【スズキ スイフトスポーツ 新型試乗】あれこれ言えばキリはないが、楽しさは最高評価…中村孝仁
◆痛快なドライブはクラスでも希少
発売から1年たって、ようやくスズキ『スイフトスポーツ』に試乗できた。中々縁遠く、ついに1年もたってしまったというわけである。
ベースとなるスイフトはご存知の通り、新しい「ハーテクト」と名付けられたプラットフォームを採用し、大幅な軽量化を達成してなお、どっしり感のある乗り心地を損なわない摩訶不思議なチューニングを達成してきた。そのベース車両に1.4リットルターボユニットを押し込み、140ps、230Nmを発生させる。140psのパフォーマンスは、出たばかりのVW『ポロTSI Rライン』の150ps、250Nmに肉薄する。ただし、ポロはスイフトに比べて100kg以上も重いから、チャラ以上でスイフトに分があるかもしれない。
さすがにお値段はあれこれついた状態で200万円を超えるから、同じセグメントのマツダ『デミオXDツーリングパッケージ』に匹敵する。しかし、改めて試乗して、これほど痛快で運転そのものを楽しめるモデルは、このクラスでは稀少だと感じた。
◆ギアの繋がり感が抜群の6MT
今回は6速MTのモデルを借りてみた。おおよそ350kmほど走ってみたが、とにかく各ギアがクロスしていて、シフトアップしてもほとんど回転が落ちず、ギアの繋がり感は抜群だ。一方で、高速100km/hは、6速でも2600rpmほど回り、今時のクルマとしてはかなり高回転で回る。そのせいもあって、350km走って得た燃費は13.5km/リットルと、まあ標準以下。おまけに要求する燃料はプレミアムガソリンだ。まあ、輸入車のほとんどはプレミアムを要求するから同等の比較はできるとしても、国産車だぞ!というツッコミはあちこちから聞こえてきそうだ。しかし、その代償を払ってでも乗りたくなるドライビングプレジャーは間違いなく提供してくれている。
そもそも今時このセグメントで車重1トン以下というのも珍しいし、その重量をもってしてこの乗り味を実現していることが、ある意味では奇跡に近い。ステアリングのメリハリも素晴らしいし、応答性、正確さ共に十分に満足の行くものを提供してくれている。そして装着タイヤは何とコンチネンタル製スポーツコンタクト5!決して安いタイヤではないから、こんなところでスズキも頑張っているなぁと思うし、このタイヤの依存度も結構大きいんじゃないかという気もした。
少し一生懸命に走ると、シフトが結構忙しい。というのもピックアップも鋭く、しかもシフトアップしていこうとすると、クロスレシオのおかげか回転がほとんど落ちずに上昇し始めるものだから、すぐに次へシフトアップしなくてはならない。これは、峠道などのワインディングには大いに重宝するし、痛快に走れる。
一方でズボラを決め込む時は、1速で発進したら3000rpmほどまで引っ張って、そのまま2速を飛ばして3速へ放り込む。そして次は5速へ。これでも繋がり感はごく普通、ちょっと回転は落ち込むがトルクのカバー範囲内だから、すぐに加速に移ってくれる。なので、状況に応じて街中を走った時は、1→3→5速だったり、1→2→4→6速だったりを使い分けて走った。こうすればその分燃費は確実に稼ぐことが出来た。
◆クルマとしての楽しさはほぼ最高評価
このモデルにはAT仕様もあって、巷ではこのATとの相性が良いからとATを薦める向きもあるようだが、個人的にはやはりMTがお勧めである。そもそもスイフトスポーツを買う層は、走りを愉しみたい人たちだと思うからで、そうでなければ普通のスイフトでも十分楽しめると思う。確かにパワフルなスイフトをATで楽しみたいという考えもわかるが、あくまでも個人的なお勧めとしてはMTである。
結構走りの面でお金を使いこんでしまったのか、手に触れるすべてのプラスチックはハードなものは使用されていて、見た目はともかくとして触れた時の質感は厳しい評価をせざるを得ない。勿論ここにソフトなタッチの表皮を使えば当然コストに跳ね返るから、痛し痒しだ。
こうして欲しい、ああして欲しいは山ほどある。前述のソフトパッドの使用もそうだが、リアのラゲッジスペースが、後席を畳んだ時に結構大きな段差が出来てしまうところも、実際に使用してみると気になるところ。段差を埋めるボードをひとつ足してもらいたいと感じる部分。まあ、あれこれ言えばきりがなくなるが、ことクルマとしての楽しさ、走りの軽快感等々はほぼ最高評価に近い。まさしく隠れた名車という印象を持った。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
発売から1年たって、ようやくスズキ『スイフトスポーツ』に試乗できた。中々縁遠く、ついに1年もたってしまったというわけである。
ベースとなるスイフトはご存知の通り、新しい「ハーテクト」と名付けられたプラットフォームを採用し、大幅な軽量化を達成してなお、どっしり感のある乗り心地を損なわない摩訶不思議なチューニングを達成してきた。そのベース車両に1.4リットルターボユニットを押し込み、140ps、230Nmを発生させる。140psのパフォーマンスは、出たばかりのVW『ポロTSI Rライン』の150ps、250Nmに肉薄する。ただし、ポロはスイフトに比べて100kg以上も重いから、チャラ以上でスイフトに分があるかもしれない。
さすがにお値段はあれこれついた状態で200万円を超えるから、同じセグメントのマツダ『デミオXDツーリングパッケージ』に匹敵する。しかし、改めて試乗して、これほど痛快で運転そのものを楽しめるモデルは、このクラスでは稀少だと感じた。
◆ギアの繋がり感が抜群の6MT
今回は6速MTのモデルを借りてみた。おおよそ350kmほど走ってみたが、とにかく各ギアがクロスしていて、シフトアップしてもほとんど回転が落ちず、ギアの繋がり感は抜群だ。一方で、高速100km/hは、6速でも2600rpmほど回り、今時のクルマとしてはかなり高回転で回る。そのせいもあって、350km走って得た燃費は13.5km/リットルと、まあ標準以下。おまけに要求する燃料はプレミアムガソリンだ。まあ、輸入車のほとんどはプレミアムを要求するから同等の比較はできるとしても、国産車だぞ!というツッコミはあちこちから聞こえてきそうだ。しかし、その代償を払ってでも乗りたくなるドライビングプレジャーは間違いなく提供してくれている。
そもそも今時このセグメントで車重1トン以下というのも珍しいし、その重量をもってしてこの乗り味を実現していることが、ある意味では奇跡に近い。ステアリングのメリハリも素晴らしいし、応答性、正確さ共に十分に満足の行くものを提供してくれている。そして装着タイヤは何とコンチネンタル製スポーツコンタクト5!決して安いタイヤではないから、こんなところでスズキも頑張っているなぁと思うし、このタイヤの依存度も結構大きいんじゃないかという気もした。
少し一生懸命に走ると、シフトが結構忙しい。というのもピックアップも鋭く、しかもシフトアップしていこうとすると、クロスレシオのおかげか回転がほとんど落ちずに上昇し始めるものだから、すぐに次へシフトアップしなくてはならない。これは、峠道などのワインディングには大いに重宝するし、痛快に走れる。
一方でズボラを決め込む時は、1速で発進したら3000rpmほどまで引っ張って、そのまま2速を飛ばして3速へ放り込む。そして次は5速へ。これでも繋がり感はごく普通、ちょっと回転は落ち込むがトルクのカバー範囲内だから、すぐに加速に移ってくれる。なので、状況に応じて街中を走った時は、1→3→5速だったり、1→2→4→6速だったりを使い分けて走った。こうすればその分燃費は確実に稼ぐことが出来た。
◆クルマとしての楽しさはほぼ最高評価
このモデルにはAT仕様もあって、巷ではこのATとの相性が良いからとATを薦める向きもあるようだが、個人的にはやはりMTがお勧めである。そもそもスイフトスポーツを買う層は、走りを愉しみたい人たちだと思うからで、そうでなければ普通のスイフトでも十分楽しめると思う。確かにパワフルなスイフトをATで楽しみたいという考えもわかるが、あくまでも個人的なお勧めとしてはMTである。
結構走りの面でお金を使いこんでしまったのか、手に触れるすべてのプラスチックはハードなものは使用されていて、見た目はともかくとして触れた時の質感は厳しい評価をせざるを得ない。勿論ここにソフトなタッチの表皮を使えば当然コストに跳ね返るから、痛し痒しだ。
こうして欲しい、ああして欲しいは山ほどある。前述のソフトパッドの使用もそうだが、リアのラゲッジスペースが、後席を畳んだ時に結構大きな段差が出来てしまうところも、実際に使用してみると気になるところ。段差を埋めるボードをひとつ足してもらいたいと感じる部分。まあ、あれこれ言えばきりがなくなるが、ことクルマとしての楽しさ、走りの軽快感等々はほぼ最高評価に近い。まさしく隠れた名車という印象を持った。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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