【アウディ Q5ディーゼル 新型試乗】百花繚乱の市場で成功できるか?…中村孝仁
アウディ『Q5』が属するのはいわゆるDセグメントのSUV市場。この市場にはライバルとしてメルセデス『GLC』、BMW『X3』を筆頭に、ボルボ、ジャガー、さらにはアルファロメオ等々、数多くのライバルがひしめく。
少なくとも日本の市場において、このセグメントで成功するにはディーゼルエンジンの存在が不可欠と言っても過言ではないほど、重要な地位を占めていて、ライバルは押しなべてディーゼルを投入した。
そんな中にあって、アウディはこれまでディーゼルエンジンを投入出来ないでいた。まあ、理由は敢えて語らないが、いつの間にやら最後発の存在になってしまった。単純に手をこまねいていたわけではないのだが、結果的にそうなった。だから最後発ならそれなりに大きな特徴でもないと、なかなか訴求はしにくい。
◆顕著に静かなディーゼルエンジン
今回のアウディQ5に搭載されたディーゼルは2リットル直4で、グループ内でのコードネームはEA288。実は昨年の11月にアウディはこのEA288を改良したEA288evoなるエンジンを投入していたのだが、今回日本にやってきたのは以前と同じものだった。まあ、evoを投入するためには再び型式申請やら何やらで投入が遅れてしまうことを考慮した結果だったように思う。
このEA288エンジン、基本的には既にグループ会社のVWが、『パサート』に搭載して日本市場ではお披露目されている。性能面でも190ps、400Nmの最高出力及び最大トルクを持つものだから、これも同じだ。ただ、パサートに試乗した時に感じたディーゼル音の大きさや、ざらつき感はこのクルマでは感じられない。
実際ステアリングを握りながら聞くサウンドは実に静かである。この点、明確にエンジン音をうならせるアルファロメオ『ステルヴィオ』の2.2リットルディーゼルよりは顕著に静かであったし、同じエンジンを積むパサートと比較しても、正直断然静かである。
◆フラット感の出し方はさすが
走りは至ってスムーズで軽快であるが、400Nmのトルク感はあまり感じられない。そして乗り心地。この部分がハイエンドブランドが拘りを見せる部分ではないかと思うのだが、特にドイツ系のメーカーはこのあたりの作り込みが非常に上手で、アウディでもこだわっている部分のように感じる。特にうまいと思わせるのが、フラット感の出し方。多少うねっているような路面でもほぼフラットにやり過ごすことが出来る。これだけはハイエンドブランドでなければ創出することが出来ない。
だが、Q5で感じられた良さはここだけ。例えば音はうるさくてもアルファのような猛々しいエンジンフィールや、クィックな動き。あるいはメルセデスが作り出す荘厳ともいえる作り込みなど、確実にキーとなるセールスポイントが見当たらない。実はドイツ国内での新車登録を見ても、2016年をピークにQ5の販売は下降線を辿っていて、2017年の新車投入でもその効果が表れていない。
本国では12Vバッテリーによるマイルドハイブリッドと、前述したEA288evoエンジン搭載で、出力が204psに引き上げられたモデルがすでにデビューしているのだが、こうしたエポックがあれば印象も違っていたように思う。
◆ライバルを押しのけて存在感を発揮できるか
もう一つ今回のQ5で少々批判的にならざるを得ないのは、Sトロニックと呼ばれるいわゆるツインクラッチトランスミッションの出来だ。構造的にはマニュアルトランスミッションであって、そのクラッチを電子制御して、さらにそのクラッチが二つ存在し、一つが仕事をするともう一つは次のギアに繋げる準備をしてくれる。だから変速は実にスムーズで素早い。
この機構がデビューした時、それは夢のような存在で、間違いなくトランスミッションの将来はこれになると確信していたが、どっこい既存のフルオートマチックが大いに巻き返してその変速スピードはDCTと変わらないレベルにまで引き上げられ、さらに発進に関しては確実にフルートマチック(最近はステップATなどと呼ばれることが多い)に分がある。今回もやはり渋滞の中でSトロニックに発進時のぎこち無さが露呈した感があった。
全体的にはまとまりがあって申し分ない。良くできていて良く走るDセグメントのSUVである。だが、お値段に対する価値がユーザーを納得させるものであるか否か。勿論アウディファンだけに訴求するなら現状で十分だが、百花繚乱のこの市場で、ライバルを押しのけて存在感を発揮できるモデルかと問われれば、少々厳しいが個人的には残念ながらそうは思わなかった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める
(レスポンス 中村 孝仁)
少なくとも日本の市場において、このセグメントで成功するにはディーゼルエンジンの存在が不可欠と言っても過言ではないほど、重要な地位を占めていて、ライバルは押しなべてディーゼルを投入した。
そんな中にあって、アウディはこれまでディーゼルエンジンを投入出来ないでいた。まあ、理由は敢えて語らないが、いつの間にやら最後発の存在になってしまった。単純に手をこまねいていたわけではないのだが、結果的にそうなった。だから最後発ならそれなりに大きな特徴でもないと、なかなか訴求はしにくい。
◆顕著に静かなディーゼルエンジン
今回のアウディQ5に搭載されたディーゼルは2リットル直4で、グループ内でのコードネームはEA288。実は昨年の11月にアウディはこのEA288を改良したEA288evoなるエンジンを投入していたのだが、今回日本にやってきたのは以前と同じものだった。まあ、evoを投入するためには再び型式申請やら何やらで投入が遅れてしまうことを考慮した結果だったように思う。
このEA288エンジン、基本的には既にグループ会社のVWが、『パサート』に搭載して日本市場ではお披露目されている。性能面でも190ps、400Nmの最高出力及び最大トルクを持つものだから、これも同じだ。ただ、パサートに試乗した時に感じたディーゼル音の大きさや、ざらつき感はこのクルマでは感じられない。
実際ステアリングを握りながら聞くサウンドは実に静かである。この点、明確にエンジン音をうならせるアルファロメオ『ステルヴィオ』の2.2リットルディーゼルよりは顕著に静かであったし、同じエンジンを積むパサートと比較しても、正直断然静かである。
◆フラット感の出し方はさすが
走りは至ってスムーズで軽快であるが、400Nmのトルク感はあまり感じられない。そして乗り心地。この部分がハイエンドブランドが拘りを見せる部分ではないかと思うのだが、特にドイツ系のメーカーはこのあたりの作り込みが非常に上手で、アウディでもこだわっている部分のように感じる。特にうまいと思わせるのが、フラット感の出し方。多少うねっているような路面でもほぼフラットにやり過ごすことが出来る。これだけはハイエンドブランドでなければ創出することが出来ない。
だが、Q5で感じられた良さはここだけ。例えば音はうるさくてもアルファのような猛々しいエンジンフィールや、クィックな動き。あるいはメルセデスが作り出す荘厳ともいえる作り込みなど、確実にキーとなるセールスポイントが見当たらない。実はドイツ国内での新車登録を見ても、2016年をピークにQ5の販売は下降線を辿っていて、2017年の新車投入でもその効果が表れていない。
本国では12Vバッテリーによるマイルドハイブリッドと、前述したEA288evoエンジン搭載で、出力が204psに引き上げられたモデルがすでにデビューしているのだが、こうしたエポックがあれば印象も違っていたように思う。
◆ライバルを押しのけて存在感を発揮できるか
もう一つ今回のQ5で少々批判的にならざるを得ないのは、Sトロニックと呼ばれるいわゆるツインクラッチトランスミッションの出来だ。構造的にはマニュアルトランスミッションであって、そのクラッチを電子制御して、さらにそのクラッチが二つ存在し、一つが仕事をするともう一つは次のギアに繋げる準備をしてくれる。だから変速は実にスムーズで素早い。
この機構がデビューした時、それは夢のような存在で、間違いなくトランスミッションの将来はこれになると確信していたが、どっこい既存のフルオートマチックが大いに巻き返してその変速スピードはDCTと変わらないレベルにまで引き上げられ、さらに発進に関しては確実にフルートマチック(最近はステップATなどと呼ばれることが多い)に分がある。今回もやはり渋滞の中でSトロニックに発進時のぎこち無さが露呈した感があった。
全体的にはまとまりがあって申し分ない。良くできていて良く走るDセグメントのSUVである。だが、お値段に対する価値がユーザーを納得させるものであるか否か。勿論アウディファンだけに訴求するなら現状で十分だが、百花繚乱のこの市場で、ライバルを押しのけて存在感を発揮できるモデルかと問われれば、少々厳しいが個人的には残念ながらそうは思わなかった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
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