【ランボルギーニ ウルス 試乗】拍子抜けするほどの快適さに騙されてはいけない…中村孝仁
◆ランボルギーニ的な部分は希薄になったが
ランボルギーニというブランドは、過去にもSUVを作った経験のあるスーパーカーブランド。少なくともイタリアのスーパーカーブランドとしては唯一無二の存在だ。
その過去に作ったモデルの名は『LM002』。実際に販売され、『カウンタック』用のV12もしくはオフショア用パワーボートに使われていた7.2リットルV12が搭載されていた。日本にも数台が導入され、元阪神タイガースの新庄剛志選手が乗っていたことでも知られたモデルだった。かなり本格的なオフロード4WDで、総生産台数328台と言われている。
そんな経験を持つランボルギーニがSUVトレンド真っ盛りの今、再び仕上げたのが今回試乗した『ウルス』である。LM002を作った当時とはまるで状況が異なり、現在のランボルギーニはアウディ傘下。そんなわけで骨格は広義のVW傘下にある各SUVと共通のものが使われている。
一部を拾うと、それはベントレー『ベンテイガ』であったり、アウディ『Q7』であったりするわけだ。ただし、エンジンは独自…と言いたいところで、実際プロトタイプの段階ではガヤルド用のV10が搭載されていたのだが、量産化に際しては4リットルツインターボV8に換装され、これはアウディ製の4リットルユニットそのものである。というわけで、ランボルギーニ的な部分が希薄なモデルに仕上がっているのは隠しようのない事実であり、それは乗ってみても顕著に感じ取ることが出来る。
◆拍子抜けするほど極上の快適空間
確かにコックピットはランボルギーニそのものだった。ウラカンのコックピットのようなスターターボタンに始まって、ギアの操作方法まではまさにランボルギーニである。しかしいざエンジンがかかってみると、何とも穏やかというか、凄みがない。もっと獰猛な部分があるSUVという変な期待を持って乗り込んだものだから、拍子抜けしたものだ。しかもいざ走り出してみると、その快適さにまた言葉を失う。言い方もおかしいが、極上の快適空間である。
前後にフルバケットシートを4つ備える室内は、とりあえずオプションのようで、本来のリアシートはバケットではないようだ。それだけではなく黄色いステッチの入ったレザーの室内や、ステアリングなどもオプション。ついでにヘッドアップディスプレイもオプションだという。残念ながらオプションの合計価格は表示されていなかったが、車両価格は2816万1795円とずいぶん細かい。そして同じ骨格を使ったベントレー・ベンテイガより少し高い。ロールスもついにSUV『カリナン』を登場させ、アストンマーチンもすでにSUVを投入することを公表している。残るはフェラーリだけの状況は、SUVの世界が上限まで行きついたことを実感させる。
獰猛さがなかったのは、普通に流れに乗って走っている時だけ。いざ、本気で鞭を入れるとこのクルマはやはり豹変した。何せそのパフォーマンス650psに850Nmというスペック、ウラカン・ペルフォマンテすら凌ぐのだから怒涛の加速がないわけない。車重2.3トンなどものともしない凄まじい速さがある。やはり血は争えないというか、ランボルギーニの血統である。
◆ランボルギーニのイメージを変えたモデル
ボディもすこぶるデカい。全長は5mを超え、全幅も2mを超える。なので当然だが狭いところでは気を使うのだが、総じてその大きな車体を転がしているという印象は希薄である。恐らくその理由は4輪操舵の成せる業のような気がする。特に低速域で逆位相に切れてくれるリアタイヤのおかげか、ハンドリングはシャープでかつタイトなターンを可能にしてくれるのだ。
ANIMAと呼ばれる走行モード切り替えをストラーダから、スポーツ、そしてコルサへと一応切り替えてみたが、確かにストラーダよりは獰猛さが増すものの、度が過ぎた印象は皆無であり、依然として穏やかな躾けに終始している。
一方でエクステリアはランボルギーニそのものだ。本来はガンディーニの専売特許であったホイールアーチの独特なデザインは、それがあたかもランボルギーニの個性のごとく、このクルマに取り入れられている。勿論ウルスのデザインがガンディーニ作だとは聞いていない。しかし、このホイールアーチがランボルギーニであるというのは既に既成事実化しているのか、見た瞬間にああ、ランボルギーニだと感じられるわけである。
確かにサイズこそデカいが、非常に乗り易く、同時に無類にパワフルなSUVであるウルス。ウラカンやアヴェンタドールとは完全に一線を画すランボルギーニのイメージを変えたモデルであった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
ランボルギーニというブランドは、過去にもSUVを作った経験のあるスーパーカーブランド。少なくともイタリアのスーパーカーブランドとしては唯一無二の存在だ。
その過去に作ったモデルの名は『LM002』。実際に販売され、『カウンタック』用のV12もしくはオフショア用パワーボートに使われていた7.2リットルV12が搭載されていた。日本にも数台が導入され、元阪神タイガースの新庄剛志選手が乗っていたことでも知られたモデルだった。かなり本格的なオフロード4WDで、総生産台数328台と言われている。
そんな経験を持つランボルギーニがSUVトレンド真っ盛りの今、再び仕上げたのが今回試乗した『ウルス』である。LM002を作った当時とはまるで状況が異なり、現在のランボルギーニはアウディ傘下。そんなわけで骨格は広義のVW傘下にある各SUVと共通のものが使われている。
一部を拾うと、それはベントレー『ベンテイガ』であったり、アウディ『Q7』であったりするわけだ。ただし、エンジンは独自…と言いたいところで、実際プロトタイプの段階ではガヤルド用のV10が搭載されていたのだが、量産化に際しては4リットルツインターボV8に換装され、これはアウディ製の4リットルユニットそのものである。というわけで、ランボルギーニ的な部分が希薄なモデルに仕上がっているのは隠しようのない事実であり、それは乗ってみても顕著に感じ取ることが出来る。
◆拍子抜けするほど極上の快適空間
確かにコックピットはランボルギーニそのものだった。ウラカンのコックピットのようなスターターボタンに始まって、ギアの操作方法まではまさにランボルギーニである。しかしいざエンジンがかかってみると、何とも穏やかというか、凄みがない。もっと獰猛な部分があるSUVという変な期待を持って乗り込んだものだから、拍子抜けしたものだ。しかもいざ走り出してみると、その快適さにまた言葉を失う。言い方もおかしいが、極上の快適空間である。
前後にフルバケットシートを4つ備える室内は、とりあえずオプションのようで、本来のリアシートはバケットではないようだ。それだけではなく黄色いステッチの入ったレザーの室内や、ステアリングなどもオプション。ついでにヘッドアップディスプレイもオプションだという。残念ながらオプションの合計価格は表示されていなかったが、車両価格は2816万1795円とずいぶん細かい。そして同じ骨格を使ったベントレー・ベンテイガより少し高い。ロールスもついにSUV『カリナン』を登場させ、アストンマーチンもすでにSUVを投入することを公表している。残るはフェラーリだけの状況は、SUVの世界が上限まで行きついたことを実感させる。
獰猛さがなかったのは、普通に流れに乗って走っている時だけ。いざ、本気で鞭を入れるとこのクルマはやはり豹変した。何せそのパフォーマンス650psに850Nmというスペック、ウラカン・ペルフォマンテすら凌ぐのだから怒涛の加速がないわけない。車重2.3トンなどものともしない凄まじい速さがある。やはり血は争えないというか、ランボルギーニの血統である。
◆ランボルギーニのイメージを変えたモデル
ボディもすこぶるデカい。全長は5mを超え、全幅も2mを超える。なので当然だが狭いところでは気を使うのだが、総じてその大きな車体を転がしているという印象は希薄である。恐らくその理由は4輪操舵の成せる業のような気がする。特に低速域で逆位相に切れてくれるリアタイヤのおかげか、ハンドリングはシャープでかつタイトなターンを可能にしてくれるのだ。
ANIMAと呼ばれる走行モード切り替えをストラーダから、スポーツ、そしてコルサへと一応切り替えてみたが、確かにストラーダよりは獰猛さが増すものの、度が過ぎた印象は皆無であり、依然として穏やかな躾けに終始している。
一方でエクステリアはランボルギーニそのものだ。本来はガンディーニの専売特許であったホイールアーチの独特なデザインは、それがあたかもランボルギーニの個性のごとく、このクルマに取り入れられている。勿論ウルスのデザインがガンディーニ作だとは聞いていない。しかし、このホイールアーチがランボルギーニであるというのは既に既成事実化しているのか、見た瞬間にああ、ランボルギーニだと感じられるわけである。
確かにサイズこそデカいが、非常に乗り易く、同時に無類にパワフルなSUVであるウルス。ウラカンやアヴェンタドールとは完全に一線を画すランボルギーニのイメージを変えたモデルであった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
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