【ポルシェ 911 海外試乗】レーシー度を増しつつも、一般道ではフラットライド…九島辰也
昨年11月、ロサンゼルスモーターショーの前夜にワールドプレミアされた992型『911』のステアリングを握った。場所はスペイン、バレンシア。その郊外とリカルド・トルモ・サーキットを使ってのテストドライブである。
試乗車はカレラSとカレラ4Sの2種類。スタンダードカレラの姿はなく、逆に発売前のカブリオレがプレゼンテーション会場に展示されていた。もちろん、ターボやタルガ、GT3などファミリーが増殖するのは時間の問題だろう。ただ新型は2つのボディを持たない。今回のワイドボディがデフォルトとなる。しかもフロントのトレッドもワイドになり見た目の安定感も増した。
◆新技術ウェットモード、精度の高さを実感
ディテールはともかく、今回は走りをメインにお伝えしよう。新しい技術してはまずウェットモードが挙げられる。これはホイールハウス内にセンサーが仕込まれていて、路面が濡れていることを感知するとドライバーにウェットモードへの切り替えを促すところから始まる。そこで、モードを切り替えるとPSMとPTM、PTVが調整され安定した走りを具現化するといったものだ。要するに電子制御で確実なトラクションの伝え方を工夫しながら実施する。
実際サーキット内のカート場を濡らしてそれを体験したが、精度の高さはすごかった。じわじわと速度を上げていっても不自然な挙動はみられない。時としてオーバースピードでコーナーに進入してもアンダーステアになったりその切り返しで激しいオーバーステアになることはない。リアも安定していていわゆる「お尻が出る」状態にはならなかった。
このときリアスポイラーも協力しているのがおもしろい。時速90キロ以上でせり上がり最大のダウンフォースを発生させ、リアを安定させるのだ。この辺はポルシェらしいこだわりである。
◆先代に比べボディ剛性がアップ
では、サーキット走行はどうか。スペインでのテストドライブを終え日本でもう一度現行型991に乗って比較したが、やはりボディ剛性のアップは体感できる。991でも相当堅牢だと思っていたが、992は明らかにそれを上回っていた。ステアリング操作に対する一体感はハンパない。それに従来型プラス10%のクイックレスポンスになったステアリングがサーキットでは光る。2ラップ目には992がよりレーシーに振って作られたモデルだと結論付けた。パワートレインからシャシー、フレームまでそのベクトルに向いている。
その成果が特に突出しているのは、スポーツプラスでのギアのプログラミングかもしれない。サーキット走行でのシフトチェンジタイミングは絶妙で、ブリッピングを含め完璧であった。プロのレーサーでなければパドルを使うより速く走れそうだ。
最後に一般道での印象だが、そこでの乗り心地に驚いた。フロント20インチ、リア21インチの乗り心地に期待はしていなかったが、悪くはない。もちろん路面によってはピッチングが発生するが、それがいつまでも続くことなく見事におさめる。高速道路では気持ちのいいフラットライドだった。
といったのが今回のファーストインプレッション。日本でじっくり乗るとまた印象は変わるのかもしれないが、レーシー度が増しているのは間違いないだろう。とにもかくにも992の懐の深さが伺えた試乗会であった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの"サーフ&ターフ"。 東京・自由が丘出身
(レスポンス 九島辰也)
試乗車はカレラSとカレラ4Sの2種類。スタンダードカレラの姿はなく、逆に発売前のカブリオレがプレゼンテーション会場に展示されていた。もちろん、ターボやタルガ、GT3などファミリーが増殖するのは時間の問題だろう。ただ新型は2つのボディを持たない。今回のワイドボディがデフォルトとなる。しかもフロントのトレッドもワイドになり見た目の安定感も増した。
◆新技術ウェットモード、精度の高さを実感
ディテールはともかく、今回は走りをメインにお伝えしよう。新しい技術してはまずウェットモードが挙げられる。これはホイールハウス内にセンサーが仕込まれていて、路面が濡れていることを感知するとドライバーにウェットモードへの切り替えを促すところから始まる。そこで、モードを切り替えるとPSMとPTM、PTVが調整され安定した走りを具現化するといったものだ。要するに電子制御で確実なトラクションの伝え方を工夫しながら実施する。
実際サーキット内のカート場を濡らしてそれを体験したが、精度の高さはすごかった。じわじわと速度を上げていっても不自然な挙動はみられない。時としてオーバースピードでコーナーに進入してもアンダーステアになったりその切り返しで激しいオーバーステアになることはない。リアも安定していていわゆる「お尻が出る」状態にはならなかった。
このときリアスポイラーも協力しているのがおもしろい。時速90キロ以上でせり上がり最大のダウンフォースを発生させ、リアを安定させるのだ。この辺はポルシェらしいこだわりである。
◆先代に比べボディ剛性がアップ
では、サーキット走行はどうか。スペインでのテストドライブを終え日本でもう一度現行型991に乗って比較したが、やはりボディ剛性のアップは体感できる。991でも相当堅牢だと思っていたが、992は明らかにそれを上回っていた。ステアリング操作に対する一体感はハンパない。それに従来型プラス10%のクイックレスポンスになったステアリングがサーキットでは光る。2ラップ目には992がよりレーシーに振って作られたモデルだと結論付けた。パワートレインからシャシー、フレームまでそのベクトルに向いている。
その成果が特に突出しているのは、スポーツプラスでのギアのプログラミングかもしれない。サーキット走行でのシフトチェンジタイミングは絶妙で、ブリッピングを含め完璧であった。プロのレーサーでなければパドルを使うより速く走れそうだ。
最後に一般道での印象だが、そこでの乗り心地に驚いた。フロント20インチ、リア21インチの乗り心地に期待はしていなかったが、悪くはない。もちろん路面によってはピッチングが発生するが、それがいつまでも続くことなく見事におさめる。高速道路では気持ちのいいフラットライドだった。
といったのが今回のファーストインプレッション。日本でじっくり乗るとまた印象は変わるのかもしれないが、レーシー度が増しているのは間違いないだろう。とにもかくにも992の懐の深さが伺えた試乗会であった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの"サーフ&ターフ"。 東京・自由が丘出身
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