【ホンダ ヴェゼル Modulo仕様 雪上試乗】“雪道”前提ではなく、普通に運転できてしまう…佐藤久実
「Modulo」は、ホンダアクセスが手がけるカスタマイズブランドだ。1994年の規制緩和を機に、エアロやホイールなどのパーツを手がけ始めた。「クルマをコントロールしやすく」するのがチューニングの狙い。
今回の試乗モデルは、『ヴェゼル』(Modulo仕様)。そして、試乗ステージは冬の北海道。つまり、スノーテストドライブだ。チューニングカーやカスタマイズカーの場合、サーキットなどクローズドコースでの試乗は珍しくないが、雪上試乗はあまり聞いたことがない。「雪道でもしっかり走るのを確かめて欲しい」との開発陣の思いが具現化したわけだが、ある意味、自信の表れとも言えるだろう。何故なら、アスファルトでのハンドリングを追求するあまり、いわゆる「カタイ足」にしてしまうと、雪のような低μ路では、トラクション性能が悪かったり、トリッキーなハンドリングになりかねないからだ。
◆「カッコ良さ」や「差別化」に特化した"正直な”モデル
札幌の寒波がニュースになったりしていたが、今シーズン何度か訪れた旭川は、例年より雪が少ない印象だった。そして、試乗日の2月下旬は、すでに道路にはほとんど雪がなかった。もちろん、暮らしている方々にとっては良いことだが、雪上試乗を求めてやってきた身としては…。でも、結果的にはアスファルトの感触も確認しつつ雪上ドライブができた。高い人気を誇るコンパクトSUVセグメントのヴェゼル、ノーマルとModuloパーツ装着車の2台を持ち込み、比較試乗した。正直、雪道で走って違いなんてわかるのかなーと内心思っていたが、結果は明白だった。
Moduloヴェゼルは、「プレミアム エアロ スタイル」で全身ドレスアップされる。が、このエアロはあくまで「見た目」重視で、ノーマルに対して空力性能の向上は図られていないと言う。ハッキリしている。そして実に正直。モータースポーツの世界においては、レーシングカーがフルエアロ仕様になっているのは当然、エアロダイナミクス向上のためだ。以前、レースの現場でチームのエアロ担当エンジニアが言っていた名言。「空気はタダだからね。」なるほど。パーツ開発にはもちろんコストはかかるが、「タダ」の空気を味方につけることによって速さや安定性を得られるというわけだ。
が、しかし、市販車においては、「機能性」より「カッコ良さ」や「差別化」のニーズの方が圧倒的に多いのも事実。なので、ルックス仕様も大いにありだろう。ましてや、Moduloはカタログに載っている純正オプションの位置付けだし。
◆雪道でも運転が楽で安心感が高いModulo仕様
さて、まずノーマルのヴェゼルで走ってみる。運転しやすいし、乗り心地も悪くないし、そもそも好印象。雪道では、オーソドックスな雪上ドライブの印象だ。つまり、ステアリングを切ってもすぐには反応せず、舵角も多い。そして、しばらく待っていると、クルマの向きが変わり始める。雪道では、「操作してもすぐには反応しない」という心得を分かっていれば、違和感なくドライブできる。トレース性や安定性に欠けるシーンもあるが、唐突な動きは見られないので不安はない。
一方、Moduloヴェゼルに乗り換えると、わかりやすいほどの違いに驚いた。“雪道”前提ではなく、普通に運転できてしまうのだ。つまり、ステアリングを切ればドライバーの思った通りに反応を示すので無駄な操舵がなく、コーナーでもRに沿ってピタッとステアリングが収まり、修正舵もほぼ必要ない。結果、運転が楽で安心感が高い。機能パーツとしてはダンパーのみの変更ということだが、こんなにも変わるのね~。
そもそも、このヴェゼル、リヤシートの乗り心地向上が狙いとのことで、後席にも試乗してみた。運転席同様、ノーマルでも印象は悪くない。というのも、マイナーチェンジでノーマルもかなり乗り心地が向上したのだ。それでも差はある。ボディには一切手を入れていないとのことだが、Moduloはしっかり感が増した感じで落ち着きがあり、フラットライド。その一方、運転席では感じられなかった細かい振動があるのがちょっと気になった。「乗り心地」の評価って難しいと改めて思った。
快適性を狙ったものの、結果的にはサスペンションがスムースに動き、ハンドリングにも貢献している。Moduloのヴェゼルは、あらゆるシーンで上質な走りと快適性を提供してくれる。
ちなみに、今年の東京オートサロンで『ヴェゼル ツーリング ModuloX コンセプト』が発表された。Modulo初となる4WDモデルだ。今回、FFでも十分に走ることが確認できたが、降雪地域のユーザーにとっては、やはり4WDの方がより安心感が高いのは間違いない。発売時期は未定だが、いずれ市販化されるようなので、乞うご期待!
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
佐藤久実|モータージャーナリスト
大学在学中にレースデビュー。耐久レースをメインに活動。海外の24時間レースでも入賞を果たす。レースで培ったスキルをベースに、ドライビング・インストラクターとしても活動。ホンダ・ドライビング・ミーティング、ポルシェ・ドライビング・スクール、BMWドライバートレーニング、VWエコドライブトレーニング、ブリヂストン・タイヤセーフティ・ドライビングレッスンなどでインストラクターを務める。レーシングドライバーとしてのホットな目、ジャーナリストとしてのクールな目、そして女性目線からクルマを評価、自動車専門誌への執筆をはじめWEBやテレビでも活動。東海大学工学部動力機械工学科非常勤講師、芝浦工業大学特別講師。
(レスポンス 佐藤久実)
今回の試乗モデルは、『ヴェゼル』(Modulo仕様)。そして、試乗ステージは冬の北海道。つまり、スノーテストドライブだ。チューニングカーやカスタマイズカーの場合、サーキットなどクローズドコースでの試乗は珍しくないが、雪上試乗はあまり聞いたことがない。「雪道でもしっかり走るのを確かめて欲しい」との開発陣の思いが具現化したわけだが、ある意味、自信の表れとも言えるだろう。何故なら、アスファルトでのハンドリングを追求するあまり、いわゆる「カタイ足」にしてしまうと、雪のような低μ路では、トラクション性能が悪かったり、トリッキーなハンドリングになりかねないからだ。
◆「カッコ良さ」や「差別化」に特化した"正直な”モデル
札幌の寒波がニュースになったりしていたが、今シーズン何度か訪れた旭川は、例年より雪が少ない印象だった。そして、試乗日の2月下旬は、すでに道路にはほとんど雪がなかった。もちろん、暮らしている方々にとっては良いことだが、雪上試乗を求めてやってきた身としては…。でも、結果的にはアスファルトの感触も確認しつつ雪上ドライブができた。高い人気を誇るコンパクトSUVセグメントのヴェゼル、ノーマルとModuloパーツ装着車の2台を持ち込み、比較試乗した。正直、雪道で走って違いなんてわかるのかなーと内心思っていたが、結果は明白だった。
Moduloヴェゼルは、「プレミアム エアロ スタイル」で全身ドレスアップされる。が、このエアロはあくまで「見た目」重視で、ノーマルに対して空力性能の向上は図られていないと言う。ハッキリしている。そして実に正直。モータースポーツの世界においては、レーシングカーがフルエアロ仕様になっているのは当然、エアロダイナミクス向上のためだ。以前、レースの現場でチームのエアロ担当エンジニアが言っていた名言。「空気はタダだからね。」なるほど。パーツ開発にはもちろんコストはかかるが、「タダ」の空気を味方につけることによって速さや安定性を得られるというわけだ。
が、しかし、市販車においては、「機能性」より「カッコ良さ」や「差別化」のニーズの方が圧倒的に多いのも事実。なので、ルックス仕様も大いにありだろう。ましてや、Moduloはカタログに載っている純正オプションの位置付けだし。
◆雪道でも運転が楽で安心感が高いModulo仕様
さて、まずノーマルのヴェゼルで走ってみる。運転しやすいし、乗り心地も悪くないし、そもそも好印象。雪道では、オーソドックスな雪上ドライブの印象だ。つまり、ステアリングを切ってもすぐには反応せず、舵角も多い。そして、しばらく待っていると、クルマの向きが変わり始める。雪道では、「操作してもすぐには反応しない」という心得を分かっていれば、違和感なくドライブできる。トレース性や安定性に欠けるシーンもあるが、唐突な動きは見られないので不安はない。
一方、Moduloヴェゼルに乗り換えると、わかりやすいほどの違いに驚いた。“雪道”前提ではなく、普通に運転できてしまうのだ。つまり、ステアリングを切ればドライバーの思った通りに反応を示すので無駄な操舵がなく、コーナーでもRに沿ってピタッとステアリングが収まり、修正舵もほぼ必要ない。結果、運転が楽で安心感が高い。機能パーツとしてはダンパーのみの変更ということだが、こんなにも変わるのね~。
そもそも、このヴェゼル、リヤシートの乗り心地向上が狙いとのことで、後席にも試乗してみた。運転席同様、ノーマルでも印象は悪くない。というのも、マイナーチェンジでノーマルもかなり乗り心地が向上したのだ。それでも差はある。ボディには一切手を入れていないとのことだが、Moduloはしっかり感が増した感じで落ち着きがあり、フラットライド。その一方、運転席では感じられなかった細かい振動があるのがちょっと気になった。「乗り心地」の評価って難しいと改めて思った。
快適性を狙ったものの、結果的にはサスペンションがスムースに動き、ハンドリングにも貢献している。Moduloのヴェゼルは、あらゆるシーンで上質な走りと快適性を提供してくれる。
ちなみに、今年の東京オートサロンで『ヴェゼル ツーリング ModuloX コンセプト』が発表された。Modulo初となる4WDモデルだ。今回、FFでも十分に走ることが確認できたが、降雪地域のユーザーにとっては、やはり4WDの方がより安心感が高いのは間違いない。発売時期は未定だが、いずれ市販化されるようなので、乞うご期待!
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
佐藤久実|モータージャーナリスト
大学在学中にレースデビュー。耐久レースをメインに活動。海外の24時間レースでも入賞を果たす。レースで培ったスキルをベースに、ドライビング・インストラクターとしても活動。ホンダ・ドライビング・ミーティング、ポルシェ・ドライビング・スクール、BMWドライバートレーニング、VWエコドライブトレーニング、ブリヂストン・タイヤセーフティ・ドライビングレッスンなどでインストラクターを務める。レーシングドライバーとしてのホットな目、ジャーナリストとしてのクールな目、そして女性目線からクルマを評価、自動車専門誌への執筆をはじめWEBやテレビでも活動。東海大学工学部動力機械工学科非常勤講師、芝浦工業大学特別講師。
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