【トヨタ RAV4 新型試乗】2種類の4WDにオン&オフロードで乗った…山田弘樹
第5世代となって日本市場に復活を果たしたトヨタ『RAV4』。新型の姿を初めて見たとき、「これは…!」と感じた。その一番大きな理由は、ずばり見た目の良さである。
新型RAV4のデザインには、『タコマ』や『タンドラ』といった北米市場向けピックアップや、『ハイラックスサーフ』といった本格クロカンファミリーの流れを汲むワイルドさがある。現在のトヨタトレンドである「キーンルック」(keen:鋭い、厳しい)の面影を残しつつも、タフで骨太な顔立ちでありルックス。これこそが、『ハリアー』との類似性から導入されなかった4代目との違いなのであろう。
◆元祖コンパクトSUVがオフロード性能を向上
しかしながらRAV4は、ラダーフレーム式の本格クロカン4WD車ではない。そのコンセプトは1994年に登場した初代から一貫して変わらず、オンロードでの乗り心地に優れるモノコックシャシーを使っている。さらにはFWD車(前輪駆動車)までいちはやく用意した割り切り感があり、当時はこれが非常に斬新だった。
つまり25年以上前からトヨタは、多くのユーザーがクロカン4WDに対して、本格的なオフロード性能よりもオンロードでの快適性を求めていると見抜いていたのだ。そしてこのクロスオーバー的発想は、まさにいま世界的なブームとなっているコンパクトSUVへと発展して行ったわけである。
そんな元祖コンパクトSUVであるRAV4だが、なんと最新型はオフロード性能が著しく向上していたのだから面白い。
パワーユニットは2リットル直列4気筒直噴(171PS)と、2.5リットルハイブリッドの2種類。2.5ハイブリッドはFWDモデルが218PS、リアにもモーターを搭載するE-Fourが222PSのシステム出力を発揮する。
そして今回は、この2リットルガソリンエンジン車と2.5ハイブリッドそれぞれに設定される異なる種類の4WDを、オン/オフロードの両方で試すことができた。
◆「ダイナミックトルクベクタリングAWD」の曲がり方の差は歴然
ここで注目すべきは、世界初となる「ダイナミックトルクベクタリングAWD」の性能だろう。これは2リットルガソリンモデルの4WDに搭載されるシステムで、後輪に配分したトルクを、さらに左右で0~50まで連続可変するというもの。具体的には転舵時に後輪アウト側のタイヤを多く回す(ベクタリングする)ことで、回頭性を高める。
これをオフロードで通常の4WDと比べてみると、その曲がり方の差は歴然としていた。FWDをベースとする既存の4WDは前後トルク配分を最大でも50:50までしか可変しないため、極めて安定志向。しかしここに後輪トルクベクタリング制御が加わると、恐ろしくシャープにコーナーを曲がって行くのだ。
操作は至ってシンプル。コーナーが迫ってきたらハンドルを切り、そこから躊躇せずにアクセルを踏み込むだけである。するとRAV4はその巨体をクルッと回り込ませ、かなりのスピードでコーナーをクリアしてしまう。カウンターを切った時に逆方向へベクタリングしない制御の自然さも、見事であった。
ただこのトルク制御は挙動を乱すほどには強烈でないため(敢えての制御だろう)、ダートでの姿勢づくりは2.5ハイブリッドの方が容易だった。E-Fourは後輪を駆動するモーターのトルクが高く、最大で前後トルク差が20:80にまで開く。また2.5リットルという排気量のアドバンテージと、タイムラグのないモーターの立ち上がりが姿勢造りに役立ってくれるため、FR車のようにドリフトコントロールができ、4WD車として姿勢を安定させられるのだ。
◆モーグルでもベクタリングは有効、だがオンロードでこそ役立つ
さらにモーグルでも、ダイナミックトルクベクタリングは高い走破性を発揮した。センターコンソールのダイヤルを「ROCK & DIRT」に合わせアクセルを踏み込むと、前後で方輪が浮いているような状況でも、接地している方の後輪が積極的にトルクを掛けて行く。その様子がデジタルメーターで確認できるのだ。
ちなみにベーシックな4WDは、空転する車輪にブレーキを掛けることで、LSD効果を発揮して接地しているタイヤに駆動を掛ける。どちらのシステムが優れているかというよりは、ダイナミックトルクベクタリングを装着しても高いオフロード性能を発揮できると確認できたことに、意義があったと言えるだろう。
というのもこのシステムは、オンロードでこそ役立つシステムだと思うのだ。基本的にはアクセルを踏んでいるときしか制御が働かないため(若干のマイナストルク制御はあるようだが)、コーナーのアプローチでも挙動はナチュラル。
そしてアクセルを踏み込むと、ダートの時よりも自然にRAV4の巨体をコーナリングさせてくれる。たとえばつづら折りに続く曲がり込んだコーナーなどではアクセルを緩めずともハンドルを切れば曲がって行けるから、車体をグラッとロールさせず穏やかに走ることができる。
その制御は先鋭化し過ぎていないから、精度の低い後輪操舵のような違和感を覚えることがない。アクティブ・ヨー・コントロールのような過激さはないが、この自然な走りこそが、まさに開発陣の狙いとのことだった。
◆ガソリンとハイブリッドと、どう選ぶか
またガソリンモデルのトランスミッションにはダイレクトシフトCVTが備わるため、アクセルを大きく開けたときのレスポンスが鋭く、走りが気持ち良い。そしてだらりと走るようなシチュエーションでは、CVTの有効トルクバンド保持性能や低燃費性能が本領を発揮する。
これによって2リットルでも力不足を感じることがなくなり、上手にハイブリッドとの差別化ができたと思う。どちらも乗り心地はかなり良いが、具体的には、若々しく走りたいならガソリンモデル。よりしっとりと高級感を味わいたいならハイブリッドという選び方になると思う。ただどちらにも、車速コントロールのしやすさという意味でパドルシフトが欲しい。
走りもルックスも、魅力的。こうなると唯一、日本ではそのボディサイズが気になるところだ。RAV4の全長(4600~4610mm)がスバル『フォレスター』(4625mm)より短いのは意外だったが、全幅は1855~1865mmと、かなりある。これを迫力やラゲッジ容量の広さ(通常580リットル/最大幅1355mm、奥行き1015mm)として好意的に捕らえられるかが、購入の分かれ目となりそうだ。とはいえRAV4が大きすぎてもその下には人気の『CH-R』があるのだからトヨタはそつない。ともあれ新型RAV4は、非常に魅力的なSUVとして日本に帰ってきてくれた。
(レスポンス 山田弘樹)
新型RAV4のデザインには、『タコマ』や『タンドラ』といった北米市場向けピックアップや、『ハイラックスサーフ』といった本格クロカンファミリーの流れを汲むワイルドさがある。現在のトヨタトレンドである「キーンルック」(keen:鋭い、厳しい)の面影を残しつつも、タフで骨太な顔立ちでありルックス。これこそが、『ハリアー』との類似性から導入されなかった4代目との違いなのであろう。
◆元祖コンパクトSUVがオフロード性能を向上
しかしながらRAV4は、ラダーフレーム式の本格クロカン4WD車ではない。そのコンセプトは1994年に登場した初代から一貫して変わらず、オンロードでの乗り心地に優れるモノコックシャシーを使っている。さらにはFWD車(前輪駆動車)までいちはやく用意した割り切り感があり、当時はこれが非常に斬新だった。
つまり25年以上前からトヨタは、多くのユーザーがクロカン4WDに対して、本格的なオフロード性能よりもオンロードでの快適性を求めていると見抜いていたのだ。そしてこのクロスオーバー的発想は、まさにいま世界的なブームとなっているコンパクトSUVへと発展して行ったわけである。
そんな元祖コンパクトSUVであるRAV4だが、なんと最新型はオフロード性能が著しく向上していたのだから面白い。
パワーユニットは2リットル直列4気筒直噴(171PS)と、2.5リットルハイブリッドの2種類。2.5ハイブリッドはFWDモデルが218PS、リアにもモーターを搭載するE-Fourが222PSのシステム出力を発揮する。
そして今回は、この2リットルガソリンエンジン車と2.5ハイブリッドそれぞれに設定される異なる種類の4WDを、オン/オフロードの両方で試すことができた。
◆「ダイナミックトルクベクタリングAWD」の曲がり方の差は歴然
ここで注目すべきは、世界初となる「ダイナミックトルクベクタリングAWD」の性能だろう。これは2リットルガソリンモデルの4WDに搭載されるシステムで、後輪に配分したトルクを、さらに左右で0~50まで連続可変するというもの。具体的には転舵時に後輪アウト側のタイヤを多く回す(ベクタリングする)ことで、回頭性を高める。
これをオフロードで通常の4WDと比べてみると、その曲がり方の差は歴然としていた。FWDをベースとする既存の4WDは前後トルク配分を最大でも50:50までしか可変しないため、極めて安定志向。しかしここに後輪トルクベクタリング制御が加わると、恐ろしくシャープにコーナーを曲がって行くのだ。
操作は至ってシンプル。コーナーが迫ってきたらハンドルを切り、そこから躊躇せずにアクセルを踏み込むだけである。するとRAV4はその巨体をクルッと回り込ませ、かなりのスピードでコーナーをクリアしてしまう。カウンターを切った時に逆方向へベクタリングしない制御の自然さも、見事であった。
ただこのトルク制御は挙動を乱すほどには強烈でないため(敢えての制御だろう)、ダートでの姿勢づくりは2.5ハイブリッドの方が容易だった。E-Fourは後輪を駆動するモーターのトルクが高く、最大で前後トルク差が20:80にまで開く。また2.5リットルという排気量のアドバンテージと、タイムラグのないモーターの立ち上がりが姿勢造りに役立ってくれるため、FR車のようにドリフトコントロールができ、4WD車として姿勢を安定させられるのだ。
◆モーグルでもベクタリングは有効、だがオンロードでこそ役立つ
さらにモーグルでも、ダイナミックトルクベクタリングは高い走破性を発揮した。センターコンソールのダイヤルを「ROCK & DIRT」に合わせアクセルを踏み込むと、前後で方輪が浮いているような状況でも、接地している方の後輪が積極的にトルクを掛けて行く。その様子がデジタルメーターで確認できるのだ。
ちなみにベーシックな4WDは、空転する車輪にブレーキを掛けることで、LSD効果を発揮して接地しているタイヤに駆動を掛ける。どちらのシステムが優れているかというよりは、ダイナミックトルクベクタリングを装着しても高いオフロード性能を発揮できると確認できたことに、意義があったと言えるだろう。
というのもこのシステムは、オンロードでこそ役立つシステムだと思うのだ。基本的にはアクセルを踏んでいるときしか制御が働かないため(若干のマイナストルク制御はあるようだが)、コーナーのアプローチでも挙動はナチュラル。
そしてアクセルを踏み込むと、ダートの時よりも自然にRAV4の巨体をコーナリングさせてくれる。たとえばつづら折りに続く曲がり込んだコーナーなどではアクセルを緩めずともハンドルを切れば曲がって行けるから、車体をグラッとロールさせず穏やかに走ることができる。
その制御は先鋭化し過ぎていないから、精度の低い後輪操舵のような違和感を覚えることがない。アクティブ・ヨー・コントロールのような過激さはないが、この自然な走りこそが、まさに開発陣の狙いとのことだった。
◆ガソリンとハイブリッドと、どう選ぶか
またガソリンモデルのトランスミッションにはダイレクトシフトCVTが備わるため、アクセルを大きく開けたときのレスポンスが鋭く、走りが気持ち良い。そしてだらりと走るようなシチュエーションでは、CVTの有効トルクバンド保持性能や低燃費性能が本領を発揮する。
これによって2リットルでも力不足を感じることがなくなり、上手にハイブリッドとの差別化ができたと思う。どちらも乗り心地はかなり良いが、具体的には、若々しく走りたいならガソリンモデル。よりしっとりと高級感を味わいたいならハイブリッドという選び方になると思う。ただどちらにも、車速コントロールのしやすさという意味でパドルシフトが欲しい。
走りもルックスも、魅力的。こうなると唯一、日本ではそのボディサイズが気になるところだ。RAV4の全長(4600~4610mm)がスバル『フォレスター』(4625mm)より短いのは意外だったが、全幅は1855~1865mmと、かなりある。これを迫力やラゲッジ容量の広さ(通常580リットル/最大幅1355mm、奥行き1015mm)として好意的に捕らえられるかが、購入の分かれ目となりそうだ。とはいえRAV4が大きすぎてもその下には人気の『CH-R』があるのだからトヨタはそつない。ともあれ新型RAV4は、非常に魅力的なSUVとして日本に帰ってきてくれた。
(レスポンス 山田弘樹)
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