【VW パサートオールトラック 新型試乗】地上高が上がっただけのクルマじゃない…中村孝仁
◆ヴァリアントと比べてマイルドになった乗り味
試乗を終えて帰ってきて開口一番、「地上高どのくらい上がっているんです?」広報「30mmアップです。」僕「それだけ上がって、サスペンションは変えてるんですか?」広報「ハイ!」なるほどね。
何故こうしたやり取りをしたかというと、以前に乗った『パサートヴァリアント』と比較して、ぐっとマイルドというかソフトな乗り味を感じたからである。この種のクロスカントリー系のモデルでは、地上高をあげてもサスペンションストロークやサスペンションセッティングを変えていないクルマもある。でもこのパサートオールトラックは、ちゃんとそれらしくいじっているということだった。
さすがに速い転舵の入力に対するボディの挙動は、一瞬グラっとくるし、何となくだがタイヤの接地感が希薄になるのもわかる。とはいえ、そんな走りをすることはこのクルマを使うライフタイムにおいて、ほとんど存在することはない。まさにエルクテストのような、常識を外れた走らせ方でしかない。
少し気合いを入れて峠道を走ってみたところで、ロールの大きさが気になるということもないから、却ってソフトで快適な乗り心地が平穏をもたらしてくれる。若い頃はそうした平穏な走りに物足りなさを感じることもあったが、今はこうしたマイルドな走りが好きだ。勿論車種にもよるけど…。
◆最新鋭のターボディーゼル
搭載されるエンジンは、EA288のコードネームを持つ2リットルのターボディーゼルである。例のディーゼルゲートで引っかかったのはこのエンジンではない。尿素を吹くいわゆるアドブルーのタイプで、現在のVWディーゼルでは最新鋭だ。
もっとも本国ではEA288evoがすでに公表されており、それはユーロ7の排ガス規制をパスすると言われているが、現状ではこれが最先端。しかし、元々このエンジンがデビューしたのは2012年のことで、6年たっての日本導入となり、謹慎期間中にライバルたちは一斉にディーゼルを新しくしてしまったものだから、出遅れ感は否めないし、今となってはパフォーマンスこそライバルと同等であっても、その静粛性に関しては、今やライバルたちを後方から見つめる存在になってしまっている。
まあ、ネガな要素はその部分だけ。一旦常用スピードに乗ってしまえば、そのディーゼルノイズは全く気にならなくなるし、果たしてディーゼルエンジンを走らせているかどうかもわからないほどである。音が気になるのは発進から精々40km/hあたりまで。このスピード域でアクセルのオン/オフを繰り返すような状況になると、ディーゼル音が気になるというわけだ。
組み合わされるのは6速DSG。クラッチは湿式である。DSGが登場してすでに15年。この間、そのチューニングは色々と変えられてきたし、車種によってもチューニングは異なるが、総じて渋滞路におけるマナーは、やはりステップATに譲る。一方でダウンシフトを意図的にして走るようなパターンや、素早いシフトアップをマニュアル操作で行う時などは、やはりこちらが上。まあ一長一短ある。
◆地上高「160mm」をどう受け取るか
残念ながら、オールトラック最大の強みである、4WDの威力を発揮するような走行条件ではなかったので、その部分については言及を避けたい。ただ一つ気になるのは、先代のボルボ『V60クロスカントリー』や、スバル『アウトバック』などは最低地上高200mm、アウディ『A4オールロードクワトロ』でも170mmと、10mm違いだが、あちらが地上高は上。160mmという地上高は、この種のモデルとしては最も低い部類なのだが、果たしてこのチョイスはどんなものかという疑問が湧く。
ボディはパサートヴァリアントと全く同じだから、室内の使い勝手などは変わらない…と言いたいところだが、ヴァリアントと比較して、ほんの少しながらラゲッジスペースは狭い。ヴァリアントの場合リアシートを使った状態で650リットル、倒した場合1780リットルとなるが、オールトラックはこれが639リットル/1769リットルとなる。まあ、誤差の範囲と言っても過言ではないと思う。
エクステリアはフロントのバンパー周りのデザインが少し異なる。お値段は試乗した「アドバンス」が569万9000円。素のオールトラックは509万9000円からだそうだが、こうしてみると庶民にはクルマがつくづく高くなったと実感する。何しろ、この20年、自分のインカムは増えるどころか情けないことに減っているのでつい愚痴りたくなるわけだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
試乗を終えて帰ってきて開口一番、「地上高どのくらい上がっているんです?」広報「30mmアップです。」僕「それだけ上がって、サスペンションは変えてるんですか?」広報「ハイ!」なるほどね。
何故こうしたやり取りをしたかというと、以前に乗った『パサートヴァリアント』と比較して、ぐっとマイルドというかソフトな乗り味を感じたからである。この種のクロスカントリー系のモデルでは、地上高をあげてもサスペンションストロークやサスペンションセッティングを変えていないクルマもある。でもこのパサートオールトラックは、ちゃんとそれらしくいじっているということだった。
さすがに速い転舵の入力に対するボディの挙動は、一瞬グラっとくるし、何となくだがタイヤの接地感が希薄になるのもわかる。とはいえ、そんな走りをすることはこのクルマを使うライフタイムにおいて、ほとんど存在することはない。まさにエルクテストのような、常識を外れた走らせ方でしかない。
少し気合いを入れて峠道を走ってみたところで、ロールの大きさが気になるということもないから、却ってソフトで快適な乗り心地が平穏をもたらしてくれる。若い頃はそうした平穏な走りに物足りなさを感じることもあったが、今はこうしたマイルドな走りが好きだ。勿論車種にもよるけど…。
◆最新鋭のターボディーゼル
搭載されるエンジンは、EA288のコードネームを持つ2リットルのターボディーゼルである。例のディーゼルゲートで引っかかったのはこのエンジンではない。尿素を吹くいわゆるアドブルーのタイプで、現在のVWディーゼルでは最新鋭だ。
もっとも本国ではEA288evoがすでに公表されており、それはユーロ7の排ガス規制をパスすると言われているが、現状ではこれが最先端。しかし、元々このエンジンがデビューしたのは2012年のことで、6年たっての日本導入となり、謹慎期間中にライバルたちは一斉にディーゼルを新しくしてしまったものだから、出遅れ感は否めないし、今となってはパフォーマンスこそライバルと同等であっても、その静粛性に関しては、今やライバルたちを後方から見つめる存在になってしまっている。
まあ、ネガな要素はその部分だけ。一旦常用スピードに乗ってしまえば、そのディーゼルノイズは全く気にならなくなるし、果たしてディーゼルエンジンを走らせているかどうかもわからないほどである。音が気になるのは発進から精々40km/hあたりまで。このスピード域でアクセルのオン/オフを繰り返すような状況になると、ディーゼル音が気になるというわけだ。
組み合わされるのは6速DSG。クラッチは湿式である。DSGが登場してすでに15年。この間、そのチューニングは色々と変えられてきたし、車種によってもチューニングは異なるが、総じて渋滞路におけるマナーは、やはりステップATに譲る。一方でダウンシフトを意図的にして走るようなパターンや、素早いシフトアップをマニュアル操作で行う時などは、やはりこちらが上。まあ一長一短ある。
◆地上高「160mm」をどう受け取るか
残念ながら、オールトラック最大の強みである、4WDの威力を発揮するような走行条件ではなかったので、その部分については言及を避けたい。ただ一つ気になるのは、先代のボルボ『V60クロスカントリー』や、スバル『アウトバック』などは最低地上高200mm、アウディ『A4オールロードクワトロ』でも170mmと、10mm違いだが、あちらが地上高は上。160mmという地上高は、この種のモデルとしては最も低い部類なのだが、果たしてこのチョイスはどんなものかという疑問が湧く。
ボディはパサートヴァリアントと全く同じだから、室内の使い勝手などは変わらない…と言いたいところだが、ヴァリアントと比較して、ほんの少しながらラゲッジスペースは狭い。ヴァリアントの場合リアシートを使った状態で650リットル、倒した場合1780リットルとなるが、オールトラックはこれが639リットル/1769リットルとなる。まあ、誤差の範囲と言っても過言ではないと思う。
エクステリアはフロントのバンパー周りのデザインが少し異なる。お値段は試乗した「アドバンス」が569万9000円。素のオールトラックは509万9000円からだそうだが、こうしてみると庶民にはクルマがつくづく高くなったと実感する。何しろ、この20年、自分のインカムは増えるどころか情けないことに減っているのでつい愚痴りたくなるわけだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
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フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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