6(314ps/37.5kgm)でこれに8速ATの組み合わせだが、常に十分な余力を残しながら、アクセルを踏むとじんわりと加速する様がならではだ。
乗り味、加速感、音や振動など、走行中のすべてのシーンで、人が不快に感じる周波数を排除している感じ。昔ながらのアメリカ車のそんな“間合い”は、このクルマでもタップリと味わえる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
(レスポンス 島崎七生人)
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