【ホンダ インサイト 新型試乗】燃費やデザインを考えれば、費用対効果は高い…中村孝仁
◆大人感のあるクルマに仕上がった
プラットフォームや骨格は『シビック』とそれを共有しているという。確かにサイドビューなどはそっくりである。でも、そこはかとない大人感を感じさせるクルマに仕上がっていた。
今回のモデルで3代目となる『インサイト』。初代の革新的2シータークーペに始まり、2代目は5ドアのハッチバックセダン。そして今回は4ドアのクーペ風セダンと、世代ごとにその表情を変えてきた。
表情と言えば、そのフロントフェイシアのデザインも北米仕様とは少し違っていて、グリルにクロームの横バーを入れた日本仕様は、より普通のクルマ感というか、シックさを演出している印象を受ける。そんなわけだから、確かにシビックの兄弟車(骨格的に)ではあるけれど、不思議とまるで違うクルマに見えるのである。
◆豪華ではないが、上質
2代目までのハイブリッドシステムはIMAと呼ばれるものだったが、今回は現在ホンダハイブリッドシステムの大半が使っている2モーターの「i-MMD」と呼ばれるものに変わっている。エンジンは排気量1.5リットルで、その性能は109ps、134Nm。この数値はほぼ、PHEVの『クラリティ』とほぼ一致する。一方でモーターは131ps、267Nmだから、これはクラリティと比べると大分ひ弱な印象。車両重量が軽いからこうした設定になっているように思える。
モーターが少しひ弱だからか、エンジンは比較的早目に顔をのぞかせる。しかし一般道を流れに乗って走っている限り、その介入は実にスマートで違和感がない。静粛性もすこぶる高く、足の動きも良いから、外観同様シックなセダンを演出してくれる。
内装は、シフトがボタンスイッチで、こちらはクラリティと共通。一方でメーター周りはシビックのような単眼ではなく、如何にも普通のクルマ的に左にスピードメーター、右にエンジンの回転やらチャージなどを示すメーターが並び、その両脇に燃料計、それに水温計ならぬバッテリーのメーターが装備されて、デザイン的には外観同様オーソドックスにまとめられている。
決して豪華といえる内装ではないが、それでも本革シートやら前席電動シートを装備するなど上質感は演出し、それでいて366万1200円(試乗車EXグレード)ならば、クラリティとは違って、納得できる金額である。
◆2リットルエンジンを搭載してもいい
走行モードはノーマルモード(デフォルト)に加えて、EVモード、エコモード、それにスポーツモードが存在する。EVモードは言うまでもなくモーターのみによる走行だが、エコ、ノーマル、スポーツでは必ずガソリンエンジンが顔を出し、アシストをする。まあ、一般道を走っている時はエコモードでも重宝し、こちらを使うと燃費は確実に上昇するが、やはり非力なことこの上なく、加速などは我慢を強いられる。これに対してノーマルモードは、ガツンと踏めばそれなりの加速感が得られ、そこそこの加速性能を持つ。そしてスポーツモードになると、これはかなり高い動力性能を示してくれるからうれしいのだが、エンジンの介入も増える。
問題なのは、高速走行でこれら3つのモードを試してみたが、どれをとっても高速のスピード領域になると、エンジンの唸りがかなり激しくなること。ドライバーの加速操作に対し、加速感と一体になったエンジン音を実現する制御技術を採用したとホンダは説明しているが、僕の評価基準から行けば、それは全く駄目で、ひたすらエンジンがうなりを上げた状態になる昔のCVTを思い起こさせる。
モーターが非力な分、エンジンが介入せざるを得ないのかな?と思うと、2リットルエンジンを搭載して少しカバーしてやった方が良かった気もするし、それによる価格上昇も気になるところだから、結局はこの高速での加速時のエンジン音に我慢するしかないのかな?とも思う。もっともACCを100km/hに設定してクルージングをすれば、まずそのうなりに遭遇することはないから、要は外観同様シックで大人の走りをしなさいと言われている気もした。
車載コンピューターによるおよそ450kmを走行した燃費は21.4km/リットル。WLTCの市街地走行モードでの燃費が22.8km/リットルだから、ほぼそれに近い。いずれにせよ、このガタイでこの燃費は立派なものである。デザインを含め、ホンダのクルマでは費用対効果の高いモデルという気がした。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
プラットフォームや骨格は『シビック』とそれを共有しているという。確かにサイドビューなどはそっくりである。でも、そこはかとない大人感を感じさせるクルマに仕上がっていた。
今回のモデルで3代目となる『インサイト』。初代の革新的2シータークーペに始まり、2代目は5ドアのハッチバックセダン。そして今回は4ドアのクーペ風セダンと、世代ごとにその表情を変えてきた。
表情と言えば、そのフロントフェイシアのデザインも北米仕様とは少し違っていて、グリルにクロームの横バーを入れた日本仕様は、より普通のクルマ感というか、シックさを演出している印象を受ける。そんなわけだから、確かにシビックの兄弟車(骨格的に)ではあるけれど、不思議とまるで違うクルマに見えるのである。
◆豪華ではないが、上質
2代目までのハイブリッドシステムはIMAと呼ばれるものだったが、今回は現在ホンダハイブリッドシステムの大半が使っている2モーターの「i-MMD」と呼ばれるものに変わっている。エンジンは排気量1.5リットルで、その性能は109ps、134Nm。この数値はほぼ、PHEVの『クラリティ』とほぼ一致する。一方でモーターは131ps、267Nmだから、これはクラリティと比べると大分ひ弱な印象。車両重量が軽いからこうした設定になっているように思える。
モーターが少しひ弱だからか、エンジンは比較的早目に顔をのぞかせる。しかし一般道を流れに乗って走っている限り、その介入は実にスマートで違和感がない。静粛性もすこぶる高く、足の動きも良いから、外観同様シックなセダンを演出してくれる。
内装は、シフトがボタンスイッチで、こちらはクラリティと共通。一方でメーター周りはシビックのような単眼ではなく、如何にも普通のクルマ的に左にスピードメーター、右にエンジンの回転やらチャージなどを示すメーターが並び、その両脇に燃料計、それに水温計ならぬバッテリーのメーターが装備されて、デザイン的には外観同様オーソドックスにまとめられている。
決して豪華といえる内装ではないが、それでも本革シートやら前席電動シートを装備するなど上質感は演出し、それでいて366万1200円(試乗車EXグレード)ならば、クラリティとは違って、納得できる金額である。
◆2リットルエンジンを搭載してもいい
走行モードはノーマルモード(デフォルト)に加えて、EVモード、エコモード、それにスポーツモードが存在する。EVモードは言うまでもなくモーターのみによる走行だが、エコ、ノーマル、スポーツでは必ずガソリンエンジンが顔を出し、アシストをする。まあ、一般道を走っている時はエコモードでも重宝し、こちらを使うと燃費は確実に上昇するが、やはり非力なことこの上なく、加速などは我慢を強いられる。これに対してノーマルモードは、ガツンと踏めばそれなりの加速感が得られ、そこそこの加速性能を持つ。そしてスポーツモードになると、これはかなり高い動力性能を示してくれるからうれしいのだが、エンジンの介入も増える。
問題なのは、高速走行でこれら3つのモードを試してみたが、どれをとっても高速のスピード領域になると、エンジンの唸りがかなり激しくなること。ドライバーの加速操作に対し、加速感と一体になったエンジン音を実現する制御技術を採用したとホンダは説明しているが、僕の評価基準から行けば、それは全く駄目で、ひたすらエンジンがうなりを上げた状態になる昔のCVTを思い起こさせる。
モーターが非力な分、エンジンが介入せざるを得ないのかな?と思うと、2リットルエンジンを搭載して少しカバーしてやった方が良かった気もするし、それによる価格上昇も気になるところだから、結局はこの高速での加速時のエンジン音に我慢するしかないのかな?とも思う。もっともACCを100km/hに設定してクルージングをすれば、まずそのうなりに遭遇することはないから、要は外観同様シックで大人の走りをしなさいと言われている気もした。
車載コンピューターによるおよそ450kmを走行した燃費は21.4km/リットル。WLTCの市街地走行モードでの燃費が22.8km/リットルだから、ほぼそれに近い。いずれにせよ、このガタイでこの燃費は立派なものである。デザインを含め、ホンダのクルマでは費用対効果の高いモデルという気がした。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
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