【メルセデスベンツ Aクラス 新型試乗】「快適エンタメ移動体」は高いか、安いか…中村孝仁
◆「ハイ、メルセデス!」を楽しむならプラス42.9万円
天皇州アイルにある試乗会場から一路三浦半島を目指す。あらかじめ、一番気になっていた「MBUX」の使い方や、スイッチ類の使い方についてレクチャを受けていざ出発!
一般道に入ってすぐに「ハイ、メルセデス!今日は何日?」なんて、具にも付かない質問をしてみた。勿論ちゃんと答えてくれる。ただ、メルセデスという言葉には異常に反応するようで、某モータージャーナリストのウェブ記事で、今日はメルセデスの…と言った瞬間にMBUXが応えていたのは笑えた。当然ながら、ありとあらゆる作業を言葉だけでこなしてくれるのは大変ありがたいし、それによって目線を前方からそらす必要がなくなるのは、相当安全性にも寄与すると思う。
個人的に新しいメルセデスベンツ『Aクラス』が凄まじく進化したと思うのは、MBUXもさることながら、質感の向上やら装備の充実度などである。ステアリングに装備されるボタンなどはほぼ上級の『Sクラス』と同じだし、その機能も同じだ。
もっともこれらすべてが、実はオプション設定で上級の「スタイル」(今回の試乗車)を買ったところで、正価369万円のままでは、ハイ、メルセデス!もアダプティブクルーズコントロールも機能しない。最低でもそれらが欲しければ、レーダーセーフティーパッケージとナビゲーションパッケージをオプションで追加しないと、これらのエンタメ機能や安全機能は付いてこないから、42万9000円也のオプションを加えて、合計411万9000円が、今巷で騒がれている新しいメルセデスベンツAクラスの素顔が垣間見えるクルマになる…というわけだ。
◆常用域ではかなり静かな1.4リットルターボ
エンジンは全く新しいM282というコードネームを持つ、1.4リットル直噴ターボユニットである。排気量は従来よりも引き下げられているが、パワー、トルク共に向上し、印象としてもスムーズさも従来より俄然滑らかと感じられた。何よりも『Cクラス』と同じ遮音コンセプトで作られているという室内の静粛性の高さも、相当なものだと感じられた。
ただ、このエンジン、常用域はとても静かなのだが、トップエンドまで回すと結構ノイジーに変身する。物理的には6200~6300程度まで回るようだが、大人しく走る向きに薦められるのは精々4500rpm程度まで。もっともここまで回せば十分な加速とスピードが得られるから、やんちゃに走りたい向きの方以外なら、このエンジンで十分満足が行くと思う。
◆Aクラスは高いか、安いか
さて、話を411万9000円のクルマとして進めようと思う。そうしないと本来のAクラスではないから。これを果たして高いと感じるか、リーズナブルと感じるか、はたまた安いと感じるかは個人の判断に任せるとして、僕は「うーん、微妙…」という答えでる。
先代のモデルよりも格段に進歩して、商品力は同クラスのライバルに対して現時点では桁違いに高い気がする。ただ、この種のエンタメ系装備は、賞味期限が非常に短い。つまり、今は最先端でも、恐らく来年になるとライバルも同じようなものを装備してくるんじゃないか?と考えると、その賞味期限は結構短くて、もしそれにお金がかかっているとしたら、来年にはトップを維持できない可能性だってあるわけだ。
◆最高の快適エンタメ移動体
ハンドリングは16インチタイヤでも十分キビキビとしたイメージがあるし、何よりも乗り心地、特に路面のあたり感はこちらの方が18インチを装着したモデルよりも上。ステアリングのシャープさは、メルセデスというよりもBMW?的な感じもする。
ただ、前述したように、高回転域を使ってパドルを駆使しながらワインディングを攻めたいようなドライバーにとっては、この回転域のノイジーさは多分気になるところだろうし、そうなれば16インチより18インチとなる。
車両全体の骨格は、やはり以前よりも格段に強度を高めているようで、特にリアのハッチゲート回りを強化したことが、個人的には剛性感アップに貢献している印象である。気が付きにくい部分では、A、B、Cピラーそれぞれの作りを変えて、全体として10%ほど視認性を上げていたり、コンパクトカークラス最良の空力性能を手に入れていたり等々、現時点では明らかにライバルを凌駕している。
この値段を出すと、メルセデスSクラス並みの安全装備が手に入るというのも、心擽られるし、スタイルだとフルパワーシートが装備されて、そのアジャストは上級モデルと同じ椅子の形をしたアジャスターが付くから、何となくそれだけで高級感を感じてしまう。MBUXに話しかけながら、快適にクルーズコントロールをセットして、高速を巡行する。これ、最高の快適エンタメ移動体だと感じた。ウリは何よりも新しさである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
天皇州アイルにある試乗会場から一路三浦半島を目指す。あらかじめ、一番気になっていた「MBUX」の使い方や、スイッチ類の使い方についてレクチャを受けていざ出発!
一般道に入ってすぐに「ハイ、メルセデス!今日は何日?」なんて、具にも付かない質問をしてみた。勿論ちゃんと答えてくれる。ただ、メルセデスという言葉には異常に反応するようで、某モータージャーナリストのウェブ記事で、今日はメルセデスの…と言った瞬間にMBUXが応えていたのは笑えた。当然ながら、ありとあらゆる作業を言葉だけでこなしてくれるのは大変ありがたいし、それによって目線を前方からそらす必要がなくなるのは、相当安全性にも寄与すると思う。
個人的に新しいメルセデスベンツ『Aクラス』が凄まじく進化したと思うのは、MBUXもさることながら、質感の向上やら装備の充実度などである。ステアリングに装備されるボタンなどはほぼ上級の『Sクラス』と同じだし、その機能も同じだ。
もっともこれらすべてが、実はオプション設定で上級の「スタイル」(今回の試乗車)を買ったところで、正価369万円のままでは、ハイ、メルセデス!もアダプティブクルーズコントロールも機能しない。最低でもそれらが欲しければ、レーダーセーフティーパッケージとナビゲーションパッケージをオプションで追加しないと、これらのエンタメ機能や安全機能は付いてこないから、42万9000円也のオプションを加えて、合計411万9000円が、今巷で騒がれている新しいメルセデスベンツAクラスの素顔が垣間見えるクルマになる…というわけだ。
◆常用域ではかなり静かな1.4リットルターボ
エンジンは全く新しいM282というコードネームを持つ、1.4リットル直噴ターボユニットである。排気量は従来よりも引き下げられているが、パワー、トルク共に向上し、印象としてもスムーズさも従来より俄然滑らかと感じられた。何よりも『Cクラス』と同じ遮音コンセプトで作られているという室内の静粛性の高さも、相当なものだと感じられた。
ただ、このエンジン、常用域はとても静かなのだが、トップエンドまで回すと結構ノイジーに変身する。物理的には6200~6300程度まで回るようだが、大人しく走る向きに薦められるのは精々4500rpm程度まで。もっともここまで回せば十分な加速とスピードが得られるから、やんちゃに走りたい向きの方以外なら、このエンジンで十分満足が行くと思う。
◆Aクラスは高いか、安いか
さて、話を411万9000円のクルマとして進めようと思う。そうしないと本来のAクラスではないから。これを果たして高いと感じるか、リーズナブルと感じるか、はたまた安いと感じるかは個人の判断に任せるとして、僕は「うーん、微妙…」という答えでる。
先代のモデルよりも格段に進歩して、商品力は同クラスのライバルに対して現時点では桁違いに高い気がする。ただ、この種のエンタメ系装備は、賞味期限が非常に短い。つまり、今は最先端でも、恐らく来年になるとライバルも同じようなものを装備してくるんじゃないか?と考えると、その賞味期限は結構短くて、もしそれにお金がかかっているとしたら、来年にはトップを維持できない可能性だってあるわけだ。
◆最高の快適エンタメ移動体
ハンドリングは16インチタイヤでも十分キビキビとしたイメージがあるし、何よりも乗り心地、特に路面のあたり感はこちらの方が18インチを装着したモデルよりも上。ステアリングのシャープさは、メルセデスというよりもBMW?的な感じもする。
ただ、前述したように、高回転域を使ってパドルを駆使しながらワインディングを攻めたいようなドライバーにとっては、この回転域のノイジーさは多分気になるところだろうし、そうなれば16インチより18インチとなる。
車両全体の骨格は、やはり以前よりも格段に強度を高めているようで、特にリアのハッチゲート回りを強化したことが、個人的には剛性感アップに貢献している印象である。気が付きにくい部分では、A、B、Cピラーそれぞれの作りを変えて、全体として10%ほど視認性を上げていたり、コンパクトカークラス最良の空力性能を手に入れていたり等々、現時点では明らかにライバルを凌駕している。
この値段を出すと、メルセデスSクラス並みの安全装備が手に入るというのも、心擽られるし、スタイルだとフルパワーシートが装備されて、そのアジャストは上級モデルと同じ椅子の形をしたアジャスターが付くから、何となくそれだけで高級感を感じてしまう。MBUXに話しかけながら、快適にクルーズコントロールをセットして、高速を巡行する。これ、最高の快適エンタメ移動体だと感じた。ウリは何よりも新しさである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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