【メルセデスベンツ CLS 新型試乗】この直6が、マルチシリンダーのベンチマークになる…丸山誠

メルセデスベンツ CLS450 4MATIC Sports
◆まさに「エンジン・オブ・ザ・イヤー」な完成度の直6

年末ということで、2018年に試乗したクルマのなかでもっとも感動したモデルを紹介したい。それはメルセデスベンツ『CLS』だ。

CLSのなかでも「CLS450 4MATIC Sports」が搭載する3リットル直6ハイブリッドのエンジンは素晴らしかった。感動的とさえいえる。まさに2019エンジン・オブ・ザ・イヤーと呼べる完成度を備えていたのだ。このエンジンはほかのモデルにも搭載されるが、初試乗したのがCLSだった。メルセデスが久々に開発した直6のM256エンジンは、何度も言うが素晴らしいの一言だ。

ハイブリッドというと、それだけで嫌がるユーザーもいるが、ハイブリッドということを感じさせない仕上げなのもうまい。きっとエンジニアは、直6の味わいを現在の技術で再表現してみたかったのだと勝手に想像してしまう。

アクセルを踏み込むと極めてスムーズにエンジンが回り、緻密な加速感を味わわせてくれる。直6エンジンらしい繊細なフィールで、これまでのメルセデス・ベンツのV6とはまったく異なる味わいだ。これぞ直6という完全バランスでエンジンから聞こえる音もV型のような勇ましい感じではなく、静かで流れるように優しく、調律がしっかりと整った感じだ。

◆まるでNAのような吹き上がり


ハイブリッドのため48V系のISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を装備しているのもこのエンジンの注目点。いわゆるマイルドハイブリッドだがモーターアシストしているという感じが一切なく、エンジンそのものだけで加速しているかのような自然な吹き上がり感なのだ。ツインスクロールターボを装備している過給エンジンにもかかわらず、それも感じさせない自然なレスポンスも備えている。まるでNAのような吹き上がり感で、パワーもしっかりと詰まっている。

このM256エンジンは最高出力367ps、最大トルク500Nmを発生。3リットルの過給エンジンに加えモーターアシストであることを考えると、飛び抜けてハイパワーではないが濃密なパワーフィールを実現している。モーターはエンジンとトランスミッションの間にレイアウトされ、最高出力16kW 、最大トルク250Nmを発揮。減速時にはモーターが発電機(ジェネレーター)となって回生ブレーキが働き、約1kWhのリチウムイオンバッテリーを充電する。この回生ブレーキのフィールも秀逸で減速感にまったく違和感がない。

ちなみにこのパワーユニットは、エアコン用のコンプレッサーやウォーターポンプなども電動化されたため、これらを駆動するベルトはなくなっている。こうしたことはフルハイブリッドでは当たり前になりつつあるが、静かさや滑らかさが際立っているのは、こうした余計な回転するパーツがなくなったことも寄与しているのかもしれない。ちなみにバランスを取るため、クランクから直結するホイールウエイトは残されている。

◆「220d」より240万円高いが、それだけの価値がある


アイドリングストップでのマナーもいい。エンジンとトランスミッションにレイアウトされたモーターは、極めて静かにエンジンを目覚めさせる。ショックはもちろん、違和感もまったくない。2秒以下のエンジン停止は、かえって無駄になるためドライバーの走行データやレーダーセンサーからの情報で、2秒以上停止しないと予測すると停止しない制御が盛り込まれている。また、アイドリング時には充電電流を調整することで、エンジン回転数を520回転という低回転をキープ。燃料を節約すると同時に静粛性も向上させているわけだ。

CLSは2リットルディーゼルの「CLS220d」も用意され、高速道路での巡行性能は優れているが、CLS450 4MATIC Sportsと比べるとキャラクターが違うクルマのように感じた。CLS450 4MATIC SportsはCLS220dより240万円高いが、それだけの価値がある。

直6のCLS450 4MATIC Sportsを選ぶことを強くおススメする。このメルセデスベンツの最新直6エンジンが、今後のマルチシリンダーのベンチマークになる。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

丸山 誠|モータージャーナリスト
自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。キャンピングカーやキャンピングトレーラーなどにも詳しい。プリウスでキャンピングトレーラーをトーイングしている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

(レスポンス 丸山 誠)

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