【日産 セレナNISMO 500km試乗】得意の高速クルーズでりんご狩りへ、意外?なアウトドア性能
日産自動車の2リットル級ミニバン『セレナ』のラインナップに、走行性能を高めたホットバージョン「NISMO(ニスモ)」がある。ミニバンという車種は空気抵抗は大きく、車体は重く、重心は高く、剛性は確保しづらく…と、走行性能を求めるのにはおよそ不向きな車種。車格によって豪華さや快適性の差はあれど、人やモノが運べればそれでいいのだ。そのミニバンをあえて走りに振った仕様に仕立てたセレナNISMOで500kmほどドライブする機会があったので、インプレッションをお届けする。
ドライブと言ってもいろいろなシチュエーションがある。今回は普段のロングドライブインプレッションとは異なり、メインは人、モノのお運びだ。東京を出発し、群馬北部の川場村で共同オーナー制度の果樹園でりんごを収穫。それを山積みして東京に戻るというもので、総走行距離は527.7km。試乗車は注目度の高いシリーズハイブリッド「e-POWER」ではなく、2リットル自然吸気エンジンにごく小さいモーターをつけた「シンプルスマートハイブリッド」のFWD(前輪駆動)。道路比率は市街路3、郊外路2、高速4、山岳路1。乗車人数2~4名、路面ドライ、エアコンAUTO。
インプレッションの前にセレナNISMOの長所と短所を5つずつ列記してみよう。
■長所
1.ノーマルとまったく異なる高応答のハンドリング。
2.抑制的な空力パーツと控えめな差し色を使った洒落感のあるデザイン。
3.スエード生地の貼り付けなどで質感が上がったインテリア。
4.固いがそこそこフラットで同乗者から苦情が出ない乗り心地。
5.クルーズ時にはやはり重宝する運転支援システム、プロパイロット。
■短所
1.ハイグリップタイヤによる走行抵抗増大のためか燃費は良くない。
2.クルマのキャラクターに比すると2リットルではアンダーパワー。
3.視界は良好だがダークガラスの色合いがかなり濃く、室内が暗め。
4.低い位置にシートを畳むため荷室の実効床面積は広くない。
5.増大したコーナリングGに対し、とくにリアシートのホールドが不足。
◆高速クルーズは得意科目
では、本論に入ろう。筆者は2018年、ホンダ『ステップワゴン』、トヨタ『ヴォクシー』、そしてこのセレナNISMOと、3大ミニバンを長距離テストドライブをする機会を得たが、そのうち最もミニバンにふさわしい使い方をしたのはこのセレナNISMOであった。冒頭で述べたように、ミッションは群馬県川場村の果樹園でのりんごの収穫および輸送である。
往路はシートアレンジメントしないまま2名乗車。まずは日の出前の関越自動車道を、りんごの収穫場所である群馬県川場村の近く、沼田インターチェンジへと走った。休日の関越道はちょっとスタートが遅れると混雑に捕まるので、6時台に高速に乗ることが肝要。それでも途中、鶴ヶ島付近で若干流れが悪くなっていた。
高速クルーズは、セレナNISMOにとっては得意科目。ノーマルより15mmローダウンする高レートのサスペンションスプリング、減衰力を高めたショックアブゾーバー、鬼グリップではないがかなり固めのタイヤを装着するため、乗り心地はもちろんノーマルに比べるとソリッドだ。が、ショックアブゾーバーのクオリティアップやボディ強化が功を奏してか、路面の微小な凹凸の抑え込みは結構良い。関越道のように路面のコンディションが良い高速道路では、固さのデメリットを滑らかさのメリットがカバーして余りあるという感じで、爽快なクルーズであった。
◆サンデードライバーにも安心の「プロパイロット」
運転支援システム「プロパイロット」は巡航速度110km/hに設定。GPSで計測したところ、セレナの速度計は100km/h表示のときに実測92km/hしか出ておらず、110km/h設定でちょうど制限速度くらいだったためだ。筆者の経験ではミニバンは全般的に速度表示が甘い傾向がある。ライバルのトヨタ『ヴォクシーハイブリッド』もやはり100km/h表示時に実測92km/h。ホンダ『ステップワゴンハイブリッド』のみ実測96km/h出ていた。
速度計が甘くても、100km/h区間では問題ない。が、新東名の110km/h区間だと設定上限の115km/hにしても実速度が制限速度に届かない計算になる。また、自分ではちゃんとしたペースで走っているつもりでも他車からみるとチンタラ走っているように思われてしまい、昨今話題のあおり運転を誘発する原因にもなる。ちなみに日本メーカーのモデルでもアメリカで販売されるクルマはメーター誤差がほとんどない。技術的には速度表示を正確にすることは何の問題もないわけで、日産に限らず全メーカー、そろそろこの妙な慣習を見直してもいいのではないかと思った。
それはともかくプロパイロット、こういう整備状況の良い高速道路での運転支援は十分に果たしていた。発売当初、自動運転技術を高らかにうたっていたが、もちろん自動運転システムではないので、クルマにまかせっきりにできるわけではない。また、ステアリング介入ありの車線維持アシスト、前車追従クルーズコントロールなどの機能自体もこの種のシステムが急速に進化している今日においては、ある程度ハイスペックなモデルとしてはあって当たり前というもの。メルセデスベンツのように、進路変更しようとしたら移動先の車線の流れに速度を合わせてくれるといった芸当はない。
美点として挙げられるのは、ステアリング介入が結構強いことで、ためしにレーンのラインにちょっと近づいてみるとかなりの力強さで車線中央に戻してくれる。うっかり蛇行運転をしてしまいがちなサンデードライバーにとっては、ドライブの不安を取り除いてくれる有難い装置であろうことは間違いない。運転慣れしている人にとっても、直進保持への気配りが小さくてすむことは、疲労蓄積の防止に少なからず効いてくるので、装着したいところであろう。
◆ライトチューンのお手本のような味付け
市街地、郊外路、ワインディングでは、高速道路に比べると快適性は落ちる。が、ガチガチという感じはしない。ここでもボディ強化がきいているのか、固さはあっても突き上げ感、揺すられ感はそれほど大きくない。メーカーの手によるライトチューンのお手本のような味付けであった。
ノーマルに比べて大幅に上がっているのは旋回性能。タイヤはブリヂストン「ポテンザ アドレナリン S003」というモデルで、タイヤサイズは205/50R17。鬼グリップタイヤではないが、一般的なコンフォートスポーツモデルと比べると明らかにグリップ、サイドウォールの剛性重視。それを路面に圧着させるセッティングはミニバンとしては結構決まっており、安定性はミニバンとしては十分であった。
走行性能の向上は攻め気味に走ることばかりでなく、安全サイドにも好作用する。うっかりコーナーに多少速いスピードで進入してしまったとしても、アンダーステアに慌てたりといった思いをするリスクはかなり軽減されていそうだった。難点を言えば、シートがノーマル形状のため、クルマのほうでは余裕で耐えている横Gでも乗員が姿勢を崩しやすいこと。シート生地をもう少し滑りにくい素材にすれば、それだけでもかなり違ってくるのではないかと思われた。
◆アウトドア用途にも十分使える
さて、走りの話はこのくらいにして、りんご輸送である。観光農園までの“ラストワンマイル”はあぜ道。セレナNISMOは標準グレードに設定されている「ハイウェイスター」と同じく全幅が1740mmあるが、基本は5ナンバーでトレッドが狭いため取り回しは良好。未舗装の隘路にもスイスイと入っていくことができた。
他のクルマで乗りつけたメンバーと合流し、全力でりんごを収穫。綺麗な大玉、傷物、小玉の3つに選別していく。2018年は夏の気候が暑すぎたりその後に天候不順があったりと、りんごにとってコンディションはあまり良いとは言えず、出来が心配された。が、実際に割ってみると、蜜の入りはそれほどでもなかったものの、結構ジューシーに実っていた。りんごに限った話ではないのだが、収穫当日の味は数日経ってからの味とは別物で、わざわざお出かけして食べるだけの価値は十分にある。また、みかんやマンゴーと同じ、一見みすぼらしい小玉のほうが甘さでは大玉を凌駕していたりする。そんなことを体感するのも楽しい。
りんごの仕分け、メンバーへの分配、箱詰め作業を終え、いよいよクルマにりんごを積む。帰りは4名乗車の予定であったため、3列シートを畳んでそこを丸ごと収納に使うことにした。写真でおわかりいただけるであろうが、積むりんごの量は結構多い。
ミニバンのシートアレンジは各社、工夫を凝らしている。セレナの特徴は、シートを高々と跳ね上げるのではなく、低い位置で横に格納すること。実際に畳んでみると、腕を下ろした姿勢で固定ベルトをかけるのは非常に楽で、身長の低い女性にとっては重宝しそうであった。跳ね上げによって3列目の窓がふさがれたりもしない。
欠点は折り畳んだ3列目シートが荷室左右の低い位置を占拠することにより、荷室の実効床面積が狭くなるということ。荷室の形状も前後方向に細長くなるため、家具、家電など大型の荷物を積むような貨客兼用のユーティリティではライバルのステップワゴン、ヴォクシーに対して明確に劣る。
今回は荷物が段ボールに詰めたりんご。分配してみると自車分の量は結構多く、ちょっと心配になった。が、立体パズルのように組み合わせを工夫しながら積み込んでみたところ、安全性の分け目のひとつである2列目シートバックの上端より低いラインに余裕を持って収めることができた。アウトドア用途であればこれで十分であろう。
◆走り、積載性は十分。華やかさで選ぶのもあり
帰路は4名乗車+りんご満載での高速クルーズ。総重量は軽く2トンを超えるほぼフルロードの状態で、ドライブフィールは空荷の1~2名乗車であった往路と比べるとさすがにちょっと重い。普通に走るぶんには最高出力150psの2リットル直4+CVTでも十分だが、高速道路への流入時はちょっと気合を入れてスロットルを踏んでやる必要がある。乗り心地や安定性はこの状態でもおおむね良好。強化サスペンションや強化ボディの恩恵だろう。
ロングラン燃費は2名乗車区間でも旧型セレナの2リットルマイルドハイブリッドでロングランを試みたときより悪く、トータルでは約12km/リットル。1名乗車時に大人しく走ってみても燃費は大して伸びなかった。旧型よりかなり重くなっていることもさることながら、スポーツタイヤの走行抵抗の影響が結構大きそうに感じられた。
東京に帰着し、りんごを降ろしながら解散。ドライブを終えた印象だが、走りに振ったミニバンとしては、セレナNISMOは十分にまとまりの良いモデルであった。現代のミニバンはノーマルでも走行性能が悪いわけではないのだが、セレナNISMOのステアフィールの確かさ、ぐらつきやふわつきのなさなどはノーマルとは別モノで、乗ればライトチューンされてるなあと一発で感じられることウケアイである。
荷室はノーマルと同じでライバルに比べるとちょっと狭いが、荷物単体が大型でなければ、積載力は普通のクルマよりはるかに大きい。今回のりんご狩りのように、ホリデーに頻繁に遠出してアウトドアイベントを楽しむファミリーにとっては良い選択肢のひとつと言える。また、内外装にオレンジの差し色を配したコーディネーションもお洒落なので、華やかさ重視で選ぶのもありだろう。
(レスポンス 井元康一郎)
ドライブと言ってもいろいろなシチュエーションがある。今回は普段のロングドライブインプレッションとは異なり、メインは人、モノのお運びだ。東京を出発し、群馬北部の川場村で共同オーナー制度の果樹園でりんごを収穫。それを山積みして東京に戻るというもので、総走行距離は527.7km。試乗車は注目度の高いシリーズハイブリッド「e-POWER」ではなく、2リットル自然吸気エンジンにごく小さいモーターをつけた「シンプルスマートハイブリッド」のFWD(前輪駆動)。道路比率は市街路3、郊外路2、高速4、山岳路1。乗車人数2~4名、路面ドライ、エアコンAUTO。
インプレッションの前にセレナNISMOの長所と短所を5つずつ列記してみよう。
■長所
1.ノーマルとまったく異なる高応答のハンドリング。
2.抑制的な空力パーツと控えめな差し色を使った洒落感のあるデザイン。
3.スエード生地の貼り付けなどで質感が上がったインテリア。
4.固いがそこそこフラットで同乗者から苦情が出ない乗り心地。
5.クルーズ時にはやはり重宝する運転支援システム、プロパイロット。
■短所
1.ハイグリップタイヤによる走行抵抗増大のためか燃費は良くない。
2.クルマのキャラクターに比すると2リットルではアンダーパワー。
3.視界は良好だがダークガラスの色合いがかなり濃く、室内が暗め。
4.低い位置にシートを畳むため荷室の実効床面積は広くない。
5.増大したコーナリングGに対し、とくにリアシートのホールドが不足。
◆高速クルーズは得意科目
では、本論に入ろう。筆者は2018年、ホンダ『ステップワゴン』、トヨタ『ヴォクシー』、そしてこのセレナNISMOと、3大ミニバンを長距離テストドライブをする機会を得たが、そのうち最もミニバンにふさわしい使い方をしたのはこのセレナNISMOであった。冒頭で述べたように、ミッションは群馬県川場村の果樹園でのりんごの収穫および輸送である。
往路はシートアレンジメントしないまま2名乗車。まずは日の出前の関越自動車道を、りんごの収穫場所である群馬県川場村の近く、沼田インターチェンジへと走った。休日の関越道はちょっとスタートが遅れると混雑に捕まるので、6時台に高速に乗ることが肝要。それでも途中、鶴ヶ島付近で若干流れが悪くなっていた。
高速クルーズは、セレナNISMOにとっては得意科目。ノーマルより15mmローダウンする高レートのサスペンションスプリング、減衰力を高めたショックアブゾーバー、鬼グリップではないがかなり固めのタイヤを装着するため、乗り心地はもちろんノーマルに比べるとソリッドだ。が、ショックアブゾーバーのクオリティアップやボディ強化が功を奏してか、路面の微小な凹凸の抑え込みは結構良い。関越道のように路面のコンディションが良い高速道路では、固さのデメリットを滑らかさのメリットがカバーして余りあるという感じで、爽快なクルーズであった。
◆サンデードライバーにも安心の「プロパイロット」
運転支援システム「プロパイロット」は巡航速度110km/hに設定。GPSで計測したところ、セレナの速度計は100km/h表示のときに実測92km/hしか出ておらず、110km/h設定でちょうど制限速度くらいだったためだ。筆者の経験ではミニバンは全般的に速度表示が甘い傾向がある。ライバルのトヨタ『ヴォクシーハイブリッド』もやはり100km/h表示時に実測92km/h。ホンダ『ステップワゴンハイブリッド』のみ実測96km/h出ていた。
速度計が甘くても、100km/h区間では問題ない。が、新東名の110km/h区間だと設定上限の115km/hにしても実速度が制限速度に届かない計算になる。また、自分ではちゃんとしたペースで走っているつもりでも他車からみるとチンタラ走っているように思われてしまい、昨今話題のあおり運転を誘発する原因にもなる。ちなみに日本メーカーのモデルでもアメリカで販売されるクルマはメーター誤差がほとんどない。技術的には速度表示を正確にすることは何の問題もないわけで、日産に限らず全メーカー、そろそろこの妙な慣習を見直してもいいのではないかと思った。
それはともかくプロパイロット、こういう整備状況の良い高速道路での運転支援は十分に果たしていた。発売当初、自動運転技術を高らかにうたっていたが、もちろん自動運転システムではないので、クルマにまかせっきりにできるわけではない。また、ステアリング介入ありの車線維持アシスト、前車追従クルーズコントロールなどの機能自体もこの種のシステムが急速に進化している今日においては、ある程度ハイスペックなモデルとしてはあって当たり前というもの。メルセデスベンツのように、進路変更しようとしたら移動先の車線の流れに速度を合わせてくれるといった芸当はない。
美点として挙げられるのは、ステアリング介入が結構強いことで、ためしにレーンのラインにちょっと近づいてみるとかなりの力強さで車線中央に戻してくれる。うっかり蛇行運転をしてしまいがちなサンデードライバーにとっては、ドライブの不安を取り除いてくれる有難い装置であろうことは間違いない。運転慣れしている人にとっても、直進保持への気配りが小さくてすむことは、疲労蓄積の防止に少なからず効いてくるので、装着したいところであろう。
◆ライトチューンのお手本のような味付け
市街地、郊外路、ワインディングでは、高速道路に比べると快適性は落ちる。が、ガチガチという感じはしない。ここでもボディ強化がきいているのか、固さはあっても突き上げ感、揺すられ感はそれほど大きくない。メーカーの手によるライトチューンのお手本のような味付けであった。
ノーマルに比べて大幅に上がっているのは旋回性能。タイヤはブリヂストン「ポテンザ アドレナリン S003」というモデルで、タイヤサイズは205/50R17。鬼グリップタイヤではないが、一般的なコンフォートスポーツモデルと比べると明らかにグリップ、サイドウォールの剛性重視。それを路面に圧着させるセッティングはミニバンとしては結構決まっており、安定性はミニバンとしては十分であった。
走行性能の向上は攻め気味に走ることばかりでなく、安全サイドにも好作用する。うっかりコーナーに多少速いスピードで進入してしまったとしても、アンダーステアに慌てたりといった思いをするリスクはかなり軽減されていそうだった。難点を言えば、シートがノーマル形状のため、クルマのほうでは余裕で耐えている横Gでも乗員が姿勢を崩しやすいこと。シート生地をもう少し滑りにくい素材にすれば、それだけでもかなり違ってくるのではないかと思われた。
◆アウトドア用途にも十分使える
さて、走りの話はこのくらいにして、りんご輸送である。観光農園までの“ラストワンマイル”はあぜ道。セレナNISMOは標準グレードに設定されている「ハイウェイスター」と同じく全幅が1740mmあるが、基本は5ナンバーでトレッドが狭いため取り回しは良好。未舗装の隘路にもスイスイと入っていくことができた。
他のクルマで乗りつけたメンバーと合流し、全力でりんごを収穫。綺麗な大玉、傷物、小玉の3つに選別していく。2018年は夏の気候が暑すぎたりその後に天候不順があったりと、りんごにとってコンディションはあまり良いとは言えず、出来が心配された。が、実際に割ってみると、蜜の入りはそれほどでもなかったものの、結構ジューシーに実っていた。りんごに限った話ではないのだが、収穫当日の味は数日経ってからの味とは別物で、わざわざお出かけして食べるだけの価値は十分にある。また、みかんやマンゴーと同じ、一見みすぼらしい小玉のほうが甘さでは大玉を凌駕していたりする。そんなことを体感するのも楽しい。
りんごの仕分け、メンバーへの分配、箱詰め作業を終え、いよいよクルマにりんごを積む。帰りは4名乗車の予定であったため、3列シートを畳んでそこを丸ごと収納に使うことにした。写真でおわかりいただけるであろうが、積むりんごの量は結構多い。
ミニバンのシートアレンジは各社、工夫を凝らしている。セレナの特徴は、シートを高々と跳ね上げるのではなく、低い位置で横に格納すること。実際に畳んでみると、腕を下ろした姿勢で固定ベルトをかけるのは非常に楽で、身長の低い女性にとっては重宝しそうであった。跳ね上げによって3列目の窓がふさがれたりもしない。
欠点は折り畳んだ3列目シートが荷室左右の低い位置を占拠することにより、荷室の実効床面積が狭くなるということ。荷室の形状も前後方向に細長くなるため、家具、家電など大型の荷物を積むような貨客兼用のユーティリティではライバルのステップワゴン、ヴォクシーに対して明確に劣る。
今回は荷物が段ボールに詰めたりんご。分配してみると自車分の量は結構多く、ちょっと心配になった。が、立体パズルのように組み合わせを工夫しながら積み込んでみたところ、安全性の分け目のひとつである2列目シートバックの上端より低いラインに余裕を持って収めることができた。アウトドア用途であればこれで十分であろう。
◆走り、積載性は十分。華やかさで選ぶのもあり
帰路は4名乗車+りんご満載での高速クルーズ。総重量は軽く2トンを超えるほぼフルロードの状態で、ドライブフィールは空荷の1~2名乗車であった往路と比べるとさすがにちょっと重い。普通に走るぶんには最高出力150psの2リットル直4+CVTでも十分だが、高速道路への流入時はちょっと気合を入れてスロットルを踏んでやる必要がある。乗り心地や安定性はこの状態でもおおむね良好。強化サスペンションや強化ボディの恩恵だろう。
ロングラン燃費は2名乗車区間でも旧型セレナの2リットルマイルドハイブリッドでロングランを試みたときより悪く、トータルでは約12km/リットル。1名乗車時に大人しく走ってみても燃費は大して伸びなかった。旧型よりかなり重くなっていることもさることながら、スポーツタイヤの走行抵抗の影響が結構大きそうに感じられた。
東京に帰着し、りんごを降ろしながら解散。ドライブを終えた印象だが、走りに振ったミニバンとしては、セレナNISMOは十分にまとまりの良いモデルであった。現代のミニバンはノーマルでも走行性能が悪いわけではないのだが、セレナNISMOのステアフィールの確かさ、ぐらつきやふわつきのなさなどはノーマルとは別モノで、乗ればライトチューンされてるなあと一発で感じられることウケアイである。
荷室はノーマルと同じでライバルに比べるとちょっと狭いが、荷物単体が大型でなければ、積載力は普通のクルマよりはるかに大きい。今回のりんご狩りのように、ホリデーに頻繁に遠出してアウトドアイベントを楽しむファミリーにとっては良い選択肢のひとつと言える。また、内外装にオレンジの差し色を配したコーディネーションもお洒落なので、華やかさ重視で選ぶのもありだろう。
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