【レクサス ES 新型試乗】デジタルアウターミラーって、結局どうなのよ?…岩貞るみこ

レクサス ES 新型に採用されたデジタルアウターミラーの使い勝手は
◆デジタルアウターミラーってどうよ?

世界初のデジタルアウターミラー(サイドミラー)を採用した『ES』である。やはり注目はデジタルミラーってどうよ?でしょう。既報でもあるとおり、デジタルミラーは世界的な基準を作る国連で合意された話。なにやってんだ日本の国交省は!と、鼻息の荒い反対派に於かれては、アンガーマネジメントで6秒数えて落ち着いていただきたい。

国連で「いいですよ」となり、よーいどんの市販化競争が全世界で繰り広げられる中、堂々の一番乗りを果たしたES。しかし、世界初の技術は比較検討相手がいなければ、ユーザーの反応もわからないゆえ苦労は多そうだ。完成したESの出来栄えを見ても、もっともっとできることがありそうなんだもの(当然、レクサスもこれでいいとは思っちゃいない)。

まずは、ディスプレイ。言葉を選ばずに書けば、「とってつけたようなディスプレイ」である。なんで一体化しなかったのか、だれもが不満に思うところだろう。

◆「とってつけたようなディスプレイ」の理由


インテリア一体型にしなかった理由は、ESの中でも、デジタルアウターミラー装着車とそうでないクルマが混在するため、専用インテリアにできなかったこと。もうひとつは、ディスプレイの位置をどこにするか、まだ悩んでいるんじゃないかと勝手に思っている。ユーザーも初めての機能に、どう使いこなしていいのか挙動がさだまらないし。

レクサスとしては、ドライバーの今までの視線移動のクセからいって、「これまでのサイドミラーを見る視線移動上」にディスプレイをとりつけている。たしかにこれなら、視線がさまようことは少なくなる。特に、左側のディスプレイに至っては、車外のサイドミラーを見るクセで視線を動すと、その手前、Aピラー内側で確認できるのはかなり使いやすい。最近のクルマ、横幅成長中で、左ミラー見にくいし。

だったら、左側のディスプレイはAピラーの内側じゃなく、センターコンソールあたりにつけたらどうよ? という気がしないでもない。でもそうすると、車内突起物となって衝突時の安全性能にひっかかってしまう。それに、いままであまり気づかなかったけれど、サイドミラーを見るということは、首振り確認に近い行動をしているということで、車両外側の左右の気配をそれとなく感じることにもつながっている。ただ単に「サイドミラーの映像を見やすくする」=安全性が高まるというわけではないのである。

◆サイドミラーの役割は奥が深いことを実感


もうひとつ気になったのは、なぜデジタルミラーなのに、耳が横に出ちゃっているのよ? という部分だ。サイドミラーじゃないのだから、この「耳」がなければ空気抵抗&風切り音が減ってよかろうに。

でもこれは、アラウンドビューモニター(車両を上から見たように障害物を映し出すモニター)を採用するにあたり、ボディサイドのふくらんだ部分より左右に出ていないと、車両の足元まで撮影できないので、それゆえの出っ張りなのだそうな。なるほどね。

そのほか、サイドミラーって、狭い道を走るときに、このサイドミラーがぶつかるかどうかで車幅感覚をつかんでいるところもあるし。

こうして考えると、もともとあるサイドミラーの役割は奥が深い。これを変えるとなると、単にデジタルで夜間も見えやすくなった、自転車巻き込み事故が減りそうねと喜ぶだけでなく、もっと思慮深く考える必要がありそうだ。なにかを変えると別のところにひずみがくるという、製造物のときによく使われる変更点管理という概念があるけれど、デジタルミラー採用は、まさにその部分を無視しては進めないようだなあ。



■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

(レスポンス 岩貞るみこ)

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