【ボルボ V60クロスカントリー 新型試乗】垢抜けた今のボルボに“ハズレ”なし…河西啓介
◆スウェーデンの“いいとこ取り”
スウェーデンってどんな国? と聞かれたら、「社会福祉の制度が進んでる国だよね」と答える人は多いだろう。そう、スウェーデンをはじめとする北欧の国々は総じて社会福祉先進国だ。子育て、教育、高齢者のケアなどについての制度が手厚い。つまり基本的に“ちゃんとしている”国なのである
そのスウェーデンの国民車たるボルボは、やっぱり“ちゃんとした”クルマだ。1950年代に発売されたアマゾンは、世界初の3点式シートベルトを備えたクルマとして知られる。80、90年代にエステート(ワゴン)が日本で人気となった『240』や『740』などのモデルは、「実直」過ぎるほどの四角いカタチが特徴だった。あえて言えば、マジメだがちょっと“垢抜けない”というのがボルボのイメージだった。
だがいまのボルボは違う。むしろ世界のクルマの中で最も“オシャレ”なメーカーと言ってもいいだろう。もとよりインダストリアルやファッションの世界には「北欧デザイン」や「スウェディッシュデザイン」と言う言葉があるように、スウェーデンという国が持つデザイン力には定評がある。いまのボルボはまさにマジメな中身にスタイリッシュなデザインを纏った、スウェーデンの“いいとこ取り”と言えるクルマづくりをしている。
◆雪の箱根で見せた実力
そのボルボのニューモデル、『V60クロスカントリー』に試乗した。「60」シリーズとしてはSUVの『XC60』が一昨年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲ったのは記憶に新しいだろう。そして昨年、エステートモデルの『V60』が登場したが、このV60クロスカントリー(CC)はV60の最低地上高を65mmリフトし、2リッター4気筒「T5」ユニットに4WDを組み合わせたモデルだ。
つまりこのV60CCは、SUVのXC60とワゴンのV60 の“中間”的なモデルとも言える。きっとこの3モデルで「どれがいいのか?」と悩んでる人もいるんではないだろうか。
ちなみに価格的にはV60CCの「T5 AWD」が549万円、「T5 AWDプロ」が649万円と、V60 T5の「モメンタム(499万円)」と「インスクリプション(599万円)」に比べそれぞれ50万円プラスとなっている。いっぽうXC60はそれぞれ614万円と709万円で、V60CCより60~66万円高い。価格的にもちょうど“中間”である。その辺りの整合性もやっぱり“ちゃんとしている”のだ。
試乗した感想を端的に言えば、とても「頼もしく、優しい」クルマだった。兄弟車であるXC60およびベース車たるV60の出来のよさから考えても、V60CCが悪かろう訳はないと思っていたが、期待は裏切られなかった。
試乗したのは箱根の峠道が中心だったが、じつはこの日、4月だと言うのに季節外れの雪が降るという悪天候。だが考えてみれば、このV60CCを試すにはある意味ベストな条件だったかもしれない。
ところどころ雪がシャーベット状に残る路面でも、V60CCはまったく不安を感じさせずスイスイと走る。4WDであることはもちろんだが、V60より少し高いアイポイントも、こういう状況では安心感につながる。
◆なぜボルボの室内は居心地がいいのか?
V60CCのエンジンは2リッター4気筒ターボで、最高出力は254psを発揮する。車体に対するパワーは十分で、8段ATとの組み合わせによる走りはスムーズかつスポーティーだ。ちなみに駆動システムはアクティブ・オンデマンドの電子制御4WDを採用し、通常は前輪駆動、必要に応じて最大50%の駆動を後輪に伝える。
先に「頼もしく、優しい」と言ったけれど、じつはいちばんの美点と感じたのは乗り心地のよさだった。足まわりは車高を上げるとともに、サスペンションもソフトにセッティングされていて、ワゴンのV60よりしなやかに仕立てられている印象だ。
たっぷりとしたレザーシートに包まれて運転していると、ココロは常に穏やかだ。かつてボルボのエンジニアに「ボルボの車内はなぜ居心地がいいのか?」と訪ねたところ、「冬が長いスウェーデンでは、常に室内で快適に過ごすことを考えているんだ」と返され、とても合点がいった。窓の外は雪が降りしきるなか、明るいベージュの室内でハンドルを握っていると、まさにそれが実感できた。
僕なりの結論を言うなら、このV60クロスカントリーは「60シリーズ」においてベストバランスなモデルだと思う。乗員や荷物を乗せるためのユーテリティや走破性についてはXC60と遜色なく、タフさとエレガントさを絶妙に折衷させたスタイリングはV60CCならではの美点だ。
唯一足りないとすれば、XC60にはランナップされるディーゼルエンジンを選べないことだろうか。いずれにしても今のボルボには“外れ”がない。このV60CCに乗ってそれをあらためて感じた。
河西啓介|編集者/モータージャーナリスト
自動車雑誌『NAVI』編集部を経て、出版社ボイス・パブリケーションを設立。『NAVI CARS』『MOTO NAVI』『BICYCLE NAVI』の編集長を務める。現在はフリーランスとして雑誌・ウェブメディアでの原稿執筆のほか、クリエイティブディレクター、ラジオパーソナリティ、テレビコメンテーターなどとしても活動する。
(レスポンス 河西啓介)
スウェーデンってどんな国? と聞かれたら、「社会福祉の制度が進んでる国だよね」と答える人は多いだろう。そう、スウェーデンをはじめとする北欧の国々は総じて社会福祉先進国だ。子育て、教育、高齢者のケアなどについての制度が手厚い。つまり基本的に“ちゃんとしている”国なのである
そのスウェーデンの国民車たるボルボは、やっぱり“ちゃんとした”クルマだ。1950年代に発売されたアマゾンは、世界初の3点式シートベルトを備えたクルマとして知られる。80、90年代にエステート(ワゴン)が日本で人気となった『240』や『740』などのモデルは、「実直」過ぎるほどの四角いカタチが特徴だった。あえて言えば、マジメだがちょっと“垢抜けない”というのがボルボのイメージだった。
だがいまのボルボは違う。むしろ世界のクルマの中で最も“オシャレ”なメーカーと言ってもいいだろう。もとよりインダストリアルやファッションの世界には「北欧デザイン」や「スウェディッシュデザイン」と言う言葉があるように、スウェーデンという国が持つデザイン力には定評がある。いまのボルボはまさにマジメな中身にスタイリッシュなデザインを纏った、スウェーデンの“いいとこ取り”と言えるクルマづくりをしている。
◆雪の箱根で見せた実力
そのボルボのニューモデル、『V60クロスカントリー』に試乗した。「60」シリーズとしてはSUVの『XC60』が一昨年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲ったのは記憶に新しいだろう。そして昨年、エステートモデルの『V60』が登場したが、このV60クロスカントリー(CC)はV60の最低地上高を65mmリフトし、2リッター4気筒「T5」ユニットに4WDを組み合わせたモデルだ。
つまりこのV60CCは、SUVのXC60とワゴンのV60 の“中間”的なモデルとも言える。きっとこの3モデルで「どれがいいのか?」と悩んでる人もいるんではないだろうか。
ちなみに価格的にはV60CCの「T5 AWD」が549万円、「T5 AWDプロ」が649万円と、V60 T5の「モメンタム(499万円)」と「インスクリプション(599万円)」に比べそれぞれ50万円プラスとなっている。いっぽうXC60はそれぞれ614万円と709万円で、V60CCより60~66万円高い。価格的にもちょうど“中間”である。その辺りの整合性もやっぱり“ちゃんとしている”のだ。
試乗した感想を端的に言えば、とても「頼もしく、優しい」クルマだった。兄弟車であるXC60およびベース車たるV60の出来のよさから考えても、V60CCが悪かろう訳はないと思っていたが、期待は裏切られなかった。
試乗したのは箱根の峠道が中心だったが、じつはこの日、4月だと言うのに季節外れの雪が降るという悪天候。だが考えてみれば、このV60CCを試すにはある意味ベストな条件だったかもしれない。
ところどころ雪がシャーベット状に残る路面でも、V60CCはまったく不安を感じさせずスイスイと走る。4WDであることはもちろんだが、V60より少し高いアイポイントも、こういう状況では安心感につながる。
◆なぜボルボの室内は居心地がいいのか?
V60CCのエンジンは2リッター4気筒ターボで、最高出力は254psを発揮する。車体に対するパワーは十分で、8段ATとの組み合わせによる走りはスムーズかつスポーティーだ。ちなみに駆動システムはアクティブ・オンデマンドの電子制御4WDを採用し、通常は前輪駆動、必要に応じて最大50%の駆動を後輪に伝える。
先に「頼もしく、優しい」と言ったけれど、じつはいちばんの美点と感じたのは乗り心地のよさだった。足まわりは車高を上げるとともに、サスペンションもソフトにセッティングされていて、ワゴンのV60よりしなやかに仕立てられている印象だ。
たっぷりとしたレザーシートに包まれて運転していると、ココロは常に穏やかだ。かつてボルボのエンジニアに「ボルボの車内はなぜ居心地がいいのか?」と訪ねたところ、「冬が長いスウェーデンでは、常に室内で快適に過ごすことを考えているんだ」と返され、とても合点がいった。窓の外は雪が降りしきるなか、明るいベージュの室内でハンドルを握っていると、まさにそれが実感できた。
僕なりの結論を言うなら、このV60クロスカントリーは「60シリーズ」においてベストバランスなモデルだと思う。乗員や荷物を乗せるためのユーテリティや走破性についてはXC60と遜色なく、タフさとエレガントさを絶妙に折衷させたスタイリングはV60CCならではの美点だ。
唯一足りないとすれば、XC60にはランナップされるディーゼルエンジンを選べないことだろうか。いずれにしても今のボルボには“外れ”がない。このV60CCに乗ってそれをあらためて感じた。
河西啓介|編集者/モータージャーナリスト
自動車雑誌『NAVI』編集部を経て、出版社ボイス・パブリケーションを設立。『NAVI CARS』『MOTO NAVI』『BICYCLE NAVI』の編集長を務める。現在はフリーランスとして雑誌・ウェブメディアでの原稿執筆のほか、クリエイティブディレクター、ラジオパーソナリティ、テレビコメンテーターなどとしても活動する。
(レスポンス 河西啓介)
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