e-POWERの氷雪路性能に驚き…モーター制御の緻密さに「技術の日産」を見た
2月初旬、日産インテリジェントモビリティ雪上試乗会が行われた。試乗車のメーンディッシュは今売れているe-POWERシリーズ。なかでも『セレナe-POWER』と『ノートe-POWER e4WD」の走りの性能が印象的だったので詳しく報告したい。
◆セレナe-POWERの氷雪路性能に驚いた
実際に走らせてどのクルマよりも驚き感心したのがセレナe-POWERだった。周知のように、このクルマは100%モーター駆動で、駆動用モーターは136馬力/320Nmを発揮する。搭載する1.2リットルエンジンはもっぱら充電のみに使われ、1.8kWhのリチウムイオンバッテリーに蓄電、モーターに電力が供給される。
駆動用モーターで注目すべきは最大トルク320Nmを発揮するところ。しかもこのトルクはアクセルを踏み込んだ瞬間から発揮するから、1770kgの重量級ボディを発進から軽々と加速してくれる。もちろん乗員が多くても全く問題なし。モーター駆動とミニバンの相性は抜群にいい。
けれども、氷雪路など滑りやすい路面では駆動トルクの大きさは逆に乗りにくさにならないのだろうか。というわけで今回行われた雪上試乗会では、札幌近郊の一般道を使い、圧雪路どころかほぼ凍結路面という状況というかなり過酷な道路状況で、改めてセレナe-POWERを走らせ、その実力を確認してみた。で、いざ走らせてみると、これが目から鱗、びっくりするくらい走り易かった。
◆モーターだからこそできる精密な制御
EVの『リーフ』が登場した時から日産はモーターとVDC(横滑り防止装置)との相性の良さをしきりにアナウンスしていたし、筆者自身もそれを理解したつもりでいたのだが、今回の体験はそれを上回るパフォーマンスだった。
凍結路面からの発進では、ごく普通のアクセルの踏み方でもホイールスピンを一切させず、するすると加速してくれるのだ。車重約1.8トンのボディを実際に発進させるだけでもかなり繊細なアクセルコントロールが求められるのだが、タイヤが滑る素振りさえ見せない。これがガソリンエンジンだと、アクセルスロットルの開閉でパワーコントロールを行うためどうしても繊細な制御が難しい。
ところがモーターの制御は電圧をコントロールで駆動トルクのコントロールができるので、制御速度は1万分の1秒という速さだから、実際のクルマで行われる制御もCan通信速度の100分の1秒ででキッチリとコントロールされる。そのため感覚的には全く地綾の滑りが起こっていないように感じられ、ドライバーにとっては、それが圧倒的な安心感となるのだ。まるで、4つのタイヤが路面をヒタッ!と捉え吸い付いているかのような安心感があり、凍結路面を走っているという緊張感を与えないのだ。
正直なところ。これまで圧雪路やシャーベット路では何度か試乗する機会があって、それなりに走りやすいことも、タイヤの滑りが少ないことも実感はしていたのだが、凍結した路面を走らせてみて、改めてVDCのモーター制御が緻密で滑らかな制御を体験することができた。
◆e-POWERとe4WDの驚くべきマッチング
e-POWERがあれば4WDはいらないだろう、と思えるほどの高性能ぶりを見せてくれたセレナだったが、ノートe-POWER e4WDに乗ると、発進時の駆動トルクは明らかにセレナ(FF)の上を行き、安心感を与えてくれるシステムだった。
e-POWER e4WDは、システムとしては従来のe4WDと同様で、発進時にリヤタイヤをモーター駆動して発進をアシストしてくれるというもの。これがe-POWERと組み合わされたということ。
ノートe-POWERは最高出力/最大トルク=109馬力/254Nmを発揮。e4WDは、このシステムのリヤセクションに4.8馬力/15Nmのモーターがが追加され、発進から30km/hまでの範囲でモーターが駆動し、駆動力をアシストするシステム。
氷雪路で一番厄介なのは交差点からの発進。それから圧雪あるいは凍結した坂道からの発進。皆が路面を磨きながら発進・加速するため路面ミューが極端に落ち極めて滑りやすくなっている。特に坂道はVDC制御の緻密なe-POWERでも苦戦する場面。こんな場面でe4WDは威力を発揮する。
今回の試乗ステージでも、凍結し磨かれた交差点からの発進で無造作にアクセルを踏んで走りだせるほど発進がイージーだったし、深めの積雪路からの発進もストレスフリーだった。アシストとはいえ、もっとも駆動力が必要な発進時に4WDになってくれるとこれほど運転が楽になるのかと、改めて感心させられた。
◆緻密な制御が安心につながる
ただe4WDについては気になる部分も露見した。発進でフロントタイヤがわずかに滑ってから後輪に駆動が伝達される点だ。純粋に坂道発進での登坂力を考えたら、フロントタイヤを滑らせずに後輪の駆動トルクを与えたほうが有利になるはず。
簡易型4WDであるためそれほど4WDの登坂性能を重視していないのか、あるいは、4WDの介入に前輪の空転をスイッチにしているのかもしれない。たしかに+αの性能としては十分だが、もうちょっと踏み込んで4WDの制御をしてくれると、さらに使いやすく、そしてモーター駆動の良さが際立つのではないかと思った。
とはいうものの、e-POWER、e4WDのパフォーマンスはこれまで認識していた以上に懐が深く高性能であることが実感できた。何しろ雪道や氷の路面をとらえ滑りを極力抑えてくれるVDCの緻密な制御は誰にでも安心感を与えてくれお勧めできるものだと思った。
斎藤聡|モータージャーナリスト
特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。
(レスポンス 斎藤聡)
◆セレナe-POWERの氷雪路性能に驚いた
実際に走らせてどのクルマよりも驚き感心したのがセレナe-POWERだった。周知のように、このクルマは100%モーター駆動で、駆動用モーターは136馬力/320Nmを発揮する。搭載する1.2リットルエンジンはもっぱら充電のみに使われ、1.8kWhのリチウムイオンバッテリーに蓄電、モーターに電力が供給される。
駆動用モーターで注目すべきは最大トルク320Nmを発揮するところ。しかもこのトルクはアクセルを踏み込んだ瞬間から発揮するから、1770kgの重量級ボディを発進から軽々と加速してくれる。もちろん乗員が多くても全く問題なし。モーター駆動とミニバンの相性は抜群にいい。
けれども、氷雪路など滑りやすい路面では駆動トルクの大きさは逆に乗りにくさにならないのだろうか。というわけで今回行われた雪上試乗会では、札幌近郊の一般道を使い、圧雪路どころかほぼ凍結路面という状況というかなり過酷な道路状況で、改めてセレナe-POWERを走らせ、その実力を確認してみた。で、いざ走らせてみると、これが目から鱗、びっくりするくらい走り易かった。
◆モーターだからこそできる精密な制御
EVの『リーフ』が登場した時から日産はモーターとVDC(横滑り防止装置)との相性の良さをしきりにアナウンスしていたし、筆者自身もそれを理解したつもりでいたのだが、今回の体験はそれを上回るパフォーマンスだった。
凍結路面からの発進では、ごく普通のアクセルの踏み方でもホイールスピンを一切させず、するすると加速してくれるのだ。車重約1.8トンのボディを実際に発進させるだけでもかなり繊細なアクセルコントロールが求められるのだが、タイヤが滑る素振りさえ見せない。これがガソリンエンジンだと、アクセルスロットルの開閉でパワーコントロールを行うためどうしても繊細な制御が難しい。
ところがモーターの制御は電圧をコントロールで駆動トルクのコントロールができるので、制御速度は1万分の1秒という速さだから、実際のクルマで行われる制御もCan通信速度の100分の1秒ででキッチリとコントロールされる。そのため感覚的には全く地綾の滑りが起こっていないように感じられ、ドライバーにとっては、それが圧倒的な安心感となるのだ。まるで、4つのタイヤが路面をヒタッ!と捉え吸い付いているかのような安心感があり、凍結路面を走っているという緊張感を与えないのだ。
正直なところ。これまで圧雪路やシャーベット路では何度か試乗する機会があって、それなりに走りやすいことも、タイヤの滑りが少ないことも実感はしていたのだが、凍結した路面を走らせてみて、改めてVDCのモーター制御が緻密で滑らかな制御を体験することができた。
◆e-POWERとe4WDの驚くべきマッチング
e-POWERがあれば4WDはいらないだろう、と思えるほどの高性能ぶりを見せてくれたセレナだったが、ノートe-POWER e4WDに乗ると、発進時の駆動トルクは明らかにセレナ(FF)の上を行き、安心感を与えてくれるシステムだった。
e-POWER e4WDは、システムとしては従来のe4WDと同様で、発進時にリヤタイヤをモーター駆動して発進をアシストしてくれるというもの。これがe-POWERと組み合わされたということ。
ノートe-POWERは最高出力/最大トルク=109馬力/254Nmを発揮。e4WDは、このシステムのリヤセクションに4.8馬力/15Nmのモーターがが追加され、発進から30km/hまでの範囲でモーターが駆動し、駆動力をアシストするシステム。
氷雪路で一番厄介なのは交差点からの発進。それから圧雪あるいは凍結した坂道からの発進。皆が路面を磨きながら発進・加速するため路面ミューが極端に落ち極めて滑りやすくなっている。特に坂道はVDC制御の緻密なe-POWERでも苦戦する場面。こんな場面でe4WDは威力を発揮する。
今回の試乗ステージでも、凍結し磨かれた交差点からの発進で無造作にアクセルを踏んで走りだせるほど発進がイージーだったし、深めの積雪路からの発進もストレスフリーだった。アシストとはいえ、もっとも駆動力が必要な発進時に4WDになってくれるとこれほど運転が楽になるのかと、改めて感心させられた。
◆緻密な制御が安心につながる
ただe4WDについては気になる部分も露見した。発進でフロントタイヤがわずかに滑ってから後輪に駆動が伝達される点だ。純粋に坂道発進での登坂力を考えたら、フロントタイヤを滑らせずに後輪の駆動トルクを与えたほうが有利になるはず。
簡易型4WDであるためそれほど4WDの登坂性能を重視していないのか、あるいは、4WDの介入に前輪の空転をスイッチにしているのかもしれない。たしかに+αの性能としては十分だが、もうちょっと踏み込んで4WDの制御をしてくれると、さらに使いやすく、そしてモーター駆動の良さが際立つのではないかと思った。
とはいうものの、e-POWER、e4WDのパフォーマンスはこれまで認識していた以上に懐が深く高性能であることが実感できた。何しろ雪道や氷の路面をとらえ滑りを極力抑えてくれるVDCの緻密な制御は誰にでも安心感を与えてくれお勧めできるものだと思った。
斎藤聡|モータージャーナリスト
特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。
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