【ジャガー XJ】初代の血脈は受け継がれたのか? 50年の歴史を辿り、いざパリへ
◆1968年の発表から8世代続く「XJ」
今からちょうど50年前の1968年に開かれたパリモーターショーにおいて、ジャガー『XJ』シリーズはデビューした。サー・ウィリアム・ライオンズが理想としたのは、ジャガーの名スポーツカーである『Eタイプ』のように走るセダンだったという。
はたしてXJシリーズは今日に至るまで、ブランドのフラッグシップサルーンとして君臨し続けている。後にシリーズ1と呼ばれる初代に始まり、シリーズ2(73年~)、シリーズ3(79年~)、XJ40(86年~)、X300(94年~)、X308(98年~)、X350(2002年~)、そして現行型のX351(09年~現在)まで、この半世紀のあいだに8世代を数えるXJシリーズを輩出した。
そんなXJの50年を記念して、最新ジャガーの生まれ故郷であるキャッスル・ブロムウィッチを出発し、歴代全てのXJシリーズを試しながら、ドーバー海峡をフェリーで大陸へと渡ってシリーズ初披露の地であるパリを目指すという、なんとも豪勢なドライブツアーをジャガーが企画した。
◆飛ばせば飛ばすほどスポーティになっていく
初日。筆者がまずステアリングを握ったのはXJ40(88年式デイムラー・ソブリン3.6)だ。Jゲートでその名を馳せたXJ40は、サー・ウィリアム・ライオンズが開発を見守った最後のジャガーでもある。筆者がこの業界に来て最初に出席したジャガーの試乗会がXJ40の最後のほうだったから、感慨深い。フネのようにふわりとした動きをするくせに左右への動作だけは軽快で、英国のカントリーロードで飛ばせば飛ばすほどスポーティになっていくという感覚がいかにもジャガーだ。
続いてシリーズ3に乗り換える。新たな法規に対応させたうえで後席の居住性をより高めるべく、ピニンファリーナにリスタイリングを依頼したモデルだ。87年式ジャガーXJ6ソブリン4.2を駆ったが、じわじわとめどなく湧き出るトルクフィールがとても心地良い。ハンドリングはXJ40よりもさらに柔らかく、軽やかである。そのくせよく真っ直ぐ走ってくれるから、長距離もラクだ。
ランチのあと、憧れのシリーズ2クーペ=XJCを駆ることに。75~77年の2年間のみ造られたXJCの生産台数はわずかに1万台ちょい。しかも試乗車はさらにレアな12気筒エンジン搭載の78年式XJC12だった。エンジ色のボディにブラックビニルトップがとてもオシャレ。
アイドリングではエンストでもしたのかと思うほど静かだった。右足を軽く踏みこむだけで力強く加速する。ずるずるといくらでも力が出てくるような感覚がドライバーを夢中にさせた。中立のあやふやなステアリングフィールは正にクラシックカーというべきで、そうであるにも関わらずいったん好みの舵角を決めたなら、そこからはまるでぶれずにしっかり曲がっていく。とにかく中速域における乗り心地が素晴らしく、なるほど英国カントリーロードの生まれだったと納得するほかない。
◆シリーズ1から最新ディーゼルへ
かのグッドウッドサーキットで隊列を組んで広報用の撮影をこなしたのち、いよいよシリーズ1に乗り換えてポーツマスまで南下した。73年式デイムラーダブル6ヴァンデンプラ・ロングホイールベースだ。クラシックワークスでレストアされた個体だけあって、12気筒エンジンのフケは素晴らしいのひと言。どこをどう踏んでも、ウルトラスムースなトルクを吐き出してくれる。アシの動きもしなやかなで素晴らしい。
ゆっくりと進むドーバーフェリーで1泊した。2日目の翌朝、フランスはサンマロに上陸してからはいきなり最新モデルの、それも周年記念モデル「XJ50」のディーゼルを駆ることに。わずか1000回転から最大トルクが供給されるから、軽く踏むだけで面白いくらいに好きな速度へと達することができる。確かな手応えのハンドリング性能と相まって、スポーツサルーンとして生まれた初代XJの血を濃く受け継いだラグジュアリーカーであったと再認識する。
ル・マン24時間レースで有名なサルトサーキットにも立ち寄ったのち、08年式デイムラースーパーV8のX350に乗り込んだ。スタイルはもちろんのこと、意のままに動くというドライブフィールは正にXJの血脈だ。
◆それぞれの世代に味わいがある
夕暮れのパリがもう間近に迫っている。最後の駆ったのがX308、01年式XJ8だった。94年のパリショーでX300が登場すると、98年にはジャガー初となるV8搭載モデルX308へと進化する。いずれもシリーズ3までのXJデザインへモダンに回帰したスタイルが絶賛された。
このXJ8が実に良かった。シリーズ1から続くXJらしさを全ての乗り味に色濃く滲ませながらも、現代において十分に通用する快適さと性能を併せもっている。滑らかなエンジンフィールと軽妙なハンドリングはシリーズ1に込めたコンセプトの集大成だったと思えたほど。
自分で買うとしたら、どれを選ぶだろう。プレゼントしてくれるというなら遠慮なく試乗した極上のXJC12をねだるところだが、現実的に自分で買うとしたならば程度の良いX308だろうか……。そんなことを想像しつつ、最新のX351だって悪くない選択なんだよな、と、ツアーが終わってみればすっかりXJシリーズにハマっていた。
西川淳|自動車ライター/編集者
産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰して自動車を眺めることを理想とする。高額車、スポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域が得意。中古車事情にも通じる。永遠のスーパーカー少年。自動車における趣味と実用の建設的な分離と両立が最近のテーマ。精密機械工学部出身。
(レスポンス 西川淳)
今からちょうど50年前の1968年に開かれたパリモーターショーにおいて、ジャガー『XJ』シリーズはデビューした。サー・ウィリアム・ライオンズが理想としたのは、ジャガーの名スポーツカーである『Eタイプ』のように走るセダンだったという。
はたしてXJシリーズは今日に至るまで、ブランドのフラッグシップサルーンとして君臨し続けている。後にシリーズ1と呼ばれる初代に始まり、シリーズ2(73年~)、シリーズ3(79年~)、XJ40(86年~)、X300(94年~)、X308(98年~)、X350(2002年~)、そして現行型のX351(09年~現在)まで、この半世紀のあいだに8世代を数えるXJシリーズを輩出した。
そんなXJの50年を記念して、最新ジャガーの生まれ故郷であるキャッスル・ブロムウィッチを出発し、歴代全てのXJシリーズを試しながら、ドーバー海峡をフェリーで大陸へと渡ってシリーズ初披露の地であるパリを目指すという、なんとも豪勢なドライブツアーをジャガーが企画した。
◆飛ばせば飛ばすほどスポーティになっていく
初日。筆者がまずステアリングを握ったのはXJ40(88年式デイムラー・ソブリン3.6)だ。Jゲートでその名を馳せたXJ40は、サー・ウィリアム・ライオンズが開発を見守った最後のジャガーでもある。筆者がこの業界に来て最初に出席したジャガーの試乗会がXJ40の最後のほうだったから、感慨深い。フネのようにふわりとした動きをするくせに左右への動作だけは軽快で、英国のカントリーロードで飛ばせば飛ばすほどスポーティになっていくという感覚がいかにもジャガーだ。
続いてシリーズ3に乗り換える。新たな法規に対応させたうえで後席の居住性をより高めるべく、ピニンファリーナにリスタイリングを依頼したモデルだ。87年式ジャガーXJ6ソブリン4.2を駆ったが、じわじわとめどなく湧き出るトルクフィールがとても心地良い。ハンドリングはXJ40よりもさらに柔らかく、軽やかである。そのくせよく真っ直ぐ走ってくれるから、長距離もラクだ。
ランチのあと、憧れのシリーズ2クーペ=XJCを駆ることに。75~77年の2年間のみ造られたXJCの生産台数はわずかに1万台ちょい。しかも試乗車はさらにレアな12気筒エンジン搭載の78年式XJC12だった。エンジ色のボディにブラックビニルトップがとてもオシャレ。
アイドリングではエンストでもしたのかと思うほど静かだった。右足を軽く踏みこむだけで力強く加速する。ずるずるといくらでも力が出てくるような感覚がドライバーを夢中にさせた。中立のあやふやなステアリングフィールは正にクラシックカーというべきで、そうであるにも関わらずいったん好みの舵角を決めたなら、そこからはまるでぶれずにしっかり曲がっていく。とにかく中速域における乗り心地が素晴らしく、なるほど英国カントリーロードの生まれだったと納得するほかない。
◆シリーズ1から最新ディーゼルへ
かのグッドウッドサーキットで隊列を組んで広報用の撮影をこなしたのち、いよいよシリーズ1に乗り換えてポーツマスまで南下した。73年式デイムラーダブル6ヴァンデンプラ・ロングホイールベースだ。クラシックワークスでレストアされた個体だけあって、12気筒エンジンのフケは素晴らしいのひと言。どこをどう踏んでも、ウルトラスムースなトルクを吐き出してくれる。アシの動きもしなやかなで素晴らしい。
ゆっくりと進むドーバーフェリーで1泊した。2日目の翌朝、フランスはサンマロに上陸してからはいきなり最新モデルの、それも周年記念モデル「XJ50」のディーゼルを駆ることに。わずか1000回転から最大トルクが供給されるから、軽く踏むだけで面白いくらいに好きな速度へと達することができる。確かな手応えのハンドリング性能と相まって、スポーツサルーンとして生まれた初代XJの血を濃く受け継いだラグジュアリーカーであったと再認識する。
ル・マン24時間レースで有名なサルトサーキットにも立ち寄ったのち、08年式デイムラースーパーV8のX350に乗り込んだ。スタイルはもちろんのこと、意のままに動くというドライブフィールは正にXJの血脈だ。
◆それぞれの世代に味わいがある
夕暮れのパリがもう間近に迫っている。最後の駆ったのがX308、01年式XJ8だった。94年のパリショーでX300が登場すると、98年にはジャガー初となるV8搭載モデルX308へと進化する。いずれもシリーズ3までのXJデザインへモダンに回帰したスタイルが絶賛された。
このXJ8が実に良かった。シリーズ1から続くXJらしさを全ての乗り味に色濃く滲ませながらも、現代において十分に通用する快適さと性能を併せもっている。滑らかなエンジンフィールと軽妙なハンドリングはシリーズ1に込めたコンセプトの集大成だったと思えたほど。
自分で買うとしたら、どれを選ぶだろう。プレゼントしてくれるというなら遠慮なく試乗した極上のXJC12をねだるところだが、現実的に自分で買うとしたならば程度の良いX308だろうか……。そんなことを想像しつつ、最新のX351だって悪くない選択なんだよな、と、ツアーが終わってみればすっかりXJシリーズにハマっていた。
西川淳|自動車ライター/編集者
産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰して自動車を眺めることを理想とする。高額車、スポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域が得意。中古車事情にも通じる。永遠のスーパーカー少年。自動車における趣味と実用の建設的な分離と両立が最近のテーマ。精密機械工学部出身。
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